35 / 476
運命の舵輪編
青年と少女1
しおりを挟む蒼太はお父さんに加えてお母さんの指導があったために僅か4歳にしてアソコまでの技術、技量を身に付けるに至っています(本格的に波動を用い、ぎっくり腰を一時的にとは言えども治癒させる程度の能力があったのですね。もちろん、ちゃんとツボも見抜いています)。
“彼”にももう少しお父さん、お母さんが側にいてくれたらなぁ~、とか思ってしまう今日この頃です(そしたら冒険も、もっと楽なモノになっただろうに・・・。まあいずれにせよ最終的には皆救われたから良かったですけど)。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぐ、はぐ。もぐ、もぐ・・・」
「ドンドン食べてね、いっぱいあるから・・・」
蒼太の家にもらわれていった少女、メリーニ・カッセはその後、タクシーに乗せられて(ホームレスの少女を乗せる迷惑乗車賃分は蒼太がタップリと支払った)蒼太の家に到着するとまずはお風呂に入れられた。
そこでおそらくは数ヶ月分の汚れを落としてからのち、取り敢えずは蒼太の衣類を与えられて食卓へと通されたのだが、お風呂から上がってきた彼女を見た蒼太は思わず「ほぅっ!?」と唸ってしまった、それほど元の彼女は気品があり、美しい少女だったのだ。
その顔立ちは整っていて美しく、まだ完全には回復していないだろう表情にも、それでも凜とした佇まいがあって、それにがっついているように見えても、その食べ方にも品があった、つまりはちゃんとした教育を受けていた女の子だと言うことだ。
「・・・・・」
「はぐ、はぐ、ごく、ごくっ。んぐ、んぐ。んぷぷー・・・、ぷはっ、あむ、んぐ・・・」
用意されたスパゲッティナポリタンやマルゲリータ、シーザーサラダやソーセージを頬張りながらも、その食べ方には卑しさが殆ど無く、フォークとナイフを綺麗に使い分けて巧みに食材を口へと運んで行く。
「ぷはっ。はあ、はあっ。ふうぅぅー・・・。ご馳走さまでした」
「まだデザートもあるよ?それに飲み物のお代わりは?遠慮しないで召し上がれ」
「ありがとう、いただくわ」
と言って蒼太が差し出したイタリアンジェラートのバニラとメロンとチョコレート、そして生クリームの乗ったココア(三杯目)をあっという間に平らげるメリーニだったが、それらが済むとキチンと用意されていたナプキンで口を拭う。
「・・・・・」
(やっぱりだ、なんだかんだ言ってもこの娘、どことなく上品な子だよなぁ・・・)
「美味しかったわ。それにちゃんと下味も付けていてくれたのね?ピッツァやナポリタンに入っていたサラミやアンチョビも塩辛くて美味しかった。塩加減もバッチリ利いていてとっても食べ応えがあったもの!!」
「喜んでもらえて嬉しいよ。でも良くそこまで味の観察が出来たね?ああ言うのって隠し味って言うか、本当に下拵えの領分なのに・・・」
「うっ。ご、ごめんなさい。つい・・・」
「いいや、いいんだよ謝らなくても・・・」
「自分も幼馴染みの女の子に教えてもらって初めて解ったんだ」、「だからそこには気を付けて作ったんだよ」等と説明する蒼太だったがどうにも腑に落ちない事があった、目の前の少女の気配が時折ぶれて感じるのだ。
それに。
ご飯の食べ方や味の好み、反応のパターン等がどうにもよく知っている、幼馴染みの少女のそれなのだが、その理由が今一、彼の中でピンと来なかった。
(なんなんだろうな?これは。こんなことは初めてだ、普通は気配の感じ方はその人その人によって違う。その人自身の持つ固有のパターンがあるはずなのに・・・)
そしてそれは、例え相手が変化の魔術を使っている場合でもふとした時に漏れる意識の波長や好意、または殺気のようなモノまでは絶対に誤魔化せないものなのだ、それなのに・・・。
(メリーにこんなにも近いのに・・・。それでもメリーとは完全には被らないんだよな?一体、どうして・・・)
「ふ、ふあぁぁぁ~。あ・・・」
蒼太がそんなことを思っていると、目の前でメリーニが大きな欠伸を掻いた、どうやら人心地ついた途端にそれまでの疲れが一気に押し寄せて来たらしい。
(無理もないな。今まで人目を気にしながらの野宿だったんだろうから。しかし良くもまぁ、今日まで無事にいられたもんだ。一応、身体をスキャンしてみたけれども異常や傷は付いて無いし、乱暴された形跡もない。無辜のまま、ここまで済んできたと言う事か・・・)
「あ、あっ。ごめんなさい、蒼太・・・」
「ああ、ごめんごめん。こっちこそだよ、疲れているんだろう?今日はゆっくりと眠るといいよ、ベッドも用意してあるから。大人用の奴だけど多分、大丈夫だろう、ちゃんと休めるはずだよ」
「でも。まだ後片付けも済んでないわ、失礼だわ!!」
「いいんだよ、取り敢えずは身体を休めて?まずはぐっすりと眠ることだよ、ここまでの疲れも溜まっているだろうからね。もし暑かったらクーラーもあるから掛けると良いよ、後片付けはこっちでやっておくから・・・」
「・・・うん、解ったわ。それじゃあお言葉に甘えさせてもらうわ。お休みなさい、蒼太」
そう告げると、メリーニは子供用の椅子から降りて行き、用意された自身の寝室へと向かった、途中で何度も彼の方を振り返りながら。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる