星降る国の恋と愛

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運命の舵輪編

エルヴスヘイム事件13

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 ここで言う1週間とはエルヴスヘイムで1週間と言う意味
です、(つまり人間の世界で一日程です)。
ーーーーーーーーーーーーーー
「セファタの射手、アイリス・フェレオン・ウンディーネ!!」

「はっ!!」

 名前を読み上げられたアイリスが恭しく一礼をして階段を昇りエルフ王、エルファサリアの前へと進み出る。

 この日は勲章と褒章の授与式だった、命懸けの旅を成し遂げた蒼太達一行に、エルファサリアから褒美が授けられるのだ。

「オウンガルズの姉妹、レジリアーナ・セレイア・アルヴェリア、並びにミリアーノ・セレイア・アルヴェリア!!」

「「はいっ!!」」

 順番に呼ばれてゆく仲間達を見送りつつも、蒼太はドキドキとしていた、次はいよいよ自分の番だ、ちゃんと出来るだろうか、王様はどんな人なのだろうかと、そんな事が、即ち期待と不安とが胸を打つ。

「人間族の戦士、ソウタ・アヤカベ!!」

「・・・はいっ!!」

 呼ばれた蒼太は勢いよく返事を返すとスクッと立ち上がっては目の前の階段を、頂上へと向けて一歩一歩上がって行く。

 ビロードの絨毯を踏み締めながらゆっくりとそれを昇り切った蒼太の視界が急に開けた、みるとそこは奥行きのある、巨大な空間となっており沢山の鎧を着ている騎士達や正装をした大臣達で埋め尽くされていた、その中央部分の。

 1番奥の高くなって居る場所に立派な台座が設けられており、そこには白い服装に金でも銀でもない飾りを付けた、長く美しい金髪を後ろで束ねている、一人の美丈夫が座っていた。

 その雰囲気は何処かフォルジュナを思わせるが何というかこう、もっと堂々としたオーラを纏っていて、その体躯も中々に立派なモノを誇っていた。

「・・・・・っ!!」

 蒼太は、思わず息を呑んだ、しかしここで恥を掻くわけには行かない、気を取り直すと精神を落ち着かせて国王へと向けて歩みを続ける。

 やがて。

 本人の前まで来た蒼太は、改めてその威風堂々とした佇まいに圧倒されてしまっていた、その全身からは温和で重厚な威厳が迸っており、彼でなくとも自分が今、どう言った存在の前にいるのか、と言うことが伺い知れると言うモノだ。

「・・・・・っ!!」

「・・・そなたが」

 “ソウタ・アヤカベか?”とその人はゆっくりと、しかし堂内に響き渡るほどの大きな声で問い掛けて来る。

「・・・はい、そうです!!」

 蒼太もそれに負けず劣らず元気いっぱいに応えると、エルファサリアはニッコリと笑って頷いた。

「・・・・・っ!!」

 蒼太はそれを見て反射的に“凄く優しい人だ”と見て取った、エルファサリアは蒼太の気勢を受け止めて、それを自分の中に収めてしまっている、その上で笑ってくれたのだ。

 “元気があって、大変よろしい!!”とそう告げて。

「余も、君のお陰で、君達のお陰で元気になった、礼を言う」

「国王様」

 “もったいないお言葉で御座います”と、まだ小さな蒼太からは自然とその言葉が出ていた、群臣は驚いていた、“あの少年は、礼儀を知っているのか”と、誰もが“信じられぬ”と言った風体で囁き合った。

「有難う、蒼太。その君の勇気を称えて、この剣を授けよう」

 そう言うとエルファサリアは、まだ小さな蒼太には不釣り合いな程の、金でも銀でも無い不思議な金属で出来ている長くて大きな剣を持ってこさせた。

「それの名前は“ナレク・アレスフィア”、ここの国の言葉で“風の王”を意味する、・・・君に授けよう!!」

「で、でも。そんな立派なモノを・・・!!」

「なに、構わんさ」

 謙遜して断ろうとする蒼太に対して、エルファサリアは笑って応えた、“君にこそ相応しい剣だ”と言って。

「受け取ってくれ、蒼太。君の勇気と優しさとに、是非とも報いさせて欲しい」

「・・・は、はい。王様、喜んで!!」

 そう言うと蒼太は、頭を深々と下げてから両手を差し出し、“ナレク・アレスフィア”を拝領した。

「・・・王様、もう一つお願いがあります」

「うん?なんだね、何なりと言うが良い」

「実は僕の世界の子供達が、カインによって、この世界へと連れて来られて、眠らされていたのです。彼等を助けてあげて下さい、ずっと目を覚まさないんです」

 それに、と蒼太は続けた、“彼等も、僕と一緒に帰してあげて欲しいんです”と言って。

「・・・なるほど、話は解った」

 そう頷くとエルファサリアは近習に何かを告げて、直ちにセファタの街の孤児院へと向けて何台もの馬車を繰り出させて行った、聞けば彼等は“治療をしなければならない”との事だったから帰還させられるのは1週間は先になるだろう、との事だった。

「どんな魔法や薬を使われたのかを、先ずは検査しなくてはならないし・・・。それに処置が必要ならば、それも施さなくてはならない」

 “術後の経過も見なければならないしな”とエルファサリアは付け加えると蒼太に“それで良いか?少年”と尋ねる。

「はいっ。ありがとうございます、エルファサリア陛下!!」

「・・・うむ」

 それを見るとエルファサリアは今度は自ら席を立って歌い始めた、それは叙事詩で蒼太達を称える歌だ。

「“この世界は闇に呑まれようとしていた、だがそうはならなかった、一人の勇敢な少年と三人の美女達がそれを食い止めたのだ。世界は光を奪われたがしかし、汚され切る事はしなかった。彼等が光を奪い返してその命脈と運命とを守り抜いたのだ、彼等はこの世界を、愛すべき世界を守り、救ったのだ。そして世界と世界とは、新たな思いで契りを交わす。愛と誠実さに基づいている、深い深い愛の契りを”」

 そう意味の歌だった、蒼太には解らなかったけれども、国王が何やら歌に呪(まじな)いを込めていることが解った、多分、この世界と自分達とに祝福を与えてくれているのだろう事が伺える。

 やがて、それが終えるとー。

 彼等は再び、国王の前へと呼び出された、そこで今一度、エルファサリアから礼を述べられると“下がりたまえ”との訓示が出て。

 式典は無事に終わった。

 旅の仲間は、そこで解散する事となった、アイリスもレアーナもミリスも、勲章とたっぷりの褒美をもらって即日、それぞれの故郷目指して向けて出立していった。

 最初はどうなることかと思っていたその旅も、終わってみるとアッという間だった、蒼太は一抹の寂しさを感じた、いつ間にかに“ずっと一緒にいられる”かのような感覚に陥ってしまっていたのだ。

 勿論、頭の中では“いつかは別れなければならない”事は熟知していたのだが、いざとなるとどうしても心が“いやだ”と反発した。

 それを無理矢理押さえ込んで。

 蒼太は“船”に乗ることとなった、それは本来、王族だけが使用することの出来る特別製の帆船であり、風が無くとも大空を自由に駆け巡り世界と世界とを、行き来する事が出来る船だったのだ。

「蒼太」

 “君の事は忘れない!!”と、出立の日に、エルファサリア自らが埠頭まで見送りに来てくれた、見るとその傍らにはフォルジュナとサリナの姿もある。

「ありがとう、みんな!!皆のお陰で助かったよ!!」

「蒼太、元気でね!!」

「あっ、そうだ!!」

 蒼太は、しまったと言う顔をした、譲り受けた装備品の数々を、返すのを忘れていたのだ。

「どうしよう、今からじゃとても間に合わない!!」

「大丈夫ですよ」

 流石に申し訳なさそうな表情を見せる蒼太に対して、フォルジュナはニッコリと微笑んで左手を差し出した、そして。

 何やら呪いの言葉を唱えるとその手をクイッと折り曲げる、すると。

 蒼太が身に付けていた装備品が、一瞬にして消え失せており、フォルジュナの腕の中へと戻っていた。

「ごめんなさい、フォルジュナ様!!」

「良いのです、本来であれば差し上げようと思っていた品々でしたから。でも良いのです、国王陛下から、そんな立派な剣をもらえたのであれば、もう大丈夫。後はその剣が貴方を導いて、何があっても守り抜いてくれるでしょう!!」

 そう言うフォルジュナの目には、何やら呪いの輝きがあった、どうやら国王同様に、何やら術式を発動させて、蒼太に祝福を与えてくれているらしい。

「・・・ふぅっ」

 “これでもう、大丈夫”とフォルジュナは告げた、みんな最後の最後まで、彼を気遣ってくれていたのだ。

「みんな、有難う!!本当に、有難う。忘れないよ!!」

 その蒼太の言葉を合図とするかのようにして、“船”は出向していった、向かう先は人間界のガリア帝国、首都ルテティアの蒼太の家だ。
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