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運命の舵輪編
過激な愛への道標
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人は、生まれてくる場所を、親を選べない。
これはしかし、ある筋の人々に言わせると嘘らしい、と言うことである。
らしい、と言うのは自分では確認のしようがないからそう言う表現をするしかないのであるが、そのある筋の、と言うのはつまり、神官、修験者、陰陽師達の事である。
彼等が神々から聞いた話によると、人は生まれてくる前に、神々からその全てを見せられるのだそうな。
何をか、と言われると、それはつまり、“お前がこの人間として生まれた場合はこういう一生を送り、最後はこうなるぞ”と言うことをまじまじと見せ付けられるのだそうだ(“自殺はダメ”、と言うのにも、ここに一つの理由があるとされる。要するに“神々や自分自身との契約違反”と言う事になってしまうのだと言う)。
そして“それでもいい”、“生まれて来たい”と了承した魂にのみ、その者の人生は与えられる、との事だったのだがそんな魂達の内、死後も成仏をせずに(或いは出来ずに)この世を漂う者達がいる。
いわゆる“幽霊”と呼ばれる存在の事なのだが、では彼等の事を神々はどう見ておられるのか、と言うと“あの世(向こうの世界から見た場合のこの世の呼び方)に行ったっきり帰ってこない戯(たわ)け者共”となるのだそうな。
そしてそう言った連中を“上げてあげる”のもまた、神官や修験者に与えられた使命と言うか、役割であり、そしてここにも一人、それを生業にしている者がいた。
言うまでもなく、綾壁蒼太その人だったが今日もある御家庭に呼ばれて心霊現象を解決してきた彼は、可愛い彼女の待つ家路への道を急いでいた。
「今日の霊(ひと)は、えらく理屈っぽい人だったな・・・」
ついでに言えばまあ、プライドの高い霊(ひと)だったな、等と帰る道すがら、蒼太は思うがお陰で説得に手間取り、帰るのが少々、遅くなってしまった、予定では16時には家路に付いている筈が、時計を見ると既に18時を回っている、急がないといけない。
一応、メリアリアには連絡をしておいた、こんなこともあろうかと(彼女の名前を出すと色々と問題が起きるため)自分名義で新たにスマートフォンを購入して彼女に与えておいたのが、早速役に立った訳だ。
「lineはやらないでね」
と蒼太は予(あらかじ)め、メリアリアに伝えて置いた、便利なことは便利なのだがあれをやると本社のある“高麗連邦政府”の直轄機関に個人情報が全て軒並み引き抜かれてしまうため、蒼太は前もって釘を刺しておいた訳である。
「本当はメールアドレスもヤバいんだけど・・・。あれも“マイナンバー”みたいなものだから、こっちもやっぱり本社の置かれている合衆国(ステイツ)の情報局に登録されて、場合によっては色々とやられちゃうんだけど、流石に連絡手段が最低限ないと、不便だからね」
「解った」
と、メリアリアは了承してくれたモノの、彼女に“ごめんね、ちょっと遅れるかも知れない(と言うよりも、ほぼ確実に遅れるが)”と連絡を入れた、その30分後位から、恐ろしい程の勢いでメールが着信し始めた。
「・・・寂しいな」
「蒼太、早く会いたい」
「早く帰ってきてね」
「ねえ、今どこにいるの?」
と言う内容のメールが5分に1回の割合で、連発して届き始めたのだ。
挙げ句の果てには。
「ねえ」
「今」
「どこ?」
「居」
「る」
「の」
そして連発する着信音(電話)。
最初はそれを律儀に返していた蒼太だったが電車に乗った事も手伝って、中々出られなかった時間帯があった、すると。
「うわっ!?」
駅から出てスマホを確認した時点で“なんじゃこりゃっ!?”と思わず蒼太は驚愕してしまった、電車に乗っていたのは僅か20分足らずの間だったのであるがその間に、なんと60回もの着信が記録されていたのだ。
「・・・も、もしもし?」
「あっ、蒼太!?」
電話を掛けると途端に向こう側からパアァッと明るくなった彼女の声が漏れ聞こえて来た。
「もうっ。すっごく心配したんだから!!」
「あはは・・・。大丈夫だよ、メリーは心配性だなぁ!!」
と、敢えてこちらも明るい声で応じる蒼太であったが内心はちょっとビックリしてしまっていた、やむを得なかったにしても、ちょっと遅くなってしまっただけでまさかここまで強烈な反応と言うか、執着を示されるとは思っていなかったのだ。
(なんだろう?もしかしてメリーってヤンデレの気があるのかな・・・)
そんな彼女からの、深すぎる愛情を垣間見てしまった青年は、今後来るべき二人の生活と性活とに、戦慄を禁じ得なかったのである(彼女をそう言う風に開発したのも、そこまでの信頼関係を構築したのも自分自身だったくせに!!)。
これはしかし、ある筋の人々に言わせると嘘らしい、と言うことである。
らしい、と言うのは自分では確認のしようがないからそう言う表現をするしかないのであるが、そのある筋の、と言うのはつまり、神官、修験者、陰陽師達の事である。
彼等が神々から聞いた話によると、人は生まれてくる前に、神々からその全てを見せられるのだそうな。
何をか、と言われると、それはつまり、“お前がこの人間として生まれた場合はこういう一生を送り、最後はこうなるぞ”と言うことをまじまじと見せ付けられるのだそうだ(“自殺はダメ”、と言うのにも、ここに一つの理由があるとされる。要するに“神々や自分自身との契約違反”と言う事になってしまうのだと言う)。
そして“それでもいい”、“生まれて来たい”と了承した魂にのみ、その者の人生は与えられる、との事だったのだがそんな魂達の内、死後も成仏をせずに(或いは出来ずに)この世を漂う者達がいる。
いわゆる“幽霊”と呼ばれる存在の事なのだが、では彼等の事を神々はどう見ておられるのか、と言うと“あの世(向こうの世界から見た場合のこの世の呼び方)に行ったっきり帰ってこない戯(たわ)け者共”となるのだそうな。
そしてそう言った連中を“上げてあげる”のもまた、神官や修験者に与えられた使命と言うか、役割であり、そしてここにも一人、それを生業にしている者がいた。
言うまでもなく、綾壁蒼太その人だったが今日もある御家庭に呼ばれて心霊現象を解決してきた彼は、可愛い彼女の待つ家路への道を急いでいた。
「今日の霊(ひと)は、えらく理屈っぽい人だったな・・・」
ついでに言えばまあ、プライドの高い霊(ひと)だったな、等と帰る道すがら、蒼太は思うがお陰で説得に手間取り、帰るのが少々、遅くなってしまった、予定では16時には家路に付いている筈が、時計を見ると既に18時を回っている、急がないといけない。
一応、メリアリアには連絡をしておいた、こんなこともあろうかと(彼女の名前を出すと色々と問題が起きるため)自分名義で新たにスマートフォンを購入して彼女に与えておいたのが、早速役に立った訳だ。
「lineはやらないでね」
と蒼太は予(あらかじ)め、メリアリアに伝えて置いた、便利なことは便利なのだがあれをやると本社のある“高麗連邦政府”の直轄機関に個人情報が全て軒並み引き抜かれてしまうため、蒼太は前もって釘を刺しておいた訳である。
「本当はメールアドレスもヤバいんだけど・・・。あれも“マイナンバー”みたいなものだから、こっちもやっぱり本社の置かれている合衆国(ステイツ)の情報局に登録されて、場合によっては色々とやられちゃうんだけど、流石に連絡手段が最低限ないと、不便だからね」
「解った」
と、メリアリアは了承してくれたモノの、彼女に“ごめんね、ちょっと遅れるかも知れない(と言うよりも、ほぼ確実に遅れるが)”と連絡を入れた、その30分後位から、恐ろしい程の勢いでメールが着信し始めた。
「・・・寂しいな」
「蒼太、早く会いたい」
「早く帰ってきてね」
「ねえ、今どこにいるの?」
と言う内容のメールが5分に1回の割合で、連発して届き始めたのだ。
挙げ句の果てには。
「ねえ」
「今」
「どこ?」
「居」
「る」
「の」
そして連発する着信音(電話)。
最初はそれを律儀に返していた蒼太だったが電車に乗った事も手伝って、中々出られなかった時間帯があった、すると。
「うわっ!?」
駅から出てスマホを確認した時点で“なんじゃこりゃっ!?”と思わず蒼太は驚愕してしまった、電車に乗っていたのは僅か20分足らずの間だったのであるがその間に、なんと60回もの着信が記録されていたのだ。
「・・・も、もしもし?」
「あっ、蒼太!?」
電話を掛けると途端に向こう側からパアァッと明るくなった彼女の声が漏れ聞こえて来た。
「もうっ。すっごく心配したんだから!!」
「あはは・・・。大丈夫だよ、メリーは心配性だなぁ!!」
と、敢えてこちらも明るい声で応じる蒼太であったが内心はちょっとビックリしてしまっていた、やむを得なかったにしても、ちょっと遅くなってしまっただけでまさかここまで強烈な反応と言うか、執着を示されるとは思っていなかったのだ。
(なんだろう?もしかしてメリーってヤンデレの気があるのかな・・・)
そんな彼女からの、深すぎる愛情を垣間見てしまった青年は、今後来るべき二人の生活と性活とに、戦慄を禁じ得なかったのである(彼女をそう言う風に開発したのも、そこまでの信頼関係を構築したのも自分自身だったくせに!!)。
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