星降る国の恋と愛

モノポールエンジン

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運命の舵輪編

謎解きはお風呂の後で

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 メリアリアが、メリーニとして蒼太の所へとやって来てから、早くも三ヶ月が過ぎようとしていた、ある5月の晴れた日。

 この間、世間一般的には特に問題等は無く(実際には政治的な問題がわんさかとあったのだが・・・)、世界は優しさと温かさと、そしてちょっぴりの理不尽さを抱えたまま今日も回り続けていたのだ。

「ただいま~・・・」

「お帰りなさい!!」

 そう言っていつものように仕事から帰って来た蒼太を、エプロン姿のメリアリアが出迎えるがこの風景もお互いに、もうすっかり慣れ親しんだモノとなっていた、特に変に所帯染みてしまっているメリーニはまるで蒼太の妻のような貫禄を見せ始めていて、実際に風格のようなモノまで漂い始めて来ていたのだ。

 もっとも熟している役割だけ見れば確かに彼女は妻そのものと言って良く、また本人もそのつもりであったが二人の間にはもう一つ、決定的に欠けているモノがあった。

 夜の営み、即ち夜伽である。

 流石に蒼太はメリーニに対して手を出してくるような事はしなかったし、メリアリアも最初はそれでも満足していたのだが、最近はそれも我慢の限界を迎えつつあった、蒼太に“触って欲しい“、“抱いて欲しい”と心底思うようになっていたのだ。

(・・・もうっ。せっかく蒼太と再会できたのにっ。このままじゃ疼いちゃうよ、切ないよ~っ!!!)

 と、まだ結婚前の乙女(既にして蒼太に抱かれてはいるモノの)だと言うのに既にして欲求不満セックスレスとなっていたメリアリアは、人知れずに悶絶していたのだが、一方で蒼太も蒼太で苦しんでいた事があった、メリーニの正体に付いてである。

 蒼太はメリーニの事を、メリアリアではないかと考えていた、でなければあの時の、初めて出会った時の不可思議な感覚と言うか、直感の意味が解らなかったからだ。

 確かに、メリアリアとメリーニでは感じる波長が違うモノの、彼女は間違いなくメリアリアであると、彼の心が、魂が告げていた。

 それに。

 彼女の時折見せる反応や仕草、言動の数々が、間違いなくメリアリアと符合する、ただ確証だけがそこに無かった。

 それが、蒼太の悩みのタネだったのだがそんな彼の憂鬱を、吹き飛ばしてくれる出来事がやって来た。

 切っ掛けは一匹の虫だった、ソイツはどんなに戸締まりを厳重にしても、綺麗に清掃をしたとしても、必ずや何処からか侵入して繁殖する、黒くてテカテカと光っている、例のアイツであったのだ。

「きゃあああぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

「なんだ、なんだ?」

 リビングで寛いでいた蒼太の耳元に、甲高い金切り声が響いてきたのはその日の夜の事だった、声の主はメリーニであり、発生源はお風呂場だったから、季節柄、蒼太には大体の事が容易に想像が出来たのだ。

「どうしたの?」

カ、カクラウチゴキブリが・・・」

「・・・はあぁぁ」

(やっぱりな)

 そう思いつつ、蒼太は洗面台の下から素早く“秒殺、ゴ○ジェット”を取り出すと“入るよ”と断りを入れてからスライド式のドアを勢いよく開ける。

 すると中には湯船に浸かりながら顔だけ出しているメリーニと、天井で蠢く怪しい影の存在があった。

「・・・・・」

 蒼太は慣れた手つきでゴ○ジェットを持つと、ソイツ目掛けて“シューッ”と一吹き吹きかけた、すると。

 次の瞬間、ソイツは天井から落ちてきて少しの間、バスルームの床の上でジタバタともがいていたが、程なくして動かなくなり、無事にあの世へと旅立って行った。

「はあぁぁ。ありがとう、蒼太・・・」

「びっくりしたよ。・・・まあ多分、そうだろうと思っていたけど」

 そう言うと蒼太は“もう居ないだろうな?”と念入りに辺りを見渡している内に、あることに気が付いてー。

 驚愕の余り、思わずその場に立ち尽くしてしまった。

「・・・?あ、有難う蒼太。もう大丈夫」

「メリー・・・!?」

「ええっ!?あああっ!!」

 蒼太に続いて、メリーニも気が付いていた、彼が凝視していたのはお風呂場に備え付けられていたバスミラーであり、見ていた角度的に、そこには自分自身のそれと共にメリーニの姿が映し出されていたのだがー。

 鏡の中のメリーニは、メリーニではなかった、そこに居たのは可愛らしさと美しさの同居している整えられた顔に、パッチリと開かれた青空色の瞳。

 腰まで伸びた美しい金髪の、色の白い女性であった。

「メリー・・・」

「あうぅぅ・・・」

 蒼太が再びその名を呼ぶとメリーニは、否、メリアリアはそう呻いて不安そうな、それでいて申し訳無さそうな表情で、その場に蹲ってしまった。
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