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運命の舵輪編
セイレーン編エピローグ
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「・・・ん、ううん?」
「気が付いた?」
遙かなる極東の島国、“大八洲皇国”の皇都“東京”、その中枢部分を占める23に別たれている特別行政区画の中でも外れにある“世田谷区”の、そのまた外縁部近くにある“南烏山町”。
ここに、蒼太の住む5階建て賃貸マンション“グランエール千歳烏山”があって、その3階部分にある、彼の部屋の寝室で、メリアリアはその意識を微睡みの中からゆっくりと浮かび上がらせていた。
季節は9月の中旬に至っており、皇国はその身に早秋を迎えつつあった、とは言ってもその年は残暑も厳しいモノがあり、街の往来には8月の名残が随所に見受けられていたのだ、そんな強い暖かさの中で。
現の世界へと覚醒を果たしたメリアリアはその両腕をゆっくりと、優しい笑顔で自身を覗き込んでくれていた恋人の首筋へと回して抱き着き、その熱くて激しい“目覚めのキス”を彼へと求めて唇を突き出していたのだ。
八ヶ月ほど前に二十歳の誕生日を迎えた彼女はしかし、その一ヶ月後に、これ以上無いほどに素晴らしい体験をしていた、と言うのは、かつて失ってしまったはずの自身の半身、運命を誓い合った最愛の伴侶、蒼太その人とここ、大八洲の皇都“東京”において、再び巡り会う事が出来た事である。
もっともその時の彼女はまだ、“女帝エカテリーナ”を名乗る正体不明の女性魔術師の呪力によってその身を異国の少女へと変えられていた上に、蒼太への遠慮と言うか、とある事件に対する気後れからついつい自分を“メリーニ・カッセ”と名乗ってしまっていたのだが、後にそれも強すぎる自責と悔恨の念が引き起こしていた自身の思い過ごしであった事が解り、なによりかにより蒼太自身が少しも気にしていなかった事と同時に、彼に真実の自分を見出してもらえた事からようやくにして本当の意味で打ち解ける事が出来たのでありその結果、改めて二人で再会を祝い合い、そしてー。
その夜に、実に六年ぶりとなる逢瀬を迎える事が出来たのであるモノの、それからと言うもの本当に、恐ろしい程の速さで時は流れ続けて行き、今に至ると言う訳であるが、しかしー。
「ん、んむっ、ちゅる、ちゅぷっ。ちゅぱ、ちゅぱっ、じゅぞぞぞぞぞぞぞぞ~っ!!!!?んむむむ、んむむむぅっ!?んふー、んふー、んふー、んふううぅぅぅ・・・っ❤❤❤ん、んぷぷぷっ!?んむむむ、んぷ、ちゅぷっ。レロレロレロレロ、クチュクチュクチュクチュッ。ちゅ、ちゅぱっ、じゅるるるるるるっ。じゅるるる、じゅるるるるるるるるる~っっ❤❤❤❤❤」
「んむ、んむ、ちゅぷ、んむ・・・っ。ちゅ、ちゅぷっ、レロレロ、クチュクチュッ。ちゅ、ちゅぷ、じゅるじゅるっ。ちゅぷちゅぷちゅぷちゅぷ、じゅるるる、じゅるるるるるるるるるっっ!!!!!」
「んちゅちゅちゅ、じゅるじゅるっ。じゅるるるるるるる~っ❤❤❤❤❤❤っぷはあぁぁっ。はあ、はあ、はあ、はあぁぁ・・・っ❤❤❤ねえ蒼太」
「・・・・・?」
「私ね、夢を見たの」
「夢・・・?」
怪訝そうに聞き返す蒼太に対してメリアリアはニッコリと笑って応じるモノのそれは単なる夢幻の世界での出来事などでは決して無く、むしろ果てること無き繰り返される生まれ変わりの中において、彼女の魂の深層部分に蓄積されていた彼への思いと記憶の残滓ー。
そして何より、どこまでも尽きる事の無い蒼太と言う存在そのものに対する唯一無二なる至高の真愛、その発露そのものであったのだ。
最初の場面は何処か遠い時代の大都市の只中において、二人が腕を組んで寄り添いながら歩いている場面であり、二つ目は前にも見た事がある、やはり今より古い時代の城塞都市の一角にある、簡素な造りの建物の中で熱い抱擁を交わす二人の姿、そしてー。
3番目に出て来たのは今世で体験した出来事だった、蒼太と二人で良く出掛けていった、帝都ルテティアの郊外の草原、そこにはまだ年端も行かない幼い頃の自分達自身がいて、互いに互いの手を繋ぎながら風の吹き抜ける原っぱの中を、どこまでもどこまでも駆け抜けて行くのだ。
少しずつとは言えども、当時から既にこの年下の幼馴染みの事を、徐々に意識し始めていたメリアリアはしかし、それでも溢れ出る好奇心と外の世界への情熱とに背中を押されるようにして、まだ何も知らない蒼太の事を彼方此方へと連れ回しては色々な事を話して聞かせ、お姉さん風を吹かせていた、それは例えば、魔法使いとしての心構えであったり、人として大切な事についてだったり。
また時には、女の子と付き合うに当たっての礼儀作法やエチケット等に付いても蒼太に語り伝えて教え、例えば、“将来は清十郎さんのように、立派な人になりなさい”とか“仮にも男の子であるあなたは、女の子である私にはキチンと優しく接しなさい”だとか。
「いーい?蒼太。私はあなたよりも二歳もお姉さんなんだから、年上はキチンと敬いなさい。あと女の子がお話ししている間には、男の子は黙って聞いていてあげるのが正しい礼儀作法なのよ?」
“判った?”と自分よりも年下の、ちょっと気になる男の子に対して些か得意気に様々な事を語って聞かせるメリアリアだったがしかし、同時に不思議な充実感と充足感とを感じていたのも事実だった、それは確かに、自分の知っている知識等を披露する機会に恵まれている事に対する、所謂(いわゆる)“自己承認欲求”が満たされた事に対してのモノが混じっていた事は否めないがしかし、なによりかにより嬉しかったのは少年が自分の話を聞いてくれていて、尚かつ受け入れてくれている、と言う事実そのものが、とても嬉しくて嬉しくて、それを思うと幸せな気持ちが後から後から湧き上がってきて堪らなくなってしまったのだ。
「う、うん、判ったけど。でもメリー、僕・・・」
「あら」
とそこまで話してメリアリアは、少年の反応にちょっとした興味を覚えては、その可愛らしくも整っている乳白色の麗しい顔と澄んだ青空色の瞳とを、グルッと回して彼へと向ける。
「何かしら、蒼太ったら。もしかしてお姉ちゃんの言う事が聞けないの?」
「う、ううん、別に。そう言う事じゃ、無いんだけれども・・・」
「あら、じゃあ一体なんなのかしら。お姉さんに教えなさい!!」
「うっ、べ、別に。何でも無いよ・・・」
「ふ~ん、そう?それなら・・・」
こうしてあげる!!と言うと同時にメリアリアは蒼太のほっぺたを両手で抓ってそのまま横に伸ばしたり、円を描くようにした。
「たてたてよこよこ、丸書いてチョン!!」
「痛いよ、もうっ!!」
“何すんのさ、メリー!!”とようやくにしてそれから解放された蒼太は、流石にやや不機嫌そうな表情を見せるがそれでも、この少年は不思議とメリアリアから離れようとはしなかった、体育座りであくまで近くに腰を降ろしたまま、ブスッとした顔で俯いて、そのまま沈黙をキメ込んでしまう。
「・・・怒っちゃった?」
「・・・別に。怒ってはいないけれど」
「・・・そう」
そう言うとメリアリアは、自分も蒼太の真似をして、体育座りでその傍らに改めて座り直しては、少しの間俯いたまま、沈黙を守っていたモノの、しかし。
この時、蒼太は気が付かないでいたモノの実は、メリアリアは何度かチラチラと蒼太の横顔を見ていたのである、そして。
そして、そうした彼と過ごす日常に、否、もっと言ってしまえばその瞬間そのものに、“大切にして堪らない何か”を感じると同時に胸がキュッと締め付けられるような感覚を覚えていたたまれなくなり、寂しくて、もっと彼と一緒にいたくて、くっ付いていたくて。
勇気を出して少し、また少しと彼へと向けて躙り寄ってみるモノの、蒼太は別にその場から動いたりはせずにただただただただ、そこで俯いたまま、無言で地面を見つめていた。
「・・・ねえ蒼太」
「なにさ」
「私達さ、大きくなってもずっと一緒にいられたらいいね・・・」
「・・・うん、僕も」
“そう思う”、と蒼太はメリアリアにそう答えるが、するとメリアリアは尚も食い下がって来て、彼に質問を続けていった。
「本当に!?本当に、私とずっと一緒にいたいと思う?」
「・・・うん、本当だよ?」
と、それについて蒼太は素直にそう答えるが、それを聞いたメリアリアは心がはち切れんばかりに喜びでいっぱいに満たされて行った、何故だかとても暖かくて幸せで、それでいて凄く安心して思わずホッとした笑みがこぼれてしまうモノの、それは。
それはメリアリアの魂魄の奥深くに宿っていた、繰り返される輪廻転生において重ねられて来た、彼との掛け替えのない愛の軌跡と記憶の織りなす、“確かなる絆”、その発現に他ならなかった。
彼と出会って愛し合う度に紡がれて来た、蓄積されてきた彼から受ける底知れない程に力強くて混じりっ気の無い、極めてピュアな愛の光の迸りと、そしてそれを受ける事によりその輝きを際限なく増していった、自分自身の彼への尽きる事のない“真愛なる煌めき”。
それは無限とも言える広大さと同時に、決して揺らぐ事のない確固たる暖かさとを合わせ持っており、そしてそれらが彼女をして、幼い頃からどうしようも無い程に彼を求めさせると同時に絶大なる安心感と言うか、信頼を与えていたのである。
もっともまだ幼かった当時の彼女ではそんな彼への確固たる愛を、思いと絆の強さと深さを十二分に感じ取る事は出来なかった、それはそうだろう、何しろそれらは今世に限ったモノでは無かったのでありしかも彼女自身がまだ、自分の気持ちに気が付く前の、心と体が充分に発達する前の状態だったのだから。
「・・・ねぇ蒼太」
「なにさ?メリー・・・」
「・・・ううん、別に」
“何でも無いわ!!”とそ
う告げると、メリアリアは満面の笑みを浮かべたままで顔を上げて、吹き抜けるそよ風にその美しく煌めくツインテールを棚引かせながらいつまでもいつまでも、少年との二人っきりの時間を満喫し続けていたのだ。
「・・・どんな夢を、見たんだい?」
「・・・ふふっ」
恋人からの問い掛けに思わず、夢の思い返しの世界から“今、この瞬間”へと帰還を果たしたメリアリアはそれでも“なーいしょっ!!”とニッコリと笑ってそう告げると、彼の唇に人差し指をソッと押し当てる、そうして。
「・・・ねぇ蒼太」
「うん?」
「覚えてる?昔」
その後で何かを懐かしむかのような、柔らかな微笑みを浮かべながらも“二人で良く、原っぱの中を駆けっこしていた時の事を”と優しく、ゆっくりとした口調で問い質して来るモノの、するとそれを聞いた蒼太は“ああ”、とやはり、温かみのある微笑みを浮かべて頷いて見せた、それらを忘れよう筈が無かった、彼にしてもこの年上幼馴染みの少女と過ごす時間は何よりも貴重で尊く、愛と輝きとに満ち満ちたモノだったからだ。
「それは良く覚えているけれど・・・。それが一体、どうしたのさ」
「あの時、私があなたのほっぺたを抓った時の事を、覚えてる?」
「・・・うん、そりゃ。ちゃんと良く覚えているけれども。それがどうかしたの?」
「あの時。蒼太はなんて言おうとしたの?」
「ええっ?」
“あの時って・・・”と言い掛けて蒼太は、少し気まずげと言うか、何かを恥ずかしがるような仕草を見せるがそれが返って余計にメリアリアの興味をそそる結果となった。
「もうっ。蒼太酷いわ、隠し事なんてしないで教えて。ちゃんと全部話すの!!」
「う、うん。でも・・・」
「嫌よ蒼太、お願いだから隠したりしないで・・・」
「う、うん。でも・・・」
「お願い蒼太、お願い・・・」
「・・・・・」
「ね?蒼太、お願い・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
“うん”、と暫くの沈黙の後に蒼太はようやくにして頷くモノの、その顔には未だに気後れ感と言うか、何処か照れ臭さのような雰囲気が漂っている。
「・・・?蒼太、お願い」
「う、うん。実は・・・」
そう言うと蒼太は少し瞳を逸らしつつも、ようやくボソボソと喋り始めた。
「・・・女の子って言うよりも。メリーの側にいたいな、って」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・すき」
「え・・・っ!?」
「好きいぃぃっ、蒼太大好き。好きなのおぉぉっ❤❤❤」
“愛してるっ”と思わず叫んで抱き着いては、彼の唇に唇を重ねて舌を絡め、口内を弄(まさぐ)るようにするモノのこの時、彼女は安らぎと幸せの絶頂にいたのであり、そしてその事が、どこまでも感情を昂ぶらせてはメリアリアをして一層、彼氏にしがみ付かせる要因となっていたのだ。
只中にあってどこまでも感情を昂ぶらせていたのであり、そしてその事がメリアリアをして一層、彼へとしがみ付かせる要因となっていたのだ。
「んちゅ、ちゅぱっ、じゅるじゅるっ、ちゅぱ、じゅるっ。じゅるじゅるじゅるじゅる、じゅるるるるるるるる~っっ❤❤❤❤❤❤❤ぷはぁっ。はあ、はあ、はあ、はあぁぁぁ・・・っ!!!好きいぃぃ、好き好き。愛してる・・・。んんむっ。んむちゅぅっ、ちゅぷちゅぱっ。じゅるるるっ、じゅるるるるるるるる~っっ♪♪♪♪♪♪♪」
「んちゅ、ちゅぱっ。じゅるるる、ちゅるちゅぷっ。じゅるるる、じゅぞぞぞぞ~っ!!!ぷはっ。はあはあっ、ふうぅぅ・・・。メリー・・・」
「はあっ、はあっ。はああぁぁぁ・・・っ❤❤❤❤❤そ、蒼太。蒼太あぁぁ?止めちゃやだぁ、もっと、もっとおぉぉ・・・っ。ん、んちゅ、ちゅるっ。ちゅぷっ。レロレロ、レロレロ。クチュクチュクチュクチュ~ッ!!!ちゅ、ちゅぱっ。じゅるるる、じゅるじゅるっ。じゅるるるるるるるるるる~っっ❤❤❤❤❤」
「んん、んむっ。ちゅぴ、ちゅぱっ。じゅるじゅる、じゅるるる~っ。レロレロ、クチュクチュッ。じゅぞぞぞ、ちゅううぅぅぅ~・・・っ!!ふあぁっ。はあはあっ、ああっ。メリー、メリー・・・!!」
「はあっ、はあっ。はあっ、はあぁぁぁっ❤❤❤ああん、蒼太ぁっ。もっと、もっとおおぉぉぉ・・・っ!!!」
「メリー、メリーッ!!でも、僕・・・っ。ん、んむむむぅっ!!」
そう告げるとメリアリアは再び、何事かを言い掛けた恋人の唇を己のそれでしっかりと塞いで舌で口内を舐め回し、更には舌同士を執拗に絡めてそのザラザラとした感触と恋人の風味とを、心行くまで堪能し尽くして行った、本当はメリアリアにお話ししたいことがあった蒼太は、考え直して先ずは恋人のキスの欲求を、つまりは求愛の思いを満たすべく、自身も彼女に向き合うと、本格的な口付けの応酬を開始したのだった。
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「ちゅぴ、ちゅぷ。ちゅるちゅる、じゅるるる、じゅるるる~っ!!!はあぁっ、はあはあ・・・っ。ねぇメリー・・・」
「はあっ、はあっ。はあっ。はあぁぁぁ・・・っ❤❤❤そ、蒼太。どうしたの・・・?」
「うん、あのさ。僕、メリーにお願いがあるんだ」
「・・・?なぁに?」
それから実に15分後、彼氏によって為される熱烈な、それでいて情熱的な接吻の嵐にようやくにしてその愛情を感じて心を満たす事が出来たメリアリアは、何とか彼氏の言葉に耳を貸せるだけの冷静さと言うよりも、心の余裕が生まれ始めていた。
「・・・うん。あのね、メリー。お願いだから」
“昔みたいに”と、少し困ったような、それでいてどこか悪戯っぽい微笑みを浮かべつつ、蒼太は続けた、“僕のホッペを抓って?”と。
「・・・ええ?」
「“しょうがないんだから”って。昔みたいに、僕のこと怒って?メリー・・・」
「・・・・・?」
「メリー、あのね。正直に言うと、僕。メリーの事を考えてると・・・」
「・・・・・」
「好きすぎて、嬉しくて。眠れなくなっちゃうんだ!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・ぷっ!!」
「・・・?」
“あっははははははっ!!”とそれを聞いたメリーは思わず、笑いを零してしまっていた、何を言い出すのかと思えばやはり、蒼太は“そう言った意味では”彼女の知っている昔の彼と、根っこの部分は少しも変わってはいなかったのだ、声も低く太くなり、雰囲気もドッシリとして落ち着いて来ていたと言うのに、その体付きもガッシリとして逞しく、男としても一人の人間としても、とっても頼もしいそれになって来ていた、と言うのにだ。
「あっははははははっ!!も、もうっ。本当に、蒼太ったらぁ!!」
「メ、メリー・・・?」
「ぷっはははははははっ!!くふふふ、あははは・・・っ!!」
それから一頻り笑い転げた後でようやく、メリアリアは瞳に喜びの涙をためたまま、改めて目の前の恋人へと目をやるとその唇に唇を重ねてその上。
その頬に自らのそれを押し付けては、愛しそうにスリスリと、擦り合わせるようにする。
「・・・もうっ、本当に蒼太ったら。いつまで経っても子供なんだから!!」
「・・・・・」
「でも良いの、蒼太はそれで良いの・・・っ!!」
“蒼太好き、大好き”と、改めて彼氏にそう告げると自身の最愛の恋人の唇へと向けてメリアリアは再びの、熱くて強い口付けをするモノの正直に言ってしまえば彼女はこの時、先程までのそれとは同種の、それでいてまた違った喜びの中へと埋没してしまっていた。
否、もっと正確に言ってしまえば“ホッとしてしまった”と言い換えた方が良かったのかも知れないのだが本当はメリアリアは、少し寂しさを感じていたのだ。
幼い頃からずっと一途に彼の事を思い続けて触れ合い続け、そしてなにより実際に身心を通して繋がり合っていたメリアリアには、だからこそハッキリと感じ取る事が出来たのであるが、大人になってから再会した蒼太は確かに、ずば抜けて格好良くて、何があっても揺るぎない肉体的な、そして精神的な強さをも手に入れていたのであり、そしてそんな彼から向けられ続ける“確かなる暖かさ”とでも言うべき感覚を、混じりっ気の無い透明な、それでいてどこまでも果てしない程に熱くて直向きで真っ直ぐな思いの丈を自覚した時にメリアリアは天井知らずの喜びと愛欲の中へと溶けていってしまったのである。
そしてそれが彼女をして彼との間により強く、より激しくキスやセックスと言った恋人としての繋がりを、絆の為のコミュニケーションをどこまでも求める要因となってしまっていたのであるが、しかし。
その一方で、メリアリアはある種の“悲しさ”と言うより“切なさ”、否、もっと正確に言い換えるのならば“戸惑い”を覚えて些か緊張もしていたのであるが、それは一重に蒼太の時折見せるようになった、ある表情と眼差しとがその原因となっていたからに他ならなかった。
それは幼馴染みの彼女でさえも知らなかった、成長すると同時に現れて来た蒼太の新たなる一面であり、それを一言で言い表そうとするのであればまさに“男の顔”、“男性の雰囲気”とでも言うべきモノであって、特に行為の最中やその前後に見受けられる事が多かったのであるが、そんな時の彼は決まって若干、興奮気味な面持ちを浮かべると同時にギラギラとした眼差しで彼女を見据え、筋肉質で逞しいその肉体で上から覆い被さるようにして抱き締めては、いきり立つ己自身でビクビクと震え続ける彼女の胎内(なか)を、いつ果てるともなく突きまくって来るのだ。
ずっと一途に恋い焦がれて来た掛け替えのない思い人との交わりである、勿論それは、とてもとても愛しくて心地好くて、蕩けるように気持ち良いモノではあったがしかし、その一方で時折そうした彼氏の態度にちょっとだけ“怖さ”、あるいは“気後れ”を感じてしまう事もまた事実であって、そしてそんな時彼女はつい、考えてしまうのである、“私の知っている蒼太はもう、いなくなってしまったのではないか?”と、しかし。
やはり蒼太は蒼太だった、大人になって凛々しくなって、鍛えられて、強くなってもあくまで、その芯の部分はあの頃と同じように、どこまでも純粋で優しくて温かみのある、少年の日の彼の、透き通るような輝きを放つ、素直さの結晶そのままのモノだったのだ。
「・・・ねえ蒼太」
「・・・ん?」
「・・・好きっ!!」
“だーい好き!!”と、メリアリアは再び告げると蒼太の唇へとその唇を重ねるモノの、それを知った彼女の心の中はだから、とても満たされた暖かさと尽きる事の無い彼への気持ちでいっぱいに溢れ返ってしまっていた、それはもう自分自身の根源部分から際限なく湧き上がって来てはどうにも止まらなくなってしまっており、それが彼女をして一層、彼へとしがみ付かせる要因となっていたのだ。
「好きいぃぃ、好き好き蒼太ぁっ。愛してるっ、愛してるの、蒼太あぁぁっ❤❤❤」
「僕だって愛してる。誰よりも何よりも愛してるよ、メリーッ!!」
そう応えると蒼太もまた、メリアリアの瑞々しいその唇へと向けて、何度も何度も口付けを返し続けるモノのそうだ、確かに蒼太は彼女の事を愛していたのであり、そしてそれは魂の伴侶としてのみならず、最愛の恋人してもであり尚かつ大切な幼馴染みとしてもであって、要するに彼女を彩る全てにおいて蒼太はメリアリアの事を愛すると同時に求めてもいたのである、そして。
それは何も、蒼太だけに限った話では決して無かった、メリアリアもまた同様に、その全てにおいて彼氏を愛すると同時に追い求めていたのであり、そして恋人が自分と同じ思いを、同質の心を持ってくれていた事が嬉しくて堪らずに、彼女をしてますます、蒼太への愛慕と信頼とを高め深める結果となっていったのだ。
「メリー・・・ッ。ぷっくくくくくっ、・・・ちゃん」
「・・・?」
「メリーお姉ちゃん!!」
「・・・もうっ」
少し悪戯っぽい笑みを浮かべつつも抱き着いて来る恋人を、自身も満たされた笑顔を浮かべてしっかりと受け止めながらも、メリアリアはそれでも“しょうがないなぁっ!!”と応えて彼氏の頑健な、それでいて立派なその肉体の背中へと向けては両手をソッと回して抱き締める。
「メリー・・・」
「ん・・・?」
「・・・ありがとう」
「ううん、いいの・・・」
“いいの”と静かにもう一度繰り返すとメリアリアは彼氏に抱き着いたままで、全身をその身体にスリスリと擦り付けるようにした、そして。
“お姉ちゃんが、いっぱい、いっぱい愛してあげる”と告げると同時に瞳を閉じてそのまま、数え切れない程の口付けを彼との間に交わし続けた、昨日あれだけ“した”と言うのにそれは全然、まだまだ足りなくなって、その後も心と体と、魂とを、その底の底までしっかりと重ね合ったまま、何十回も、何百回もキスをした。
「じゅるじゅる、じゅぷぷぷっ。じゅるるるるるるるる~っ❤❤❤❤❤ぷふううぅぅぅっ!?ふぅーっ、ふぅーっ。ふぅーっ、ふぅー・・・っ!!!」
(はあっ、はあっ。はあぁぁ・・・っ❤❤❤も、もう蒼太ったら、相変わらず激しいんだからぁっ。こんなに熱くて凄いのされたら、私完全に蕩けちゃう。頭がおかしくなっちゃうよおおおぉぉぉぉぉっ❤❤❤❤❤❤❤)
キスを交わし続けながらもメリアリアは考えるがそうだ、自身のツボを押さえると同時に刺激の仕方をも心得た彼の濃密にして途切れない愛撫にメリアリアはすっかり夢中になってしまい、メロメロになってしまっていたのであるが、それは何もテクニックにのみ限った話では決して無かった、普段の彼から向けられ続ける、尽きる事の無い愛情と無限なる恋慕、そして。
魂の奥底から共鳴し合う、お互いのお互いに対する確かなる絆と紡がれる思い、それらが一体となったセックスは、形容する事が出来ない程に至尊で至高で至誠に満ちたモノだったのである、ところが。
蒼太の場合はそれだけには留まらなかった、行為の最中は彼女に対する密情と、その快楽と痴態の見せる性的興奮とでどこまでも際限なく彼女を求めてしまうこの青年はその為、恋人に無理をさせないようにと行為の合間に結合を利用して房中術の要領で、自身の生気を分け与えるようにしていたモノの、最近ではそれに加えて“命そのもの”までをも融合させてはそのエネルギーを循環させ彼女と、肉体的にも精神的にも完全に一つに重なり合うようにしていたのであるが、これにはある一つの“訳”があった。
と言うのは大人になってからの蒼太の“責め”は、子供時代のそれと比べても桁違いにその激しさを増しており、そしてそれは恋人への“思いの深さ”も相俟って凄まじいまでの“連続多重無限絶頂”をメリアリアにもたらしていたモノの、その余りにも強烈無比なる突き上げと貪りと反応現象による痙攣の為にメリアリアは呼吸困難に陥ってしまう事が屡々(しばしば)であり、現に口から泡を吹いたままで気絶してしまった事も何度かあったし、それどころか心臓が止まり掛けた事すらあった。
そしてそれらを避けるために蒼太は、自身の持てる秘術の内で最大のモノの一つである、“己の命の煌めきを相手に分け与える術”を用いてはその比類無き生命力を彼女と一体化させる事で恋人の内側に宿りし大いなる意思の灯火を、その根源たる魂からもたらされる、人としての活力を決して途絶えさせる事の無いようにしたのだ、ところが。
そんな蒼太の優しさはメリアリアをして、彼との間に更なる愛欲と官能とを、もたらす結果となってしまった、蒼太が自身へと向けてくれている一途な思いや、また実際にやってくれている、有形無形様々な気遣いが彼女をして一層、恋人へと意識と心と体とを向かせて開かせ、蕩けさせる要因となっていたのである。
「ちゅむ、ぶちゅっ。ぶちゅうぅぅぅっ。ぶちゅうううぅぅぅぅぅっっ❤❤❤❤❤ぷへえええぇぇぇぇぇっっ!!!!!ぷへぇーっ、ぷへぇーっ。ぷへぇーっ、ぷへえぇぇぇ・・・っっ!」
(はぁーっ、はぁーっ。はぁーっ、はあぁぁぁ・・っ❤❤❤う、うふふっ、うふふふふふふっ。も、もう蒼太ったらぁっ!!)
蕩けた瞳と表情の中に“恍惚とした狂気”、もっと言ってしまえばむしろ“全てを超越してしまったかのような何か”を含みながらもそれでも、何物にも代え難いモノを見つめるような笑みと眼差しとを蒼太に向けてその双眸を、面構えを、そして更には全身を、“瞬きするのも勿体ない”とでも言うかのように凝視し続けるのであった。
「ちゅぷぷぷ、ちゅぷっ、じゅるっ。じゅるるるるる~っ❤❤❤❤❤ぷふうぅぅっ!!ふぅーっ、ふぅーっ。ふぅーっ、ふうぅぅぅ・・・っ❤❤❤」
(はひーっ、はひーっ。はひーっ、はひいいぃぃぃ・・・っ!!!う、うふふふっ。うふふふふふふっ!!蒼太っ、蒼太あぁぁ~っっ❤❤❤❤❤)
彼氏にしっかりと掻き抱かれたままで口付けを交わしつつも、メリアリアはそれでもどこか悦に入ったような面持ちで、今や完全に蒼太へと向けて蕩け切ってしまった頭の片隅で考えるモノの正直このまま、“永遠に蒼太と一緒にいられたらいいな”と彼女は思うが彼と一緒ならば彼女は、どんな困難が来ても乗り越えられるし、それに何があっても、いつ如何なる時においても互いに互いを支え合い、学び合い、繋がりあって行けるだろうし、それこそいつまでもいつまでも、果てる事無き未来の先まで愛し合って行けるだろう。
(うふふふっ、うふふふふふふふっ。蒼太ぁ、蒼太っ。蒼太蒼太蒼太蒼太蒼太蒼太あああぁぁぁぁぁっっっ❤❤❤❤❤もう絶対に逃がしてあげないのっ、もう絶対に私のものなのっ。私だけのものなのおぉぉぉっっっ!!!!!)
もはや蒼太に対して狂って狂って狂い切ってしまったメリアリアはどこか壊れてしまったかのような、しかしどこまでも一途で真っ直ぐな視線を恋人に対して向け続けていた。
その笑みは枯れる事無く、その眼差しは途絶える事無く、そして何よりかによりその思いは、愛は決して何者にも、どんな物にも負けず、歪まされず、損なわされる事は無かった。
ーーーーーーーーーーーーーー
今回のお話しには、実は幾つかの参考にさせていただきました“元ネタ”があります。
まず一つ目は、私の大好きな女性漫画家さんであられる“井ノ元リカ子先生”の執筆されていた成人向け単行本(申し訳御座いません。読んだのがかなり以前の事でしたので本の題名は忘れてしまいしたが、それでも確か、“こいするからだ”、“ちぇりーぱい”、“くすりゆびハニー”、“A.My.Sweets”の4つの内のいずれかだったと思うのですが)の中で収録されている、“ずっと一緒だった幼馴染同士が目出度く恋愛を成就させてお付き合いをする”話があったのですがその際の、エッチの時のヒロインの心理描写(これがまさに、キチンとした“女性視点”で描かれているので大変参考になりました)と、二つ目は“チャットモンチー”さんのデビュー曲(でしたっけ?)、“シャングリラ”の歌詞です(特にそのラストの部分、サビの部分の歌詞ですかね)。
これら二つを蒼太とメリアリアの(そしてもっと言ってしまえばリュカとビアンカの)ラブシーンですとか、イチャイチャしているシーンに頭の中で置き換えて、挿入させてみたのです(例えば“ビアンカもリュカに抱かれている最中に、こんな事を考えた事があったのかな”ですとか“リュカだったら確かに、ビアンカに対して、こんな事を思ったり、お願いしたりするだろうな”ですとか。要するに“確かにこの二人だったらこう言う事を言ったり考えたりするだろうな”、もしくは自分の中では“アリだな”と思った事柄を参考にしつつも、そしてそれらを中心として話を膨らませていったのです)、で、早速それらを作品に反映させてみました(とまあ、色々と書かせていただきましたけれども要はそんなに難しい話じゃないんです。結局の所何が言いたいのか、と申しますと勿論、“夫婦としての愛ありき”と言うのがまずもっての前提条件としてしっかりとその根底にはあるのですが、それに加えてもう一つ、時々、蒼太君はメリアリアちゃんと幼馴染の時のようにじゃれ合いたくなっちゃうんですよね、要するに彼女に甘えてみたくなっちゃうんです。つまりはそう言う事なのです)。
そして更にはもう一つ、皆さんはドラクエにおける、“メガザル”と言う魔法を御存知ですか?
そうです、己の命と引き換えに仲間全員を、それも“確実に”蘇生、回復させる魔法なのですが、今回はそれを“セックス”に取り入れてみたら、より深みが出て良いのではないか?と思いまして自分なりに応用を利かせてみました(リュカだったらばそうしましたでしょうし、それに何よりかにより蒼太君はセックスの時には結構、激しく求めてしまうので・・・)。
まだ具体的なシーンの描写そのものは先ですけれども(いくら何でもあんまりエッチシーンばかりになってしまうのもあれなんで・・・)要するに、自分の命そのものをメリアリアに分け与える(と言うよりも、もっと言ってしまえば一体化させて循環させ合う)事で自分は元より彼女の命をも保護しているわけです(詳しくは後で出て来ますけれども、蒼太君も“メガザル”のような秘術が、それも“使おうと思えば”使えますので・・・)。
そう言う事で御座います。
「気が付いた?」
遙かなる極東の島国、“大八洲皇国”の皇都“東京”、その中枢部分を占める23に別たれている特別行政区画の中でも外れにある“世田谷区”の、そのまた外縁部近くにある“南烏山町”。
ここに、蒼太の住む5階建て賃貸マンション“グランエール千歳烏山”があって、その3階部分にある、彼の部屋の寝室で、メリアリアはその意識を微睡みの中からゆっくりと浮かび上がらせていた。
季節は9月の中旬に至っており、皇国はその身に早秋を迎えつつあった、とは言ってもその年は残暑も厳しいモノがあり、街の往来には8月の名残が随所に見受けられていたのだ、そんな強い暖かさの中で。
現の世界へと覚醒を果たしたメリアリアはその両腕をゆっくりと、優しい笑顔で自身を覗き込んでくれていた恋人の首筋へと回して抱き着き、その熱くて激しい“目覚めのキス”を彼へと求めて唇を突き出していたのだ。
八ヶ月ほど前に二十歳の誕生日を迎えた彼女はしかし、その一ヶ月後に、これ以上無いほどに素晴らしい体験をしていた、と言うのは、かつて失ってしまったはずの自身の半身、運命を誓い合った最愛の伴侶、蒼太その人とここ、大八洲の皇都“東京”において、再び巡り会う事が出来た事である。
もっともその時の彼女はまだ、“女帝エカテリーナ”を名乗る正体不明の女性魔術師の呪力によってその身を異国の少女へと変えられていた上に、蒼太への遠慮と言うか、とある事件に対する気後れからついつい自分を“メリーニ・カッセ”と名乗ってしまっていたのだが、後にそれも強すぎる自責と悔恨の念が引き起こしていた自身の思い過ごしであった事が解り、なによりかにより蒼太自身が少しも気にしていなかった事と同時に、彼に真実の自分を見出してもらえた事からようやくにして本当の意味で打ち解ける事が出来たのでありその結果、改めて二人で再会を祝い合い、そしてー。
その夜に、実に六年ぶりとなる逢瀬を迎える事が出来たのであるモノの、それからと言うもの本当に、恐ろしい程の速さで時は流れ続けて行き、今に至ると言う訳であるが、しかしー。
「ん、んむっ、ちゅる、ちゅぷっ。ちゅぱ、ちゅぱっ、じゅぞぞぞぞぞぞぞぞ~っ!!!!?んむむむ、んむむむぅっ!?んふー、んふー、んふー、んふううぅぅぅ・・・っ❤❤❤ん、んぷぷぷっ!?んむむむ、んぷ、ちゅぷっ。レロレロレロレロ、クチュクチュクチュクチュッ。ちゅ、ちゅぱっ、じゅるるるるるるっ。じゅるるる、じゅるるるるるるるるる~っっ❤❤❤❤❤」
「んむ、んむ、ちゅぷ、んむ・・・っ。ちゅ、ちゅぷっ、レロレロ、クチュクチュッ。ちゅ、ちゅぷ、じゅるじゅるっ。ちゅぷちゅぷちゅぷちゅぷ、じゅるるる、じゅるるるるるるるるるっっ!!!!!」
「んちゅちゅちゅ、じゅるじゅるっ。じゅるるるるるるる~っ❤❤❤❤❤❤っぷはあぁぁっ。はあ、はあ、はあ、はあぁぁ・・・っ❤❤❤ねえ蒼太」
「・・・・・?」
「私ね、夢を見たの」
「夢・・・?」
怪訝そうに聞き返す蒼太に対してメリアリアはニッコリと笑って応じるモノのそれは単なる夢幻の世界での出来事などでは決して無く、むしろ果てること無き繰り返される生まれ変わりの中において、彼女の魂の深層部分に蓄積されていた彼への思いと記憶の残滓ー。
そして何より、どこまでも尽きる事の無い蒼太と言う存在そのものに対する唯一無二なる至高の真愛、その発露そのものであったのだ。
最初の場面は何処か遠い時代の大都市の只中において、二人が腕を組んで寄り添いながら歩いている場面であり、二つ目は前にも見た事がある、やはり今より古い時代の城塞都市の一角にある、簡素な造りの建物の中で熱い抱擁を交わす二人の姿、そしてー。
3番目に出て来たのは今世で体験した出来事だった、蒼太と二人で良く出掛けていった、帝都ルテティアの郊外の草原、そこにはまだ年端も行かない幼い頃の自分達自身がいて、互いに互いの手を繋ぎながら風の吹き抜ける原っぱの中を、どこまでもどこまでも駆け抜けて行くのだ。
少しずつとは言えども、当時から既にこの年下の幼馴染みの事を、徐々に意識し始めていたメリアリアはしかし、それでも溢れ出る好奇心と外の世界への情熱とに背中を押されるようにして、まだ何も知らない蒼太の事を彼方此方へと連れ回しては色々な事を話して聞かせ、お姉さん風を吹かせていた、それは例えば、魔法使いとしての心構えであったり、人として大切な事についてだったり。
また時には、女の子と付き合うに当たっての礼儀作法やエチケット等に付いても蒼太に語り伝えて教え、例えば、“将来は清十郎さんのように、立派な人になりなさい”とか“仮にも男の子であるあなたは、女の子である私にはキチンと優しく接しなさい”だとか。
「いーい?蒼太。私はあなたよりも二歳もお姉さんなんだから、年上はキチンと敬いなさい。あと女の子がお話ししている間には、男の子は黙って聞いていてあげるのが正しい礼儀作法なのよ?」
“判った?”と自分よりも年下の、ちょっと気になる男の子に対して些か得意気に様々な事を語って聞かせるメリアリアだったがしかし、同時に不思議な充実感と充足感とを感じていたのも事実だった、それは確かに、自分の知っている知識等を披露する機会に恵まれている事に対する、所謂(いわゆる)“自己承認欲求”が満たされた事に対してのモノが混じっていた事は否めないがしかし、なによりかにより嬉しかったのは少年が自分の話を聞いてくれていて、尚かつ受け入れてくれている、と言う事実そのものが、とても嬉しくて嬉しくて、それを思うと幸せな気持ちが後から後から湧き上がってきて堪らなくなってしまったのだ。
「う、うん、判ったけど。でもメリー、僕・・・」
「あら」
とそこまで話してメリアリアは、少年の反応にちょっとした興味を覚えては、その可愛らしくも整っている乳白色の麗しい顔と澄んだ青空色の瞳とを、グルッと回して彼へと向ける。
「何かしら、蒼太ったら。もしかしてお姉ちゃんの言う事が聞けないの?」
「う、ううん、別に。そう言う事じゃ、無いんだけれども・・・」
「あら、じゃあ一体なんなのかしら。お姉さんに教えなさい!!」
「うっ、べ、別に。何でも無いよ・・・」
「ふ~ん、そう?それなら・・・」
こうしてあげる!!と言うと同時にメリアリアは蒼太のほっぺたを両手で抓ってそのまま横に伸ばしたり、円を描くようにした。
「たてたてよこよこ、丸書いてチョン!!」
「痛いよ、もうっ!!」
“何すんのさ、メリー!!”とようやくにしてそれから解放された蒼太は、流石にやや不機嫌そうな表情を見せるがそれでも、この少年は不思議とメリアリアから離れようとはしなかった、体育座りであくまで近くに腰を降ろしたまま、ブスッとした顔で俯いて、そのまま沈黙をキメ込んでしまう。
「・・・怒っちゃった?」
「・・・別に。怒ってはいないけれど」
「・・・そう」
そう言うとメリアリアは、自分も蒼太の真似をして、体育座りでその傍らに改めて座り直しては、少しの間俯いたまま、沈黙を守っていたモノの、しかし。
この時、蒼太は気が付かないでいたモノの実は、メリアリアは何度かチラチラと蒼太の横顔を見ていたのである、そして。
そして、そうした彼と過ごす日常に、否、もっと言ってしまえばその瞬間そのものに、“大切にして堪らない何か”を感じると同時に胸がキュッと締め付けられるような感覚を覚えていたたまれなくなり、寂しくて、もっと彼と一緒にいたくて、くっ付いていたくて。
勇気を出して少し、また少しと彼へと向けて躙り寄ってみるモノの、蒼太は別にその場から動いたりはせずにただただただただ、そこで俯いたまま、無言で地面を見つめていた。
「・・・ねえ蒼太」
「なにさ」
「私達さ、大きくなってもずっと一緒にいられたらいいね・・・」
「・・・うん、僕も」
“そう思う”、と蒼太はメリアリアにそう答えるが、するとメリアリアは尚も食い下がって来て、彼に質問を続けていった。
「本当に!?本当に、私とずっと一緒にいたいと思う?」
「・・・うん、本当だよ?」
と、それについて蒼太は素直にそう答えるが、それを聞いたメリアリアは心がはち切れんばかりに喜びでいっぱいに満たされて行った、何故だかとても暖かくて幸せで、それでいて凄く安心して思わずホッとした笑みがこぼれてしまうモノの、それは。
それはメリアリアの魂魄の奥深くに宿っていた、繰り返される輪廻転生において重ねられて来た、彼との掛け替えのない愛の軌跡と記憶の織りなす、“確かなる絆”、その発現に他ならなかった。
彼と出会って愛し合う度に紡がれて来た、蓄積されてきた彼から受ける底知れない程に力強くて混じりっ気の無い、極めてピュアな愛の光の迸りと、そしてそれを受ける事によりその輝きを際限なく増していった、自分自身の彼への尽きる事のない“真愛なる煌めき”。
それは無限とも言える広大さと同時に、決して揺らぐ事のない確固たる暖かさとを合わせ持っており、そしてそれらが彼女をして、幼い頃からどうしようも無い程に彼を求めさせると同時に絶大なる安心感と言うか、信頼を与えていたのである。
もっともまだ幼かった当時の彼女ではそんな彼への確固たる愛を、思いと絆の強さと深さを十二分に感じ取る事は出来なかった、それはそうだろう、何しろそれらは今世に限ったモノでは無かったのでありしかも彼女自身がまだ、自分の気持ちに気が付く前の、心と体が充分に発達する前の状態だったのだから。
「・・・ねぇ蒼太」
「なにさ?メリー・・・」
「・・・ううん、別に」
“何でも無いわ!!”とそ
う告げると、メリアリアは満面の笑みを浮かべたままで顔を上げて、吹き抜けるそよ風にその美しく煌めくツインテールを棚引かせながらいつまでもいつまでも、少年との二人っきりの時間を満喫し続けていたのだ。
「・・・どんな夢を、見たんだい?」
「・・・ふふっ」
恋人からの問い掛けに思わず、夢の思い返しの世界から“今、この瞬間”へと帰還を果たしたメリアリアはそれでも“なーいしょっ!!”とニッコリと笑ってそう告げると、彼の唇に人差し指をソッと押し当てる、そうして。
「・・・ねぇ蒼太」
「うん?」
「覚えてる?昔」
その後で何かを懐かしむかのような、柔らかな微笑みを浮かべながらも“二人で良く、原っぱの中を駆けっこしていた時の事を”と優しく、ゆっくりとした口調で問い質して来るモノの、するとそれを聞いた蒼太は“ああ”、とやはり、温かみのある微笑みを浮かべて頷いて見せた、それらを忘れよう筈が無かった、彼にしてもこの年上幼馴染みの少女と過ごす時間は何よりも貴重で尊く、愛と輝きとに満ち満ちたモノだったからだ。
「それは良く覚えているけれど・・・。それが一体、どうしたのさ」
「あの時、私があなたのほっぺたを抓った時の事を、覚えてる?」
「・・・うん、そりゃ。ちゃんと良く覚えているけれども。それがどうかしたの?」
「あの時。蒼太はなんて言おうとしたの?」
「ええっ?」
“あの時って・・・”と言い掛けて蒼太は、少し気まずげと言うか、何かを恥ずかしがるような仕草を見せるがそれが返って余計にメリアリアの興味をそそる結果となった。
「もうっ。蒼太酷いわ、隠し事なんてしないで教えて。ちゃんと全部話すの!!」
「う、うん。でも・・・」
「嫌よ蒼太、お願いだから隠したりしないで・・・」
「う、うん。でも・・・」
「お願い蒼太、お願い・・・」
「・・・・・」
「ね?蒼太、お願い・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
“うん”、と暫くの沈黙の後に蒼太はようやくにして頷くモノの、その顔には未だに気後れ感と言うか、何処か照れ臭さのような雰囲気が漂っている。
「・・・?蒼太、お願い」
「う、うん。実は・・・」
そう言うと蒼太は少し瞳を逸らしつつも、ようやくボソボソと喋り始めた。
「・・・女の子って言うよりも。メリーの側にいたいな、って」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・すき」
「え・・・っ!?」
「好きいぃぃっ、蒼太大好き。好きなのおぉぉっ❤❤❤」
“愛してるっ”と思わず叫んで抱き着いては、彼の唇に唇を重ねて舌を絡め、口内を弄(まさぐ)るようにするモノのこの時、彼女は安らぎと幸せの絶頂にいたのであり、そしてその事が、どこまでも感情を昂ぶらせてはメリアリアをして一層、彼氏にしがみ付かせる要因となっていたのだ。
只中にあってどこまでも感情を昂ぶらせていたのであり、そしてその事がメリアリアをして一層、彼へとしがみ付かせる要因となっていたのだ。
「んちゅ、ちゅぱっ、じゅるじゅるっ、ちゅぱ、じゅるっ。じゅるじゅるじゅるじゅる、じゅるるるるるるるる~っっ❤❤❤❤❤❤❤ぷはぁっ。はあ、はあ、はあ、はあぁぁぁ・・・っ!!!好きいぃぃ、好き好き。愛してる・・・。んんむっ。んむちゅぅっ、ちゅぷちゅぱっ。じゅるるるっ、じゅるるるるるるるる~っっ♪♪♪♪♪♪♪」
「んちゅ、ちゅぱっ。じゅるるる、ちゅるちゅぷっ。じゅるるる、じゅぞぞぞぞ~っ!!!ぷはっ。はあはあっ、ふうぅぅ・・・。メリー・・・」
「はあっ、はあっ。はああぁぁぁ・・・っ❤❤❤❤❤そ、蒼太。蒼太あぁぁ?止めちゃやだぁ、もっと、もっとおぉぉ・・・っ。ん、んちゅ、ちゅるっ。ちゅぷっ。レロレロ、レロレロ。クチュクチュクチュクチュ~ッ!!!ちゅ、ちゅぱっ。じゅるるる、じゅるじゅるっ。じゅるるるるるるるるるる~っっ❤❤❤❤❤」
「んん、んむっ。ちゅぴ、ちゅぱっ。じゅるじゅる、じゅるるる~っ。レロレロ、クチュクチュッ。じゅぞぞぞ、ちゅううぅぅぅ~・・・っ!!ふあぁっ。はあはあっ、ああっ。メリー、メリー・・・!!」
「はあっ、はあっ。はあっ、はあぁぁぁっ❤❤❤ああん、蒼太ぁっ。もっと、もっとおおぉぉぉ・・・っ!!!」
「メリー、メリーッ!!でも、僕・・・っ。ん、んむむむぅっ!!」
そう告げるとメリアリアは再び、何事かを言い掛けた恋人の唇を己のそれでしっかりと塞いで舌で口内を舐め回し、更には舌同士を執拗に絡めてそのザラザラとした感触と恋人の風味とを、心行くまで堪能し尽くして行った、本当はメリアリアにお話ししたいことがあった蒼太は、考え直して先ずは恋人のキスの欲求を、つまりは求愛の思いを満たすべく、自身も彼女に向き合うと、本格的な口付けの応酬を開始したのだった。
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「ちゅぴ、ちゅぷ。ちゅるちゅる、じゅるるる、じゅるるる~っ!!!はあぁっ、はあはあ・・・っ。ねぇメリー・・・」
「はあっ、はあっ。はあっ。はあぁぁぁ・・・っ❤❤❤そ、蒼太。どうしたの・・・?」
「うん、あのさ。僕、メリーにお願いがあるんだ」
「・・・?なぁに?」
それから実に15分後、彼氏によって為される熱烈な、それでいて情熱的な接吻の嵐にようやくにしてその愛情を感じて心を満たす事が出来たメリアリアは、何とか彼氏の言葉に耳を貸せるだけの冷静さと言うよりも、心の余裕が生まれ始めていた。
「・・・うん。あのね、メリー。お願いだから」
“昔みたいに”と、少し困ったような、それでいてどこか悪戯っぽい微笑みを浮かべつつ、蒼太は続けた、“僕のホッペを抓って?”と。
「・・・ええ?」
「“しょうがないんだから”って。昔みたいに、僕のこと怒って?メリー・・・」
「・・・・・?」
「メリー、あのね。正直に言うと、僕。メリーの事を考えてると・・・」
「・・・・・」
「好きすぎて、嬉しくて。眠れなくなっちゃうんだ!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・ぷっ!!」
「・・・?」
“あっははははははっ!!”とそれを聞いたメリーは思わず、笑いを零してしまっていた、何を言い出すのかと思えばやはり、蒼太は“そう言った意味では”彼女の知っている昔の彼と、根っこの部分は少しも変わってはいなかったのだ、声も低く太くなり、雰囲気もドッシリとして落ち着いて来ていたと言うのに、その体付きもガッシリとして逞しく、男としても一人の人間としても、とっても頼もしいそれになって来ていた、と言うのにだ。
「あっははははははっ!!も、もうっ。本当に、蒼太ったらぁ!!」
「メ、メリー・・・?」
「ぷっはははははははっ!!くふふふ、あははは・・・っ!!」
それから一頻り笑い転げた後でようやく、メリアリアは瞳に喜びの涙をためたまま、改めて目の前の恋人へと目をやるとその唇に唇を重ねてその上。
その頬に自らのそれを押し付けては、愛しそうにスリスリと、擦り合わせるようにする。
「・・・もうっ、本当に蒼太ったら。いつまで経っても子供なんだから!!」
「・・・・・」
「でも良いの、蒼太はそれで良いの・・・っ!!」
“蒼太好き、大好き”と、改めて彼氏にそう告げると自身の最愛の恋人の唇へと向けてメリアリアは再びの、熱くて強い口付けをするモノの正直に言ってしまえば彼女はこの時、先程までのそれとは同種の、それでいてまた違った喜びの中へと埋没してしまっていた。
否、もっと正確に言ってしまえば“ホッとしてしまった”と言い換えた方が良かったのかも知れないのだが本当はメリアリアは、少し寂しさを感じていたのだ。
幼い頃からずっと一途に彼の事を思い続けて触れ合い続け、そしてなにより実際に身心を通して繋がり合っていたメリアリアには、だからこそハッキリと感じ取る事が出来たのであるが、大人になってから再会した蒼太は確かに、ずば抜けて格好良くて、何があっても揺るぎない肉体的な、そして精神的な強さをも手に入れていたのであり、そしてそんな彼から向けられ続ける“確かなる暖かさ”とでも言うべき感覚を、混じりっ気の無い透明な、それでいてどこまでも果てしない程に熱くて直向きで真っ直ぐな思いの丈を自覚した時にメリアリアは天井知らずの喜びと愛欲の中へと溶けていってしまったのである。
そしてそれが彼女をして彼との間により強く、より激しくキスやセックスと言った恋人としての繋がりを、絆の為のコミュニケーションをどこまでも求める要因となってしまっていたのであるが、しかし。
その一方で、メリアリアはある種の“悲しさ”と言うより“切なさ”、否、もっと正確に言い換えるのならば“戸惑い”を覚えて些か緊張もしていたのであるが、それは一重に蒼太の時折見せるようになった、ある表情と眼差しとがその原因となっていたからに他ならなかった。
それは幼馴染みの彼女でさえも知らなかった、成長すると同時に現れて来た蒼太の新たなる一面であり、それを一言で言い表そうとするのであればまさに“男の顔”、“男性の雰囲気”とでも言うべきモノであって、特に行為の最中やその前後に見受けられる事が多かったのであるが、そんな時の彼は決まって若干、興奮気味な面持ちを浮かべると同時にギラギラとした眼差しで彼女を見据え、筋肉質で逞しいその肉体で上から覆い被さるようにして抱き締めては、いきり立つ己自身でビクビクと震え続ける彼女の胎内(なか)を、いつ果てるともなく突きまくって来るのだ。
ずっと一途に恋い焦がれて来た掛け替えのない思い人との交わりである、勿論それは、とてもとても愛しくて心地好くて、蕩けるように気持ち良いモノではあったがしかし、その一方で時折そうした彼氏の態度にちょっとだけ“怖さ”、あるいは“気後れ”を感じてしまう事もまた事実であって、そしてそんな時彼女はつい、考えてしまうのである、“私の知っている蒼太はもう、いなくなってしまったのではないか?”と、しかし。
やはり蒼太は蒼太だった、大人になって凛々しくなって、鍛えられて、強くなってもあくまで、その芯の部分はあの頃と同じように、どこまでも純粋で優しくて温かみのある、少年の日の彼の、透き通るような輝きを放つ、素直さの結晶そのままのモノだったのだ。
「・・・ねえ蒼太」
「・・・ん?」
「・・・好きっ!!」
“だーい好き!!”と、メリアリアは再び告げると蒼太の唇へとその唇を重ねるモノの、それを知った彼女の心の中はだから、とても満たされた暖かさと尽きる事の無い彼への気持ちでいっぱいに溢れ返ってしまっていた、それはもう自分自身の根源部分から際限なく湧き上がって来てはどうにも止まらなくなってしまっており、それが彼女をして一層、彼へとしがみ付かせる要因となっていたのだ。
「好きいぃぃ、好き好き蒼太ぁっ。愛してるっ、愛してるの、蒼太あぁぁっ❤❤❤」
「僕だって愛してる。誰よりも何よりも愛してるよ、メリーッ!!」
そう応えると蒼太もまた、メリアリアの瑞々しいその唇へと向けて、何度も何度も口付けを返し続けるモノのそうだ、確かに蒼太は彼女の事を愛していたのであり、そしてそれは魂の伴侶としてのみならず、最愛の恋人してもであり尚かつ大切な幼馴染みとしてもであって、要するに彼女を彩る全てにおいて蒼太はメリアリアの事を愛すると同時に求めてもいたのである、そして。
それは何も、蒼太だけに限った話では決して無かった、メリアリアもまた同様に、その全てにおいて彼氏を愛すると同時に追い求めていたのであり、そして恋人が自分と同じ思いを、同質の心を持ってくれていた事が嬉しくて堪らずに、彼女をしてますます、蒼太への愛慕と信頼とを高め深める結果となっていったのだ。
「メリー・・・ッ。ぷっくくくくくっ、・・・ちゃん」
「・・・?」
「メリーお姉ちゃん!!」
「・・・もうっ」
少し悪戯っぽい笑みを浮かべつつも抱き着いて来る恋人を、自身も満たされた笑顔を浮かべてしっかりと受け止めながらも、メリアリアはそれでも“しょうがないなぁっ!!”と応えて彼氏の頑健な、それでいて立派なその肉体の背中へと向けては両手をソッと回して抱き締める。
「メリー・・・」
「ん・・・?」
「・・・ありがとう」
「ううん、いいの・・・」
“いいの”と静かにもう一度繰り返すとメリアリアは彼氏に抱き着いたままで、全身をその身体にスリスリと擦り付けるようにした、そして。
“お姉ちゃんが、いっぱい、いっぱい愛してあげる”と告げると同時に瞳を閉じてそのまま、数え切れない程の口付けを彼との間に交わし続けた、昨日あれだけ“した”と言うのにそれは全然、まだまだ足りなくなって、その後も心と体と、魂とを、その底の底までしっかりと重ね合ったまま、何十回も、何百回もキスをした。
「じゅるじゅる、じゅぷぷぷっ。じゅるるるるるるるる~っ❤❤❤❤❤ぷふううぅぅぅっ!?ふぅーっ、ふぅーっ。ふぅーっ、ふぅー・・・っ!!!」
(はあっ、はあっ。はあぁぁ・・・っ❤❤❤も、もう蒼太ったら、相変わらず激しいんだからぁっ。こんなに熱くて凄いのされたら、私完全に蕩けちゃう。頭がおかしくなっちゃうよおおおぉぉぉぉぉっ❤❤❤❤❤❤❤)
キスを交わし続けながらもメリアリアは考えるがそうだ、自身のツボを押さえると同時に刺激の仕方をも心得た彼の濃密にして途切れない愛撫にメリアリアはすっかり夢中になってしまい、メロメロになってしまっていたのであるが、それは何もテクニックにのみ限った話では決して無かった、普段の彼から向けられ続ける、尽きる事の無い愛情と無限なる恋慕、そして。
魂の奥底から共鳴し合う、お互いのお互いに対する確かなる絆と紡がれる思い、それらが一体となったセックスは、形容する事が出来ない程に至尊で至高で至誠に満ちたモノだったのである、ところが。
蒼太の場合はそれだけには留まらなかった、行為の最中は彼女に対する密情と、その快楽と痴態の見せる性的興奮とでどこまでも際限なく彼女を求めてしまうこの青年はその為、恋人に無理をさせないようにと行為の合間に結合を利用して房中術の要領で、自身の生気を分け与えるようにしていたモノの、最近ではそれに加えて“命そのもの”までをも融合させてはそのエネルギーを循環させ彼女と、肉体的にも精神的にも完全に一つに重なり合うようにしていたのであるが、これにはある一つの“訳”があった。
と言うのは大人になってからの蒼太の“責め”は、子供時代のそれと比べても桁違いにその激しさを増しており、そしてそれは恋人への“思いの深さ”も相俟って凄まじいまでの“連続多重無限絶頂”をメリアリアにもたらしていたモノの、その余りにも強烈無比なる突き上げと貪りと反応現象による痙攣の為にメリアリアは呼吸困難に陥ってしまう事が屡々(しばしば)であり、現に口から泡を吹いたままで気絶してしまった事も何度かあったし、それどころか心臓が止まり掛けた事すらあった。
そしてそれらを避けるために蒼太は、自身の持てる秘術の内で最大のモノの一つである、“己の命の煌めきを相手に分け与える術”を用いてはその比類無き生命力を彼女と一体化させる事で恋人の内側に宿りし大いなる意思の灯火を、その根源たる魂からもたらされる、人としての活力を決して途絶えさせる事の無いようにしたのだ、ところが。
そんな蒼太の優しさはメリアリアをして、彼との間に更なる愛欲と官能とを、もたらす結果となってしまった、蒼太が自身へと向けてくれている一途な思いや、また実際にやってくれている、有形無形様々な気遣いが彼女をして一層、恋人へと意識と心と体とを向かせて開かせ、蕩けさせる要因となっていたのである。
「ちゅむ、ぶちゅっ。ぶちゅうぅぅぅっ。ぶちゅうううぅぅぅぅぅっっ❤❤❤❤❤ぷへえええぇぇぇぇぇっっ!!!!!ぷへぇーっ、ぷへぇーっ。ぷへぇーっ、ぷへえぇぇぇ・・・っっ!」
(はぁーっ、はぁーっ。はぁーっ、はあぁぁぁ・・っ❤❤❤う、うふふっ、うふふふふふふっ。も、もう蒼太ったらぁっ!!)
蕩けた瞳と表情の中に“恍惚とした狂気”、もっと言ってしまえばむしろ“全てを超越してしまったかのような何か”を含みながらもそれでも、何物にも代え難いモノを見つめるような笑みと眼差しとを蒼太に向けてその双眸を、面構えを、そして更には全身を、“瞬きするのも勿体ない”とでも言うかのように凝視し続けるのであった。
「ちゅぷぷぷ、ちゅぷっ、じゅるっ。じゅるるるるる~っ❤❤❤❤❤ぷふうぅぅっ!!ふぅーっ、ふぅーっ。ふぅーっ、ふうぅぅぅ・・・っ❤❤❤」
(はひーっ、はひーっ。はひーっ、はひいいぃぃぃ・・・っ!!!う、うふふふっ。うふふふふふふっ!!蒼太っ、蒼太あぁぁ~っっ❤❤❤❤❤)
彼氏にしっかりと掻き抱かれたままで口付けを交わしつつも、メリアリアはそれでもどこか悦に入ったような面持ちで、今や完全に蒼太へと向けて蕩け切ってしまった頭の片隅で考えるモノの正直このまま、“永遠に蒼太と一緒にいられたらいいな”と彼女は思うが彼と一緒ならば彼女は、どんな困難が来ても乗り越えられるし、それに何があっても、いつ如何なる時においても互いに互いを支え合い、学び合い、繋がりあって行けるだろうし、それこそいつまでもいつまでも、果てる事無き未来の先まで愛し合って行けるだろう。
(うふふふっ、うふふふふふふふっ。蒼太ぁ、蒼太っ。蒼太蒼太蒼太蒼太蒼太蒼太あああぁぁぁぁぁっっっ❤❤❤❤❤もう絶対に逃がしてあげないのっ、もう絶対に私のものなのっ。私だけのものなのおぉぉぉっっっ!!!!!)
もはや蒼太に対して狂って狂って狂い切ってしまったメリアリアはどこか壊れてしまったかのような、しかしどこまでも一途で真っ直ぐな視線を恋人に対して向け続けていた。
その笑みは枯れる事無く、その眼差しは途絶える事無く、そして何よりかによりその思いは、愛は決して何者にも、どんな物にも負けず、歪まされず、損なわされる事は無かった。
ーーーーーーーーーーーーーー
今回のお話しには、実は幾つかの参考にさせていただきました“元ネタ”があります。
まず一つ目は、私の大好きな女性漫画家さんであられる“井ノ元リカ子先生”の執筆されていた成人向け単行本(申し訳御座いません。読んだのがかなり以前の事でしたので本の題名は忘れてしまいしたが、それでも確か、“こいするからだ”、“ちぇりーぱい”、“くすりゆびハニー”、“A.My.Sweets”の4つの内のいずれかだったと思うのですが)の中で収録されている、“ずっと一緒だった幼馴染同士が目出度く恋愛を成就させてお付き合いをする”話があったのですがその際の、エッチの時のヒロインの心理描写(これがまさに、キチンとした“女性視点”で描かれているので大変参考になりました)と、二つ目は“チャットモンチー”さんのデビュー曲(でしたっけ?)、“シャングリラ”の歌詞です(特にそのラストの部分、サビの部分の歌詞ですかね)。
これら二つを蒼太とメリアリアの(そしてもっと言ってしまえばリュカとビアンカの)ラブシーンですとか、イチャイチャしているシーンに頭の中で置き換えて、挿入させてみたのです(例えば“ビアンカもリュカに抱かれている最中に、こんな事を考えた事があったのかな”ですとか“リュカだったら確かに、ビアンカに対して、こんな事を思ったり、お願いしたりするだろうな”ですとか。要するに“確かにこの二人だったらこう言う事を言ったり考えたりするだろうな”、もしくは自分の中では“アリだな”と思った事柄を参考にしつつも、そしてそれらを中心として話を膨らませていったのです)、で、早速それらを作品に反映させてみました(とまあ、色々と書かせていただきましたけれども要はそんなに難しい話じゃないんです。結局の所何が言いたいのか、と申しますと勿論、“夫婦としての愛ありき”と言うのがまずもっての前提条件としてしっかりとその根底にはあるのですが、それに加えてもう一つ、時々、蒼太君はメリアリアちゃんと幼馴染の時のようにじゃれ合いたくなっちゃうんですよね、要するに彼女に甘えてみたくなっちゃうんです。つまりはそう言う事なのです)。
そして更にはもう一つ、皆さんはドラクエにおける、“メガザル”と言う魔法を御存知ですか?
そうです、己の命と引き換えに仲間全員を、それも“確実に”蘇生、回復させる魔法なのですが、今回はそれを“セックス”に取り入れてみたら、より深みが出て良いのではないか?と思いまして自分なりに応用を利かせてみました(リュカだったらばそうしましたでしょうし、それに何よりかにより蒼太君はセックスの時には結構、激しく求めてしまうので・・・)。
まだ具体的なシーンの描写そのものは先ですけれども(いくら何でもあんまりエッチシーンばかりになってしまうのもあれなんで・・・)要するに、自分の命そのものをメリアリアに分け与える(と言うよりも、もっと言ってしまえば一体化させて循環させ合う)事で自分は元より彼女の命をも保護しているわけです(詳しくは後で出て来ますけれども、蒼太君も“メガザル”のような秘術が、それも“使おうと思えば”使えますので・・・)。
そう言う事で御座います。
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「では、もう一度好きになって下さい」
私のことなんて好きじゃないはずなのに、どうして、離婚を拒むの? それどころか、どうして執着してくるの? どうして、私を離してくれないの?
「諦めて、俺の妻でいて下さい」
どんな手を使っても手に入れたいと思った旦那様。でも違う、それは違うの、そう思ったのは、私じゃないの。
貴方のことが好きだったのは、私じゃない。
私はただ、貴方の妻に転生してしまっただけなんです!
―――小説の中に転生、最推しヒロインと旦那様の恋を応援するために、喜んで身を引きます! っと思っていたのに、どうしてこんなことになってしまったのか……
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。魔法ありの世界です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
R15です。性的な表現があるので、苦手な方は注意して下さい。
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