メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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ガリア帝国編

心の働き

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 読んでいただければ解っていただけるかとは思われますが。

 本当は“快楽が”と言うよりも、“快適さこそ”が、そうなのでしょうね、より正確に言い表すのならば。
ーーーーーーーーーーーーーー
「・・・・・っ!!」

「・・・・・っ!?」

「これが名にし負う“レウルーラ”。そしてこれが“超新星”か・・・!!」

 セイレーンの本部ビルに着いて各種手続きを済ませ、ノエルを警護と当番の者達に任せた後で蒼太とメリアリアは他の“女王位”や付き添ってくれた“幼馴染達”(セイレーン隊員)と共に一気に地下11、2階に2フロアぶち抜きで広がっている“女王の間”へと降りて行った、そこで。

 彼等を中心として円陣を組み、目を瞑って意識を彼等へと向けて集中し始めたオリヴィア以下仲間達に対して蒼太達は二人で共同で、“意識共有魔法”を発動させては彼等に自分達の得た経験を“擬似的に”追体験してもらうモノの、イメージと感覚とでそれらを得たエマやクレモンス、イリス達からは改めて驚嘆の声が挙がった。

 無理も無いだろう、そこに“いた”のは紛れもなく自分達の“怨敵”として名高いレウルーラの誇る最高戦力、“超新星”の内の大看板、“黄昏のルクレール”と“青天のエヴァリナ”の両名に他ならなかったのだから。

「うーん、成る程・・・!!」

「確かに厄介そうな、相手ではあるよなぁ・・・」

「しかもこれ、まだ“本気”を出していなかったんでしょ!?」

「ええ・・・!!」

 他の面々から出た言葉に、メリアリアが頷くモノの実際問題としてこの時に、ルクレールとエヴァリナの両名がその実力を隠していた事は間違いなく、それ故にもし、向こうが“本気”を出していたのならば此方も全力を持って応戦せざるを得なかった訳であって、もしそうなっていたのならばその時に発生していたであろう“超高エネルギー干渉波”の余波を受けてあの辺り一帯が壊滅的被害を受けていたであろう事は、ほぼほぼ疑いようのない事実であった。

「開発中だった土地の周囲です。多分、立ち退かされたのか、或いは買い物か何かに出ていただけなのかは、定かではありませんでしたけれども。少なくともあの時点では付近の住宅地や他の都営団地の中に、人の気配は殆どありませんでしたから・・・。だから別段、“挑発”を受けてしまっても良かったと言えば良かったのですが・・・」

「それだって、他所様(よそさま)のお家を勝手に壊すのは良くないわ。だから私達、そのまま見逃す事にしたのよ、オリヴィア!!」

「うむ・・・」

 そんなメリアリアからの説明に対して、オリヴィアは些か得心したように頷いて見せるが、さて。

「その件に関しては“よくやった”と言っておく、流石は“光輝玉のいばら姫”だなメリアリア!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「ま、確かにその結果として、奴らを取り逃がす事にはなったが。少なくとも関係の無い第三者を巻き添えにはせずに済んだのだから、それは“良し”とせねばなるまい。それでこそ誇り高き“女王位”だ!!」

「しかしオリヴィア!!」

 とエマが口を開いた、“こんなことならば、メリアリアの護衛に誰か1人を付けてやるべきだったのではないか!?”と。

「そうすれば、その時点で3対2となり数的優勢は保たれていたはず。そうすれば、他にやりようも・・・!!」

「いや、まてエマ」

 と尚もオリヴィアに意見具申を行おうとしていたエマに対してクレモンスがあくまで静かな口調で“待った”を掛けてくるモノの確かに、彼女としてはこの“同期にして親友”でもある戦友の言い分も解り過ぎる位にまで良く解ってはいたのだがしかし、一方で“それ”をやってしまった場合のセイレーン本部における人的劣勢と言うモノはもはや、どうにもならない所まで来てしまっていたであろう可能性が高かったのもまた、無視のできない事実であった、と言うのはただでさえメリアリアが抜けた穴を埋めるために、オリヴィアを始めとした女王位達は必死になって奔走しなければならなかったし、戦線を支え続けなければならなかったと言うのに(逆に言い換えればそれだけそれまでメリアリアに任務の比重が行っていた、と言う事である)、そこへ持って来て更にあと1人がいなくなってしまう、等と言う事態になった日にはもはや、全員が首を括るか討ち死にするかを選択しなければならなくなる所ですらあったのだ。

「あの時点でとてもの事、もう1人を行かせる余裕は我々には無いよ、って言うか君だって解っているだろう?」

「むうぅぅ・・・っ。まあ、それは・・・っ!!」

「・・・・・」

 “すまないが”とあらかた意見が出尽くした所でオリヴィア自身が口を開いた、“あの時点ではあれ以外はどうする事も出来なかったよ”と。

「我々は、メリアリアの事を見抜いてやる事が出来なかった、そしてその為の援助も何も誰もしてやれなかったのだ。そう言う意味でも我々には君を非難する資格は無いし、如何に蒼太の援助があったとは言えども遠い異国の地で女王位としての誇りを失わずに、よくやってくれたと思うよ。感謝する、メリアリア!!」

「い、いや。別にそんな事は・・・!!」

「お礼を言われる程の事では・・・!!」

 メリアリアに対して頭を下げた後で“蒼太も”と言って彼にも同じようにする、この年上の大騎士に対して蒼太もメリアリアも些か慌ててそれを制止させるモノの、彼等としてみれば別段、当たり前の事をしただけでありお礼を言われるような事など、何一つしていないと言う思いがあったから、逆に照れ臭さと申し訳なさとでいっぱいになってしまう。

「それにしても、だ。蒼太。君は面白い持論を持っているようだな」

「・・・・・?」

「“心の働き”に付いてだよ、さっき“プリンセス・ミネオラ”が詳しく話てくれていたぞ?」

「ああ・・・」

 “私にも聞かせてくれないか?”とそう言って興味深そうな表情を浮かべるオリヴィアに対して蒼太が前にメリアリア達に聞かせたのと同じような説明を、彼女に語って聞かせるモノの、その内の幾つかはオリヴィア自身にとっても初耳となる、非常に刺激的な内容を含んでいた。

「なるほどな、“心とは肉体に起因するモノ”か・・・」

「そうです、そして」

 “基本的には快楽を求めるように作り出されているのです”と蒼太が更に続けるモノのこの場合の快楽と言うのは何も、セックスにおける“性的愉悦”のみを指している訳では決して無く、例えば美味しい料理を食べた時や心地好いマッサージを受けた時などに、誰もが覚える感覚である“もっと味わいたい”、“もっとして欲しい”と言った思い、それら全般を指し示していたモノであった。

「心と言うのは脳と一緒で確かに、肉体における魂からの受信装置です。・・・もっとも彼方(あちら)が“意識”や“意思”と言った根幹部分を司るのに対して此方(こちら)は主に“感情面におけるそれ”なのですけれども、それに加えてもう一つの、重要な役割が存在しています。“その時々に応じて肉体が感じた感覚や感情等を魂へともたらす際の送信機”及び“メモリー”としてのそれらが与えられているのです」

 蒼太が言う所によれば人は皆、誰しもが必要があってこの世に生まれて来るのであり、そしてその理由とは主に、“この世で森羅万象を体験して魂を成長させる事”にあるのだという。

 当然、その為には“こう言う時にこう言うことをされたらこうなった”だけではなくて“こう思った”と言う“感情面における変質”を記録して魂へと送り届ける送信機及び記憶媒体が必要となって来るのであって、その両方を担っているのが“心である”、と言う事であったのだ。

「“心”と言うものはそれだから、与えられる刺激に対して非常に敏感に、シャープに反応するように出来ています。これがよく“心は壊れやすい”とか“感化されやすい”と言われている理由です。そしてだからこそ、人は人の“心”を弄んではいけません。なぜなら心の味わう“感覚”と言うモノは全て、ダイレクトに“魂”へと伝わるように出来ているからなのです」

 蒼太は続けるモノの程度の差こそあれ通常、“人の魂”と言うモノは誰しものそれが、その人その人の持ち合わせているモノの中では最もピュアで真っさらであり、かつ優しくて美しいモノなのであるが、一方でだからこそ、と言うべきか、非常に脆くて傷付き安いモノでもあるのだ。

 では何故そんな魂が容易く壊れてしまわないのか、と言えばそれは、偏(ひとえ)に宇宙の持つ無上無限なる愛の輝き、即ち“確かなる光の波動”をその身に宿しているからに他ならなかったのであるが、これがある故に魂は何度踏み躙られても痛めつけられたとしても、それでも決して諦める事無く立ち上がっては前に進もうとするのであり、そしてその結果として果てしなくその強さ、崇高さをも増し続けて行く事が出来るのである。

「だから人の心と言うのは弄んではいけません。何故ならばそれをやる、と言う事は即ち、その人の最もピュアで純粋な部分を、つまりは“愛”を不用意に踏み躙って傷付ける事になるからです、魂とは=で愛の顕現それそのものなのですから」

「ふうむ、なるほど・・・」

「ちなみにその“心”なのですが・・・。さっきも言いました通り、基本的には快楽を求めるように形作られているモノなのですけれども・・・。それにはちゃんとした、肉体維持の観点に基づくある理由があるのです」

「・・・・・?」

 “オリヴィア”と、そこまで話を進めた時に、不意に蒼太は聞き返して来た、“貴女はマッサージを受けた事があるか?”と。

「例えばいつもいつもでなくともいい、身体が凝ってしまった際などに、マッサージを受けた事はありますか?」

「無論だ」

 とオリヴィアは告げるがこの無敵を誇っている大騎士な彼女とて何も、万年ケア不要な程に便利な肉体を持って生まれて来ている訳では決して無く、それどころか“不測の事態があってはならぬ”と、鍛錬や戦闘の後でもし、疲労や異変を感じた場合には速やかに医療機関なり然るべき人物なりに会いに赴き、見立ての上に施術を受けるようにしてもらっていたのである。

「疲労が溜まっている時や、凝っている時に受けるマッサージと言うのは篦棒に気持ち良いですよね?“もっとやって欲しい”と思いますよね?」

「それはそうだろう、誰もが思うに決まっているさ」

「つまり“性的快楽を除けば”ですけど、本来の意味で言えば“快感”と言うのは異常が治癒している際に発生する、極めて重要なる感覚だと言う事なんですよ」

「・・・・・っ!!」

 オリヴィアはここに来て、ようやくにして蒼太の言わんとしている事が解ってきたのであるが即ち肉体の感じる悦楽と言うモノはそこに掛けられている負担やストレスからの解放を意味しているのであり、それが“もっと欲しい”と言う事は即ち、まだ異常が完全には解消されてはいないのだ、と言う事を意味している事に他ならなかった。

 即ち、“~がしたい”と言う欲求そのものが元々、生きる必要があるから引き起こされて来るモノなのであって、逆に言い換えれば用が無くなりさえすればそんな感覚自体が落ち着いて来てしまう筈なのでありその証拠に例えば、どんなに美味しそうなステーキであったとしても、満腹の時に見たりしたなら流石に食べたいとは思わないし、それどころか下手をすれば吐き気すら催してしまうかも知れない。

 一方のマッサージに付いても同様な事が言えるのであり、身体が十二分に解れ切った状態でのそれは単なる不必要な身体接触でしか無くて、人によっては不快感と言うよりも煩わしさを覚えて敬遠してしまうかも知れなかった。

「つまりは“快感”とは本来であれば、肉体と精神とを正常に保つための指標である、と言う事か!?」

「正解です、オリヴィア!!」

 オリヴィアの解答に蒼太は静かな笑みを浮かべたままで応えるモノの、しかし彼女にはまだ、あと二つだけ気掛かりな点があった。

「さっき、“性的な快楽を除けば”と言ったな?ではあれは何のために起きてくるのだ?それともう一つ、さっきの話が本当であるのならば、我々の心や思いと言ったモノは須(すべから)く単なる条件反射の連続であり、しかもそれは自らの都合に合わせてその時々に応じて変わって来る、と言うことになるのだが・・・」

「・・・まず“性的な快楽”についての解答からご説明致しますが、滅茶苦茶単純に言うのならばあれは、気持ちのいい場所を連続して刺激され続けた事による多大なる条件反射の重複、ただそれだけの事でしかありません。だから別段、好きでも無い人とのセックスであっても気持ち良くなれる事はなれるのですが。・・・ただしそこに“愛”が加わって来る事で、行為そのものの持つ意味と感じる愉悦とが、全く違ったモノになるのです」

 そう言って蒼太はオリヴィアに更に説明を施した、心から愛している相手とのセックスと言うのは恐ろしい程に気持ち良く、かつ心地好くなれるモノであると言う事を、心の底から燃え上がってその結果、どこまでもどこまでも求め合う事が出来るのだ、と言う事をー。

「“愛欲”とはよく言ったモノでして、愛していればこそ愛しくて愛しくて堪らなくなり、“もっと相手とくっ付いていたい”、“もっと一つになっていたい”、“もっと相手に来て欲しい”、“自分を気持ち良くして欲しい”、“相手にも気持ち良くなってもらいたい”、“気持ちと感覚とを一つに重ね合わせたままで、いつ果てるともなくイキ続けたい”、“相手とずっと解け合っていたい、もっともっとずっと深く、ずっと激しくー”。本当に、そう際限なく思い続けてしまうものなのですよ。ねっ、メリー?」

「も、もうっ。蒼太ったら・・・!!」

 そう応えてメリアリアはしかし、嬉しそうに蒼太の右腕にソッと自らの両腕を巻き付けてはその身を擦り寄せるようにするモノの、心なしかその顔は赤く上気しており瞳はキラキラと輝いて若干、潤んでいるようにも見えた。

「なるほど、君の言いたい事はよく分かった。心の籠もった相手との逢瀬と言うのは彼の者に全身の意識、神経が全て向き切る為に心と感覚とが一層シャープになるのだ、と言う事もな。しかしその“心”については如何(どう)なのだ、“愛情”についてはどうだと言うのだ?さっきの君の説明では“我々が感じる思い、感情”と言うモノはその大凡(おおよそ)の部分が単なる“生理的欲求”の発露、“条件反射の連続”に過ぎない、と言う事であったのだが・・・」

「オリヴィア、僕はね・・・」

 蒼太はハッキリとこの年上上司の氷炎の大騎士に告げた、“魂の存在を信じているんです”と。

「いいえ、ハッキリと感じている、とでも言って良いでしょう・・・。それも“心”で、ね」

「うむ。それについては私もまた同様だ。しかし君はさっき、“心”とは・・・」

「ええ、オリヴィア。確かに言いましたよ、“肉体に起因するモノである”と」

 “ですが”と彼は語り続けた、“こうも言った筈です”と、“心と魂とは繋がっていると”とー。

「だから別段、心の奥底、もしくはその先の領域に魂を感じたとしても、それは特にこれといって何ら不思議な事では無いんですよ」

「うむ、なるほどな・・・」

「話を先に進めさせていただきますけれども、僕は魂の存在を信じているんです。そして“魂”とは先程申し上げさせていただきました通りで“大いなる宇宙の愛の顕現そのもの”に他なりません。即ちそれは、凡そ人間の持ち合わせているモノの中では唯一にして無二なる“愛の愛たるを知っているモノ”、要するに“本質”に他なりませんがそこから湧き上がって来た、これ以上無い程にピュアで確かで暖かなる光の波動の迸りが思いと化して具現化したモノ、それこそが所謂(いわゆる)“愛情”と呼ばれているモノだと思うんですよね」

「・・・・・」

「それは感情を超えた感情であり、“大いなる愛の一部である”と、僕は思っています」

 “もっと正確に言ってしまうと”と蒼太は続けた“意思と呼ばれているモノに近いものなのかも知れない”とそう言って。

「そもそも論において“意思”と言うのは都合によって左右されるモノではありません。多くの場合、それは意識的にせよ無意識的にせよ、“その人の本質から滲み出る本心そのもの”であったりだとか、また或いは“人生を通したライフワーク”のような、所謂(いわゆる)“本当にやりたい事”等がこれに当たる訳ですけれども、これはその人の持っている“魂の性質の紛う事無き発露”であったり、もしくは“生まれて来る前の魂同士の約束事”が関わって来たりする場合が多いのです」

 そう言うと蒼太が再び説明を始めるモノの、それによれば元来、人間はこの世に生まれて来る際には必ず目標を決めてから転生してくるそうなのであるが、そこには魂の“今世は必ずこれをやるぞ!!”とか“今世は絶対にこうやって生きてやるんだ”、“生き抜いてやるんだ!!”と言うような、強烈なまでの“意思”が込められているのであり、そしてもっと言ってしまえばそれらは“頼むから今世はこうして生きてくれよ”、或いは“生き抜いてくれ、頼む!!”と言ったような、自分自身に対する切実なる祈り、願いの発露そのものだと言っても良かった。

「“大いなる宇宙の愛の結晶”たる“魂”、そこから溢れ出る思いって言うのは物凄い“確かなるモノ”だと、僕は思っているんですよね、混じりっ気の無い“本物の光そのもの”って言いますか。ましてやそれが“祈り”の領域にまで高まってしまいますとそれはもう、絶対的なモノになります。不要な雑念を全て取り除いて相手に、と言ってもこの場合ならば自分自身に対して、ですけれども捧げ尽くされる純粋なる願いの結実。それはもういっそ“誠意の塊”とでも言って良いモノになるからです」

 “そしてそれこそが”と蒼太は言った、“魂の意思の発露そのものなのであり、そしてそのお陰で自分達は生きている事が出来るのだ”とー。

 何故ならば魂が“意思の力”を発動させてこの世に来てくれなかったのならば自分達が生まれて生きる事はそもそも出来なかったに違いなく、もしそうなれば蒼太の場合は“メリアリア”を始めとしたありとあらゆる人物、存在と出会う事が出来ずにその上、彼等との関わり合いを通じて学び得る事の出来た“経験”を何一つとしてモノにする事が出来ずに終わってしまっていたであろう事は、想像に難くない事象であった。

「そう考えれば解っていただけるかと思うんですけれども。意思って言うのはいわば、自分自身に向けられている愛情そのものなんですよね?だってそれは“自分を生かしてくれる原動力”であり“魂の生きる目的”そのものな訳ですから。それが他人に向いたモノこそが“愛情”になるとおもうんですよ、だから単なる条件反射、生理的欲求とは訳が違うと思うんですよね。さっきも言わせていただきましたけれども、それらと言うのは“その人の本質から滲み出る本心そのもの”、また或いは“その人の持っている魂の性質の紛う事無き発露”だと思いますから、逆に言えば一々都合に合わせてそう簡単に変われる訳が無いんですよ」

「ううーむ・・・」

「それに加えてさっきも説明をさせていただきましたけれども。魂によっては“もう一度巡り会いたい”、“この人と結ばれたい”、“この人と一緒に生きてこう言う風になりたい”と言う、切実なる思いを抱き合っている者達がいる事もまた事実なのです。大いなる“輪廻転生”を繰り返す中で、それだけの絆を育み合って来た、と言う訳なのですけれどもそれらの魂同士における、相手に対する溢れんばかりの愛慕と言うのは想像を絶するモノがあります。お互いが愛の結晶である魂から迸り出(いず)る純粋なる愛の輝きによって照らされ合っているために、その照り返しの反復が無限に増幅して行っては強さをどんどん増して行くからです」

「それは解らんでもない、しかしな・・・」

「もっと解りやすく言ってしまいますとね、オリヴィア。僕は“愛情”とは大いなる宇宙の愛の結晶、即ち“確かる暖かさの顕現”たる魂同士が紡ぐ絆の発露だとも思っているんですよ」

「なるほどな」

 とそこまで言われた時にようやくオリヴィアは合点が行ったがそう言う事ならば話は別だ、特に“魂の意思、思い”と言うのはそれ自体が非常なまでに純化された”光そのもの”と言って良く、もっと言ってしまうのならば、それらはいっそ願い、祈りとでも言い換えてしまっても良いものであって、そしてそれらの内でも特に、お互いがお互いに向け合っている“思い”がこれ以上無い位にまで強固に結び付き合わさって出来上がったモノこそが“絆”と言われる“愛の軌跡”そのものに他ならない。

 それから迸り出(いず)るモノこそが“愛情”である、とするのならばそれは確かに魂同士の真心の共鳴、お互いのお互いに対する真摯な気持ちの結実が顕現したモノであって、しかもそれらは互いに生きれば生きた分だけ果てしなく重なり合い、幾重にも組み合わさってその強さ、確かさを更なる高みへと打ち昇らせて行く、と言う特性をも兼ね備えている事になるのだ。

「だから“心から愛しています”と言うのはとても大切な言葉です。何故ならばそれは“魂で感じて愛しています”と言う事に他なりませんからね。それを心に何の衒(てら)いも憚りも無く、自らの本質から迸る意思と真心とで自然と口にする事が出来る、と言うのは魂の底から“私はこの人と共にありたい”、“ずっと一緒に添い遂げたい”と思ってくれている、望んでくれている、と言う事ですからその“純化された愛”と言うのは極めて猛烈であり、絶対的なモノである、と思います」

 蒼太は言うモノの、例えばメリアリアは“あなたの好きにしていいよ?私はついて行くからね!!”と言ってくれていたし、現にその言葉を忠実に守ってくれてもいた、そしてこれは余程のこと、蒼太が彼女を蔑ろにして裏切りさえしなければ(即ち、蒼太の側から愛を破虐しさえしなければ)それが潰える事は決して無い、と言って良く、蒼太はだから全力で彼女の愛に応えると同時に“守って行こう”と思っていたのだ。

(そもそも結婚とは2人で生きていくモノだからね、一方の完全なる都合ばかりでもう一方を振り回して良いものでは、決して無いのさ!!)

 蒼太は改めて思い返していたのであるが、愛とは“それに向かって努力している間は真に絶対的なモノとなるモノの、甘えてそれに寄り掛かれば寄り掛かるほどにただの幻想に成り果てる”モノなのである、だから常に気を張り巡らせると同時に絶対にそんな事にならないようにと気を付けていなければならなかった。

(“愛情”が“魂同士の結び付きの発露”、それもお互いのお互いに対する“祈り”と言っても差し支えない程に“純化された思いの結晶”であるとするのならば。それを壊すことが出来るのもまた“自分自身”に他ならない、自分が生み出したモノと言うのはまた、自分自身で破壊する事が出来てしまうものなんだ、だからこそ本当にそれだけは、絶対にしないようにしなければね・・・!!)

 人知れず、そう思うと同時に蒼太は“後でメリアリアにも良く良く伝えておこう”と考えつつも、芯から自身を引き締め直した。
ーーーーーーーーーーーーーー
 愛する人との“それ”と言うのは特にそれらが強く出ますが、そもそも論としてセックスが気持ち良くて快感を得やすいのには子供を確実に妊娠させる為の肉体的な構造が、その要因としてあるからなのですが。

 勿論、ただ単に、それだけの為にある訳ではありません、もう一つの理由と致しましては、“お互いのお互いに対する愛情を爆発させては一つになるための最たる手段”、“またはそうやってお互いのお互いに対する愛情を確認しあう為のコミュニケーションとしての最たる手段”としての役割があるからなのです。

 そしてその為には快感を得られた方が絶対に良いに決まっています(何故ならばその方がより行為に集中する事が出来るからであり、尚且つお互いがお互いへと向けて夢中になって燃え上がる事が出来ると同時に気持ちと意識とを重ね合わせて行く事が出来やすくなるからなのです)が、それに加えてもう一つ、実はこの“愛情”と言うモノこそは、実際に子供を生み出す際には何よりも重要で、非常に大切な“核”の部分、所謂(いわゆる)“エッセンス”となるのです。

 何故かと言えばそれは、その時には心と身体と男女のエネルギーとを完全に一つに解け合わせて混ぜ合わせ、交合させる必要があるからなのですが、そうして造られ、生み出されて来た我が子と言うのはまさに“紛う事無き夫婦の愛の結晶”であり、二人の愛の営みが、その最高潮に達した瞬間に生成されて顕現して来る“確かなる光の結実”、その象徴とも言えるモノであるのであって、そしてそう言った子供達が世の中に溢れて行く事で、果てしなくこの世を愛の光で十重(とえ)に二十重(ふたえ)に包み込んで行く事が出来るようになるからなのです。

 “この人に子供を産んで欲しい”、“この人の子供を産んであげたい”と言う、夫婦の互いへの真摯な愛情と真心の結晶として生まれて来た子供と言うのはそれ故に愛を知っているのであり、そしてそれは生まれてから一人前に育つ間に、両親や家族達の支えや見守りを受けてますます強く正しく育まれて行き、立派に成長して行くモノなのです。

 だから子供と言うのは大切なのです、“結実たる愛の証”とまで言い表されるモノなのです(存在自体は勿論、その生み出される過程までもが非常に重要なのですが)、所が時折、本当に悲しい話しなのですけれども“望まれない子”と言うのが生成されて、生み落とされる事があるのです(即ち“過ちの象徴としての子供”、もしくは“過ちに巻き込まれてしまった象徴”としての子供です)。

 昔はそう言った子供というのは堕胎、所謂(いわゆる)“間引き”を行ってあの世に返していたそうです(これにはある理由があります、と言うのは生まれてくる子供というのは“自分がどうして生まれて来たのか”、そして“その人間として生を受けた場合はどのような一生を送る事になるのか”と言う事までも、全て知って生まれてくるようなのです。それに加えて“7歳までは神の内”と言って子供は7つになるまでは、半分は人間だがもう半分は神様の世界にいる存在である、と認識されていたのです。だから“申し訳ないけれども貴方はまだ生まれてくるべきではなかった”、“今はまだ、その時では無いからどうぞお帰り下さい”と言って流していたそうです。←勿論、だからと言ってやはり、無慈悲に殺される痛み、悲しみ、そして“本当は生きたかったのに殺されなければならなかった無念さ”と言うモノは相当に強いモノだそうでして、それが為に人々は“水子供養”をキチンとし続けていたのです)。

 なので皆様方にもし、奥様との間に生まれた大切なお子様がいらっしゃられるのでしたならば。

 その時はどうか、大切に大切に可愛がってあげて下さい(大切に育ててあげて下さい)、どうかよろしくお願い申し上げます(勿論、私に言われるまでもない、とは思いますけれども)。

 長文、駄文失礼致しました。

                   敬具。

             ハイパーキャノン。
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