メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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マッサージ

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 メリアリアは好き嫌いが実にハッキリとしている娘だ、だから嫌なモノはどうしたって嫌だった。

 そんなメリアリアと蒼太は裸の付き合いをしていた、常識で考えるならばもう、彼女の心が何処にあるのかは一目瞭然としていたのである。

 だがしかし。

「はあ、気持ちいいよ。蒼太ぁ・・・」

「良かったねメリー、でもまだ途中だから力抜いててね?」

 それだけでは無かった、時々メリアリアはこうして蒼太にマッサージをしてもらっていたのだ。

 魔法の勉学や修練はとても肩や首、背中が凝るのだ、それを話したら蒼太が“じゃあマッサージをしてあげるよ”と言って彼女を寝かせ、両親直伝の技を披露する運びとなった。

 “自分達の修練や生き様は秘密にしなければならない”蒼太達にとって本来であればそれはやってはいけないことだったのだが内緒にする事を条件にメリアリアにだけは特別に、蒼太は施術をする事にしたのだ。

 古流柔術や太極拳、気功法等を徹底的に教え込まれているだけあって流石にそれは気持ちの良いモノだった、それに蒼太の掌はお日様みたいに温かくて優しい感じがしたし、力強さや揉み込み加減も絶妙だった。

「ふわあぁ~・・・」

「寝ちゃっていいよ、メリー・・・」

「う、ううん。そんなことしないよ、起きてるよ!!」

「メリー疲れてるんだよ、寝た方が良いよ」

「じゃあ蒼太も一緒に寝よう?横空いてるから・・・」

「僕はマッサージしてるから。大丈夫だって、ずっとここにいるからさ・・・」

 そう言うと蒼太はまた施術を再開させて、少女の身も心も解きほぐしてゆく。

 結局、メリアリアは眠ってしまった、異性に体を預けた挙げ句に眠るなど、通常では考えられないけれども要はそれだけ彼のことを信頼している証だろう、とも言える。

「あら、メリアリアは眠ってしまったの?」

「あ、おばさん。お邪魔してます」

 一通りマッサージを終わらせてフゥッと一息ついていた蒼太の元へ、メリアリアの母親イレーネがやって来た。

 日曜日しか遊ぶ暇の無い娘には申し訳ないとは思ったのだが留守を任せ、近所に買い物に行っていたのだ。

 ・・・と言っても誘ったのに付いて来なかったのはメリアリアの方だったけど。

(なるほど。彼が来るのが解っていたからメリアリアは買い物に誘っても来なかったのね・・・)

「いらっしゃい。いつもメリアリアと遊んでくれてありがとう。でも珍しいわね、この子がお客を留守中に招き入れたり、ましてや人様の前で眠ってしまうなんて・・・」

「疲れてるみたいだよ、メリー・・・」

「そうねぇ、最近は少し修練も厳しくなって来たからねぇ。でも今後のことを考えると今から中堅魔法位は熟せないといけないのよ?」

「う・・・、そうなんだ」

「?家は特に教えることが多いからねぇ。これでもまだ控え目にやっている方なのよ?いきなりいろいろな事をやらせても、流石にメリアリアも手間取ってしまうでしょうし・・・」

「そっか。大変なんですね・・・」

 危うく「家もそうです」と言い掛けてしまった蒼太は内心でドキリとしつつも何とかその場を取り繕った。

「でもこんな心地の良い寝顔は初めてよ?心身ともにリラックスしている証拠だわ、空気も緩んでいるしたまには良いかも知れないわね」

「あ、あはははは。そうなんだ・・・」

 その後も必死に誤魔化し続ける蒼太を特に不審に思うことも無く、イレーネは“お詫びに”と言って焼きたてのクッキーと紅茶を御馳走してくれた。

 1階のリビングでそれらを行儀良く頬張っているとメリアリアが目を覚まして降りてきた。

「お母さん、帰っていたの?」

「そうだよ。お前人様が来ているのに眠ったりなんかしたら失礼じゃないか」

「ごめんごめん、でも・・・」

「おばさん、僕の事は気にしないで。メリーとは今から遊んでも全然大丈夫だから!!」

「・・・そうねぇ、まだ日も高いしね。それじゃ母さんは今のうちにまた買い物に行って来るけど、留守番をお願い出来るかしら?」

「うん大丈夫。任せてよ」

「メリーと一緒に遊んでいます!!」

「そう?じゃあ悪いわね。なるべく早く帰ってくるから・・・」

 そう言うとイレーネはまたいそいそと支度をして外へと出立して行った。

「・・・・・」

「あ、危なかった」

「ね、“あれ”やってたら大変だったね!?」

「うん、マッサージで良かったよ!!」

 そう言い合いながらもメリアリアは蒼太にチュッと口付けをする。

「うふふふ、蒼太・・・」

「うん、メリー・・・」

 二人はそう言うとどちらともなく服に手を掛けた。
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