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16話

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九月二十一日

『久しぶり。その…暫く連絡せずにごめん。明日どこかで空いてる時間無いかな?僕、明日は学校行こうと思ってて、クラスの出し物の方は余裕あるし、一日時間が…』

(違う…こんな回りくどく言わなくて良い)

ー削除

『明日の文化祭、千佳と一緒に回りたい』

ー送信

(簡単で良いんだ)

ほんの十数文字を伝えるだけにどれだけ遠回りをしたんだろうと聡は可笑しくなった。千佳からの返事は直ぐに来た。

『ごめん』



ーーーーーーーーーー



『明日、千佳と一緒に回りたい』

深夜、久しぶりの聡からのメッセージ。

(こんな時間まで送るの迷ってたんだろうな)

くすりと笑いながらも、千佳には短いメッセージに込められた聡の真意が理解出来た。

クラスの目も、親の目も気にしないで私と居たいと言ってくれているのだ。そして男女としてもう一度向き合おうと。

返事は決まっていたが、千佳は少しだけ意地悪をしたくなった。

『ごめん』



『午前中は店番だから、昼から一緒に回ろう』

『手を繋いで!』



ーーーーーーーーーー



「って事があったんだよ」

「あ、そう」

「あのなぁ、もう少し興味を持てよ」

「ここどこだと思ってるの、職員室よ。聞かれたらどうするの。それで?邪魔するの?」

「それがなぁ、冷めちまった」

「醒めた?」

「冷めた。まさか川村が自分から俺を拒絶してくるとは思わなかったんだよ、身体はとうに堕ちてた癖に。まさか他の女を身代わりに自分を見逃せとまで言ってくるとはな」

「俺な、カマトトぶってるガキが気に入らなかったんだよ。惚れたの腫れたので大騒ぎするくせに、本能に刻まれたドス黒い性欲だけは綺麗な箱に仕舞って蓋して美化してやがる。だからその蓋をこじ開けてやるのが楽しかったんだが」

「あの子は違ったと?」

「…わからん。面を食らったのは認める」

「センシティブなあなたを見てると吐き気がするわね」

「あのな…」

「少し人間に毒され過ぎじゃない?今まであなたが餌として見下していた生き物に影響されるだなんて」

「まぁ、それはそうだが」

「本気で好きになっちゃったんじゃない?川村さんの事」

「まさか、また次のターゲットを見つけるのが億劫なだけさ。まぁ、暫くそんな気にならなさそうだが…」

「しょうがないわね、この後駅前でご馳走してあげるわよ。どうせ暇なんでしょ?あの店の大将が作る出汁巻きが最高にビールに合うんだから」

パックの豆乳を飲みながらカタカタと PC 作業へ戻るレイを見て、毒されているのはどっちだと吐き捨て、アモンも仕事に戻った。

-終
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