メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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運命の舵輪編

青年と少女1

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 蒼太はお父さんに加えてお母さんの指導があったために僅か4歳にしてアソコまでの技術、技量を身に付けるに至っています(本格的に波動を用い、ぎっくり腰を一時的にとは言えども治癒させる程度の能力があったのですね。もちろん、ちゃんとツボも見抜いています)。

 “彼”にももう少しお父さん、お母さんが側にいてくれたらなぁ~、とか思ってしまう今日この頃です(そしたら冒険も、もっと楽なモノになっただろうに・・・。まあいずれにせよ最終的には皆救われたから良かったですけど)。
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「はぐ、はぐ。もぐ、もぐ・・・」

「ドンドン食べてね、いっぱいあるから・・・」

 蒼太の家にもらわれていった少女、メリーニ・カッセはその後、タクシーに乗せられて(ホームレスの少女を乗せる迷惑乗車賃分は蒼太がタップリと支払った)蒼太の家に到着するとまずはお風呂に入れられた。

 そこでおそらくは数ヶ月分の汚れを落としてからのち、取り敢えずは蒼太の衣類を与えられて食卓へと通されたのだが、お風呂から上がってきた彼女を見た蒼太は思わず「ほぅっ!?」と唸ってしまった、それほど元の彼女は気品があり、美しい少女だったのだ。

 その顔立ちは整っていて美しく、まだ完全には回復していないだろう表情にも、それでも凜とした佇まいがあって、それにがっついているように見えても、その食べ方にも品があった、つまりはちゃんとした教育を受けていた女の子だと言うことだ。

「・・・・・」

「はぐ、はぐ、ごく、ごくっ。んぐ、んぐ。んぷぷー・・・、ぷはっ、あむ、んぐ・・・」

 用意されたスパゲッティナポリタンやマルゲリータ、シーザーサラダやソーセージを頬張りながらも、その食べ方には卑しさが殆ど無く、フォークとナイフを綺麗に使い分けて巧みに食材を口へと運んで行く。

「ぷはっ。はあ、はあっ。ふうぅぅー・・・。ご馳走さまでした」

「まだデザートもあるよ?それに飲み物のお代わりは?遠慮しないで召し上がれ」

「ありがとう、いただくわ」

 と言って蒼太が差し出したイタリアンジェラートのバニラとメロンとチョコレート、そして生クリームの乗ったココア(三杯目)をあっという間に平らげるメリーニだったが、それらが済むとキチンと用意されていたナプキンで口を拭う。

「・・・・・」

(やっぱりだ、なんだかんだ言ってもこの娘、どことなく上品な子だよなぁ・・・)

「美味しかったわ。それにちゃんと下味も付けていてくれたのね?ピッツァやナポリタンに入っていたサラミやアンチョビも塩辛くて美味しかった。塩加減もバッチリ利いていてとっても食べ応えがあったもの!!」

「喜んでもらえて嬉しいよ。でも良くそこまで味の観察が出来たね?ああ言うのって隠し味って言うか、本当に下拵えの領分なのに・・・」

「うっ。ご、ごめんなさい。つい・・・」

「いいや、いいんだよ謝らなくても・・・」

「自分も幼馴染みの女の子に教えてもらって初めて解ったんだ」、「だからそこには気を付けて作ったんだよ」等と説明する蒼太だったがどうにも腑に落ちない事があった、目の前の少女の気配が時折ぶれて感じるのだ。

 それに。

 ご飯の食べ方や味の好み、反応のパターン等がどうにもよく知っている、幼馴染みの少女のそれなのだが、その理由が今一、彼の中でピンと来なかった。

(なんなんだろうな?これは。こんなことは初めてだ、普通は気配の感じ方はその人その人によって違う。その人自身の持つ固有のパターンがあるはずなのに・・・)

 そしてそれは、例え相手が変化の魔術を使っている場合でもふとした時に漏れる意識の波長や好意、または殺気のようなモノまでは絶対に誤魔化せないものなのだ、それなのに・・・。

(メリーにこんなにも近いのに・・・。それでもメリーとは完全には被らないんだよな?一体、どうして・・・)

「ふ、ふあぁぁぁ~。あ・・・」

 蒼太がそんなことを思っていると、目の前でメリーニが大きな欠伸を掻いた、どうやら人心地ついた途端にそれまでの疲れが一気に押し寄せて来たらしい。

(無理もないな。今まで人目を気にしながらの野宿だったんだろうから。しかし良くもまぁ、今日まで無事にいられたもんだ。一応、身体をスキャンしてみたけれども異常や傷は付いて無いし、乱暴された形跡もない。無辜のまま、ここまで済んできたと言う事か・・・)

「あ、あっ。ごめんなさい、蒼太・・・」

「ああ、ごめんごめん。こっちこそだよ、疲れているんだろう?今日はゆっくりと眠るといいよ、ベッドも用意してあるから。大人用の奴だけど多分、大丈夫だろう、ちゃんと休めるはずだよ」

「でも。まだ後片付けも済んでないわ、失礼だわ!!」

「いいんだよ、取り敢えずは身体を休めて?まずはぐっすりと眠ることだよ、ここまでの疲れも溜まっているだろうからね。もし暑かったらクーラーもあるから掛けると良いよ、後片付けはこっちでやっておくから・・・」

「・・・うん、解ったわ。それじゃあお言葉に甘えさせてもらうわ。お休みなさい、蒼太」

 そう告げると、メリーニは子供用の椅子から降りて行き、用意された自身の寝室へと向かった、途中で何度も彼の方を振り返りながら。
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