星降る国の恋と愛

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ガリア帝国編

メリアリア・カッシーニ編プロローグ

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「・・・・・」

(雨の、匂い・・・)

 寮の一室の窓辺に立って、そこを開け放ちながらメリアリアは外の世界へと意識を向けるがそこには既に土砂降りの雨が降っていた。

 西岸海洋性気候のルテティアには日本と同じで四季があり、年間の降水量も一定していて空気は程よく乾燥していた、街中を心地好い風が吹き抜けて行くために居住性はバツグンであり、ここまで雨が降ったりする事は珍しかったが、しかし。

「・・・・・」

(一人でいるのは、寂しいわね・・・!!!)

 そう感じて彼女は直ぐに、自身の魂の片割れたる、運命の伴侶の顔を思い浮かべて行くモノの、元々が日本人(ジャポネ)であった彼は、その長く伸びた特有の漆黒の癖っ毛と同色の、穏やかな光をその央芯中枢に湛え抱きたる黒曜石の瞳を持ち、浅黒い肌をした好青年であったのである。

 何処か幼さの残る精悍な顔立ちに落ち着いた温和な雰囲気を全身から醸し出していた彼はその名を“綾壁蒼太”と言い彼女、“メリアリア・サーラ・デ・カッシーニ”の幼馴染にして恋人であり、その上ー。

 お互いにお互いの全てへと向けて、至上の愛を誓い合った、唯一無二の掛け替えの無い夫その人だったのだ。

「・・・・・」

(今日は、いつ来てくれるのかな・・・!!!)

 “早く会いたい!!”と高鳴り疼く胸の奥底で、そう思い焦がれていたモノの彼等は今現在、国家呪術協会の運営している特殊学園法人“セラフィム”の学生寮に入寮させられてしまっており、しかもそこは男女で棟が別々な上に、原則として男性が女性の寮を、また逆に女性が男性の寮を訪問する事が厳禁とされていたから二人が逢瀬を満喫する為にはどちらかがどちらかの部屋へと秘密裏にその足を運ぶ以外に方法は無く、そして現状、その役割は蒼太が受け持っていた訳であった。

 “陰陽・影括りの術”と呼ばれている、自身を影と一体化させる事が出来る秘術を持ち合わせている蒼太はそれを駆使して女子学生寮の影に巧みに溶け込みつつもセキュリティを搔い潜っては中へと侵入、内側で待機しているメリアリアと合流すると同時に彼女の部屋へと向かう、と言う事を繰り返していたのであるモノのしかし、本音を言えば当初から、蒼太はこのやり方には反対していた。

 何故ならばこれをやってしまうと、何かあった際にメリアリアにまでその罪科が行ってしまうために、それを危惧した蒼太から“僕が君の部屋まで行くよ”とそう告げて彼女に、“だから思い留まるように”と提言までしていたのである。

 しかし。

「見つかる時は、二人一緒が良いの・・・っ!!!」

 メリアリアはそれを拒否したのであったが彼女は彼女で嫌だったのである、いざという時に蒼太にだけその責任を覆い被せるようなやり方はとてもでは無いが賛成出来るモノでは決して無くて、“幸せな時も苦しい時も二人で一緒にいたい、一緒がいい”と言うのがメリアリアの偽らざる意志であり、本心からなる願いであったのだ。

 だから。

「解ったよ、メリー。ずっと一緒にいようね・・・?」

「うんっ!!!一緒がいいのっ。ずっと一緒が・・・❤❤❤❤❤」

 そう応えて蒼太はそれ以来、ずっと今日に至るまでこのやり方を貫いて来た、と言う訳であったのであるが、しかし。

「でも、だけど・・・。あともう少しだね?メリー・・・」

「うん、そうなのっ。後もう少しなの・・・っ❤❤❤❤❤」

 二人は互いにそう語り合うモノの、事実としてその通りであった、何がか、と言われればそれは、“こんな窮屈な思いをするのも後(あと)もう少しの辛抱だ”、と言う意味のそれであったが二人はもうじき、晴れて正式なる“夫婦”となり、そしてそうなれば寮の規制に縛られる心配は完全に雲散霧消して無くなるのである。

 何故ならば通常、セラフィムは“原則として”卒業するまでは全員が、それぞれの学部の寮に入寮して生活をしなければならない決まりがあったが(一応、学生寮のみは“何らかの理由がある場合は”実家暮らしか寮生活かを選択する事が出来たモノの)ただ一つ、本人達が“親公認で”婚約をしていたり、結婚している場合は話は別であり、殊にセラフィムやセイレーンと言った組織は(もっともこれはセラフィム以外の、何処の国の魔法呪術協会も同様であったのだが)そう言った事柄に関しては比較的寛容だった、それはお互いがお互いに対して秘め抱きたる“純正なる思いの丈”や“確かなる絆の力”とでも言うべきモノが、事と次第によっては“奇跡”と呼ばれる現象をも誘発させる為であり、そしてその力がバカにならないことを知っていたからに他ならなかったが、それに加えてもう一つ、“霊力の宿っている家系の血筋”と言うモノを、いち早く後世に残すための必要処置でもあったのだ。

 それと言うのは秘密結社や呪術協会と言ったモノは何処も彼処もその大半が“霊能力は血潮にこそ宿る”と考えていたのであり、それはもはや一種の“ドグマ”(主要教義)とでも言って良い代物と化していたのであるモノの、例えば超能力者として生まれ落ちたる存在の央芯部分には当然、それに相応しい、高い霊力を持った魂が宿っている訳なのであって、そう言った魂達の“選びやすい血筋、血族”をこの世に留め続ける事こそが、彼等に与えられたる至上命題の一つであり、何をおいても成し遂げなければならない悲願そのものだったのである

 それ故に彼等は(決して表立って推奨はしなかったモノのそれでも)真摯なる愛情に根ざしている男女の可及的速やかなる婚姻、交わりと言うモノは大いに望む所であってその為、18歳を“婚姻可能年齢”として明記したり、また寮の規則に一部抜け穴を用意するなどして密かに、その子孫の存続、発展を後押ししていた、と言う次第であったのだ。

 蒼太とメリアリアはその事を言っていたのであって、現に二人は話し合った結果としては、婚姻を結んだ後は寮を出て、今もルテティアの街の一角に残されている“蒼太の旧宅”へと住まいを変えて、そこで誰にも何にも遠慮も無く、また心に思う憚りも無く、朝に夕にただただひたすら、その“霊性なる根源”の、底の底の底の底、そのまた更に奥深い領域より沸き上がりたる比類無き真愛と真心の輝きの、その凄絶なる迸りのままにどこまでもどこまでも交わり続けて一つになり尽くすつもりであった。

 己と言う己の全てを解放し尽くしては彼と抱き合い、重なり続けて何時までも何時までも繋がり合っていたい、共にあり続けていたいと、自身の内側に宿り在りたる“絶対的無限性”の、その大元部分の央芯中枢からつとにそう希(こいねが)っていたのである。

「・・・・・」

(そう言えば・・・)

 メリアリアは雨の降り頻る、ルテティアの夜空を眺めつつも遙かな過去に思いを馳せた、“あの時もこんな風に雨が降っていたっけ”と。

(蒼太とお家で隠れんぼをして遊んでいたら、急に大事なハイ・ウィお客様ザードの方々がお見えになられて。それでお父さん達から“外で遊んでおいで?”って言われたんだわ。蒼太ってばいつもお風呂の浴槽(バスタブ)の中に隠れるんだもん、本当に見付けやすかったな・・・!!!)

 心の中でそう呟くとクスりと笑いつつ、メリアリアはあの日へと意識を飛ばすがその日は朝から晴れており、雲一つない青空が頭上にどこまでも広がっていた、春の土曜日の休日でもあった、まだ少女であった彼女にとってはだから、ただでさえいやが上にも気持ちの盛り上がるシチュエーションが揃っていたのだ。

 そこへ持ってきて。

「♪♪♪、♪♪♪~っ!!!」

「メリアリア。そんなに慌てなくたって、蒼太はまだ来たりしないよ?来るのは10時過ぎになる筈だ・・・」

「まだ8時半なんだよ?蒼太だって少し前に起きたばかりだろうし、支度だってあるんだろうからこんなに早くには来なさんさね」

「あら?」

 と父である“ダーヴィデ・ラザロ・デ・カッシーニ”とその妻にして自身の母である“ベアトリーチェ・ノエミ・デ・カッシーニ”の言葉にメリアリアはパッチリと開かれた、その日の澄み渡った空のように蒼碧に明るく輝く天空の瞳をクルリと回し、ハチミツ色のツインテールの髪の毛を可憐に揺らしつつも両親へと相対した。

「だってパパ、ママッ。今日は蒼太が、私の大事なボーイフレンドがやって来る日なのよ?パパもママも言ってたじゃない、“お客様はちゃんと準備をしてお出迎えしてあげないと”って!!」

 そう告げては鼻歌交じりに自身の髪の毛を整えるとリボンを付けて身嗜みは完璧、顔も洗って歯磨きも済ませ、挙げ句に自身の部屋のレイアウト変更やら清掃等を率先して行って準備と言うモノに余念が無かった。

 メリアリアは朝から上機嫌だった、もう直ぐ自分の大好きな幼馴染の少年がやって来る、あの温和で優しくて、それでもとっても勇敢なその姿を見せてくれるのだと思うと、声を聞かせてくれるのだと思うと嬉しくて嬉しくて堪らなくなり、その小さな胸は高鳴って鼓動は早く脈を打つ。

「ねぇ、蒼太ったらいつやって来てくれるのかしら、今日はどんな出で立ちなのかしら。やっぱりタキシード?それとも燕尾服?スーツかしらっ!!何を着ても似合っちゃうんだからっ。もぅ~っ!!」

「・・・来るって言ったってお前ね?蒼太は遊ぶ為だけに来る訳じゃあ無いんだよ?」

「今日は楓達からは蒼太の面倒を、頼まれているんだからね・・・。“家でも勉強はさせてくれ”っ言われているし、“少し動かさせてくれ”とも言付かっているからねぇ・・・!!」

「あらっ!?」

 とそれを聞いたメリアリアはまた振り向いて両親達へと告げた、“それでも良いじゃない?”と明るい笑顔でそう言って。

「少なくとも、ここには居てくれるのでしょう?蒼太の姿が一目でも見られるのならば、私はそれで大満足だわ。後は二人で勉強でもなんでもするもの!!」

 そう告げるとメリアリアは上階にある、自分の部屋へと籠もってしまい、それっきり出て来なくなったがしかし、そこからは楽しそうな歌声や、パタパタと床を歩き回る音が絶え間なく階下まで響き渡って来る。

「全く以て、やれやれだ・・・」

「蒼太に対する態度とそれ以外とじゃ、楽しみにしている度合いそのものが明らかに違うからねぇ、あの子は・・・!!」

 とダーヴィデ夫妻は思わずそう言い合って溜息を付くモノの、事実としてこの時、8歳と少しになったばかりの愛娘の関心事は、彼女より二つも年下である幼馴染の少年にあったのであって、世間から見れば仲の良い姉弟(きょうだい)のそれにとられかねないこの二人の関係はしかし、ここ数日の間に劇的に変化していたのである。

「しかし急な出張とは、清十郎も大変だな。これで一体、何度目になるのだろうか、役目が役目だからどうしようもないが・・・」

「楓も同伴するんだってさ。それで2、3日の間、息子を預かってくれって言うんだけれど。まあ家は良いのさ、見ての通りにただっ広いし、蒼太は手の掛からない子だしねぇ・・・。それに何よりかにより、メリアリアと仲良くしてくれるからね!!!」

 多少、困惑気味にそう告げるダーヴィデに対してベアトリーチェは明るくそう言い放つが、実際には彼女の言葉の通りで蒼太はメリアリアとは仲が良かった、もっともこの当時は恋人同士のそれと言うよりも、まだまだ拙(つたな)い子供同士の交流に過ぎないモノであったが、それでも二人にとっては充分に心暖まる、それでいて満たされる瞬間だったのである。

 ちなみに。

 名前に尊称が付いている事を見れば、“ガリア帝国”を始めとして“エウロペ連邦文化圏”に住居している人間の誰もが“この人達は貴族なんだ!!”と気が付く筈であるモノの、その推測の通りであり彼等“カッシーニ家(ハーズィ)”は元々、ガリアの隣国であるエトルリア王国の王族一家に仕え続ける“宮廷魔術師”を務め続けた家柄であって代々、その高い法力や霊格を活かした“神聖術”や“古代魔法”等を用いては彼等を影に日向に守り続けて来たのであるが、しかしちょうどメリアリアの父親である“ダーヴィデ”の時代となった折りに、王族間で内ゲバ権力闘争が勃発してしまい、それを止めようとしたカッシーニ家にも否応なしにその荒波が押し寄せて行く事態となった。

 その為にある日、一族に伝わりし秘術である“星座神霊術”を駆使して自身の身の上を占って見たところ、“このままでは一族存亡の危機となる”との卦が出たために隣国である“ガリア帝国”に潜伏していた知己の勧めもあって、急遽故国を後にして一族郎党引き連れてこの地へと退避して来たのであった(エトルリアはその後、権力闘争の煽りを受けて著しく弱体化した)。

 一応、その世界では名も知られており地位、名誉、そして財産もそれなりにあった彼等は引き続きガリアでも重宝されて以降、聖人“アルヴィン・ノア”率いる王宮直属の大賢者団(ハイ・ウィザード)の一員となって活躍、今に至る事となっていたのであるモノの、それでも当然、何もかも全てが一からのスタートとなる彼等の生活はそれなりに大変なモノがあり、先ずはガリアでの言葉遣いや一般常識の調査、修得から始まって、ご近所様との淀みない交流、そして付近の国民達各家庭や市井の人々に、彼等に慣れ親しんでもらう事等熟(こな)して行かなければならない事は山のようにあったのである。

 それだけでは無い、自分達がそれを為し終えたとしてもまだ安心が出来なかった、彼等夫妻には一人娘がいたからであり、彼女の動向や状況が、殊の外気に掛かって仕方が無かったのであるモノの、しかし。

「パパッ、今日は幼年部でお砂場遊びしたのっ!!」

「ジャングルジムを使って、追いかけっこをしたんだ!!」

「紙粘土を使って、お人形を作ったのよ!?」

 “セラフィム”の幼年部に通い始めていた彼女はそんな両親からの心配を他所に、明るく真っ直ぐに育って行った。

 特に。

「うわああぁぁぁ~んっ!!!」

「メリアリアがぶった!!!」

 彼女は恐ろしい程に手の早い子で卑怯な苛めや横暴な暴力、理不尽な強請集(ゆすりたか)り等を絶対に許さずにおり、またそう言ったモノに対しては決して屈する事をしない、向こうっ気の極めて強い快活明朗なるお転婆娘だったのである。

「あの子は本当に、誰に似たんだかねぇ・・・!!」

「・・・間違いなく、お前さんだと思うけどね」

「なんだって!?」

「い、いいや。別に何でも・・・!!」

 幼年部の教諭達からその評判を聞かされたダーヴィデ達は感心すると同時に安心し、また呆れてもいたのであるが、特に男の子に対する毅然とした態度には女子達からは人気があったらしく(反対に男子からは恐れられて敬遠されていたが)、友人もそれなりに出来た事が二人を安堵させたのである。

 それに加えて。

「凄いねメリアリアッ。また90点代じゃん!!!」

「羨ましいな、正直に言って・・・!!!」

 その魔法の腕前も、クラスメイトや師事する者達からも一目置かれる程であったが彼女はもう、6歳にも満たない内から中級のフィアマ火炎ベローシェ閃光の呪文を熟(こな)す事が出来ていたのであり、またその身体能力についても目を見張るモノがあって、ナイフやアーチェリー、特に聖鞭を用いての体術、体捌きには誰もが驚愕する程の完成度を誇っていたのだ。

 そんなメリアリアの噂はだから、年長組にあがる頃には同学年中に知れ渡る事となっていた、黄金のように光り輝くツインテールの金髪に、明るく澄み渡っている青空色の瞳、まるで乳蜜を垂らしたかのように真っ白くて滑らかな乳白色の肌に左右対称(シンメトリー)で気の強そうな、それでいて可愛らしいお人形さんのような顔立ち。

 “メッチャ可愛くて恐い子がいる”と、その学年では評判となっており、男子はそれでも厭い慄き、女子からは羨望の眼差しを以てその迎え入れられる事となっていたのだが、そんな彼女だったから最初、新しく入った新入生の歓迎を兼ねていた“幼年部合同演習”の際にはクラスメイトの男子達は皆、その相手方となった少年に、いっそ哀れみと嘲笑の眼差しを送ったモノだったのだ。

「あいつ、バカじゃねーの?」

「終わったな・・・」

「何分で泣くか、だよな?」

 そんな周囲の囃し立てを他所に、しかし少年は中々泣かなかった、それどころか。

「いーい?蒼太。本当に大切なモノって言うのはね?人の思いなの、気持ちなのよ?勉強も魔法も皆そうなの、何かを為したいって言う強い向上心が無いのなら、幾ら授業を受けたって、何にもならないんだから!!!」

「へぇー、メリアリアはそんな事知っているんだ、凄い物知りなんだね!!!でも僕もそう思うよ、“大切なモノは目に見えないんだ”って、お父さんもお母さんも言っていたもの・・・!!」

「こらっ。年上にはちゃんと“お姉さん”って付けなさい!!でもありがとう、私の話を聞いてくれて。解ってくれて嬉しいわ、みんな私の事バカにして、ちっとも話なんて聞いてくれないんだからっ!!!」

「そんな事ないよ!!!」

 するとそれを聞いた蒼太が応えた。

「メリーの話、とっても為になるもの、聞いていて、確かにそうだって解るよ、本当に頷ける話しだもん!!」

「メリーッて・・・!!メリーお姉ちゃんって付けなさい!!!」

「う、う~ん。メリーお姉ちゃん・・・!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 “やっぱりメリーでいい?”と告げてはなにやら複雑そうな表情を見せる少年に対してメリアリアは“どうしてそんなに微妙そうな顔をするのよ!!?”と呆れた様に言いつつも続けて“仕方が無いわね!!!”とそう告げては彼が、即ち蒼太が自分の事を愛称で呼ぶことを了承した、つまりは初めて男の子に自分から折れたのだ。

「その代わり、あなたの事も“蒼太”で良い?」

「うん、いいよ。よろしくね、メリーッ!!!」

「はいはい、よろしくね。綾壁蒼太クンッ!!!」

 そう言って二人は立ち上がると与えられた課題である“ヒヤシンスの受粉草”のエネルギー相互干渉の計測を果たすために揃って花壇へと向かって歩き出そうとするモノの、その出発する寸前の、起立の場面で蒼太は自然とメリアリアに向かって手を差し出していた、自分の方が先に姿勢を正して健脚立ちしていたからであるモノの、その手をー。

「あ、ありがとう・・・」

 そう言ってメリアリアは、少しドキマギしつつも握り返すと自身も立ち上がっては片手でスカートの淵に付いてしまった砂利や土埃をパンパンと払い除けるが、その様子が面白くて蒼太は興味深そうに覗いていた。

「何よ?スカートに興味があるわけ?エッチ!!!」

「ち、違うよっ。メリーがスカートを叩く様子が面白かったんだよ、布団叩きみたいで!!!」

「スカートを叩く様子が面白いって・・・。なんか変な子ね、あなた・・・」

 そう告げるとメリアリアは不思議そうな表情で蒼太の顔をマジマジと覗き込むがその瞬間、メリアリアの青空色の瞳と蒼太の黒曜石のそれとが直線上でぶつかり合い、重なり合い、そしてお互いの中へと吸収され尽くして行くモノの、その時二人は刹那の間だったとは言えども明確にお互いを意識した、思わず“ドキッ”と来てしまったのでありそれと同時にメリアリアは蒼太に、蒼太はメリアリアにハッキリとした男の子らしさ、女の子らしさを感じて何だか気恥ずかしくなって来てしまったのだ。

 しかし。

 メリアリアの場合は、それだけでは無かった、彼女はこの時何の気なしに、しかしはっきりと直感して確信したのである、“ああ、私は大きくなったらこの人と結婚するんだ”と。

「・・・・・っっっ!!!!?」

「・・・・・っっっ!!!!!」

(ビ、ビックリした、メリーいきなり僕の事を見つめて来るんだもん!!!)

(い、今のなに?って言うか結婚?私と蒼太が?でもそっか、そうなんだ・・・・・!!!!!)

 同じ様でいてしかし、全く異なる驚愕の思いを相手に向けて抱きつつも、しかし無言で握り締め合っている互いの手を、そのどちらも振り解こうとはしなかった、物心付いた時から清十郎によって厳しい鍛錬を施されていた蒼太の体はこの時既に、他の子供達以上にしっかりとした筋肉が発達して付いて来ており、見た目以上に力も強くて頑健だったがメリアリアもメリアリアでそれを苦痛に感じる事は無く、むしろ自分以上に強い握力、底力を秘めている子に驚くと同時に感心してしまい、尚且つ蒼太と言う少年自体に多大なる刮目を抱く契機となっていったのである。

 そうだ、この時二人はちょっとずつではあったけれども自分が自分であるためにと、他の誰でも無い自分自身へと向けて解き放たれている認識意欲感覚である通称“自意識”に目覚め始めて来たのであり、そしてその結果としてまだ拙(つたな)いそれではあったけれども“性”を自覚すると同時にお互いがお互いに対して秘め抱きたる“相手に対する本当の気持ち”、その一端に触れたのであった。

 そして更に、もう一つ。

「・・・・・」

「・・・・・」

 メリアリアに至っては、自分の魂の中に宿っている、蒼太との間に織り成して来たこれまでの愛の記憶の数々を、その純正にして確かなる、暖かな思いの絆の迸りをハッキリと顕現させてはそれをしっかりと受け止めて感じ取り、自身の言葉に直すと同時にその心に落とし込む事が出来た訳だったのであるモノの、そんなメリアリアは蒼太が無言で歩き出すと自身もまた歩調を合わせ、隣にピッタリと寄り添うようにしながら黙って無言で付いて来た、二人は照れ臭いようなむず痒いような、でもとても嬉しくて暖かな感覚に満たされつつも花壇への道を歩んで行く。

 一歩一歩が途轍もなく長く感じて、でも短くってアッという間に目的のヒヤシンスの咲いている、中庭の花壇にまで辿り着いたが、さて。

「どこにあるんだっけ?“ヒヤシンスの受粉草”・・・」

「今の季節は、どんなお花もみんな受粉はしているモノよ?だから普通にヒヤシンスを探せば、大丈夫なんじゃ無いかしら!!!」

 と困っている蒼太に向けて、年上らしくメリアリアが的確なアドバイスを送るモノの確かに彼女の言う通りで3月~5月と言うのはどの草花も一斉に咲き誇っては花粉を飛ばしたり、虫に託したりしてあれやこれやの手段を駆使して子孫を残そうとするために皆、受粉していて当たり前であり、むしろしていないモノを探す方が難しいミッションだったのである。

「ヒヤシンスは・・・あった!!」

「綺麗に、咲いてるね!!」

 蒼太の言葉にメリアリアが応じるモノの、そこには青紫色、ピンク、白のヒヤシンスの花々が咲き乱れており、近くにはミツバチが飛んでいた、彼方此方(あちらこちら)からは花の蜜の匂いであろう、甘くて濃密なるアロマが立ちこめており、それが鼻先を擽ると何とも言えない芳醇なる薫香が二人を心豊かな気持ちにさせた。

「ねぇメリー、知ってる?」

「なぁに?蒼太、教えなさいよ!!!」

「お花さんってね。“与える愛”しか知らないんだって、“もらう事”を知らないんだって!!!」

「へえぇぇぇ、そうなの?どう言う事なの?」

「えっ?うーんとね、確か“ギブ&テイク”じゃなくて、“ギブ&ギブ”なんだって、無償の愛を、提供し続けているんだよって、お母さんが言ってた・・・」

「ふーん、“無償の愛”か・・・!!!」

 “素敵な響きね”とメリアリアが笑顔で言った、蒼太は嬉しそうに“そうでしょ”と頷くモノの彼はメリアリアならばその言葉を、否定しないような気がしたのである。

「良いわよね?無償の愛、見返りを決して求めない純正なる愛。家もお母さんに言われたわ、“お前もそう言う子におなり”って。あれはそう言う意味だったのね!!!」

 とメリアリアは頷くと、蒼太に“蒼太はどんな人になりたいの?”と尋ねて来たから彼は素直にこう答えた、“お父さんみたいで立派な強い人になりたいんだ”とそう言って。

「あなたのお父さんって、そんなに凄い人なのかしら?」

「凄いよ?クマだろうとトラだろうと一撃でやっつけちゃうんだ!!後ね?この前お酒飲んで運転している人がいたから、危なかったから剣でね、そのトラックを切ったんだよ?それでお婆さんを守ったの!!!」

「そう、なんだ・・・」

 とそれを聞いた時には思わずこの才媛も、目をパチクリとさせてしまっていた、正直に言ってもとても信じられる話では決して無かった、いきなりクマだのトラだのを一撃の元に退治した挙げ句に、その上“飲酒運転”をしているトラックを剣で一刀両断するなんて!!!

 “幾らなんでもそれはないだろう”とメリアリアは思ったモノの、さりとてこの少年が嘘を付いているようには見えずにその結果“そんな事もあるんだろうな”と自分自身を納得させるに至るが仮にも、“宮廷呪術師”を務めあげて来た彼女の実家においては、そう言った不思議な話の類いはごまんと報告されていたから“あってもおかしくないだろうな”とは思ったモノの、それにしても。

「あなたのお父さん、本当に強い人なのね?」

「うん。お父さん、むっちゃ強いよ?それでメッチャおっかないんだ、この前なんか問題を間違えただけでげんこつもらったもん!!!」

「あはははっ。そうなんだ、蒼太も怒られるのね?」

「うん、もう僕んち本当に凄いよ?本当に生きていくのが嫌になるレベルで酷いんだから!!!」

「えええっ!!?そ、そんなに酷いの?蒼太の家って・・・!!!」

 表情を暗くしたまま述べられる蒼太の言葉に、メリアリアが思わず神妙そうな面持ちで聞き耳を立てるがしかし、少年の身体や顔には別段、傷や打撲の類いは見えずにそれほど厳しい環境に置かれている様には見えないモノの、さて。

「そ、そうなんだ。結構、凄絶な状況なのね、あなたのお家って・・・!!!」

「もう戦場だよ、毎日が戦いの中にいるみたい!!!」

「・・・・・っ!!!!!」

 とそれを聞いたメリアリアはまたいたたまれなくなると同時に、“本当だったら許せない!!!”と言った怒りと悲しみの色をその顔へと浮かべるモノの、まさか自分が親しくなった子が、それも運命の相手となるべき大切な人が親から日常的な暴力を振るわれているなんて、とても信じられる事象等では無かったモノの、さりとて彼が嘘を付いている様には見えずに彼女からすればとてもの事、放っておける案件等では決して無かった、一体どこの世界に我が子に毎日の日課のようなサバイバルを強いる性格の親がいるのであろうか。

「ま、まあ家も。怒られる時は怒られるし、そりゃそん時は恐いけれども・・・っ!!!それにしたって蒼太のお家は酷すぎるね、私、言ってあげよっか!!?」

「い、いいよ。メリーッ!!そんな事したら、君にまで迷惑掛けちゃうだろ!!?」

「あらっ!!?」

 と蒼太から告げられた言葉にメリアリアは腰に手を当てて彼に迫った、“人のことを心配している場合なの!?”とそう言って。

「あなた、毎日そんな辛い思いをしているのでしょう!?だったら親に対してと言えども、ガツンと言わなくちゃダメよ、それじゃ何にも伝わらないわ。それにいくら親だからって言ったって、じゃあ“子供に何をしても良い”って訳じゃ、無いんだからねっ!!?」

「・・・・・」

 蒼太はそれを聞いた時に改めて思った、メリアリアは心底優しい人なんだと。

 こんなにも人の話を真剣に聞いてくれて、真摯に寄り添ってくれた人に蒼太はまだ、出会った事が無かったのである。

「・・・僕、メリーの家の子供になりたい!!!」

「あらっ!!?」

 とその言葉を聞いたメリアリアは今度は意外そうな表情を見せて、それでも暫くの間は何事かを思案しながら蒼太に告げた。

「でも家だって恐いわよ?私だって怒られる時は怒られるし、それは確かに男の子じゃないから殴られたりって言うのは無いけれど。でも大変だよ?どこのお家も同じよ!!!」

「う~ん、そうかぁ・・・っ!!!」

 それを聞いた蒼太は思わず唸ってしまった、これだけ物知りで頭の良いメリアリアでさえも怒られるのである、それならば確かに自分などがメリアリアの家の子になったとしたって同じ事かも知れない。

「僕、僕・・・っ!!!」

「頑張って!?蒼太!!!」

 やや落ち込み気味の蒼太の事を、メリアリアはそう言って精一杯に励ました。

「今はあれかも知れないけれども・・・。あなただっていつかきっと強くなるわ、それこそ私なんかじゃ足下にも及ばない位にももっと、ずっと強くなれるもの。私はそう信じてるわ・・・」

「でも、僕・・・」

「・・・決めたわ!!!」

 とメリアリアはそれでも自信なさげに項垂れてしまう蒼太に対して颯爽とこう告げた、“もし将来、私より強くなれたら結婚してあげる!!!”と。

「ほ、本当にっ!?」

「うん、本当に!!!」

「・・・後になって、嘘だった、とか言わない?」

「うん。絶対に言わないよ、そんな事!!!」

「本当に、嘘つかない!!?」

「うん、ただし約束して?」

「・・・・・?」

 蒼太が嬉しそうなしかし、キョトンとした顔を見せつつもメリアリアの次の言葉を待っているとー。

「まず私より強くなること、あと格好良くなる事ね、身形も清潔でいる事、ちゃんと嘘を付いたりしない、誠実な人である事、女の子を養う為の甲斐性を持っている事、何があっても私を食べさせてくれる、資格を持っている事、突き詰めて言っちゃえばいい男になる事、これが絶対条件!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 “良く解んない”と蒼太は正直な思いを口にした、4歳になったばかりの彼にはちょっと難しすぎる内容だったのであるモノのでも取り敢えず、“僕、頑張る!!!”と蒼太は言った。

「その意気よ!!!」

 とメリアリアは告げたのだが、この少年が嬉しそうにしていると、なんだか自分も楽しい気持ちになって来る。

「約束してね?蒼太、ちゃんと待っててあげるから!!!」

「うん、約束するよ。僕、凄い立派な人になる!!!そしたら本当に結婚してくれるんでしょ?メリーッ!!?」

「ちゃんとあなたがいい男になってくれたらね!!!」

 二人はそう言い合うと、課題であった“ヒヤシンスの受粉草”のエネルギー干渉波を調べ上げて、それが持っている特徴や、他の植物に与える影響力等に付いて協力して調査を行って行った。

 それを手にしたバインダーに綴じられているプリント用紙にレポートすると、合同演習の授業中内にはもう連絡先を交換して二人はその日はお互いのクラスへとそれぞれに帰って行ったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
 今回、蒼太君とメリアリアちゃんはこの時に、お互いのお互いに対するちょっとした初恋を経験しています(“レベル1”と言ったそれですが)、この作中で出て来ますけれども、自分の中の気持ちに自分で気が付く場面があったかと思います(本当に、ちょっとしたモノだったんですけど、それでもハッキリと蒼太君の事を意識する場面がありました)←この時は、本当にスラスラと書けたんです、筆が乗ったんですね、それはつまり、“キャラが生きている”と言う事です。

 そして二人は結婚の約束を交わしますがあれは忘れられてしまったんでしょうか?いいえ、二人ともしっかりと覚えております(ただお互いに“忘れちゃったかな?”と思っているんです、後で本文の中に出て来ます←婚約する場面で“覚えててくれたんだ!!”と言ってメリアリアちゃんが感動する場面を頭にイメージしつつ書かせていただきました)←それだけじゃありません、どうしてあの時、あの場所でメリアリアちゃんが蒼太君に“結婚してあげる”と言ったのか、と言う事も、追々説明が為されて行くかと存じます。

                    敬具。

              ハイパーキャノン。
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