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ガリア帝国編
ツインズ
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「お父様!!」
“どうしてもっと早くに言っては下さらなかったのですか!?”とアウロラはいてもたってもいられなくなって直ぐさまその場で絶叫した、それはそうだろう、彼女としてみれば堪ったモノでは無かった、確かに“秘密保持”の観点からは正しかったのかも知れないモノの、これではまるで“除け者”では無いか。
「今回のことだってそうです、もっと早くに言って下さっておられたのならば、事前に“探査結界”を張り巡らせたり、皆さんに相談するなりして手を打つ事だって出来たんですよ!?それを・・・!!」
「す、すまんすまん、アウロラ。許しておくれ、この通りだから・・・っ!!」
“私も言うに言えなかったんだよ”と、エリオットは流石に申し訳なさそうに詫びはしたモノの、一応、彼はアウロラが二十歳になった時にはちゃんと真実を告げるつもりではあったから、今回の事は誠にもってとばっちりであり、いい迷惑以外の何物でも無かったのである。
一方でー。
「・・・・・」
「なぁに?どうしたの、あなた・・・」
画面の向こうでエリオットを捲し立てるアウロラから、視線を愛妻(メリアリア)へと戻した蒼太は何事かを思案しながらその横顔をジッと見る。
「・・・ううん、なんでも。可愛いよ、メリー!!」
「・・・・・っ。も、もうあなたったら、そう言うのは後でね❤❤❤」
“今は皆がいるから・・・”と言ってそれでも、自身の精一杯の愛情表現として“チュ・・・ッ”と軽めのバードキスを最愛の夫へと返したメリアリアは、少し照れたように、しかしそれでも幸せそうに“えへへ”と笑ってみせるモノの、そんな彼女を見つめながら蒼太は少しだけ、考えていた事があったのだ。
何かと言うとそれはつまり、“メリーの所も同じなのでは無いのか”と言うそれであったが蒼太が見立てる所、メリアリアとアウロラは根っこの部分が非常に良く似通っていた。
いいや最早、それは“似ている”等というレベルの話では無くて“殆ど同一”であったと言っても過言では無かったモノの、だからこそ。
“だからこそだ”と蒼太は思うが本当はメリアリアのカッシーニ家(ハーズィ)にも“伝えられている宝玉”のようなモノが密かに存在しているのであって、ただしダーヴィデ達はまだ、その事をメリアリアには伝えてはいないだけなのでは無いのか?と、事ここに至って彼は密かに考察するモノのもしこの二人が、即ちメリアリアとアウロラがツインズ、“陰陽”の関係だったとするのならば、アウロラと同じ位に高潔な人格、霊格を誇っており、また同様に“宇宙の力”を扱える程の莫大なまでの法力、霊力を宿しているメリアリアが、即ちカッシーニ家(ハーズィ)が何の神宝(かんたから)も持ち合わせていない、と言うのは些かに無理がある話であって、どう考えても辻褄が合わない。
となれば恐らくは、カッシーニ家にもそう言った、“超越的なる神聖力を秘めた何某か”が存在しているのであって、ただしそれをダーヴィデ達は秘密にしているのだろうな、と蒼太は殆ど直感的に確信していた、現にそう思って改めてカッシーニ家へと意識を向けて見るとほんの僅かにではあるモノの、それでも何か、物凄いまでに高次元的な光を放つ、強烈に過ぎる“太陽のようなモノ”の存在が感じられて、それが頭の中にハッキリとしたイメージとなってまざまざと思い描かれて来るのである。
(これは凄い、何て神々しくて有り難いエネルギーなのだろう!!これに今まで気が付かなかったなんて、僕は本当に未熟だったな・・・。いやでもしかし!!)
蒼太は思うがこれは確かにある意味、仕方が無い事ではあった、と言うのはこれは蒼太の実家もそうだったのであるモノの、カッシーニの家もフォンティーヌのそれも、同じく“風穴”の真上に測ったように正確に建てられていたからなのだが、この世には“大地を流れる大いなる気の流れ”、即ち“龍脈”と“地脈”が存在していて、しかもそれらが同時に吹き出している地点(ポイント)が、幾つも幾つも存在している。
そしてそのような場所こそが“風穴”と呼び表されているのであって、このようなポイントは大抵、太古の昔から“パワースポット”として人々から認識されており、“怪我や病気の治る場所”、或いは“運気を向上させてくれる場所”として“信仰の対象”となる事すら度々あったが、中でもそれらが特に強大なる地点には神社や仏閣等が配置されては神々や御仏のエネルギーを大地の巡る気脈の流れに混ぜ合わせるようにして送り込み、地球全体を循環させるシステムを構築していたのである。
事実的なる現象として。
文字通り“龍の息吹”もしくは“地球の脈動”の直撃を受けるこの様な場所に建っている家と言うのは何があっても結局は最後には隆盛するし、だからこそ蒼太もその正体に気が付かなかったのであるが、正直な話でメリアリアの家やアウロラの邸宅へと遊びに訪れる度に彼は確かに、強大にして暖かく、とても心身のリラックスする波動を感じ取ってはいたモノのしかし、蒼太はだからそれを当初は、“宝玉から迸るエネルギー”では無くて、“パワースポットのエネルギー”そのものだと誤解していたのであって、それで自分を納得させようとしていたのだった。
(それでもちゃんと見ようとすれば、直ぐにでも気が付いた事だったんだろうけれども。やっぱり僕も迂闊だったんだな、油断していた・・・!!)
「ねぇ、でもあなた・・・」
蒼太が少年時代の自らの未熟さを反省していると、再び愛妻(メリアリア)が問い掛けて来た、“どうしてそんなに物凄い宝玉があったのならば、私達も気が付けなかったのかしら?”と。
「私もね、私のお家やアウロラの家が、そう言った場所の上に建っている事は知っていたけれど・・・。でも宝石の力って、殆ど感じ取れなかったわ、確かに何か物凄い力みたいなのを、ちょこちょこ感じたりはしていたけれども・・・」
「・・・・・」
(やっぱりね・・・!!)
その話を聞いた途端に蒼太は改めて得心するモノのやはり、メリアリアの家にも何らかの家宝は伝わっていたのであり、そしてそんな大切な宝物(ほうもつ)を守るためにも恐らくは、いいやほぼ間違いなくカッシーニ家もフォンティーヌ家もその周囲に、恐ろしいまでに高度な“遮蔽結界”のようなモノを用いて宝玉自体を御世間様から隠しておいたに違いなく、そうでなければそれほど強烈にして崇高なるエネルギーの備わっている宝物を、そういつまでもいつまでも秘匿し続ける事が出来た道理は無かった。
それに。
(アウロラの家がそうだったように・・・。恐らくはメリーを始めとしてカッシーニ家の人々もまた、その家宝の影響を受けていたに違いない、だからこそその霊力が著しい程に増大して高聖化し、その結果として“光炎魔法”や“絶対熱”のような、物凄い奥義を扱う事が出来るようになっていったのだろうけれども・・・。だけど多分、それだけじゃない。元来、この子達の“魂”と言うモノのは、そんな“神から授けられし祝福の波動”を自身の中に取り入れて吸収し、そしてそれらを“己の力”として存分に発揮する事が出来る程に、自在に操る事が出来る位にピュアで素晴らしい霊性を誇っていた、と言う事だ、それだけの“器”を有していた、と言う事だ!!もしそうでなければ通常、神の力は余りにも強過ぎて、そして何より高次元過ぎて人によっては逆に悪影響を及ぼしてしまう場合すらあるからな。肉体や精神の不調等はまだ良い方で酷い場合だと気が触れたり、本当に行くところまで行ってしまうと“死”に至る事さえ有り得るんだ、だから間違っても“資格無き者”が扱えるような力では絶対に無いのさ!!)
“だからこそ”と蒼太は思うが彼女達が、そしてもっと正確に言ってしまえば彼女達の御先祖のお歴々達がそう言う人間である、と感じて理解していたからこそ神々はかつて、その願いに呼応するかのような形で姿を顕現させたのであり、挙げ句に彼等に自らの力と祈りの思念の籠もった宝物を送ってはその家系に消える事無き祝福を授けたのである。
そしてそんな神々の気持ちと先見の明とは決して無駄にはならなかった、カッシーニ家もフォンティーヌ家も変わること無く教えを受け継ぎ秘密を守り、それどころかますます、その高潔なる人柄と魂の輝きとを進化、発展させて来たのであり、そしてそれは神々が地上を去られてから後も、ほんの僅かも衰える事無く子々孫々へと至るまで脈々と伝承され続けて行った、己を徹底的なまでに鍛え上げると同時にその持って生まれた類い稀なる霊性をも何処までも何処までも果てる事無く向上させては魂同士の契りを交わした運命の人との間に永遠なる愛を誓い合い、そしてそれらを無限とも思える程に際限なく重ね合わては、終わる事無く育み合って行ったのだ。
「コホン・・・。所でアウロラ」
“話を元に戻すけど”と蒼太が告げると、アウロラはまだまだ言い足りなさそうではあったけれども、我慢して渋々口を閉じる。
「エリオット伯爵。フォンティーヌには万が一の際に“ガイアの青石”を持ち出す為の“封印術”のようなモノがあるはずです。そしてそのトリガーとなっていたのがあなた方の血潮、そのものであると僕は考えているのですが・・・。それで間違いは御座いませんか?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・ああ」
“それで間違いないよ”とエリオットは頷くモノの、崇高なる宝玉である“ガイアの青石”にはそれ自体にありとあらゆる異物や呪物、禍々しきモノを受け付けずに弾き飛ばしてしまう、極めて強力なる“破邪の力”が存在していてそれ故に、フォンティーヌ以外の存在の手には決して扱うことが出来ない、まさしく“彼等一族の為だけに存在している神宝(かんたから)”そのものであったのだ。
そんな訳であったから、万が一にも有事の際には(そもそも論として、そんな事が起きる事自体がまず無い話だったのであるが・・・)、その取り扱い方は困難を極めた、何しろ“それ”を直接手にする事が出来るのは当主から数えて三等親以内の身内の者のみであり、しかも先述の通りにありとあらゆる呪(まじな)い、異物を弾き飛ばしてしまう性質を持っている為に、そのままでは“遮蔽結界”も施せずに布か何かで包み込むことも出来なかったのである。
そこでー。
フォンティーヌが取った最後の手段が“当主自身の血”、そのものを利用する事だったのであるモノの、これを数滴程垂らしたインクで“遮蔽結界法陣”を書き込んだ布を使って宝玉を直接包んで運び出す、と言う方法を取っていたのであって、これによってようやくにして、何事かが起きた際にも安全かつ合理的に宝玉を持ち運ぶ事が可能になった、と言う訳であったのだ(ちなみに“当主の血筋”と言うのはその純潔性が失われないようにするために、何代かに一度、わざと“従兄弟と従姉妹”で結婚させたり、或いは数代続けて“親戚同士で婚約”する事が暗黙の了解となっていた)。
「そ、それでは・・・っ。お父様の輸血された血を、何者かに利用されて・・・っ!?」
「恐らくは、ね・・・!!」
アウロラの言葉に蒼太が頷いてみせるモノの、“その判断に間違いは無いぞ”と彼の直感が告げていた、恐らく“相手”は入手したエリオットの血を使い“当主の間”へと侵入、そのまま隠し階段を発見しては地下の宝物庫へと押し入って、“目的のモノ”を盗み取ったのであろう、と言うのが蒼太の推論だったのである。
「・・・伯爵。先程から質問ばかりで大変申し訳無いのですけれども。もう一つだけ、お聞きしたい事があるのですが」
「うん?何だい、蒼太君・・・」
勝手知ったる幼馴染みの父親に対してだからか、蒼太の言葉遣いがちょっとだけぞんざいになるモノの、この場合はむしろ吉と出た、エリオットにしてもそれなりに親しい相手から余り慇懃にされると言うのもそれはそれで些か悲しくも寂しい気持ちになる、と言うモノであったからだ。
「その“当主の間”の件なのですが。扉や窓辺に強力なる呪いが掛けられていた事を知っていた方と言うのは、全部で何名、いらっしゃられるのですか?また“隠し通路”の事を知っていたのは、どなたとどなたなのでしょうか」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・応えなければ、いかんか?」
「事件解決の為にも、お願いします」
「お父様・・・」
と、最後はアウロラに促される形でまたしても“う、うん・・・”と頷いたエリオットは再び、先程と同じ面子の名前を出した、即ち。
彼の両親と彼自身、そして妻と姉、弟二人のそれをである。
「・・・・・」
(直接会った事が無いから何とも言えないのだけれども・・・。やはりこの内で一番、怪しいのは一緒に病院に行ったと言われている“ヴィクトーさん”かなぁ・・・。いいや、しかし。でも・・・)
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・ねぇ、あなた」
“取り敢えずは”、とそれまでずっと黙りこくって何事かを思案していた夫に対して妻(メリアリア)がソッと提案を試みるモノの、彼女としても同じ事を考えていたらしくて“そのヴィクトーさんとか言う人に、事情を聞いてみてはどうかしら?”と、まるで蒼太の背中を押すかのように言葉を掛けて来てくれたのだ。
「そうすれば、より詳しい事が解ると思うの。ねぇ、そうしましょうよ!!」
「・・・うーん」
“それしかないかな?”とメリアリアに誘(いざな)われる格好とはなったモノの、蒼太もまた自身の腹を決めた、結局最後は自身の嫁とその直感とを信じてみよう、と言う事となり、蒼太はまずはその事についての許可を取るべく、上司であるオリヴィアへと向き直った。
「オリヴィア。正直な話、私としては今回の件についてのヴィクトー氏の証人喚問を執り行いたいと思うのですが・・・。どう判断なされますか?」
「うん」
蒼太からのその問い掛けに、オリヴィアもまた頷いて見せるが今までの話を総合して考察してみるに、彼女もまた、ヴィクトーと言う男が“頗(すこぶ)る臭い”と考えていたのであって、証人喚問を行う事自体には何の反対も無かったのだが、しかし。
問題が別にあった、と言うのはこのヴィクトーと言う男はフォンティーヌの血を引いている訳であり、立派な“国定貴族”の1人であった、この“国定貴族”には万一、何か事件を起こした場合でも確たる証拠が無い場合には“不介入特権”とでも言うべきモノが認められており、要するに余程の事が無い限りかは逮捕どころか取り調べ自体を行う事が出来ないと言う、“法の下の平等”の精神に、思いっ切り反しまくっている悪弊が現代に至るまでしっかりと残ってしまっていたのであった。
「ううーむ・・・」
「いや、だけど。現に血は取っている訳でしょ!?」
「・・・それだけでは何とも言えん。“善意による献血だ”とでも言われてしまえば幾らでも言い逃れは出来る!!」
「ではその後の処置と一連の流れはどうですか?例えばエリオット伯爵の血液は今、何処にどうなっているのか。ちゃんと保管してあるのか無いのか、また事件の夜、彼は何処にいたのか、何をしていたのか。交友関係は?その行動は?今の内から何某かの手を打たなければ、悉く手遅れになります!!」
「ううーむ、それは解ってはいるモノの・・・」
「オリヴィア!!」
「オリヴィア、お願いっ!!“証人喚問”を提案して!?」
“お願いします!!”、“お願いっ!!”と、綾壁夫妻から嘆願要求を突き付けられたオリヴィアは正直に言ってすっかり参ってしまっていたのであるが、本音を言えば彼女だとて“証人喚問”を開きたい、開きたいがしかし、如何せん状況証拠だけではどうにもならないのもまた事実であって、それがオリヴィアをして今一歩、事態の真相解明に向けた具体的な動きを封殺する結果となってしまっていたのである。
「この状況で一番、手っ取り早く動く方法は、ただ一つしか無いのだが・・・。それにエリオット伯爵の力を借りる必要がある!!」
そう言うとオリヴィアは再び画面の中のエリオットへと向き直った。
「エリオット伯爵。誠に申し訳無い話なのですが私達は弟君のヴィクトー様が、この件についての何事かを御存知なのでは無いのか?と考えているのです。そこでもし、よろしければ真相解明に向けてエリオット伯爵御自身に、御協力を頂きたいのですが」
「それは、勿論だ。あれは我が家の家宝であり一族全体の命運を握っていると言っても過言では無い、それを取り返してもらえるのならば、出来る事ならばなんでも助力は惜しまないつもりだよ・・・」
「左様でございますか、それならば話は早い。エリオット伯爵の名において“特別解明審査会”の開催を申告していただきたい!!」
「・・・・・っ!?」
「!?!?!?!?!?」
「オ、オリヴィアッ。それは・・・っ!!」
その場にいた全員から思わず響(どよ)めきが巻き起こるモノの、この“特別解明審査会”と言うのは何かと言えばそれは所謂(いわゆる)一つの“貴族の”、“貴族による”、“貴族の為の弾劾裁判”そのものであって、幾つかあるそれらの内で最も軽くてスピーディーに展開する事が出来る、超略式のモノだったのだが、しかしこれにはある利点があった、と言うのは確かに、この審査会自体は対した罪に問うことが出来ずに極々軽い刑罰を科すだけで終わりになってしまうのであるが、一方でこれが正式に発動されてしまうと対象者(即ち被告)はその審査会終了時に至るまでに行動、自由を著しく制限される事となり、日常生活からは完全に切り離される事となる。
その為、中々尻尾を見せない知能犯に対して、あくまでその自由を奪うために本格的な弾劾裁判とセットで行われる、と言った使われ方をする例が非常に多かったのであるが、オリヴィアは先ずはこれを発動させる事でヴィクトーの自由を奪い、その隙に事件の全貌を解明しようと企てたのだ。
「現状で、ヴィクトー氏が何某かの事情を知っている可能性はズバ抜けて高いと言えます。確か審査会自体は“状況証拠”のみであっても原告の申し立てさえあれば、開く事が出来る、と聞き及んでおります。何卒御助力下さい!!」
「う、うーん、そうか・・・」
と、エリオットも思わず腕を組んで頭を垂れてしまっていた、明らかに気乗りしない様子であるが彼だって人の子である、こんな事件で自分の身内を疑いたい訳など、心の何処を捜したとしても何処にもありはしなかったのだ、そこへ持ってきて更に弟を“特別解明審査会に掛けろ”と言う、確かに躊躇している場合では無いにしても、流石に幾らなんでもやり過ぎなのでは無いかと思わない事も無かったのである。
「しかし、まだ証拠も出て来ていないのだろう?流石にそれで身内を疑うと言うのは・・・」
「伯爵・・・」
するとそれまで黙っていた蒼太が再びその口を開き始めた、彼はどうしても早めに問い質しておきたい事があったのであるが、何かと言えばそれはヴィクトーの行動予定、即ち彼の日程表であったのだ。
もし万が一にも、彼が近々外国にでも行くのであれば、下手をするとそこへと向けて“ガイアの青石”を持ち出されてしまう危険性すらあった訳であり、しかもそれならば国境の検閲所で止められたとしても、なんら問題は無い事だった。
何故ならば貴族には、例の“不介入特権”があり、警察や軍隊であっても証拠がなければおいそれとは手出しが出来ない上に、よしんば宝石について問い合わされたとしても“これは我が家に伝わる秘宝である、私が持っていても問題は無いだろう?”と言われてしまえばもう、それ以上強く出る事は出来なくなってしまうのである。
「ヴィクトー氏は、“何処かに行く”ような話をされてはいませんでしたか?特に国外に行くような話等を・・・!!」
「・・・具体的な事を、聞いた訳では無いのだが」
すると蒼太の熱意に根負けしたのか、やや躊躇いがちにではあるモノのそれでも、エリオットが少しずつ少しずつ言葉を紡いで応え始めた、“毎月の月末の金、土、日と、必ずプロイセンのシュバルツバルトに行くそうだ”と。
「彼の日課になっているそうなのだ・・・。なんでもその地方の最大都市である“フライブルク”に仲の良い友人がいるらしくてね・・・。そう言えば!!」
そこまで口にしたエリオットはハッとなってこう続けていた、“その友人は、宝石商を営んでいると聞かされている”と。
「・・・・・っ!!」
「・・・・・っ!?」
「お父様!!」
「おいおい・・・!!」
「それ、“ガチ”じゃないのか・・・?」
と、またもその場にいたエマやクレモンス達がざわめき始めるモノの最早、そんなモノに構っていられる時間的余裕等、その場にいた誰にも何一つとして存在してはいなかった、それよりも何よりも、先ずは“ガイアの青石”である、確認したところ、今月の月末まではあともう一週間も無かったのであって、今から審査会の申請を行ったとしても、それが通ってヴィクトーの身柄を拘束するまで5日は掛かってしまうだろう、最早一刻の猶予も無い。
「伯爵様」
“お願いです”と蒼太は言った、“僕達を信じて下さい”と、“必ずやガイアの青石を取り戻して見せますから”と。
「どうかお願いします、僕達に協力をして下さい!!」
「エリオット伯爵、お願いします!!」
「お願い致します、伯爵!!」
「・・・・・」
蒼太やメリアリア、そしてオリヴィアが次々と頭を下げ続けるモノの、どうしても彼は首を縦には振らなかった、この期に及んでもやはり、エリオットとしては弟を疑いたくは無かったし、それに何より“証拠が無い”と言うその一点が、彼の足をどうしても止めてしまっていたのである。
「エリオット伯爵、どうか僕達を信じて下さい。必ずや“ガイアの青石”を取り戻して見せますから!!」
「お父様」
“お願いします”と蒼太が尚も食い下がろうとした、その時だった、それまで黙って事態の推移を見守っていたアウロラが、突如としてエリオットの目前へと進み出ては、“蒼太さんに協力してあげて下さい!!”と、再びの助け船を出してくれたのだった。
「フォンティーヌの為にも、お願いします!!蒼太さんなら、必ずややり遂げて下さいますから!!」
自身も思いっ切り頭を下げつつ、心の底から声を迸らせるモノの、その言葉じりはいつものお淑やかな彼女のそれでは到底無かった、あくまでも彼の事を信じて共にあろうとする、暖かくて張りのある、確かなる力強さに満ち溢れていたのだ。
「お父様!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ふうぅぅー・・・」
“解った”と、暫しの沈黙の後に深く息を吐き出してからエリオットは告げた、“解ったよアウロラ”と、“私も彼等に協力する事にしよう”とー。
「・・・・・っ!!」
「・・・・・っ!?」
「それでは・・・っ!!」
「ああっ!!」
エリオットはようやくにしてその首を、縦に振ってくれたのであり、これによって何とか事件は、そのギリギリの所で解決へと向けた第一歩を踏み出す事となったのである。
「いやはや、君達は対したモノだ。事件発覚から僅か半日足らずでもうその核心を突こうとしている・・・!!」
“特に”とエリオットは思った、“蒼太君の働きが、特に大きなモノだったな”と。
さっきの推理や決断力等も実に見事なモノだったし、それに先程のアウロラの話から見ても、どうやら彼は娘の予想よりも大分早くにこちらへと帰還を果たしたようである、その予想外の行動力と発想力は人知を持って計り知る事の出来ない彼の立派なアドバンテージとして機能しつつあったのであって、現にそれはここに来て遂には自分すらも、このエリオット・アミン・ド・フォンティーヌすらも動かすに至っていたのだ。
(蒼太君が我が家に、婿入りでもしてくれたらなぁ。彼に全てを任せて私は、妻と2人で悠々自適な生活を送る、と言う訳にはいかないかな、やっぱり・・・!!)
と、そんな事を頭の片隅で考えながらも、それでもエリオットは見逃さなかった、セイレーン本部に報告を入れている最中や、彼の、即ち蒼太の事件の考察を聞く際のあの、彼を見つめるアウロラのウットリとした表情と眼差しとを。
(アウロラは、本気だろうな。しかして蒼太君の気持ちは一体、どのようなものなのだろうか・・・?)
フォンティーヌ家の当主としてよりはむしろ一人の父親として、事件とは全然関係の無い問題に頭と感覚とをフル回転させながらもエリオットはアウロラとは別の意味で蒼太に対する悩みを抱える事となっていったのであった。
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本当は“テイク・オフ”の後書きの箇所で書こうかどうか迷ったのですが(申し訳御座いません、確かどこかの話の前書きか後書きかで一度しか言及していなかったので、もしかしたなら皆様方ももう、お忘れかも知れない、と思いまして敢えて記載するのを見送らせていただきました)。
蒼太君には確かに、持って生まれた素晴らしいまでの霊力と、そして極めて強靱なる肉体的な素質があって、彼はそれをこれ以上無いほどに厳しい試練と努力によって見事なまでに開化させては困難に打ち勝って来た訳なのですが。
それと並んでもう二つ程、とても重要な力があります、その内の一つが縁の力、所謂(いわゆる)“人望”であり、そしてもう一つが“運”そのものです。
そしてそのどちらもが、ある一つのパラメータに直結しているのですがそれは何かと申しますと、人としての完成度、即ち人格(霊格)の事なのです。
私はかつて、こう教わった事があります、“運も実力の内なのでは無い、運こそ実力の全てなのだ”とー。
例えば今回、八方塞がりな状況の中で、それでもガリア帝国に帰ろうとしていた蒼太君とメリアリアちゃんを助けてくれたのはノエルでした。
しかし彼女だってもし、蒼太君達が今までの友人達と同じように自身を見捨てるような人達だったのならば、わざわざ危険を犯してまで助ける事はしなかったでしょうし、それ以前にエカテリーナやルクレールと言った難敵達の情報を蒼太君達は仕入れる事が出来なかったでしょう。
またかつて、カインとの戦いの最中に危機に陥っていた蒼太君を助けたのは、他ならぬメリアリアちゃんだった訳なのですけれども、それだってそれまでの二人の絆(生まれる前から続いていた二人の互いへの愛の共鳴)と、不器用な所もあるけれども、それでもお互いのお互いに対するこれ以上無いほどに深い愛情(特にメリアリアちゃんの蒼太君への真摯にして掛け替えの無い程にピュアで確かな愛の光の煌めき)があっての事ですし、それが無ければあの日あの時あの場所で蒼太君は確かに、その人生を終えていた筈です(ただし彼の名誉の為に敢えて言わせていただきますと、もし最初からまともに戦う事が出来ていたならば、もっと早くに蒼太君は勝つことが出来ていたでしょう)。
もっともそれだって、蒼太君がそれ程までにメリアリアちゃんの事を愛し続けていたからこそ実現した事だったんです、確かにメリアリアちゃんはその身に、もっと言ってしまえば“魂そのもの”に、“これ以上無いほどに純粋にして絶大なる霊性の輝き”を宿していますがそれを発揮するためには、それに負けないくらいの“超絶的なる愛の力”が必要になります。
何故ならばその人の為だけに自身の魂と瞬間的に直結出来るほどに一心不乱に深く深く、集中して祈りを捧げなければならないからであり、もう少し詳しく言ってしまいますと、意識を極めてクリアーな状態にしなければならないからですが、実際問題として命の掛かった戦場において、何の躊躇(ためら)いも躊躇(ちゅうちょ)も無く、愛する人を守る為に我が身を危険に晒す事が出来る人が、果たして何人いるでしょうか(蒼太君はそれをやったんです、それもあの日、あの時、あの場所での事だけではありません、これは彼の性格を鑑みていただければ解っていただけるでしょうけれども、生まれ変わって出会う度に、何度も何度もその時のメリアリアちゃんの事を愛して守り、助け続けて来たのです。それだけメリアリアちゃんの事を深く深く真剣に、一途に思い続けていたのですね。だからこそメリアリアちゃんもそれに応える形で己の愛を、魂の煌めきを彼へと捧げ尽くしたのです、この子も元々、凄い純粋で一途な子なのでその部分でお互いに共鳴するモノがありましたし、特に蒼太君にそれを見せられてからは“この人の愛は本物なんだ”、“こんなにも自分の事を思い続けてくれていたんだ!!”と感じてその瞬間、嬉しくて嬉しくて堪らなくなり、もうそれから先は後戻りが出来ない位に、その他の事がどうでも良くなる位にまで激しく燃え上がって行っちゃったんですね)。
蒼太君はちゃんと愛を知っていました、人を愛する事を知っていました、そしてメリアリアちゃんと愛し愛され、その結果として彼女に愛の何たるかを教え、また自分も彼女から“それ”を教わったのです。
これらのことを見てみても、“運こそ実力の全て”であり、そしてそれは=で人格、霊格の完成度である、と言うのが決して間違いでは無い事がお解りいただけるかと思います(剣を振るう速度、強さ、それか或いはパンチやキックのそれらと言うのは確かに、それはそれで大切なモノなのですが、そう言ったモノと言うのは“人としての実力”と言うよりもどちらかと言えば“暴力的身体能力”、或いは“戦闘能力”とでも言うべきモノであって、要するに単なる“技量”でしかありません)←余談ですが私はそれを“影の道”と言うような呼び方をしています、何故かと申しますとそれは、“本来の肉体の使われ方からは外れている”と言う意味からです(本当の“それ”と言うのは、大好きな人と愛し合う為にこそ使われるべきものだ、と聞いた事が御座いますが、要するに蒼太君は、そして“リュカ”はそう言った使い方をしていたにも関わらずにあれだけの強さ、凄まじさを誇っていたと言うことです。もっとも如何に復讐や逆襲の為だったとは言えどもやはり、元来は誰よりも清らかで優しい心を持っていた彼等からすればそれは恐らく、きっと物凄く悲しくて、辛い日々の連続だったに違いありません、それでも彼等は戦い続けました、それは多分、父親の事があったから、と言うのもそうなのでしょうけれども、何よりかによりの話としてはやはり、“大切な人を守りたい”、“助けてあげたい”の一心からだったのだと思います。そしてそんな彼等、即ち“リュカ”と“蒼太”の気持ちを一番、側で感じていたのは、理解していたのは他ならぬ“花嫁達”だったに違いありません。それはそうでしょう、心と体で、魂で繋がり合っている夫婦だったのですから、そんな愛する夫の苦悩を、悲しみを理解していなかった筈がありません。だから、と申しますか“彼女達”は“リュカ”以上に魔物達が許せなかったと思うのです。元々、彼女達と言うのはリュカに対して凄い純粋で一途で真面目な思いを、愛情を抱いている子達なんです、だからこそリュカによって改心させられた者達はともかくとしましても、それ以外の魔物達のそう言った根源的な汚らしさや卑劣な考え、性質とは、どうしても相容れなかったに違いありません。やっぱり人間、どうしたってダメなモノはダメですし、嫌なモノは嫌なんですよ、無理があるんです)。
それにもう一つ、こんなお話しも御座います、皆様良くバトル漫画やアニメなどで最終決戦等で主人公とライバルキャラが一騎打ちをして殆ど同時に攻撃を繰り出したのに、一方は無事でもう一方だけやられてしまった、と言う展開を見た事は御座いませんか?あれって現実に起こり得るそうです。
それは大抵、主人公と言うのは最終決戦に至るまで多くの試練を乗り越えて来る訳なのですがそうする中で人々から“有り難う”、“貴方がいてくれて本当に良かった”、“どうか御無事で”と言った、“応援のエネルギー”がもたらされるのだそうです。
そしてそれはこの現実的な世界においては1、2秒だとかのほんの僅かな時間に徹底的に作用するように働いてくれるのだそうです(最初は苦戦していたのに、何故か段々勢いに乗って来たとか、相手が突然、バランスを崩して蹌踉(よろ)けただとか。要するに最後の瞬間に自分の思い通りの展開になるように事を運んでくれるそうです)。
反対にそれまで散々、酷い事をして来た人には、そう言う大事な場面でそれが一気に跳ね返って来るのだそうです(“あの時はよくもやりやがったな!!”って言うやつですね、所謂(いわゆる)一つの“怨念”と言うヤツです。すると足を引っ張られてしまい、例えば急に集中力が無くなってしまった、だとか、何かに躓いて転んでしまった、だとか、そう言う風になるのだそうです)。
だから人格(霊格)と言うのはバカに出来ないんです、それは人々の織り成す“絆の力”、所謂(いわゆる)“縁”と“運”とに直結して来るからなんですね。
お互いに気を付けて行きましょう(些かクサい事を言ってしまい、申し訳御座いません)。
あともう一つだけ、お断りさせていただかなければならない事があります。
それは何か、と言われますと作中でも言及させていただいていた事なのですが、蒼太君やメリアリアちゃんは(アウロラもそうなのですけれども)確かに、超能力者の血を引いている、肉体的にも素晴らしい素養を持った一族に生まれ付いてはいるのですが、通常、そう言う家系に生まれ付く魂と言うのはキチンと愛を知り、己を鍛え、その身に宿りし霊力を、そして体力や精神力等をキチンと発揮する事が出来るモノだけだそうですよ(考えていただければ当たり前だと思われますが、パソコンを全く使えない人に対してパソコンを与える人はいないでしょうし、仕事においても同様です、そんな人にパソコンを使う部署は任せられません、そう言う事で御座います)。
敬具。
ハイパーキャノン。
追伸です。
ちなみに最後に言わせていただきますけれども、私は“ドラクエライバルズ”や“ドラクエタクト”の世界観と言うものは、“ドラクエV本編”とは何の関係も無い、単なる“パラレルワールド”だと思っておりますので(現に運営している公式も違いますし、第一本編に何ら世界観が反映されておりませんから)、どうぞ悪しからず御了承下さいませ。
“どうしてもっと早くに言っては下さらなかったのですか!?”とアウロラはいてもたってもいられなくなって直ぐさまその場で絶叫した、それはそうだろう、彼女としてみれば堪ったモノでは無かった、確かに“秘密保持”の観点からは正しかったのかも知れないモノの、これではまるで“除け者”では無いか。
「今回のことだってそうです、もっと早くに言って下さっておられたのならば、事前に“探査結界”を張り巡らせたり、皆さんに相談するなりして手を打つ事だって出来たんですよ!?それを・・・!!」
「す、すまんすまん、アウロラ。許しておくれ、この通りだから・・・っ!!」
“私も言うに言えなかったんだよ”と、エリオットは流石に申し訳なさそうに詫びはしたモノの、一応、彼はアウロラが二十歳になった時にはちゃんと真実を告げるつもりではあったから、今回の事は誠にもってとばっちりであり、いい迷惑以外の何物でも無かったのである。
一方でー。
「・・・・・」
「なぁに?どうしたの、あなた・・・」
画面の向こうでエリオットを捲し立てるアウロラから、視線を愛妻(メリアリア)へと戻した蒼太は何事かを思案しながらその横顔をジッと見る。
「・・・ううん、なんでも。可愛いよ、メリー!!」
「・・・・・っ。も、もうあなたったら、そう言うのは後でね❤❤❤」
“今は皆がいるから・・・”と言ってそれでも、自身の精一杯の愛情表現として“チュ・・・ッ”と軽めのバードキスを最愛の夫へと返したメリアリアは、少し照れたように、しかしそれでも幸せそうに“えへへ”と笑ってみせるモノの、そんな彼女を見つめながら蒼太は少しだけ、考えていた事があったのだ。
何かと言うとそれはつまり、“メリーの所も同じなのでは無いのか”と言うそれであったが蒼太が見立てる所、メリアリアとアウロラは根っこの部分が非常に良く似通っていた。
いいや最早、それは“似ている”等というレベルの話では無くて“殆ど同一”であったと言っても過言では無かったモノの、だからこそ。
“だからこそだ”と蒼太は思うが本当はメリアリアのカッシーニ家(ハーズィ)にも“伝えられている宝玉”のようなモノが密かに存在しているのであって、ただしダーヴィデ達はまだ、その事をメリアリアには伝えてはいないだけなのでは無いのか?と、事ここに至って彼は密かに考察するモノのもしこの二人が、即ちメリアリアとアウロラがツインズ、“陰陽”の関係だったとするのならば、アウロラと同じ位に高潔な人格、霊格を誇っており、また同様に“宇宙の力”を扱える程の莫大なまでの法力、霊力を宿しているメリアリアが、即ちカッシーニ家(ハーズィ)が何の神宝(かんたから)も持ち合わせていない、と言うのは些かに無理がある話であって、どう考えても辻褄が合わない。
となれば恐らくは、カッシーニ家にもそう言った、“超越的なる神聖力を秘めた何某か”が存在しているのであって、ただしそれをダーヴィデ達は秘密にしているのだろうな、と蒼太は殆ど直感的に確信していた、現にそう思って改めてカッシーニ家へと意識を向けて見るとほんの僅かにではあるモノの、それでも何か、物凄いまでに高次元的な光を放つ、強烈に過ぎる“太陽のようなモノ”の存在が感じられて、それが頭の中にハッキリとしたイメージとなってまざまざと思い描かれて来るのである。
(これは凄い、何て神々しくて有り難いエネルギーなのだろう!!これに今まで気が付かなかったなんて、僕は本当に未熟だったな・・・。いやでもしかし!!)
蒼太は思うがこれは確かにある意味、仕方が無い事ではあった、と言うのはこれは蒼太の実家もそうだったのであるモノの、カッシーニの家もフォンティーヌのそれも、同じく“風穴”の真上に測ったように正確に建てられていたからなのだが、この世には“大地を流れる大いなる気の流れ”、即ち“龍脈”と“地脈”が存在していて、しかもそれらが同時に吹き出している地点(ポイント)が、幾つも幾つも存在している。
そしてそのような場所こそが“風穴”と呼び表されているのであって、このようなポイントは大抵、太古の昔から“パワースポット”として人々から認識されており、“怪我や病気の治る場所”、或いは“運気を向上させてくれる場所”として“信仰の対象”となる事すら度々あったが、中でもそれらが特に強大なる地点には神社や仏閣等が配置されては神々や御仏のエネルギーを大地の巡る気脈の流れに混ぜ合わせるようにして送り込み、地球全体を循環させるシステムを構築していたのである。
事実的なる現象として。
文字通り“龍の息吹”もしくは“地球の脈動”の直撃を受けるこの様な場所に建っている家と言うのは何があっても結局は最後には隆盛するし、だからこそ蒼太もその正体に気が付かなかったのであるが、正直な話でメリアリアの家やアウロラの邸宅へと遊びに訪れる度に彼は確かに、強大にして暖かく、とても心身のリラックスする波動を感じ取ってはいたモノのしかし、蒼太はだからそれを当初は、“宝玉から迸るエネルギー”では無くて、“パワースポットのエネルギー”そのものだと誤解していたのであって、それで自分を納得させようとしていたのだった。
(それでもちゃんと見ようとすれば、直ぐにでも気が付いた事だったんだろうけれども。やっぱり僕も迂闊だったんだな、油断していた・・・!!)
「ねぇ、でもあなた・・・」
蒼太が少年時代の自らの未熟さを反省していると、再び愛妻(メリアリア)が問い掛けて来た、“どうしてそんなに物凄い宝玉があったのならば、私達も気が付けなかったのかしら?”と。
「私もね、私のお家やアウロラの家が、そう言った場所の上に建っている事は知っていたけれど・・・。でも宝石の力って、殆ど感じ取れなかったわ、確かに何か物凄い力みたいなのを、ちょこちょこ感じたりはしていたけれども・・・」
「・・・・・」
(やっぱりね・・・!!)
その話を聞いた途端に蒼太は改めて得心するモノのやはり、メリアリアの家にも何らかの家宝は伝わっていたのであり、そしてそんな大切な宝物(ほうもつ)を守るためにも恐らくは、いいやほぼ間違いなくカッシーニ家もフォンティーヌ家もその周囲に、恐ろしいまでに高度な“遮蔽結界”のようなモノを用いて宝玉自体を御世間様から隠しておいたに違いなく、そうでなければそれほど強烈にして崇高なるエネルギーの備わっている宝物を、そういつまでもいつまでも秘匿し続ける事が出来た道理は無かった。
それに。
(アウロラの家がそうだったように・・・。恐らくはメリーを始めとしてカッシーニ家の人々もまた、その家宝の影響を受けていたに違いない、だからこそその霊力が著しい程に増大して高聖化し、その結果として“光炎魔法”や“絶対熱”のような、物凄い奥義を扱う事が出来るようになっていったのだろうけれども・・・。だけど多分、それだけじゃない。元来、この子達の“魂”と言うモノのは、そんな“神から授けられし祝福の波動”を自身の中に取り入れて吸収し、そしてそれらを“己の力”として存分に発揮する事が出来る程に、自在に操る事が出来る位にピュアで素晴らしい霊性を誇っていた、と言う事だ、それだけの“器”を有していた、と言う事だ!!もしそうでなければ通常、神の力は余りにも強過ぎて、そして何より高次元過ぎて人によっては逆に悪影響を及ぼしてしまう場合すらあるからな。肉体や精神の不調等はまだ良い方で酷い場合だと気が触れたり、本当に行くところまで行ってしまうと“死”に至る事さえ有り得るんだ、だから間違っても“資格無き者”が扱えるような力では絶対に無いのさ!!)
“だからこそ”と蒼太は思うが彼女達が、そしてもっと正確に言ってしまえば彼女達の御先祖のお歴々達がそう言う人間である、と感じて理解していたからこそ神々はかつて、その願いに呼応するかのような形で姿を顕現させたのであり、挙げ句に彼等に自らの力と祈りの思念の籠もった宝物を送ってはその家系に消える事無き祝福を授けたのである。
そしてそんな神々の気持ちと先見の明とは決して無駄にはならなかった、カッシーニ家もフォンティーヌ家も変わること無く教えを受け継ぎ秘密を守り、それどころかますます、その高潔なる人柄と魂の輝きとを進化、発展させて来たのであり、そしてそれは神々が地上を去られてから後も、ほんの僅かも衰える事無く子々孫々へと至るまで脈々と伝承され続けて行った、己を徹底的なまでに鍛え上げると同時にその持って生まれた類い稀なる霊性をも何処までも何処までも果てる事無く向上させては魂同士の契りを交わした運命の人との間に永遠なる愛を誓い合い、そしてそれらを無限とも思える程に際限なく重ね合わては、終わる事無く育み合って行ったのだ。
「コホン・・・。所でアウロラ」
“話を元に戻すけど”と蒼太が告げると、アウロラはまだまだ言い足りなさそうではあったけれども、我慢して渋々口を閉じる。
「エリオット伯爵。フォンティーヌには万が一の際に“ガイアの青石”を持ち出す為の“封印術”のようなモノがあるはずです。そしてそのトリガーとなっていたのがあなた方の血潮、そのものであると僕は考えているのですが・・・。それで間違いは御座いませんか?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・ああ」
“それで間違いないよ”とエリオットは頷くモノの、崇高なる宝玉である“ガイアの青石”にはそれ自体にありとあらゆる異物や呪物、禍々しきモノを受け付けずに弾き飛ばしてしまう、極めて強力なる“破邪の力”が存在していてそれ故に、フォンティーヌ以外の存在の手には決して扱うことが出来ない、まさしく“彼等一族の為だけに存在している神宝(かんたから)”そのものであったのだ。
そんな訳であったから、万が一にも有事の際には(そもそも論として、そんな事が起きる事自体がまず無い話だったのであるが・・・)、その取り扱い方は困難を極めた、何しろ“それ”を直接手にする事が出来るのは当主から数えて三等親以内の身内の者のみであり、しかも先述の通りにありとあらゆる呪(まじな)い、異物を弾き飛ばしてしまう性質を持っている為に、そのままでは“遮蔽結界”も施せずに布か何かで包み込むことも出来なかったのである。
そこでー。
フォンティーヌが取った最後の手段が“当主自身の血”、そのものを利用する事だったのであるモノの、これを数滴程垂らしたインクで“遮蔽結界法陣”を書き込んだ布を使って宝玉を直接包んで運び出す、と言う方法を取っていたのであって、これによってようやくにして、何事かが起きた際にも安全かつ合理的に宝玉を持ち運ぶ事が可能になった、と言う訳であったのだ(ちなみに“当主の血筋”と言うのはその純潔性が失われないようにするために、何代かに一度、わざと“従兄弟と従姉妹”で結婚させたり、或いは数代続けて“親戚同士で婚約”する事が暗黙の了解となっていた)。
「そ、それでは・・・っ。お父様の輸血された血を、何者かに利用されて・・・っ!?」
「恐らくは、ね・・・!!」
アウロラの言葉に蒼太が頷いてみせるモノの、“その判断に間違いは無いぞ”と彼の直感が告げていた、恐らく“相手”は入手したエリオットの血を使い“当主の間”へと侵入、そのまま隠し階段を発見しては地下の宝物庫へと押し入って、“目的のモノ”を盗み取ったのであろう、と言うのが蒼太の推論だったのである。
「・・・伯爵。先程から質問ばかりで大変申し訳無いのですけれども。もう一つだけ、お聞きしたい事があるのですが」
「うん?何だい、蒼太君・・・」
勝手知ったる幼馴染みの父親に対してだからか、蒼太の言葉遣いがちょっとだけぞんざいになるモノの、この場合はむしろ吉と出た、エリオットにしてもそれなりに親しい相手から余り慇懃にされると言うのもそれはそれで些か悲しくも寂しい気持ちになる、と言うモノであったからだ。
「その“当主の間”の件なのですが。扉や窓辺に強力なる呪いが掛けられていた事を知っていた方と言うのは、全部で何名、いらっしゃられるのですか?また“隠し通路”の事を知っていたのは、どなたとどなたなのでしょうか」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・応えなければ、いかんか?」
「事件解決の為にも、お願いします」
「お父様・・・」
と、最後はアウロラに促される形でまたしても“う、うん・・・”と頷いたエリオットは再び、先程と同じ面子の名前を出した、即ち。
彼の両親と彼自身、そして妻と姉、弟二人のそれをである。
「・・・・・」
(直接会った事が無いから何とも言えないのだけれども・・・。やはりこの内で一番、怪しいのは一緒に病院に行ったと言われている“ヴィクトーさん”かなぁ・・・。いいや、しかし。でも・・・)
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・ねぇ、あなた」
“取り敢えずは”、とそれまでずっと黙りこくって何事かを思案していた夫に対して妻(メリアリア)がソッと提案を試みるモノの、彼女としても同じ事を考えていたらしくて“そのヴィクトーさんとか言う人に、事情を聞いてみてはどうかしら?”と、まるで蒼太の背中を押すかのように言葉を掛けて来てくれたのだ。
「そうすれば、より詳しい事が解ると思うの。ねぇ、そうしましょうよ!!」
「・・・うーん」
“それしかないかな?”とメリアリアに誘(いざな)われる格好とはなったモノの、蒼太もまた自身の腹を決めた、結局最後は自身の嫁とその直感とを信じてみよう、と言う事となり、蒼太はまずはその事についての許可を取るべく、上司であるオリヴィアへと向き直った。
「オリヴィア。正直な話、私としては今回の件についてのヴィクトー氏の証人喚問を執り行いたいと思うのですが・・・。どう判断なされますか?」
「うん」
蒼太からのその問い掛けに、オリヴィアもまた頷いて見せるが今までの話を総合して考察してみるに、彼女もまた、ヴィクトーと言う男が“頗(すこぶ)る臭い”と考えていたのであって、証人喚問を行う事自体には何の反対も無かったのだが、しかし。
問題が別にあった、と言うのはこのヴィクトーと言う男はフォンティーヌの血を引いている訳であり、立派な“国定貴族”の1人であった、この“国定貴族”には万一、何か事件を起こした場合でも確たる証拠が無い場合には“不介入特権”とでも言うべきモノが認められており、要するに余程の事が無い限りかは逮捕どころか取り調べ自体を行う事が出来ないと言う、“法の下の平等”の精神に、思いっ切り反しまくっている悪弊が現代に至るまでしっかりと残ってしまっていたのであった。
「ううーむ・・・」
「いや、だけど。現に血は取っている訳でしょ!?」
「・・・それだけでは何とも言えん。“善意による献血だ”とでも言われてしまえば幾らでも言い逃れは出来る!!」
「ではその後の処置と一連の流れはどうですか?例えばエリオット伯爵の血液は今、何処にどうなっているのか。ちゃんと保管してあるのか無いのか、また事件の夜、彼は何処にいたのか、何をしていたのか。交友関係は?その行動は?今の内から何某かの手を打たなければ、悉く手遅れになります!!」
「ううーむ、それは解ってはいるモノの・・・」
「オリヴィア!!」
「オリヴィア、お願いっ!!“証人喚問”を提案して!?」
“お願いします!!”、“お願いっ!!”と、綾壁夫妻から嘆願要求を突き付けられたオリヴィアは正直に言ってすっかり参ってしまっていたのであるが、本音を言えば彼女だとて“証人喚問”を開きたい、開きたいがしかし、如何せん状況証拠だけではどうにもならないのもまた事実であって、それがオリヴィアをして今一歩、事態の真相解明に向けた具体的な動きを封殺する結果となってしまっていたのである。
「この状況で一番、手っ取り早く動く方法は、ただ一つしか無いのだが・・・。それにエリオット伯爵の力を借りる必要がある!!」
そう言うとオリヴィアは再び画面の中のエリオットへと向き直った。
「エリオット伯爵。誠に申し訳無い話なのですが私達は弟君のヴィクトー様が、この件についての何事かを御存知なのでは無いのか?と考えているのです。そこでもし、よろしければ真相解明に向けてエリオット伯爵御自身に、御協力を頂きたいのですが」
「それは、勿論だ。あれは我が家の家宝であり一族全体の命運を握っていると言っても過言では無い、それを取り返してもらえるのならば、出来る事ならばなんでも助力は惜しまないつもりだよ・・・」
「左様でございますか、それならば話は早い。エリオット伯爵の名において“特別解明審査会”の開催を申告していただきたい!!」
「・・・・・っ!?」
「!?!?!?!?!?」
「オ、オリヴィアッ。それは・・・っ!!」
その場にいた全員から思わず響(どよ)めきが巻き起こるモノの、この“特別解明審査会”と言うのは何かと言えばそれは所謂(いわゆる)一つの“貴族の”、“貴族による”、“貴族の為の弾劾裁判”そのものであって、幾つかあるそれらの内で最も軽くてスピーディーに展開する事が出来る、超略式のモノだったのだが、しかしこれにはある利点があった、と言うのは確かに、この審査会自体は対した罪に問うことが出来ずに極々軽い刑罰を科すだけで終わりになってしまうのであるが、一方でこれが正式に発動されてしまうと対象者(即ち被告)はその審査会終了時に至るまでに行動、自由を著しく制限される事となり、日常生活からは完全に切り離される事となる。
その為、中々尻尾を見せない知能犯に対して、あくまでその自由を奪うために本格的な弾劾裁判とセットで行われる、と言った使われ方をする例が非常に多かったのであるが、オリヴィアは先ずはこれを発動させる事でヴィクトーの自由を奪い、その隙に事件の全貌を解明しようと企てたのだ。
「現状で、ヴィクトー氏が何某かの事情を知っている可能性はズバ抜けて高いと言えます。確か審査会自体は“状況証拠”のみであっても原告の申し立てさえあれば、開く事が出来る、と聞き及んでおります。何卒御助力下さい!!」
「う、うーん、そうか・・・」
と、エリオットも思わず腕を組んで頭を垂れてしまっていた、明らかに気乗りしない様子であるが彼だって人の子である、こんな事件で自分の身内を疑いたい訳など、心の何処を捜したとしても何処にもありはしなかったのだ、そこへ持ってきて更に弟を“特別解明審査会に掛けろ”と言う、確かに躊躇している場合では無いにしても、流石に幾らなんでもやり過ぎなのでは無いかと思わない事も無かったのである。
「しかし、まだ証拠も出て来ていないのだろう?流石にそれで身内を疑うと言うのは・・・」
「伯爵・・・」
するとそれまで黙っていた蒼太が再びその口を開き始めた、彼はどうしても早めに問い質しておきたい事があったのであるが、何かと言えばそれはヴィクトーの行動予定、即ち彼の日程表であったのだ。
もし万が一にも、彼が近々外国にでも行くのであれば、下手をするとそこへと向けて“ガイアの青石”を持ち出されてしまう危険性すらあった訳であり、しかもそれならば国境の検閲所で止められたとしても、なんら問題は無い事だった。
何故ならば貴族には、例の“不介入特権”があり、警察や軍隊であっても証拠がなければおいそれとは手出しが出来ない上に、よしんば宝石について問い合わされたとしても“これは我が家に伝わる秘宝である、私が持っていても問題は無いだろう?”と言われてしまえばもう、それ以上強く出る事は出来なくなってしまうのである。
「ヴィクトー氏は、“何処かに行く”ような話をされてはいませんでしたか?特に国外に行くような話等を・・・!!」
「・・・具体的な事を、聞いた訳では無いのだが」
すると蒼太の熱意に根負けしたのか、やや躊躇いがちにではあるモノのそれでも、エリオットが少しずつ少しずつ言葉を紡いで応え始めた、“毎月の月末の金、土、日と、必ずプロイセンのシュバルツバルトに行くそうだ”と。
「彼の日課になっているそうなのだ・・・。なんでもその地方の最大都市である“フライブルク”に仲の良い友人がいるらしくてね・・・。そう言えば!!」
そこまで口にしたエリオットはハッとなってこう続けていた、“その友人は、宝石商を営んでいると聞かされている”と。
「・・・・・っ!!」
「・・・・・っ!?」
「お父様!!」
「おいおい・・・!!」
「それ、“ガチ”じゃないのか・・・?」
と、またもその場にいたエマやクレモンス達がざわめき始めるモノの最早、そんなモノに構っていられる時間的余裕等、その場にいた誰にも何一つとして存在してはいなかった、それよりも何よりも、先ずは“ガイアの青石”である、確認したところ、今月の月末まではあともう一週間も無かったのであって、今から審査会の申請を行ったとしても、それが通ってヴィクトーの身柄を拘束するまで5日は掛かってしまうだろう、最早一刻の猶予も無い。
「伯爵様」
“お願いです”と蒼太は言った、“僕達を信じて下さい”と、“必ずやガイアの青石を取り戻して見せますから”と。
「どうかお願いします、僕達に協力をして下さい!!」
「エリオット伯爵、お願いします!!」
「お願い致します、伯爵!!」
「・・・・・」
蒼太やメリアリア、そしてオリヴィアが次々と頭を下げ続けるモノの、どうしても彼は首を縦には振らなかった、この期に及んでもやはり、エリオットとしては弟を疑いたくは無かったし、それに何より“証拠が無い”と言うその一点が、彼の足をどうしても止めてしまっていたのである。
「エリオット伯爵、どうか僕達を信じて下さい。必ずや“ガイアの青石”を取り戻して見せますから!!」
「お父様」
“お願いします”と蒼太が尚も食い下がろうとした、その時だった、それまで黙って事態の推移を見守っていたアウロラが、突如としてエリオットの目前へと進み出ては、“蒼太さんに協力してあげて下さい!!”と、再びの助け船を出してくれたのだった。
「フォンティーヌの為にも、お願いします!!蒼太さんなら、必ずややり遂げて下さいますから!!」
自身も思いっ切り頭を下げつつ、心の底から声を迸らせるモノの、その言葉じりはいつものお淑やかな彼女のそれでは到底無かった、あくまでも彼の事を信じて共にあろうとする、暖かくて張りのある、確かなる力強さに満ち溢れていたのだ。
「お父様!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ふうぅぅー・・・」
“解った”と、暫しの沈黙の後に深く息を吐き出してからエリオットは告げた、“解ったよアウロラ”と、“私も彼等に協力する事にしよう”とー。
「・・・・・っ!!」
「・・・・・っ!?」
「それでは・・・っ!!」
「ああっ!!」
エリオットはようやくにしてその首を、縦に振ってくれたのであり、これによって何とか事件は、そのギリギリの所で解決へと向けた第一歩を踏み出す事となったのである。
「いやはや、君達は対したモノだ。事件発覚から僅か半日足らずでもうその核心を突こうとしている・・・!!」
“特に”とエリオットは思った、“蒼太君の働きが、特に大きなモノだったな”と。
さっきの推理や決断力等も実に見事なモノだったし、それに先程のアウロラの話から見ても、どうやら彼は娘の予想よりも大分早くにこちらへと帰還を果たしたようである、その予想外の行動力と発想力は人知を持って計り知る事の出来ない彼の立派なアドバンテージとして機能しつつあったのであって、現にそれはここに来て遂には自分すらも、このエリオット・アミン・ド・フォンティーヌすらも動かすに至っていたのだ。
(蒼太君が我が家に、婿入りでもしてくれたらなぁ。彼に全てを任せて私は、妻と2人で悠々自適な生活を送る、と言う訳にはいかないかな、やっぱり・・・!!)
と、そんな事を頭の片隅で考えながらも、それでもエリオットは見逃さなかった、セイレーン本部に報告を入れている最中や、彼の、即ち蒼太の事件の考察を聞く際のあの、彼を見つめるアウロラのウットリとした表情と眼差しとを。
(アウロラは、本気だろうな。しかして蒼太君の気持ちは一体、どのようなものなのだろうか・・・?)
フォンティーヌ家の当主としてよりはむしろ一人の父親として、事件とは全然関係の無い問題に頭と感覚とをフル回転させながらもエリオットはアウロラとは別の意味で蒼太に対する悩みを抱える事となっていったのであった。
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本当は“テイク・オフ”の後書きの箇所で書こうかどうか迷ったのですが(申し訳御座いません、確かどこかの話の前書きか後書きかで一度しか言及していなかったので、もしかしたなら皆様方ももう、お忘れかも知れない、と思いまして敢えて記載するのを見送らせていただきました)。
蒼太君には確かに、持って生まれた素晴らしいまでの霊力と、そして極めて強靱なる肉体的な素質があって、彼はそれをこれ以上無いほどに厳しい試練と努力によって見事なまでに開化させては困難に打ち勝って来た訳なのですが。
それと並んでもう二つ程、とても重要な力があります、その内の一つが縁の力、所謂(いわゆる)“人望”であり、そしてもう一つが“運”そのものです。
そしてそのどちらもが、ある一つのパラメータに直結しているのですがそれは何かと申しますと、人としての完成度、即ち人格(霊格)の事なのです。
私はかつて、こう教わった事があります、“運も実力の内なのでは無い、運こそ実力の全てなのだ”とー。
例えば今回、八方塞がりな状況の中で、それでもガリア帝国に帰ろうとしていた蒼太君とメリアリアちゃんを助けてくれたのはノエルでした。
しかし彼女だってもし、蒼太君達が今までの友人達と同じように自身を見捨てるような人達だったのならば、わざわざ危険を犯してまで助ける事はしなかったでしょうし、それ以前にエカテリーナやルクレールと言った難敵達の情報を蒼太君達は仕入れる事が出来なかったでしょう。
またかつて、カインとの戦いの最中に危機に陥っていた蒼太君を助けたのは、他ならぬメリアリアちゃんだった訳なのですけれども、それだってそれまでの二人の絆(生まれる前から続いていた二人の互いへの愛の共鳴)と、不器用な所もあるけれども、それでもお互いのお互いに対するこれ以上無いほどに深い愛情(特にメリアリアちゃんの蒼太君への真摯にして掛け替えの無い程にピュアで確かな愛の光の煌めき)があっての事ですし、それが無ければあの日あの時あの場所で蒼太君は確かに、その人生を終えていた筈です(ただし彼の名誉の為に敢えて言わせていただきますと、もし最初からまともに戦う事が出来ていたならば、もっと早くに蒼太君は勝つことが出来ていたでしょう)。
もっともそれだって、蒼太君がそれ程までにメリアリアちゃんの事を愛し続けていたからこそ実現した事だったんです、確かにメリアリアちゃんはその身に、もっと言ってしまえば“魂そのもの”に、“これ以上無いほどに純粋にして絶大なる霊性の輝き”を宿していますがそれを発揮するためには、それに負けないくらいの“超絶的なる愛の力”が必要になります。
何故ならばその人の為だけに自身の魂と瞬間的に直結出来るほどに一心不乱に深く深く、集中して祈りを捧げなければならないからであり、もう少し詳しく言ってしまいますと、意識を極めてクリアーな状態にしなければならないからですが、実際問題として命の掛かった戦場において、何の躊躇(ためら)いも躊躇(ちゅうちょ)も無く、愛する人を守る為に我が身を危険に晒す事が出来る人が、果たして何人いるでしょうか(蒼太君はそれをやったんです、それもあの日、あの時、あの場所での事だけではありません、これは彼の性格を鑑みていただければ解っていただけるでしょうけれども、生まれ変わって出会う度に、何度も何度もその時のメリアリアちゃんの事を愛して守り、助け続けて来たのです。それだけメリアリアちゃんの事を深く深く真剣に、一途に思い続けていたのですね。だからこそメリアリアちゃんもそれに応える形で己の愛を、魂の煌めきを彼へと捧げ尽くしたのです、この子も元々、凄い純粋で一途な子なのでその部分でお互いに共鳴するモノがありましたし、特に蒼太君にそれを見せられてからは“この人の愛は本物なんだ”、“こんなにも自分の事を思い続けてくれていたんだ!!”と感じてその瞬間、嬉しくて嬉しくて堪らなくなり、もうそれから先は後戻りが出来ない位に、その他の事がどうでも良くなる位にまで激しく燃え上がって行っちゃったんですね)。
蒼太君はちゃんと愛を知っていました、人を愛する事を知っていました、そしてメリアリアちゃんと愛し愛され、その結果として彼女に愛の何たるかを教え、また自分も彼女から“それ”を教わったのです。
これらのことを見てみても、“運こそ実力の全て”であり、そしてそれは=で人格、霊格の完成度である、と言うのが決して間違いでは無い事がお解りいただけるかと思います(剣を振るう速度、強さ、それか或いはパンチやキックのそれらと言うのは確かに、それはそれで大切なモノなのですが、そう言ったモノと言うのは“人としての実力”と言うよりもどちらかと言えば“暴力的身体能力”、或いは“戦闘能力”とでも言うべきモノであって、要するに単なる“技量”でしかありません)←余談ですが私はそれを“影の道”と言うような呼び方をしています、何故かと申しますとそれは、“本来の肉体の使われ方からは外れている”と言う意味からです(本当の“それ”と言うのは、大好きな人と愛し合う為にこそ使われるべきものだ、と聞いた事が御座いますが、要するに蒼太君は、そして“リュカ”はそう言った使い方をしていたにも関わらずにあれだけの強さ、凄まじさを誇っていたと言うことです。もっとも如何に復讐や逆襲の為だったとは言えどもやはり、元来は誰よりも清らかで優しい心を持っていた彼等からすればそれは恐らく、きっと物凄く悲しくて、辛い日々の連続だったに違いありません、それでも彼等は戦い続けました、それは多分、父親の事があったから、と言うのもそうなのでしょうけれども、何よりかによりの話としてはやはり、“大切な人を守りたい”、“助けてあげたい”の一心からだったのだと思います。そしてそんな彼等、即ち“リュカ”と“蒼太”の気持ちを一番、側で感じていたのは、理解していたのは他ならぬ“花嫁達”だったに違いありません。それはそうでしょう、心と体で、魂で繋がり合っている夫婦だったのですから、そんな愛する夫の苦悩を、悲しみを理解していなかった筈がありません。だから、と申しますか“彼女達”は“リュカ”以上に魔物達が許せなかったと思うのです。元々、彼女達と言うのはリュカに対して凄い純粋で一途で真面目な思いを、愛情を抱いている子達なんです、だからこそリュカによって改心させられた者達はともかくとしましても、それ以外の魔物達のそう言った根源的な汚らしさや卑劣な考え、性質とは、どうしても相容れなかったに違いありません。やっぱり人間、どうしたってダメなモノはダメですし、嫌なモノは嫌なんですよ、無理があるんです)。
それにもう一つ、こんなお話しも御座います、皆様良くバトル漫画やアニメなどで最終決戦等で主人公とライバルキャラが一騎打ちをして殆ど同時に攻撃を繰り出したのに、一方は無事でもう一方だけやられてしまった、と言う展開を見た事は御座いませんか?あれって現実に起こり得るそうです。
それは大抵、主人公と言うのは最終決戦に至るまで多くの試練を乗り越えて来る訳なのですがそうする中で人々から“有り難う”、“貴方がいてくれて本当に良かった”、“どうか御無事で”と言った、“応援のエネルギー”がもたらされるのだそうです。
そしてそれはこの現実的な世界においては1、2秒だとかのほんの僅かな時間に徹底的に作用するように働いてくれるのだそうです(最初は苦戦していたのに、何故か段々勢いに乗って来たとか、相手が突然、バランスを崩して蹌踉(よろ)けただとか。要するに最後の瞬間に自分の思い通りの展開になるように事を運んでくれるそうです)。
反対にそれまで散々、酷い事をして来た人には、そう言う大事な場面でそれが一気に跳ね返って来るのだそうです(“あの時はよくもやりやがったな!!”って言うやつですね、所謂(いわゆる)一つの“怨念”と言うヤツです。すると足を引っ張られてしまい、例えば急に集中力が無くなってしまった、だとか、何かに躓いて転んでしまった、だとか、そう言う風になるのだそうです)。
だから人格(霊格)と言うのはバカに出来ないんです、それは人々の織り成す“絆の力”、所謂(いわゆる)“縁”と“運”とに直結して来るからなんですね。
お互いに気を付けて行きましょう(些かクサい事を言ってしまい、申し訳御座いません)。
あともう一つだけ、お断りさせていただかなければならない事があります。
それは何か、と言われますと作中でも言及させていただいていた事なのですが、蒼太君やメリアリアちゃんは(アウロラもそうなのですけれども)確かに、超能力者の血を引いている、肉体的にも素晴らしい素養を持った一族に生まれ付いてはいるのですが、通常、そう言う家系に生まれ付く魂と言うのはキチンと愛を知り、己を鍛え、その身に宿りし霊力を、そして体力や精神力等をキチンと発揮する事が出来るモノだけだそうですよ(考えていただければ当たり前だと思われますが、パソコンを全く使えない人に対してパソコンを与える人はいないでしょうし、仕事においても同様です、そんな人にパソコンを使う部署は任せられません、そう言う事で御座います)。
敬具。
ハイパーキャノン。
追伸です。
ちなみに最後に言わせていただきますけれども、私は“ドラクエライバルズ”や“ドラクエタクト”の世界観と言うものは、“ドラクエV本編”とは何の関係も無い、単なる“パラレルワールド”だと思っておりますので(現に運営している公式も違いますし、第一本編に何ら世界観が反映されておりませんから)、どうぞ悪しからず御了承下さいませ。
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