メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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ガリア帝国編

激突

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「ごきげんよう、叔父様!!」

「や、やあ。アウロラ。元気そうで何よりだね・・・!!」

 “どうしたんだい?今日は・・・!!”とインターホン越しにヴィクトーは努めて平静を装いながらもこの急な来訪者へと応対をするモノの、内心は何時ぞやのようにドキドキしっ放しであった、先のメルコットの言葉もあって、余り日を明けずに再訪を果たした、この可愛い姪っ子に対してここに来て初めてヴィクトーは“もしや・・・”と疑惑の念を向け始めるがこの時、彼の頭の中にあったのは、“やはり兄に事が露見したのだろうか”と言う警戒心と、“止めてくれ、ここまで来て・・・!!”と言う現実拒否的思考である。

 “家には入れるな”と言うアルフォンソ以下、“カインの子供達”の面々からキツく言い含められていた事もあり正面の門さえもまだ、開け放ってはいなかったのであるモノの、聞けばアウロラは内々で、父であり現当主でもあるエリオットからヴィクトー宛に大切な言伝を預かって来ている、と言うのだ。

「・・・・・」

(普段であれば、絶対に無下にする事は出来んが・・・。今は事態が事態だからな、用心するにしくはない・・・)

 ヴィクトーはそう思い直すと改めてアウロラに対し、“今日は忙しい”旨を申し渡した、“とてもお構いなどは出来ないから”と。

「そう言う訳なのでね、悪いんだが・・・」

「困りましたわね、父からは是非にと言付かって来ておりましたのに・・・。これでは叱られてしまいますわ」

「むうぅぅぅ・・・。そ、そうは言われてもだな!!」

「それでは勝手に入らせていただきます!!!」

「・・・?」

 そう言って一方的に通信を切るとー。

「メリアリアさん!!」

「任せて!!」

 彼女の横、インターホンのカメラの死角に身を潜めていたメリアリア以下のセイレーンの者達に対して頷いて合図を送るが、するとそれに呼応するようにして前に出て来たメリアリアが“光炎魔法”を発動させては鋼鉄製の頑丈な門扉を跡形も無く溶かし尽くして行く。

「うおおおっ!!?」

「すげーっ!!」

「これがメリアリアさんの・・・!!」

「し、しぃーっ。静かにしろ、君達!!」

 と、初めて光炎魔法を間近で見た親衛隊の女子の面々は口々にそう叫ぶがそれを蒼太が慌てて静止させるが、如何に大通りから一本、奥へと入った場所に建っているとは言えども今は夕刻であり人通りもそれなりには多い時間帯である、そんな状況下で人目も憚らずに強行突入をしでかさざるを得ないと言うのにこれ以上、注目を浴びるような真似は何があっても避けたかった。

「・・・行こう、もう時間がない!!」

「ウィッス!!」

「頑張ります!!」

「へぇ~、これが名だたるフォンティーヌの・・・!!」

 メリアリアとアウロラに脇を固められつつも、親衛隊以下6名を率いて小走りに颯爽と門(の残骸)を後にする蒼太であったが不安は全く尽きなかった、自分勿論、メリアリア達にも流石に油断と言うものは感じられないモノのしかし、親衛隊の面々はどうにも初々しさと言うか、他人事感が抜けないのである、もしかしてこの任務、自分や女王位達がいるので楽勝だとでも思っているのでは無いだろうか。

(地に足が着いていないな、本当に大丈夫か?この子達は・・・!!)

 些か不服そうな、そして不安そうな顔をしながらメリアリアとアウロラの方を見やると二人とも同じ意見だったらしく、ホトホト困り果てたような、それでいてある種の不信感を内包させた眼差しを彼女達にチラチラと向けてはいたモノの、もはや事は動き出してしまっていたのであり、後戻り等とても出来ない。

 何より彼等の占決では、外に残して来た連中ではとてもの事頼りにならない、と言うかなり厳しめな結果が出ていたのであり、そう言うこともあっての人選であったから多少、納得の行かない部分があったとしても、それでもどうしてもこのメンバーで作戦を、遂行するしか他、どうにもならなかったのである。

(だけど本当に、戦士としての心構えがあるのかしら、この子達は!?)

(実力的には、そこそこはあるみたいだけど・・・。はてさてどんなものなのやら・・・!!!)

 そんな事を考えつつも蒼太達先頭組がそれでも周囲を油断無く探りながら、屋敷へと続く一本道を直走っていた、その時だ。

 正面に巨大な気配を感じて“んんっ!!?”と思わず足が止まるが、みると屋敷の玄関を開け放ち、そこからは先程の、色とりどりのパーカーを着こなしている集団がゆっくりとしかし、重々しい足取りでこちらへと歩を進めて来るのが見て取れた。

「・・・・・っ!!?」

「へえぇ・・・っ!!」

「この人達は・・・っ!!」

「“キング”が1、“クイーン”が2、後は“ボーン”って言う所かしら・・・!!」

「・・・・・」

「ねぇ、ちょっと聞いた?私達“ボーン”だって!!」

「チェスの駒に例えている訳ね!!」

「良い度胸してんじゃん!!」

(極めて正確な、論評だね・・・)

 ウルバンニの言葉にいきり立つ親衛隊の面々に対して蒼太やメリアリア達はあくまでも冷静に判断を下していた、なるほど“キング1”に“クイーン2”とは言い得て妙だと思わず納得してしまうモノの、しかし。

(とすると向こうはあれか、“キング1”に“クイーンが3”・・・!!)

(“ボーン”と言えども六人がかりで戦えば、クイーンの隙を突けそうな気もするけれども・・・!!)

 そう考えるが一方でそれは単なる理想論、机上の計算でしか無いこともまた、彼等は良く解っていた、何故ならばここで全員で戦ったりしていれば、間違いなくその隙を突いてヴィクトーが逃走してしまうであろう上に、そしてそうなってしまえば“ガイアの青石”の行方もまた、解らなくなってしまう、と言うモノであったからである。

(むしろ逆だな、彼等は無視して先ずは青石とヴィクトー氏の身柄を確保しなければならないだろう!!)

(問題はコイツらが、それを易々とやらせてくれる存在では無いって事なんだけど・・・。一体どうやってまこうかしら・・・?)

 そんな事を二人が考えているとー。

 彼等の内の一人、一番背の高い人間が進み出て来てフードを取り、目出し帽を外しては突入組の前へと立ちはだかるモノの、その全身からは抑えてはいて猛烈な気迫が立ち上っており、それは蒼太にハッキリとある事を確信させた、即ち。

 “こいつはこの世界におけるリゲルなのだ”と言う事を。

「“女王位”とその“導き手”であると見受ける。私は“カインの子供達”の長男、“聖痕のアルフォンソ”だ、以後お見知りおき願おう」

「・・・・・」

 それに対して身構えると同時に一気に飛び掛かろうとするメリアリアとアウロラとを手でサッと制すると蒼太は自らも前に出て、アルフォンソに相対する。

「ご丁寧に痛み入る。僕は蒼太、“風の導き手の蒼太”だ!!」

「ほほぅ・・・っ!!」

 その言葉に一瞬、アルフォンソは嬉しそうな顔をする、それと同時に全身の気が膨れ上がり、気分が高揚している事がハッキリと見て取れた。

「面白い、風使いを相手にするのは随分と久し振りだ。私も“風”を扱う剣術の奥義(エッセンシャル)を学んだ者の一人だ、是非お手合わせ願おう!!」

 そう言うが早いか。

 アルフォンソは握り拳を作ったままの右腕を蒼太へ向けて差し出すように掲げると更に、人差し指と中指とを突き立てて何やら呪いの言葉を口にする、すると。

 何の前触れも無く一陣の強烈な旋風(つむじかぜ)が巻き起こっては蒼太の姿を包み込み、舞い上がった砂埃で周囲からは彼の事が完全に見えなくなってしまうモノの、しかし。

「・・・・・っ!!?」

(ほほぅ・・・っ!!!)

 それは程なく収まったかと思うとそこには先程までと変わらぬ姿の蒼太が平然と佇んでいた、彼自身の体にも、身に纏っている衣服にも別段、何の異変も無くて、本当にただ、旋風に吹きさらされていた、と言った塩梅であるが、しかし。

「見事だな、蒼太とやら。“並の風使い”では、今のこの一撃で死んでいる!!!」

「・・・・・」

「ええ・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

(どういう・・・っ!!?)

 その言葉に蒼太はそれでも平然とした佇まいを崩さずにおり、ただメリアリアとアウロラは一瞬、ギョッとした顔をするモノの、今のはアルフォンソの得意技である“クロスハリケーン・スレイブ”と言い旋風(つむじかぜ)に見せた真空の刃で敵を十文字の形にズダズダに切り裂いて行くと言う、どう控え目にみてもえげつない事この上ない魔法であって、それを蒼太は一瞬で見破った挙げ句に解除して見せたのである、だからこそ。

 アルフォンソは賞賛して見せたのであり、改めて“目の前の敵の手強さ”と言うモノを、身を以て思い知った訳であるモノの、一方で。

 蒼太はそんな彼の事を、あくまでも冷めた眼差しで見つめていた、確かにリゲルクラスの敵ではあるし、自分から名乗りを挙げるなど正々堂々とした所作等も彼に、通じるところはあるモノの、しかし。

(油断は禁物だぞ?蒼太・・・!!)

 彼は自らに言い聞かせるモノの、それというのも蒼太自身はまだ、アルフォンソの正体を掴み切れてはいなかった訳であり、如何にリゲルに似ているとは言っても彼そのものでは無い以上、その性質や戦い方も、根本の所でどうなっているのかは保証の限りでは決して無かった。

 現に。

 自らの得意技を破られた、と言うのにも関わらずにアルフォンソは平然としていて動揺する素振りは全く以てみられない上に、まだ何か力を隠しているかのような余裕すらも見て取れる、絶対に油断等してはならない相手であると蒼太は己の心に断じた。

「蒼太、と言ったな?次は貴殿の得意技を見てやろう、何なりと放って来るがいい・・・」

「・・・・・」

(時間を稼ぐのが、目的なのか?)

 “それならば”と蒼太は思うがこんな所でこんなヤツの相手になってやる必要等は全く無い、こちらは急いで“ガイアの青石”を取り返さなければならないのである、無駄な戦闘などは控えるにしくは無かった。

 だからー。

「アルフォンソ、と言ったな?」

「んん・・・?」

 蒼太は言った、「お前の“クロスハリケーン・スレイブ”と言うのは一見、乱雑にただ、風の刃で相手を十字形に切り裂く魔法のように見えて、その実そうでは無い」と。

「・・・・・」

「あれは“因果律”と“真空呪文”とを組み合わせて効果範囲下にある相手の任意の場所に、任意の威力の真空の刃を瞬時に生成、展開させて相手の意図した部分だけを、それも“確実に”切り裂く事が出来る魔法だ。つまりは“相手”と言う名の現象に直接的に作用するように作られている、そうでは無いのか?」

「・・・だとしたなら何だというのだ?」

「あんまり“風”や“因果率”と言ったモノを弄ぶのは良くないな。その報いはいずれお前自身にハッキリとした傷となって跳ね返って行く事になるぞ・・・?例えばその、背中に着いている特大の十字傷のようにな・・・」

「・・・・・っ!!!」

 蒼太に指摘を受けるまで、アルフォンソは気が付かなかった、言われて初めて自身の背中が少しだけピリピリと痛むような、何かが切れているような感覚を認識していたと言う事を自覚したのである。

「・・・・・っ!!!!?」

「うそ・・・っ!!?」

「アルフォンソ・・・!!!」

「・・・・・」

 アルフォンソの様子がおかしい事に気が付いた三人が口々に、もしくは内心で彼に心配を寄せるがこの時、初めて彼は動揺を見せたのであり、それは即ち、自らの呪(まじな)いが打ち破られた事を悟った、何よりの証と言えた。

「安心しなよ、傷自体は全く深くもなんとも無い、放っておいても数日間の内には完治してしまう程度のレベルでしか無いよ。・・・ただし」

 “あんまりむやみにそう言った呪法を使わない方が、良いんじゃないのかな”と蒼太は告げると、アルフォンソは一旦、大きく息を吸い込んで吐き出すと、今度は宙に向かって手を翳し、深く静かに瞑想する、そして。

デルフェル・ライン来たれクレィディーズ剣よ!!」

 何やら呪いの言葉を唱えると、その掌に魔法力が集約して行き、それはやがて一振りの剣の形となってこの世界に顕現した。

 それだけではない、その呪力はそのまま、彼の体にも纏わり付くと漆黒をベースに形作られていた、得体の知れない禍々しさを内包している鎧や具足の姿となって彼と一体化するモノの、やがて自身の武器防具の全てを装着したアルフォンソは改めて蒼太へと向き直り、張りのある声で彼へと告げた。

「どうやら魔術の合戦では決着が着きそうにないな、“剣”による戦いで全てを決するとしよう!!」

「・・・・・」

 それを聞いた蒼太は自身もまた、背中から愛刀である秘剣“ナレク・アレスフィア”の柄を握ると一気に引き抜き、アルフォンソに向かって構えを取るモノのこの瞬間、いつも思い這ぜることなのであるが自分自身の意識がその央芯部分から極限にまで研ぎ澄まされて行くのをハッキリと感じて気分が一挙に高揚して行く。

 覚悟が決まる感覚と言うのか“後はもう、ただやり合うだけ”と言う心持ちになり心が、体が“今、この瞬間にだけ”集中し尽くして行くのがハッキリと見て取れた。

「・・・・・っ!!!」

「うぬうぅぅぅ・・・っ!!!」

 蒼太もアルフォンソもそうやって、互いに剣を相手に向けて構えた状態のまま相対してから全く動く事が出来なくなってしまっていた、打ち込もうにも隙が無く、また見た所力も速度も見極めすらも、何もかもが互角であったから、動くに動けなくなってしまっていたのである、それを。

「・・・・・っ!!?」

「シュ・・・ッ!!!」

 先ず以て崩したのはアルフォンソが先であった、彼は位置を少しだけ変えて自身を地面の舗装されていない、花壇の上へと持っていったのである、そこでー。

 足を使って石と土とを爪先で蹴り上げ、それを強かな勢いで蒼太の顔面目掛けて投げつけるが、蒼太は瞬時にそれに対応して見せた、アルフォンソ自身をしっかりと見据えたままで即座に距離を詰めると衣服が汚れるのも構わずに上段から構えた剣を一気にアルフォンソ目掛けて振り下ろした、しかし。

 ガキイィィィィンッと言う金属音が周囲に響いてそれは見事に防がれた、いいや、“防がせた”と言った方が正しいであろう、蒼太はこの時、“攻勢防御”に出たのであり、これから突っ込もうとする相手の、一瞬先の動作を読んで自分から突っ込んで行ったのであった。

「ぐううぅぅぅ・・・っ!!!」

「ちいいぃぃぃ・・・っ!!!」

 要するに“機先を制した”訳であるモノの、これによって勢いと流れは少しだけ蒼太に傾いた、鍔迫り合いを演じた二人はその後一瞬だけ背後に飛び下がると次の瞬間ー。

 再び一挙に距離を詰めて猛烈な打ち合いを開始した、上段から足払い、袈裟斬り、逆袈裟、果ては突きまで、ありとあらゆる斬撃が二人の間に交錯する。

 その重さ、鋭さは互いに互いを驚愕させるのに充分であったモノの、特に蒼太のそれは卓絶していた、と言って良かった、何しろまだ二十歳にすらなっていない未成年の彼の見せる、奥底から迸る程に確固たる力強さはさしものアルフォンソをして背筋を冷たくさせたのであり、思わず後退りをしてしまいたくなるほどの凄まじさだったのだ。

 それは蒼太の生きてきた証そのものであり度重なる厳しい鍛錬において、そしていつ果てるともなく続く戦場での命懸けの闘決において練り上げられてきた、“彼”と言う存在の証明そのものに他ならなかったモノの、一方でそれに飲み込まれてしまうようなアルフォンソでも決して無かった、萎えそうになる自身を必死に叱咤しては剣を振るい、足を動かし、決して己の意思を放棄して流れを止める事はしなかったのである。

「てやあああぁぁぁぁぁーーーっっっっっ!!!!!!!!!」

「ぬうううぅぅぅぅぅーーーっっっっっ!!!!!!!!!」

 尚も打ち合いを続けながらも二人は互いの動きを見極め続けて隙を窺い、僅かでもそれを見出すとそこへと向けて必殺の一撃を見舞っては、それを相手に察知されて防ぎ切られ、挙げ句の果てには逆撃までをも返され続ける、と言った事を何度となく繰り返して行った、二人の間合いの空間の、その彼方此方(あちらこちら)の地点においてはガキイィィッ、ガン、ギン、と刀剣同士がぶつかる音が響き合い、その激突の際の火花が1秒間に10カ所にも及ぶ場所から耐える事無く飛び散り続けては虚空に狂い咲いて行ったのだ。

「・・・・・っ!!!!?」

「ああ・・・っ!!!!!」

「嘘でしょうっ!!!!?」

「あんなに・・・っ!!!!!」

 そんな自身の夫の、思い人の、或いは兄の、仲間の見せる、凄絶なまでのその様相をメリアリアがアウロラが、メルコットがエクセルラがそれぞれ固唾を飲んで見守るモノの、それだけ彼等の剣戟と言うモノは比類無きモノであり、かつて彼女達の誰もが見た事も無い程の熾烈極まる攻防が、其処此処(そこここ)において繰り広げられていたのであった。

 しかもその上ー。

 ササッ、ガサガサッ、ガサガサガサガサッ。

 ギイィィィンッ、ギン、ガンッ。ガキイィィィィィンッ。ガン、ギンッ!!!!

「たりゃあああぁぁぁぁぁーーーっっっっっ!!!!!!!」

「うおおおぉぉぉぉぉーーーっっっっっ!!!!!!?」

 二人はただ単に剣と剣とを、即ち刃同士を交わし続けていた訳では決して無かった、互いに素早く動き回っては自身に有利な位置を取りつつ、反対に相手にも回り込まれないように注意しながらもその所作や動作を逆手に取ってはそこに必殺の剣閃の煌めきを切り込ませて行くモノの、それをお互いに必死になって弾き返すと同時に次の攻撃に移って行く、と言った事が、最愛の妻の、或いは思いを寄せてくれる人の、そして義妹や級友達の目の前で交互に延々と行われ続けていったのである。

 しかしー。

「うう・・・っ!!」

「ぐわ・・・っ!?」

 そうしている間にも、完全には防ぎ切れなかったのか、蒼太の肩や膝からは血が次々と溢れ出して来た上に、その顔からも2、3箇所程に渡って裂け目が付き、しかもそれらが徐々に開き始めて来るモノの、一方のアルフォンソと言えばこちらもまた、全く同様な事態に陥っていたのであり、腕、腿、脇腹、胸等に幾つもの傷が付けられていて溢れ出してきた己の血潮で周囲はベットリとした唐紅に染まっていた。

 相手も自身も達人同士であり、しかも近距離で打ち合っている為に何合かは防ぎきれずに咄嗟に身をよじって躱し、辛うじて致命傷を避けると言った具合に、互いに今一歩が踏み込めずに、相手に止めの一撃が与えられずにいたのであるが、そうしている内にー。

 ガキイィィィィンッ!!!!!と二人は再びの剣と刀をかち合わせつつ鍔迫り合いを開始するがこの時、互いに浅くて小さいモノではあったが蒼太もアルフォンソも裂傷が十数カ所に渡って着けられており、至る所から出血していた、剣技においては彼等は間違いなく互角であり、このままでは決着が着くことは永遠に無いと、他の誰でも無い本人達が一番、そう確信していたのである。

 一方で。

 そんな蒼太を援護しようとメリアリアが動き始めた、光炎魔法を生成し始めては鞭へと伝えて光鞭へと変化させ、オーバードライヴを施した状態でもって蒼太目掛けて掛け出して行くモノの、そこへー。

「行かせないわ、絶対に・・・!!」

「・・・・・っ!!!」

 腰まで伸びたハーフアップストレートの緋色の髪を棚引かせつつも、一人の女性が立ちはだかった。

 彼女は一瞬、“モデルか!?”と思うほどに美しくて綺麗な女性(ひと)だった、その体はスレンダーでスラリとしていながらも、出るところは出て引っ込むべき所はちゃんと引っ込んでいる、女性から見たなら羨ましい体型であったが、しかし。

(なんなの?この人。凄い力・・・っ!!)

「・・・・・」

 メリアリアが驚嘆したのはそこでは無かった、彼女は抑えてはいても、巨大な魔力の奔流が体内に渦巻いていたのである。

 その上。

「・・・・・っ!!」

(彼女も“鞭使い”なんだっ!!!)

 “それも”とメリアリアは更に見抜いた、“炎熱系魔法使いの!!”と、そこまで細かく正確に。

 それは、炎使いに特有するある共通の感覚であった、即ち。

 彼女のオーラが燃え盛る火炎となって周囲に存在している物質全てを照らし出して行くかのような、そんなイメージと感覚とが湧き上がって来るのであるがそれ故、メリアリアが瞬時に警戒感を露わにしては、彼女に対して身構えるモノの、それに対してその緋色の髪の美女もまた、それに応じるかのように構えを取りつつもフフッと冷笑して見せた。

「何者かは知らないけれども・・・。そんな程度のキャパシティー潜在能力じゃ勝ち目は無いわ・・・!!」

「・・・・・」

 自分に対する挑発とも取れるその言葉に、しかしメリアリアは特に何の反応も示さなかった、ただただジッと目の前の相手を見据えて己を極限にまで昂ぶらせては“今、この瞬間に”集中し尽くしていたのである。

 ・・・彼女の夫である、蒼太がそうであったように。

「まあ、いいわ」

 “手早く片付ける!!”と鞭を構えた彼女に対してメリアリアは気合い一閃、地面を勢い良く蹴り上げては跳躍し、瞬時にその距離を詰めて行くモノの、それに対して緋色の美女は思わず目を見張ってしまった、メリアリアの動きが、反射速度の鋭さが有り得ない程のそれだったからだ。

「な、なに・・・?」

「たああああっ!!!」

 “きゃああぁぁぁっ!!?”と甲高い叫び声が周囲に響いてメルコットがその場から吹き飛ばされた、鞭と鞭とが激突した際に生成された衝撃波の直撃を受けてしまったのである。

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

(いける・・・っ!!!)

 対するメリアリアはいきなり勢いを掴むことが出来た、彼女は無駄なエネルギーの消費を防ぐためにオーバードライヴを移動と攻撃の瞬間のみに限って使用するようにしていたのでありその為、能力値が刹那の間に爆発的に急上昇する仕様となっていて、それがメルコットをしてその目測を見誤らせる結果となっていたのだった。

(バ、バカなっ!?コイツの“力の加減”は間違いなく読んでいた筈だ、それなのになぜ!?)

 驚愕するメルコットに、更なる追い打ちが掛かるモノの、メリアリアの操る光炎の鞭が唸りを上げて疾走して来たのである。

 “太陽の炎熱”を纏っているそれである、触れれば勿論、火傷等では到底済まないモノの、もっとも神ならぬ身のメルコットにそんな事まで解ろう筈も無く、当たり前の事として彼女は、自身も同じように炎を纏わせたファイヤー・ビュートでそれを防ごうと試みる。

 しかしー。

 その努力は全くの徒労に終わった、なんと炎の鞭と化していた筈の彼女のそれが、メリアリアのビュートによって断ち切られてしまったのである。

「う、うそでしょっ!?私の“フレイム・ラヴィアン・ローズ・ウィップ”が!!」

「貴女の扱う炎は所詮、“地上の火の粉”に過ぎないわ!!!」

 驚愕するメルコットに対してメリアリアがハッキリとした言葉で言い放った、“それでは私には効かない”と。

「私の炎は天上の光、始原の力そのものよ。地上で生まれた火炎など、全て撥ね除けて断ち切るわ!!」

「・・・・・っ!!?あ、あんた、まさかっ!!!」

 “メリアリアなの?”と恐る恐るメルコットはその名を口にした、“光輝玉のいばら姫”、“炎の聖女メリアリア”ー。

 その名は聞かされた事があった、確か10歳かそこらの時に、あの“ヒュドラのヴェルキナ”を打ち破ったと言われている、天才的な炎使いの少女がいたのだ。

 その名前が確か、メリアリアだった、噂によると“太陽の炎熱”をその身に纏うと言う、とんでもない使い手である。

「そうか、あんたが・・・っ!!!」

「・・・・・」

「・・・ぷっ。くっくっくっ!!!」

 “あっははははははははっ!!!”とメルコットが高らかに笑い転げて涙まで流し始めるモノの、その口からは更に“なによ、もうっ!!”と凡そ戦士らしくない言葉が飛び出して来た、“そうならそうと、言ってくれたら良かったのに”と。

「全くもう、思わず憤慨したって言うか、呆れちゃったよ。だって・・・」

「・・・・・」

「・・・こんなに“弱い人”だと思わなかったからさぁ!!!」

 その言葉にもしかし、メリアリアは動じなかった、彼女は蒼太から教えてもらっていたのである、“無用な想念は見て流し、決してそれに囚われない術”と言うモノをー。

「動じないね?」

「・・・・・」

「力を、隠してたんだ!?」

「・・・・・」

「何とか、言いなさいよ!!!」

「・・・・・」

「むかつくわね、貴女・・・」

 “まあ良いわ!!”と些か問い詰めて飽きたのか、メルコットが言葉を改める。

「改めて、名乗らせて貰うわ。私は“獄炎のメルコット”、“カインの子供達”で一番の、炎熱系の使い手よ?貴女は何て言うの?メリアリア・・・」

「・・・・・」

 “もう、知っているじゃないの!!!”と半ば呆れたように呟きながら、それでもメリアリアが礼節に則って“私は・・・”と名乗ろうとした、その時だ。

「遅いっ!!」

「・・・・・っ!!!」

 突如として全身に魔力を漲らせたメルコットが、折れた鞭を片手に突っ込んできた、見るとそのビュートの先端部分は持ち前の火炎呪文で生成されていたモノの、その炎は今までのような明るい橙色のそれとは違い、暗い薄紫色をした、陰湿な感じのする炎である。

 しかし。

「ちいぃ・・・っ!!」

「・・・・・っ!!」

 それが危険だと見て取ったメリアリアはすかさず後方へと跳躍してはその鋭峰を完全に躱して見せるがそんな彼女のすぐ目の前を薄紫色の不気味な炎が唸りを上げて横切って行った、後一瞬、反応が遅ければオーバードライヴを使用したとしても避けきれなかったに違いなく、着地する時には思わず背筋に冷たいモノが走っていた。

「やるじゃない、メリアリア。見直したよ・・・!!!」

「・・・・・」

「ちなみにこの炎、何なのかは知っているわよね?」

「・・・・・」

 何の前触れも無く、いきなり自分の術の正体に迫って見せろ、と言うメルコットの無茶振りに、しかしメリアリアは努めて冷静かつ的確に応じて見せた、彼女は確かに、“それ”を見たのは初対面であったけれどもしかし、何も知らなかった訳じゃ無い。

 炎使いの心得として、その“炎”の事柄に付いては父や母から詳しいレクチャーを受けていたし、“セラフィム”の授業でも何度か議題に挙がった事すらあったモノの、要するにー。

「冥界の炎・・・」

「・・・当たり。だけどなんか悔しいな!!」

 呟くようにそう告げたメリアリアの言葉にメルコットが意外そうに、そして多少、不服そうにそう告げるが確かに彼女の扱う炎は冥界、所謂(いわゆる)“地獄の業火”であって、罪人の魂を焼き焦がし続ける、恐るべき獄炎であったのだ。

 その温度は実に、摂氏10000~200万度の超高温であり、それに加えてある“特性”をも持ち合わせていたのである、即ち。

 触れたモノ全てを焼き尽くし、なめ尽くし、残骸諸共朽ち果てさせる、と言う特性を。

「永遠にして不滅なる魂に、罰を与える獄炎だもの、それくらいの効能は無きゃ、意味が無いわ。まあそれでも?“霊魂(スピリット)”ならば何とか耐えられるにしても、この三次元に肉体を持って生きている人間が喰らえばどうなるか、貴女になら解るわよね?」

「・・・・・」

 “一撃で、命が燃え尽きるわ”とメリアリアが答えると、メルコットは今度は満足そうに告げた、“正解!!”と。

「如何に貴女が太陽の炎熱を操ろうとも、私の獄炎の前では児戯に等しい・・・!!」

「それなら試してみる?燃え盛る命の象徴たる太陽の放つエネルギーを・・・!!」

 そう言うとメリアリアは再び光炎を召喚しては今度は武器のみならず、己の身へと纏わせた。

「そんなモノを幾ら召喚しても!!」

 メルコットが吠えた、“無駄よ!!”と勝ち誇ったかのように。

 そしてー。

 自らも獄炎を燃え盛らせては鞭を撓(しな)らせ、メリアリアへと向けて突っ込んで行くモノの、それに対してメリアリアもまた、地面を蹴って跳躍し、メルコットへと向けて突っ込んで行くモノの、その直後ー。

 二人の間で猛烈な鞭の打ち合いが始まった、明るく輝く天性の焔と暗く沈んだ冥界の獄炎とを纏った互いの鞭が空中で熾烈にぶつかり合い、彼方此方で文字通りの火花を散らした。

 ピュンッ、ピュンッ。ビュバババッ!!!パアァァンッ、パンッ。パンッ!!!!!と、鞭と鞭とが撓る音とぶつかり弾けるそれとが何十発も響き合い、周囲には高エネルギーが充満して行く。

「・・・・・っ!!!」

「くううぅぅぅ・・・っ!!!」

 打ち合いは5分間近くに及んだが、それでも決着が着け切れずにいた、メリアリアもメルコットも、鞭を振るう傍らで絶えず相手の動きを注視していた、相手が一歩踏み出せば自身もその位置を変え、相手が怯めばその隙を突いて吶喊(とっかん)する、と言った事を繰り返して行き、全く互角の戦いを演じていたのだが、その内にー。

「ああぅ・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

 メルコットが一瞬だけ、バランスを崩したような局面が訪れるが、しかしメリアリアは動かなかった、彼女のそれが“演技”だと見たのであるが、実際は半々だったのであり、即ちメルコットは確かに一瞬、体勢を揺るがせてしまったモノの、その実しっかりとしたカウンターの構えを取っていたのであってもし、何も知らないメリアリアがそのまま攻め込んで来ても瞬時に対応、逆撃が出来る状態を整えていたのである。

 そう言う意味でメリアリアの見立ては当たっていた、彼女は無闇に攻め込む事は決してせずに、むしろ確実な状態からの致命的な一撃を相手に向けて打ち放とうと心に決めていたのであり、それが“吉”と出た訳だ。

「ちいぃ・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!!」

 一瞬、怯んでしまった事で膠着状態が崩れるのを恐れたメルコットが一旦、打ち合いを停止して後方へと飛び、鞭を構え直すモノの、それに対してメリアリアもまた、その場で炎を練り直しては体勢を整える。

 二人の間には気迫の応酬が続いていた、何とか相手の隙を見つけ出そうと必死になっていたのであるが、中々にしてその機会は訪れなかった。

「・・・・・っ。どうして?何で5次元の炎が3次元の炎に勝てないの!!?」

「・・・貴女は太陽に付いて、物凄い勘違いをしているわ」

 ややヒステリックに叫び散らすメルコットに対してメリアリアが冷静かつ淡々とした口調で言い放った。

「どうして太陽が昔から、信仰の対象とされて来たか解る?それは太陽が万物を生み出す源だからよ」

 メリアリアが説明するモノの、そもそも太陽を始めとして“星”と言うのは極めて強大なる波動を秘めている。

 それは例えば、人が生まれ出ずる時等の宇宙(そら)の星々の配列によってその人の一生や性格と言った、重要かつ根源的なエレメント要素が決められて、インプットされてしまう程に強烈なるモノなのだ(そしてそれらを見極める事が出来るモノこそが所謂(いわゆる)“天文”や“ホロスコープ”と言った、“占星術”と言われているそれらである)。

 即ちそれは単なる“空間”のみならず、“時間”や“次元”を超えて“存在”と言う名の“現象そのもの”に直接的なる影響を及ぼす事が出来る程のモノなのであり、その時点で太陽等の恒星や天体の放つ波動は所謂(いわゆる)5次元~6次元のそれである、と言い表す事が出来るのだ。

「どうして“吸血鬼”や“ゾンビ”なんかが太陽の光りに弱いのか、貴女は考えた事が無いのかしら?あれは単なる3次元的エネルギーなんかじゃ無いからだわ、もっと高次元的な、霊性なる世界の波動をその身に宿しているからなのよ!!」

「・・・・・っ!!!」

 “成る程ね”とそれを聞いたメルコットは得心したように呟いた、“つまりは私の扱う冥界の炎と次元的には互角と言うわけね?”と。

「やってくれるじゃないの、メリアリア。ますます面白くなって来たわ!!」

「・・・・・」

 そう言って徐々に気分を高揚させて行くメルコットに対してメリアリアもまた、更にその感覚と集中力とが研ぎ澄まされて行くのを感じていた、コンディションは最上を維持し続けており、実に良い状態である。

 それに加えて。

 彼女にはまだまだ余力があった、無論、メルコットもそうであろうが何しろこちらにはあの人から、蒼太から教えてもらった“オーバードライヴ”を併用させた“フルバーストモード”があるのだ、負ける要素は一切無い。

「・・・・・」

(行ける・・・っ!!)

 メリアリアは思いを新たにすると、気合いを入れて鞭を構え直し、相手へと向き直るが、そんな愛妻(メリアリア)の様子を真剣な表情で伺いながらも蒼太は己自身もまた、剣豪アルフォンソとの間に一進一退の攻防を繰り返していたモノのしかし、彼は、蒼太は誇らしかった、僕の妻はあんなにも強くて美しい人だったなんて、あんなにも物事に対する認識の深さを持っていた人だったなんて。

(メリー、あんなに凄い人になってしまっていたんだな、僕も頑張らないと!!)

 とは思うモノの正直、アルフォンソは中々に、簡単に勝てるような相手では無かった上にお互いに手詰まりになってしまっていた、要するに“決め手”が無いのだ。

(“神龍波”はある程度、時間を掛けなければ発動する事が出来ないし・・・。決められれば確かに最強なんだけどなぁ・・・!!)

 “もう少し”と蒼太は思うが“簡単に発動できる、最強クラスの技が欲しいな”と彼は切実なまでに発望していた、見たところ、アルフォンソもまた同じ事を考えている様子でありしかし、向こうにはそのアイデアが無いようだ、これはチャンスかも知れない。

(“ハイラート・ミラクル”。あれを試してみようか、今の僕達にならば、熟(こな)す事が出来るかも知れないし・・・)

 と蒼太は予てより心中に温めていた案を、この場で発動させてみる事にしたのだが、これは異世界“ガイア・マキナ”において彼方(あちら)の自分と妻達とが見せてくれた奇蹟の剣技そのものであり、魂の深い領域までもが結ばれ合っている者同士にしか発動させる事が出来ない、とされる幻の婚術であったのだ。

(“ハイラート・ミラクル”・・・。その名の通りに結婚している事が、それも根源たる霊性同士が婚(くな)ぎ合っている事こそが最低条件だと言われていたけれども・・・。果たして今の僕達に使えるだろうか、しかし・・・)

 “もし、あれが使えたならば”、と蒼太は思うがもし、そう言う事にでもなったとすれば、自分とメリアリアとはこれ以上無いほどにお互いとお互いとが思い合っていると言う、結ばれ合っていると言う確かな証になる上に、彼女との関係を、更に一歩進ませる事が出来るだろう、と言う明るい希望に満ちた考えを、持つに至っていたのである。

(大丈夫だ)

 蒼太は思った、“今の自分達自身ならば、必ずやハイラートミラクルをモノにして熟す事が出来る、感じる!!”と心の底から湧き上がって来る確かなる暖かさと同時にその未来を強く確信していたのである、婚ぎ合った自分とメリアリアの魂の絆、その純粋にして無限なまでの光り輝きの迸りを。

(それに、だ。どっちみちいずれにしてもやるしかない、この場を突破してヴィクトー卿を捕縛する為にはどうしてもこれに賭けるしか無いんだ、その為には・・・)

 “メリーと連携を取らなきゃいけない”と思い至って蒼太は先ずは、アルフォンソを突破してメルコットを退け、その上で他の連中達にも手出しをさせないようにして事を運ばなければならないと、そんな事まで考えるモノの、兎にも角にも現実的に戦っている最中にその本人達を呼び止める、等と言うのは非常に危ない行為であって、下手をすればそれが致命的な隙となり攻守のバランスが逆転してしまう事さえ有り得るのだ。

(状況的にも一番良いのはこちらの戦況が落ち着いたと同時に向こうも互いにある程度の距離をとって膠着状態に陥る事なんだけれども・・・。果たしてそう、上手く行くか?いいや、だがしかし・・・!!)

 なんとしてでも、行かさなければと蒼太は一人、内心で決意を固めると同時に次の行動に移る為の手立てを考案して行った。
ーーーーーーーーーーーーーー
 “ハイラート・ミラクル”とは“婚姻の奇蹟”と言った意味です。

 実は最初は“エンゲージ・リンク”と言う名前にしようかと思っていたのですが、これだと“婚約的接続”と言うなんだかよく解らない意味の言葉になってしまうと言うことに気が付きましたので、途中で変更いたしました(ただし何を言わんとしているのかは解ります、“愛しい人と繋がり合う”と言う意味でしょうから)。

 どのような秘術(と言うよりも、正しく言えば“秘儀”に当たるのですが)なのか、と言う事に関しましては次回のお話しをお待ち下さい(正直に申し上げましてハイラートにせよエンゲージにせよ似たようなモノなのですが)。

 もう一つ、アウロラがこの一連の戦いにおいて、メリアリアちゃんと同じく、“ある覚醒”をする事となります(そうしないと“蒼太君の花嫁”としては認められませんから)、それらも今後、追々語られて行く事になろうかと思われます。
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