星降る国の恋と愛

モノポールエンジン

文字の大きさ
上 下
58 / 476
運命の舵輪編

過激な愛への道標

しおりを挟む
 人は、生まれてくる場所を、親を選べない。

 これはしかし、ある筋の人々に言わせると嘘らしい、と言うことである。

 らしい、と言うのは自分では確認のしようがないからそう言う表現をするしかないのであるが、そのある筋の、と言うのはつまり、神官、修験者、陰陽師達の事である。

 彼等が神々から聞いた話によると、人は生まれてくる前に、神々からその全てを見せられるのだそうな。

 何をか、と言われると、それはつまり、“お前がこの人間として生まれた場合はこういう一生を送り、最後はこうなるぞ”と言うことをまじまじと見せ付けられるのだそうだ(“自殺はダメ”、と言うのにも、ここに一つの理由があるとされる。要するに“神々や自分自身との契約違反”と言う事になってしまうのだと言う)。

 そして“それでもいい”、“生まれて来たい”と了承した魂にのみ、その者の人生は与えられる、との事だったのだがそんな魂達の内、死後も成仏をせずに(或いは出来ずに)この世を漂う者達がいる。

 いわゆる“幽霊”と呼ばれる存在の事なのだが、では彼等の事を神々はどう見ておられるのか、と言うと“あの世(向こうの世界から見た場合のこの世の呼び方)に行ったっきり帰ってこない戯(たわ)け者共”となるのだそうな。

 そしてそう言った連中を“上げてあげる”のもまた、神官や修験者に与えられた使命と言うか、役割であり、そしてここにも一人、それを生業にしている者がいた。

 言うまでもなく、綾壁蒼太その人だったが今日もある御家庭に呼ばれて心霊現象を解決してきた彼は、可愛い彼女の待つ家路への道を急いでいた。

「今日の霊(ひと)は、えらく理屈っぽい人だったな・・・」

 ついでに言えばまあ、プライドの高い霊(ひと)だったな、等と帰る道すがら、蒼太は思うがお陰で説得に手間取り、帰るのが少々、遅くなってしまった、予定では16時には家路に付いている筈が、時計を見ると既に18時を回っている、急がないといけない。

 一応、メリアリアには連絡をしておいた、こんなこともあろうかと(彼女の名前を出すと色々と問題が起きるため)自分名義で新たにスマートフォンを購入して彼女に与えておいたのが、早速役に立った訳だ。

「lineはやらないでね」

 と蒼太は予(あらかじ)め、メリアリアに伝えて置いた、便利なことは便利なのだがあれをやると本社のある“高麗連邦政府”の直轄機関に個人情報が全て軒並み引き抜かれてしまうため、蒼太は前もって釘を刺しておいた訳である。

「本当はメールアドレスもヤバいんだけど・・・。あれも“マイナンバー”みたいなものだから、こっちもやっぱり本社の置かれている合衆国(ステイツ)の情報局に登録されて、場合によっては色々とやられちゃうんだけど、流石に連絡手段が最低限ないと、不便だからね」

「解った」

 と、メリアリアは了承してくれたモノの、彼女に“ごめんね、ちょっと遅れるかも知れない(と言うよりも、ほぼ確実に遅れるが)”と連絡を入れた、その30分後位から、恐ろしい程の勢いでメールが着信し始めた。

「・・・寂しいな」

「蒼太、早く会いたい」

「早く帰ってきてね」

「ねえ、今どこにいるの?」

 と言う内容のメールが5分に1回の割合で、連発して届き始めたのだ。

 挙げ句の果てには。

「ねえ」

「今」

「どこ?」

「居」

「る」

「の」

 そして連発する着信音(電話)。

 最初はそれを律儀に返していた蒼太だったが電車に乗った事も手伝って、中々出られなかった時間帯があった、すると。

「うわっ!?」

 駅から出てスマホを確認した時点で“なんじゃこりゃっ!?”と思わず蒼太は驚愕してしまった、電車に乗っていたのは僅か20分足らずの間だったのであるがその間に、なんと60回もの着信が記録されていたのだ。

「・・・も、もしもし?」

「あっ、蒼太!?」

 電話を掛けると途端に向こう側からパアァッと明るくなった彼女の声が漏れ聞こえて来た。

「もうっ。すっごく心配したんだから!!」

「あはは・・・。大丈夫だよ、メリーは心配性だなぁ!!」

 と、敢えてこちらも明るい声で応じる蒼太であったが内心はちょっとビックリしてしまっていた、やむを得なかったにしても、ちょっと遅くなってしまっただけでまさかここまで強烈な反応と言うか、執着を示されるとは思っていなかったのだ。

(なんだろう?もしかしてメリーってヤンデレの気があるのかな・・・)

 そんな彼女からの、深すぎる愛情を垣間見てしまった青年は、今後来るべき二人の生活と性活とに、戦慄を禁じ得なかったのである(彼女をそう言う風に開発したのも、そこまでの信頼関係を構築したのも自分自身だったくせに!!)。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...