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蒼太とメリーの物語“☆”
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エトルリア人は歴史の古い民族で紀元前八世紀頃にはもう、イタリア半島中部に独自の生活圏を築いていた。
もっともその出自に付いては明確には解っておらずマムルーク朝トルメキアのリディア地方にいた民族であるとも、イタリア半島固有の部族であるとも言われており、今日でも結論は出ていない。
ただしかなり古くから数学を理解して文化文明を持ち、鉄を用いていた事などが記録されている。
古代ギリシャとも交流がありその頃から両者には接点があったが一方の大和民族に至っては現在では伝説上の存在とされていて、詳細は全く以て残っていないのが実情だった。
・・・少なくとも表向きは。
「ねえねえ蒼太」
「なにさメリー」
「今日学校が終わったらさ、駅前のパティシエに行こうよっ。二人でアイスクリーム食べたいな!!」
「うん、いいよ。僕も前々から興味あったし。でもああ言うところって女の子が行くところかなって思ってたから我慢してたんだ」
「なーんだ、言ってくれたら良かったのに!!」
他愛ない会話をしながら彼等、綾壁蒼太とメリアリア・カッシーニは学校へと続く煉瓦造りの森の道を連れたって歩いて行く。
二人は同い年であり蒼太の方は名前の示すとおり秋津島皇国の国民、つまりこの世界での日本人だった。
父方が忍の者、母方が修験道の血筋に生まれた彼は身長177cmの細マッチョで体は良く鍛えられ、また絞り込まれていた。
長く伸びた漆黒の癖っ毛を後ろで束ね、それと同色の、奥に静かに光を湛える黒い瞳を持ち、精悍で落ち着きのある面構えをしている。
一方のメリアリアはエトルリア人の父親とギリシア人の母親のハーフでやはり、父方は宮廷魔術師、母方は神官の家系の血を引いていたのだ。
身長は157cmで乳白色の肌をしていた彼女は長くて美しい金髪をツインテールでまとめ上げ、青空のような透き通った青い瞳の持ち主であり、誰に対しても明るくて優しい人柄も相まってクラスでも人気者だった。
「ねえ蒼太」
「なにさ」
「もう、解ってるくせに!!」
そんな二人は幼稚園からの幼馴染みであり、メリアリアが4歳の時にカッシーニ家が綾壁家の隣に引っ越してきてからというもの家族ぐるみでの付き合いがあった。
似たような血筋、境遇に生まれた二人は蒼太が大人しくてメリアリアが活発と言う性格の違いもあったが相性は良かったのだろう、不思議と良く気が合って、だから何をするにも一緒に過ごしてきたのだ。
「今日家ね、お父さんとお母さんがいないんだ~」
「・・・うん、解った」
「えっ!?じゃあ・・・!!」
「お邪魔させてもらうよ」
「・・・・・っっ❤❤❤❤❤」
そんな二人が恋仲になるのに時間は掛からなかった、いつから好きだったのか、何で好きになったのかはよく覚えていない。
だけど二人の仲が良くなった切っ掛けはよく覚えていた、幼稚園の時にまだ周囲になじめず浮いていたメリアリアに蒼太が話し掛けるようにしたのだ。
最初は恥ずかしさからと気後れ感から意地を張っていたメリアリアだったが徐々に心を開いて行った、程なく彼と遊ぶようになりそれから互いの家族の交流が始まって今に至る。
「はあぁぁぁ・・・」
「どうしたの?」
「う、ううん。何でもないよ」
「また先生に、何か言われたの?」
「う、うん。お前には才能が無いって。体を動かすだけが取り柄だなってさ・・・」
「・・・今度さ、あの先生をナメクジにでも変えてあげる。酷いよ、蒼太は本当は凄いのに」
「い、いいよメリー。メリーが本気になったら本当にヤバいから・・・!!」
そんな事を話しながら二人は連れたって“国立セントヘレナ騎士学院高等部”の門を潜ってゆく。
幼稚園から大学まで一貫教育を行っているここは異世界リヴィエッラの中にあって剣士や魔法使い等、いわゆる“冒険者”と呼ばれる存在を排出させる為の学び舎であり、カリキュラムもそれ相応のモノが用意されていた。
ちなみにこの手の学園は世界中に存在していて才能と実力さえあれば家柄に関係なく誰でも入学することが出来たのだ。
そんな中にあって。
「メリー凄いね、また90点台じゃん!!」
「火炎系の最上級魔法でしょ?それを・・・」
「先生、ビックリしてたよ?もう教えることなくなっちゃうんじゃ無いか、とか話してた」
「ってか先生よりも威力が上じゃない?」
クラスメイト達から賞賛の声が巻き起こるがそれもそのはず、メリアリアはここでは知らない者など一人としていない天才少女だったのだ。
何をやらせてもそつなく熟す、等というモノでは無い、座学は勿論の事、薬学やフィールドワークでも軒並み高得点を叩き出しており、特に魔法の手腕は教師ですら凌ぐほどのモノだったのだ。
一方で。
「たはー、すげーなメリーちゃんはよぉ」
「先生ですら成功率50%の最上級火炎魔法を完璧に熟して見せたもんな!!」
「それに比べて俺たち、ちゃちいよな。なあ蒼太?」
「あ、ああ・・・」
とこちらも友人達に囲まれる蒼太だったが彼の成績はどうも今一パッとしなかった、魔法も勉学もマスターしているのは5~7割方と言ったところで赤点ギリギリの科目もあった程だ。
しかし。
メリアリアだけは知っていた、蒼太が実は物凄い実力者であり、異能の持ち主なのだと言う事を。
彼には確かに魔法の才能はなかったがその代わり体育や気功等はSSSクラスを記録していて誰も(メリアリアでさえも)敵わない程だった、それに彼の家系は独自の秘伝美術が多く存在していてそれらを発動することはおろか、人前で晒すことは全て御法度とされていたから彼自身、実力を隠して生活するしかなかった。
そのためにまだ蒼太自身も自らの実力に付いては過小評価してしまう傾向にあったが何のことはない、彼が落ちこぼれの烙印を押されたのはこの学院にその実力を正しく測定できる教師がいなかった為と、成績評価システムが整備されていないだけの事だったのだ。
もっともその出自に付いては明確には解っておらずマムルーク朝トルメキアのリディア地方にいた民族であるとも、イタリア半島固有の部族であるとも言われており、今日でも結論は出ていない。
ただしかなり古くから数学を理解して文化文明を持ち、鉄を用いていた事などが記録されている。
古代ギリシャとも交流がありその頃から両者には接点があったが一方の大和民族に至っては現在では伝説上の存在とされていて、詳細は全く以て残っていないのが実情だった。
・・・少なくとも表向きは。
「ねえねえ蒼太」
「なにさメリー」
「今日学校が終わったらさ、駅前のパティシエに行こうよっ。二人でアイスクリーム食べたいな!!」
「うん、いいよ。僕も前々から興味あったし。でもああ言うところって女の子が行くところかなって思ってたから我慢してたんだ」
「なーんだ、言ってくれたら良かったのに!!」
他愛ない会話をしながら彼等、綾壁蒼太とメリアリア・カッシーニは学校へと続く煉瓦造りの森の道を連れたって歩いて行く。
二人は同い年であり蒼太の方は名前の示すとおり秋津島皇国の国民、つまりこの世界での日本人だった。
父方が忍の者、母方が修験道の血筋に生まれた彼は身長177cmの細マッチョで体は良く鍛えられ、また絞り込まれていた。
長く伸びた漆黒の癖っ毛を後ろで束ね、それと同色の、奥に静かに光を湛える黒い瞳を持ち、精悍で落ち着きのある面構えをしている。
一方のメリアリアはエトルリア人の父親とギリシア人の母親のハーフでやはり、父方は宮廷魔術師、母方は神官の家系の血を引いていたのだ。
身長は157cmで乳白色の肌をしていた彼女は長くて美しい金髪をツインテールでまとめ上げ、青空のような透き通った青い瞳の持ち主であり、誰に対しても明るくて優しい人柄も相まってクラスでも人気者だった。
「ねえ蒼太」
「なにさ」
「もう、解ってるくせに!!」
そんな二人は幼稚園からの幼馴染みであり、メリアリアが4歳の時にカッシーニ家が綾壁家の隣に引っ越してきてからというもの家族ぐるみでの付き合いがあった。
似たような血筋、境遇に生まれた二人は蒼太が大人しくてメリアリアが活発と言う性格の違いもあったが相性は良かったのだろう、不思議と良く気が合って、だから何をするにも一緒に過ごしてきたのだ。
「今日家ね、お父さんとお母さんがいないんだ~」
「・・・うん、解った」
「えっ!?じゃあ・・・!!」
「お邪魔させてもらうよ」
「・・・・・っっ❤❤❤❤❤」
そんな二人が恋仲になるのに時間は掛からなかった、いつから好きだったのか、何で好きになったのかはよく覚えていない。
だけど二人の仲が良くなった切っ掛けはよく覚えていた、幼稚園の時にまだ周囲になじめず浮いていたメリアリアに蒼太が話し掛けるようにしたのだ。
最初は恥ずかしさからと気後れ感から意地を張っていたメリアリアだったが徐々に心を開いて行った、程なく彼と遊ぶようになりそれから互いの家族の交流が始まって今に至る。
「はあぁぁぁ・・・」
「どうしたの?」
「う、ううん。何でもないよ」
「また先生に、何か言われたの?」
「う、うん。お前には才能が無いって。体を動かすだけが取り柄だなってさ・・・」
「・・・今度さ、あの先生をナメクジにでも変えてあげる。酷いよ、蒼太は本当は凄いのに」
「い、いいよメリー。メリーが本気になったら本当にヤバいから・・・!!」
そんな事を話しながら二人は連れたって“国立セントヘレナ騎士学院高等部”の門を潜ってゆく。
幼稚園から大学まで一貫教育を行っているここは異世界リヴィエッラの中にあって剣士や魔法使い等、いわゆる“冒険者”と呼ばれる存在を排出させる為の学び舎であり、カリキュラムもそれ相応のモノが用意されていた。
ちなみにこの手の学園は世界中に存在していて才能と実力さえあれば家柄に関係なく誰でも入学することが出来たのだ。
そんな中にあって。
「メリー凄いね、また90点台じゃん!!」
「火炎系の最上級魔法でしょ?それを・・・」
「先生、ビックリしてたよ?もう教えることなくなっちゃうんじゃ無いか、とか話してた」
「ってか先生よりも威力が上じゃない?」
クラスメイト達から賞賛の声が巻き起こるがそれもそのはず、メリアリアはここでは知らない者など一人としていない天才少女だったのだ。
何をやらせてもそつなく熟す、等というモノでは無い、座学は勿論の事、薬学やフィールドワークでも軒並み高得点を叩き出しており、特に魔法の手腕は教師ですら凌ぐほどのモノだったのだ。
一方で。
「たはー、すげーなメリーちゃんはよぉ」
「先生ですら成功率50%の最上級火炎魔法を完璧に熟して見せたもんな!!」
「それに比べて俺たち、ちゃちいよな。なあ蒼太?」
「あ、ああ・・・」
とこちらも友人達に囲まれる蒼太だったが彼の成績はどうも今一パッとしなかった、魔法も勉学もマスターしているのは5~7割方と言ったところで赤点ギリギリの科目もあった程だ。
しかし。
メリアリアだけは知っていた、蒼太が実は物凄い実力者であり、異能の持ち主なのだと言う事を。
彼には確かに魔法の才能はなかったがその代わり体育や気功等はSSSクラスを記録していて誰も(メリアリアでさえも)敵わない程だった、それに彼の家系は独自の秘伝美術が多く存在していてそれらを発動することはおろか、人前で晒すことは全て御法度とされていたから彼自身、実力を隠して生活するしかなかった。
そのためにまだ蒼太自身も自らの実力に付いては過小評価してしまう傾向にあったが何のことはない、彼が落ちこぼれの烙印を押されたのはこの学院にその実力を正しく測定できる教師がいなかった為と、成績評価システムが整備されていないだけの事だったのだ。
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