メサイアの灯火

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創世神話

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 遥か古の時代。

 神々がまだ地上におられた時に、他の天体からやって来た人類との間に一つの計画が持ち上がった。

 “地球で新たな人類を創造して彼等の行く末を見届けよう”と。

 彼等の行動から、何か学べる事もあるだろうから、と。

 計画は順調に推移して行き、いよいよ最終段階に差し掛かろうとしていたがしかし、その最中に一つの事件が起きた。

 研究所が激しい落雷に見舞われてしまい、遺伝子レベルで誕生を準備されていた人類の一部に異変が生じたのだ。

 しかし。

 宇宙の人々や他の神々がその影響を見逃した中で唯一、それに着目した神々がいた。

 龍の神を母体とした“秋津洲”、そう呼ばれている遙かな極東の島国を治める神々である。

 高天原からこれを御覧になられた神々は“彼等”を受け入れることにした、その突然変異した人類が、自分達にとって実に得がたい存在となるであろう事を察知した為である。

 神々は彼等を愛した、自身の分霊と血肉とを惜しみなく分け与え、精神を教え、人としての心を授けた。

 それだけではない、人類には禁忌とされる、神の秘密の教えや秘法すら余すこと無く伝授して、そして言った、“お前達で天国のような世界を作りなさい”と。

 ところが。

 それをよしとしない存在や意識体がいた、他の神々や先史文明を作った霊的な人類達である。

 彼等は面白くなかった、何がか、と言うと初期の大和民族は完璧過ぎた上に日本の神々もまた厳し過ぎた。

 ようするに“人としての有り様を観察して楽しもうと思ったのに、これでは神々が拵えたのと寸分違わぬ世界が出来上がってしまうではないか”と言うこととなり(最初から完璧な世界が出来てしまう、と言うことになり)、“自分達の計画には適さない存在である”との勅を下したのだ。

 結果大和民族は日本の神々の治める極東の島国に追いやられてしまい、挙げ句に世界からそこだけ切り離され、封鎖されてしまったのである。

 ・・・自分達だけで勝手にやれ、と。

 爾来一万数千年。

 世界は再び相まみえるときがやって来た。

 それはもう、失われてしまった伝説。

 誰にも語られることの無い神話。
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