星降る国の恋と愛

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掛け算と冒険と

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 メリーは勇敢な女の子です、そしてちょっとお転婆なんです(時々空回りしちゃいますけど)。

 でもとっても優しい娘なんですよ、だから大きくなると素敵なレディーに成長します。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 メリアリアは頭の良い娘だった、そして中々に正義感の強い娘でもあった。

「お前ら3数えるまでに1~9までの数を足した答えを出してみろよ、そしたらこいつを許してやるから」

「45よ」

 あるとき。

 幼稚園のいじめっ子達に友達の女の子が虐められている場面に遭遇したメリアリアは蒼太と共に“止めなさいよ!!”と言って割って入り、代わりに口喧嘩を始めた。

 が、少し立った頃、頭の良かった相手の少年はしたり顔でそう言ってメリアリアに難題を吹っ掛けるが、それに対して彼女は殆ど反射的にそう答えて見事に友人を救うことに成功したのだ。

「は?嘘だろ!?」

「ちゃんと計算しなさいよ。じゃあね!!」

 そう言って友人の手を引き、悠々とその場を後にしたメリアリアだったが後で“どうやって計算したの?”と尋ねる蒼太にこっそりと種明かしをしてくれた。

「いい?1から4までの5から足りない数と6から9までの多い数の差は絶対数において一緒で相殺できるの。つまり5を9回足せば良いのよ」

 既に掛け算を知っていた彼女はだから、それも駆使して友人の救助に用いたのだがまだ幼いながらにメリアリアはこうした機転を利かせる事が出来る少女だったのだ。

 だけど。

 常識や限界と言ったモノはキチンと持ち合わせていた彼女も時々、その行動力と向こう気が行きすぎてしまう時があった、6歳の頃(年長組の時)に蒼太と二人で“日本アルプス”と呼ばれている山岳地帯に足を踏み入れてしまったのがそれだ。

 切っ掛けは他愛の無い、子供同士の遊びの延長線上に有るモノだった、ちょうど夏休みを利用して二家族揃って長野県白馬のペンションに遊びに来ていたメリアリアは蒼太を誘い、北に広がる山々の裾に冒険の(と言うよりはちょっとした探検の)旅に出る事にしたのだ。

 だけど好奇心から少しだけ山道に入ったところで二人は迷ってしまった、ここの山々は本当に深くて険しくて、うっかり足を滑らせれば下まで真っ逆さまな場所も幾つもあった。

 巨大な木々が鬱蒼と生い茂っていた挙げ句に場所によっては磁界が働いていたらしく方向感覚が狂わされ、徐々に山の上へ上へと追いやられてしまったのだ。

「大丈夫、きっと帰れるから!!」

「うん・・・」

不安げな蒼太の手前もあって、最初こそ無理して明るく振る舞っていたメリアリアだったが徐々に自身も怖さの方が上回って来てしまう。

「ごめんね、ごめん。私のせいで・・・」

「大丈夫だって、さあ行こう!!」

 申し訳なさと心細さから遂にはそう言って泣き崩れてしまったメリアリアの手を取って、途中からは蒼太が先頭に立って歩き出した、とは言っても彼はただガムシャラに歩き回っていた訳ではない。

 既に父親達から自然の中でのサバイバルの知識や心構えを授けられていた彼は、それらをちゃんと活かして周囲に気を配りながら歩を進めて行ったのだ。

 木々の葉のしげり具合や隙間から差し込む太陽の光等から方位を計算して少しずつ少しずつ、南へ向けて歩いたのである。

「いま、どれくらい歩いたかな」

「・・・多分、100メートルも来てないよ」

 途中でメリアリアに話し掛けると彼女もちゃんと応えてくれた。

「あそこに生えている、あの大きな杉の木。見た感じだけど相当な樹齢があると思うの、高さも20メートルは行ってるわ。と言うことは地形とか高低差を考えれば、あれが見えなくなれば100メートル近くは進んだ事になるもの」

「そっか」

 そうやって二人で協力しつつ南へ南へと歩いていた少年と少女は、結果何とか日のある内に山林を脱出する事が出来た、少し遅くなってしまったが無事にペンションに辿り着く事が出来たのだ。

「蒼太」

「なあに?メリー」

「今日はその、ごめんなさい」

「・・・いいよ、僕もちょっと怖かったけど楽しかったし。それに父さん達から教わった事も活かせたから」

「うん、でも・・・」

「それにメリーを一人だけであんなところに行かせなくて良かったよ、絶対に良かった。怒られるかも知れないけど、それでも一緒にいたかった。一緒にいられて良かったよ、絶対!!」

「蒼太・・・!!」

 その言葉を聞いたメリアリアは最初ビックリしたような顔を見せるが、だけど段々と表情を崩してまた泣き出してしまった。

「ヒグッ、グス。ありがとう、嬉しい、すっごく・・・」

「もう泣かないで。早く帰ろうよ」

「うん・・・」

 そう言って二人は家族の待つペンションに無事の帰還を果たした訳だがこの日以降、メリアリアの蒼太を見る目が更に変わって行ったのは言うまでも無い。
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