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5話
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九月七日
「いいか、長文だからって怯む必要は無いんだ。まずそれぞれの要素に分けて考える癖を付けて…」
生徒達の耳によく残るバリトンで亜門は授業を進める。川村千佳は教室の最前列、教壇の真前の席で授業を受けていた。
亜門は七月に赴任してきたばかりの英語教師で千佳のクラスの担任でもある。
同時に赴任してきた B 組の森と同じタイミング、それに同じ教科で入ってきた事が珍しく話題を集め、二人共が若く美男美女であった事がなおさら生徒達の興味を引いた。
初めは興味本位で亜門を見ていたA組の生徒だったが、生徒達との距離感が近く、話し方もフランクで親しみやすく、教室内に良く響く低い声、スピーディーでわかりやすい授業の進め方が生徒に受け、今ではA組の生徒達からの信頼は厚かった。
千佳の友人の中には、亜門が他の教師と比べると比較的自分達と年齢が近く、スポーツマンのような厚い胸板、高身長にモデルのように整った相貌から、担任の教師以上の好意を寄せる者さえいた。
(でも亜門先生って、何か怖いんだよなぁ)
時々思う。千佳にとっても亜門の教師としての実力は尊敬に値するものであったし、担任としても申し分無い。
ただどうしても引っかかるものがあった。何が、という訳では無く、本能的に警戒してしまっているのだと千佳は警鐘を鳴らす自分の六感を分析していた。
(どこか人間離れしていると言うか、むしろ優れた人間を演じている感じ…?)
多分あの日の勘違いのせいだろう、と千佳は数ヶ月前の記憶を引き出す。
ーーーーーーーーーー
その日は夏休み直前の登校日だった。ひどく蒸し暑い日で、少し外に出れば身体中にじんわりと汗が纏わり付いていた事をよく覚えている。
夕方に夏休み前最後のホームルームを終え、教室の中は各々暫くの別れを惜しんだり、夏休みの予定を合わせたりで盛り上がっていた。千佳も何人かの友達と同じような会話に花を咲かせた後、教室を出て帰路についた。
しかし自宅へ着く直前にスケジュール帳を教室へ置き忘れていた事に気が付き、汗で身体に貼り付く制服にうんざりしながら、もう一度電車に乗り込み学校へ戻った。夏休みの友達との予定はそこにしか書き留めておらず、どうしてもその日に取りに行く必要があった。
急ぎ足で学校に戻った時には既に一時間以上が経っていて、校内は部活動をしている生徒以外既に下校しており、校舎の方はシンと静まり返っていた。
(あ、そうだ。教室のカギを借りなきゃいけないんだ)
千佳はまず一階の職員室へ向かい、亜門に事情を説明して教室のカギを借りようとしたが、間の悪い事に亜門は離席していると隣のクラス担任の森が教えてくれた。
結局森に事情を話し、カギを借りられた千佳は三階にある教室へ足早に向かった。
「良かったぁ、あった!」
そうして机の中に置き忘れたスケジュール帳を回収できたのだが、その時ふわりと生温い風が頬を撫ぜた。
(あれ?)
教室をぐるりと見渡すと、夕日がギラギラと差し込む窓のカーテンがヒラヒラとはためいている。
(最後の人が窓を締め忘れたんだ)
窓を閉めようとカーテンを開けた時、ふと目に付く光景があった。
千佳の教室は中庭に面しており、三階の高さがある事から、中庭全体を広く見渡すことが出来る。そして千佳のいる教室から中庭を挟んだ対角線の一階、演習棟にある一室の窓に人影が見えた。
(あれ、女子の制服?それに誰かもう一人…えっ?)
確かあそこは視聴覚室の筈で、誰かが居るのは特段珍しい事ではない。ただもう一人の手が女子生徒の首を掴むように伸びている風に見える。
ーガラッ
「きゃっ」
突然千佳の居る教室のドアが開かれ、思わず身体ごと飛び跳ねた。
「何してるんだ」
「あ、その、忘れ物を取りに…」
体育教師の佐藤だった。たまたま通りがかったようで、施錠されている筈の教室に千佳の姿があり、こんな時間に何をしているのか気になって確認しに来たようだ。
「森先生にお願いして、カギを借りたんです」
同僚である英語教師の名前を聞き、佐藤は納得したようだ。
「なら早く出なさい、カギは俺が締めておくから」
「は、はい。ありがとう、ございます」
急いでいるのか、千佳の退出を急かすように早口で体育教師は言った。
そしてもう一度視聴覚室へ視線を戻した時には、誰の姿も無かったのだ。
ーーーーーーーーーー
(あの日の事は気のせいよね)
意識を教室へ戻し、ハイペースな授業に置いて行かれないようペンを取り直す。
あの後、人影が見間違いだったのかどうしても気になってしまい、帰り際に視聴覚室を覗いてみたものの、人の気配は無く、ドアも施錠されていた。
(あの手が亜門先生の手だったって、流石に妄想が過ぎるよね)
視聴覚室の件は見間違いで、普段からどことなく気にしている亜門の姿が頭の中ですり替わってしまったのだろうと千佳は自分を納得させた。
「川村、先に行っているから後から生徒指導室に来てくれ」
「えっ?あ、はい」
昼休み前の最後のコマである授業が終わり、緊張感から開放された教室がザワ付き始めた頃、亜門に声を掛けられた。
(タイミング悪いなぁ)
昼休みに聡がいるであろう演習棟へ向かうつもりだったのに、と千佳は肩を落とす。
(それに何で私が?)
理由を尋ねるより前に亜門はそそくさと教室を出て行ってしまった為、これでは断りようが無い。
「川村さん大丈夫?何かあったの?」
周囲からの千佳を気遣う声。
しかし理由を聞かれたところで千佳は思い当たる節を全くと言って良い程持ち合わせていない。首を左右に振り、何も知らないと身振りで答えた。
「わかんない、とりあえず行ってくるね」
周囲にはそう伝え、亜門の後を追う形で教室を後にする。
(なんだろう)
自分で言うのもおかしいが、特に問題行動のある生徒では無いし、成績面でも優秀な方の筈。
強いて呼び出される程の事情と言えば聡との関係だろうかと千佳は訝しんだが、そもそも生徒間の付き合い自体は問題無いだろうし、聡とは清らかな関係を維持出来ている。教師に口を出される問題では無い。
(先生もその辺りは割と理解がありそうだし…)
生徒の惚れた腫れたの話など、亜門は笑って聞き流しそうだ。
ますます呼び出された理由を掴めないまま、千佳は亜門の待つ生徒指導室のドアをノックした。
「急に呼び出して済まない。昼飯もまだだよな」
「いえ」
先に着いていた亜門の対面の椅子へと着席を促される。
(あれ、もしかして大丈夫そう?)
亜門の気遣いに千佳は少し安堵する。その申し訳なさそうな態度から、自分が何かをしたという訳では無さそうだと推測出来た。強張っていた手足が緩み、幾分か緊張を和らげた。
(それにしても)
驚いたのは亜門の変わりようだ。ほんの数分前の授業中の凛々しい立ち振る舞いは何処かに消え、視線は重力に引かれんばかりに下を向いている。緩めたネクタイの先に見える太い首筋はジンワリと汗を纏っていて、一見して憔悴したように見えた。
(呼ばれた理由自体は深刻そう…)
自分だけではなく亜門にも関連する何かがあったのだ、と千佳は推し量る。
そして亜門の方はかなり参っているらしく、おそらく職業柄授業中は無理に明るく振舞っていたのだろうとも勘ぐる。
「だいぶお疲れみたいですね」
千佳の一言に机の天板をボンヤリと眺めていた亜門が顔を上げる。まるで千佳から話し出すのを待っていたかのように。
「悪い、ちょっとな」
普段は見せない弱った亜門の態度に、呼び出されたはずの千佳の方が、何かしてあげないと、といった気持ちになってきた。事実千佳は机から一定の距離を置いて椅子に座っていたが、亜門が心配になり、机へ椅子を寄せた。
(この香り、香水?)
亜門から香る男性が付けるには少し甘すぎる匂いが鼻腔へ漂ったが、本題に入ろうとする亜門に遮られる。
「見てもらいたい写真があるんだ。川村なら何か知っているかと思ったんだが」
「写真、ですか?」
亜門が取り出した自身の携帯電話を操作し、机の上にゴトンと置いた。その投げやりな仕草が、もう自分はその写真を見たくないのだと示している。
嫌な、予感がした。
千佳は置かれた携帯電話をおずおずと手に取り、画面を見てしまった途端、あまりの衝撃に身体と頭がカミナリに打たれたみたいに硬直し、目を見開いた。
「うそ…」
千佳は一度画面から目を逸らし、祈る気持ちで亜門の表情を伺う。担任教師が浮かべる神妙な表情は、その写真が事実である事を暗に肯定している。
(うそ…うそ…!)
背中を伝う冷や汗が、放心状態の千佳を徐々に現実へと引き戻す。
写っていたのは聡と森の二人、それも聡の露出した男性器を教師である森が手で扱いている姿だった。
その写真がもたらしたあまりに強い衝撃に手が小刻みに震え、携帯電話を持つのがやっとの千佳に亜門が口を開く。
「俺の携帯に今朝匿名でこの写真が送られてきたんだ。残念だが、誰が送ってきたのかまではわからない」
「………」
「俺も驚いたよ。まさか森先生とB組の土田が学校でこんな事をしていただなんて…おい、大丈夫か?」
「えっ?あ、はい…な、なんで、私?」
会話の流れを汲む余裕の無い千佳は頭に浮かんだ疑問をそのまま亜門へ投げる。サラサラだったストレートの前髪は滲んだ汗で額に貼り付いていた。
「川村が土田と仲が良いって聞いたんだ。こんな時に何だが、お前達付き合っているのか?」
「………」
千佳は唇をクッと噛み付けた。こんな時の沈黙は事実を吐露しているのと同じだとわかりつつも、それ以外にどんな態度で居れば良いのか千佳にはわからなかった。
「そうなんだな。実は、俺はこの件を大ごとにしないでおきたいと思っている」
「大ごとって…そんな…だって、だって、森先生と聡が…こんな事してるんですよ…」
ここで泣いても何も解決しないと、溢れる激情を肩を震わせながら何とか抑えていた千佳だが、ついに堰が切れた。ポツリポツリと制服のスカートへ大粒の涙が沈んでいく。
「なんで…なんで…ぇ…」
「辛いだろうな、ただ最後まで話を聞いて欲しい。俺はこの写真が合成された物の可能性も疑ってるんだ」
「ごう、せい?」
にわかに千佳の瞳に光が戻る。
「そうだ、今の画像編集ソフトの性能はすごい。ここまで過激では無かったが、現に前の学校でも、イタズラで気に入らない教師の顔とグラビアアイドルの身体を合成してばら撒いた生徒がいたんだ。今回もその可能性はある」
「でも…とても合成した物には、見えないです…」
「あぁ、川村の言う通り本物の可能性も捨て切れない。だが考えてみてくれ、土田はこんな事をするような人間じゃないだろう?」
「…はい」
これだけは千佳は顔を上げ、自信を持って答える事が出来た。
「それにレイ…いや森先生もそんな人間じゃないんだよ。あいつは挑発的な格好をすることもあるが、周りが思っているよりずっと弱い奴なんだ」
千佳は森の事になるとひどく動揺する亜門の態度に気付いた。それは同僚としての想いと言うよりは、それ以上の。
「もしかして先生、森先生と…?」
「あぁ、実はその…少し前からな」
千佳はここまでの亜門の言動に合点がいった。二人が恋仲だからこそ、亜門はひどくショックを受けているし、事を荒立てたくないのだ。
「写真を送り付けて来た奴の目的はわからないが、今のところ俺にしか送って来ていない。とにかくばら撒くつもりは無いみたいだ。やるなら既にやっているだろうからな」
「はい…」
確かにそうだ、と千佳は相槌を打つ。自分と同じくらいに落ち込んでいるはずの亜門が、感情を押し殺しながら冷静に語る姿には妙な説得力があった。
「だとすれば、わざわざ俺個人に送信してきた以上、この後犯人が直接コンタクトを取って来る可能性が高い。そうなれば交渉の余地はある」
こんな状況の中でも、何とか出来る事がないかと思考を回し続けている亜門に驚き、そしてただ泣いているだけの自分を恥じた。自分はまだ子供で、亜門は大人なのだと思い知らされた気すらした。
(そう、よ。こんな写真イタズラの可能性もあるし、もしそうで無くても聡に何か事情があるかもしれない)
「それで、その、結局私に話したのって…」
亜門は大事な内容を忘れていたとばかりに、動揺して一方的に話した事を詫び、千佳を呼び出した理由を話し始めた。
「実は犯人が動く前に、当時者に話を聞こうと思っているんだ。ただもしイタズラだった場合、無闇にレイ達を傷付けるだけの結果なってしまう。だから大人であるレイの方に、近いうち話を聞こうと考えてる」
でもその前に彼女である千佳に、土田の最近の様子におかしい部分は無かったか聞きたかったのだと亜門は説明した。
「済まないな。川村にも黙っておくべきかと考えたんだが」
「いえ…確かにショックですけど、後から知るよりは今聞いておいて良かったと思ってます」
千佳は少しだけ身体に力が戻ってきた気がした。手の震えは既に止まり、鼻はグズグズとしたままだが涙は止まった。目の前で亜門が手本を見せてくれたように、泣いているだけでなく、何か行動しなければと少しだけ勇気が湧いた。
「それで川村から見て、土田はどんな様子だった?例えばそうだな、家庭環境の問題だったり、あとは思春期だろうし、色々欲求不満になっていたり、とか」
「あっ…」
千佳は狼狽した。
(どっちも…当てはまってる…)
そして、まだキスすらしていないプラトニックな関係である事。それ以上の行為は卒業してからと約束した事。聡が自分の身体を求めている様子はあったが気付かないフリをしていた事。聡の家庭環境の事。
所々声が震えたが、ポツリポツリと亜門に思い当たる事を溢した。
「なるほどな、土田にとってはここ最近ストレス要因が多かったのかもしれない。そこにレイが付け込んだ可能性も否定できないな…」
「そんな…」
「まぁそう早まるなよ、あくまで可能性の話をしているんだ。それにどんな理由があっても校内で教師と生徒があんな事をして良い理由にはならないしな」
(私の、せいなのかな…聡はサインを出していたのに、私が蔑ろにしたから…)
一度は閉じた涙腺がまた震え始める。
「その顔、自分の責任かもって思っているんじゃないか?それは違う。セックスなんて二人でどうするか決めるものだからな。相手に合わせるだけというのは違う。でもまぁ、今時の高校生カップルにしては珍しいかもしれないな」
その亜門の言葉で、千佳はやはり自分が少数派なのだとのレッテルを植え付けられてしまう。
(やっぱり、私のせいでもあるんだ…)
「その、先生!私、私も森先生から話を聞きたい、です…」
「辛い思いをするかもしれないが」
子供の出る幕では無いと諭される事を覚悟していたが、案外と素直に亜門は千佳の提案を飲んだ。
「構いません」
「わかった、じゃあ日程が決まったら川村にも知らせる。連絡先を教えてくれ。あと一つ」
「土田にはこの事は言うな。本人を守る為だし、もしこの写真の事を知ったら川村からも離れてしまうかもしれない」
ーーーーーーーーーー
「最低の教師ね」
「なんだレイ、聞いていたのか」
「この間の仕返しよ、全くあんな写真、いつの間に撮られていたのかしら。それに、あなたに役者の才能があったとはね、あの憔悴し切った演技なんて堂に入っていたわよ」
「たまにはお前みたいに回りくどくやってみようと思ったのさ」
「それにしてもひどいわよ。さっきの話ほとんどが嘘じゃない。よくもまぁ私を恋人役に仕立てたものだわ」
「あまり褒めるな」
「写真だけが本物というのが皮肉ね。でも関心もしたのよ?川村さんに"俺達二人は同じ境遇の仲間"と思わせるように誘導して、"高校生にもなってセックスもしないのは少数派"と決め付けてまで自責の念を煽るなんて。この後亜門先生はどう事を運ぶつもりかしら?」
「いやもう役者は飽きたよ、向いてないってわかった。あとは俺のやり方でやるさ。悪いが適当にさっきの話にだけ合わせておいてくれ」
「いいか、長文だからって怯む必要は無いんだ。まずそれぞれの要素に分けて考える癖を付けて…」
生徒達の耳によく残るバリトンで亜門は授業を進める。川村千佳は教室の最前列、教壇の真前の席で授業を受けていた。
亜門は七月に赴任してきたばかりの英語教師で千佳のクラスの担任でもある。
同時に赴任してきた B 組の森と同じタイミング、それに同じ教科で入ってきた事が珍しく話題を集め、二人共が若く美男美女であった事がなおさら生徒達の興味を引いた。
初めは興味本位で亜門を見ていたA組の生徒だったが、生徒達との距離感が近く、話し方もフランクで親しみやすく、教室内に良く響く低い声、スピーディーでわかりやすい授業の進め方が生徒に受け、今ではA組の生徒達からの信頼は厚かった。
千佳の友人の中には、亜門が他の教師と比べると比較的自分達と年齢が近く、スポーツマンのような厚い胸板、高身長にモデルのように整った相貌から、担任の教師以上の好意を寄せる者さえいた。
(でも亜門先生って、何か怖いんだよなぁ)
時々思う。千佳にとっても亜門の教師としての実力は尊敬に値するものであったし、担任としても申し分無い。
ただどうしても引っかかるものがあった。何が、という訳では無く、本能的に警戒してしまっているのだと千佳は警鐘を鳴らす自分の六感を分析していた。
(どこか人間離れしていると言うか、むしろ優れた人間を演じている感じ…?)
多分あの日の勘違いのせいだろう、と千佳は数ヶ月前の記憶を引き出す。
ーーーーーーーーーー
その日は夏休み直前の登校日だった。ひどく蒸し暑い日で、少し外に出れば身体中にじんわりと汗が纏わり付いていた事をよく覚えている。
夕方に夏休み前最後のホームルームを終え、教室の中は各々暫くの別れを惜しんだり、夏休みの予定を合わせたりで盛り上がっていた。千佳も何人かの友達と同じような会話に花を咲かせた後、教室を出て帰路についた。
しかし自宅へ着く直前にスケジュール帳を教室へ置き忘れていた事に気が付き、汗で身体に貼り付く制服にうんざりしながら、もう一度電車に乗り込み学校へ戻った。夏休みの友達との予定はそこにしか書き留めておらず、どうしてもその日に取りに行く必要があった。
急ぎ足で学校に戻った時には既に一時間以上が経っていて、校内は部活動をしている生徒以外既に下校しており、校舎の方はシンと静まり返っていた。
(あ、そうだ。教室のカギを借りなきゃいけないんだ)
千佳はまず一階の職員室へ向かい、亜門に事情を説明して教室のカギを借りようとしたが、間の悪い事に亜門は離席していると隣のクラス担任の森が教えてくれた。
結局森に事情を話し、カギを借りられた千佳は三階にある教室へ足早に向かった。
「良かったぁ、あった!」
そうして机の中に置き忘れたスケジュール帳を回収できたのだが、その時ふわりと生温い風が頬を撫ぜた。
(あれ?)
教室をぐるりと見渡すと、夕日がギラギラと差し込む窓のカーテンがヒラヒラとはためいている。
(最後の人が窓を締め忘れたんだ)
窓を閉めようとカーテンを開けた時、ふと目に付く光景があった。
千佳の教室は中庭に面しており、三階の高さがある事から、中庭全体を広く見渡すことが出来る。そして千佳のいる教室から中庭を挟んだ対角線の一階、演習棟にある一室の窓に人影が見えた。
(あれ、女子の制服?それに誰かもう一人…えっ?)
確かあそこは視聴覚室の筈で、誰かが居るのは特段珍しい事ではない。ただもう一人の手が女子生徒の首を掴むように伸びている風に見える。
ーガラッ
「きゃっ」
突然千佳の居る教室のドアが開かれ、思わず身体ごと飛び跳ねた。
「何してるんだ」
「あ、その、忘れ物を取りに…」
体育教師の佐藤だった。たまたま通りがかったようで、施錠されている筈の教室に千佳の姿があり、こんな時間に何をしているのか気になって確認しに来たようだ。
「森先生にお願いして、カギを借りたんです」
同僚である英語教師の名前を聞き、佐藤は納得したようだ。
「なら早く出なさい、カギは俺が締めておくから」
「は、はい。ありがとう、ございます」
急いでいるのか、千佳の退出を急かすように早口で体育教師は言った。
そしてもう一度視聴覚室へ視線を戻した時には、誰の姿も無かったのだ。
ーーーーーーーーーー
(あの日の事は気のせいよね)
意識を教室へ戻し、ハイペースな授業に置いて行かれないようペンを取り直す。
あの後、人影が見間違いだったのかどうしても気になってしまい、帰り際に視聴覚室を覗いてみたものの、人の気配は無く、ドアも施錠されていた。
(あの手が亜門先生の手だったって、流石に妄想が過ぎるよね)
視聴覚室の件は見間違いで、普段からどことなく気にしている亜門の姿が頭の中ですり替わってしまったのだろうと千佳は自分を納得させた。
「川村、先に行っているから後から生徒指導室に来てくれ」
「えっ?あ、はい」
昼休み前の最後のコマである授業が終わり、緊張感から開放された教室がザワ付き始めた頃、亜門に声を掛けられた。
(タイミング悪いなぁ)
昼休みに聡がいるであろう演習棟へ向かうつもりだったのに、と千佳は肩を落とす。
(それに何で私が?)
理由を尋ねるより前に亜門はそそくさと教室を出て行ってしまった為、これでは断りようが無い。
「川村さん大丈夫?何かあったの?」
周囲からの千佳を気遣う声。
しかし理由を聞かれたところで千佳は思い当たる節を全くと言って良い程持ち合わせていない。首を左右に振り、何も知らないと身振りで答えた。
「わかんない、とりあえず行ってくるね」
周囲にはそう伝え、亜門の後を追う形で教室を後にする。
(なんだろう)
自分で言うのもおかしいが、特に問題行動のある生徒では無いし、成績面でも優秀な方の筈。
強いて呼び出される程の事情と言えば聡との関係だろうかと千佳は訝しんだが、そもそも生徒間の付き合い自体は問題無いだろうし、聡とは清らかな関係を維持出来ている。教師に口を出される問題では無い。
(先生もその辺りは割と理解がありそうだし…)
生徒の惚れた腫れたの話など、亜門は笑って聞き流しそうだ。
ますます呼び出された理由を掴めないまま、千佳は亜門の待つ生徒指導室のドアをノックした。
「急に呼び出して済まない。昼飯もまだだよな」
「いえ」
先に着いていた亜門の対面の椅子へと着席を促される。
(あれ、もしかして大丈夫そう?)
亜門の気遣いに千佳は少し安堵する。その申し訳なさそうな態度から、自分が何かをしたという訳では無さそうだと推測出来た。強張っていた手足が緩み、幾分か緊張を和らげた。
(それにしても)
驚いたのは亜門の変わりようだ。ほんの数分前の授業中の凛々しい立ち振る舞いは何処かに消え、視線は重力に引かれんばかりに下を向いている。緩めたネクタイの先に見える太い首筋はジンワリと汗を纏っていて、一見して憔悴したように見えた。
(呼ばれた理由自体は深刻そう…)
自分だけではなく亜門にも関連する何かがあったのだ、と千佳は推し量る。
そして亜門の方はかなり参っているらしく、おそらく職業柄授業中は無理に明るく振舞っていたのだろうとも勘ぐる。
「だいぶお疲れみたいですね」
千佳の一言に机の天板をボンヤリと眺めていた亜門が顔を上げる。まるで千佳から話し出すのを待っていたかのように。
「悪い、ちょっとな」
普段は見せない弱った亜門の態度に、呼び出されたはずの千佳の方が、何かしてあげないと、といった気持ちになってきた。事実千佳は机から一定の距離を置いて椅子に座っていたが、亜門が心配になり、机へ椅子を寄せた。
(この香り、香水?)
亜門から香る男性が付けるには少し甘すぎる匂いが鼻腔へ漂ったが、本題に入ろうとする亜門に遮られる。
「見てもらいたい写真があるんだ。川村なら何か知っているかと思ったんだが」
「写真、ですか?」
亜門が取り出した自身の携帯電話を操作し、机の上にゴトンと置いた。その投げやりな仕草が、もう自分はその写真を見たくないのだと示している。
嫌な、予感がした。
千佳は置かれた携帯電話をおずおずと手に取り、画面を見てしまった途端、あまりの衝撃に身体と頭がカミナリに打たれたみたいに硬直し、目を見開いた。
「うそ…」
千佳は一度画面から目を逸らし、祈る気持ちで亜門の表情を伺う。担任教師が浮かべる神妙な表情は、その写真が事実である事を暗に肯定している。
(うそ…うそ…!)
背中を伝う冷や汗が、放心状態の千佳を徐々に現実へと引き戻す。
写っていたのは聡と森の二人、それも聡の露出した男性器を教師である森が手で扱いている姿だった。
その写真がもたらしたあまりに強い衝撃に手が小刻みに震え、携帯電話を持つのがやっとの千佳に亜門が口を開く。
「俺の携帯に今朝匿名でこの写真が送られてきたんだ。残念だが、誰が送ってきたのかまではわからない」
「………」
「俺も驚いたよ。まさか森先生とB組の土田が学校でこんな事をしていただなんて…おい、大丈夫か?」
「えっ?あ、はい…な、なんで、私?」
会話の流れを汲む余裕の無い千佳は頭に浮かんだ疑問をそのまま亜門へ投げる。サラサラだったストレートの前髪は滲んだ汗で額に貼り付いていた。
「川村が土田と仲が良いって聞いたんだ。こんな時に何だが、お前達付き合っているのか?」
「………」
千佳は唇をクッと噛み付けた。こんな時の沈黙は事実を吐露しているのと同じだとわかりつつも、それ以外にどんな態度で居れば良いのか千佳にはわからなかった。
「そうなんだな。実は、俺はこの件を大ごとにしないでおきたいと思っている」
「大ごとって…そんな…だって、だって、森先生と聡が…こんな事してるんですよ…」
ここで泣いても何も解決しないと、溢れる激情を肩を震わせながら何とか抑えていた千佳だが、ついに堰が切れた。ポツリポツリと制服のスカートへ大粒の涙が沈んでいく。
「なんで…なんで…ぇ…」
「辛いだろうな、ただ最後まで話を聞いて欲しい。俺はこの写真が合成された物の可能性も疑ってるんだ」
「ごう、せい?」
にわかに千佳の瞳に光が戻る。
「そうだ、今の画像編集ソフトの性能はすごい。ここまで過激では無かったが、現に前の学校でも、イタズラで気に入らない教師の顔とグラビアアイドルの身体を合成してばら撒いた生徒がいたんだ。今回もその可能性はある」
「でも…とても合成した物には、見えないです…」
「あぁ、川村の言う通り本物の可能性も捨て切れない。だが考えてみてくれ、土田はこんな事をするような人間じゃないだろう?」
「…はい」
これだけは千佳は顔を上げ、自信を持って答える事が出来た。
「それにレイ…いや森先生もそんな人間じゃないんだよ。あいつは挑発的な格好をすることもあるが、周りが思っているよりずっと弱い奴なんだ」
千佳は森の事になるとひどく動揺する亜門の態度に気付いた。それは同僚としての想いと言うよりは、それ以上の。
「もしかして先生、森先生と…?」
「あぁ、実はその…少し前からな」
千佳はここまでの亜門の言動に合点がいった。二人が恋仲だからこそ、亜門はひどくショックを受けているし、事を荒立てたくないのだ。
「写真を送り付けて来た奴の目的はわからないが、今のところ俺にしか送って来ていない。とにかくばら撒くつもりは無いみたいだ。やるなら既にやっているだろうからな」
「はい…」
確かにそうだ、と千佳は相槌を打つ。自分と同じくらいに落ち込んでいるはずの亜門が、感情を押し殺しながら冷静に語る姿には妙な説得力があった。
「だとすれば、わざわざ俺個人に送信してきた以上、この後犯人が直接コンタクトを取って来る可能性が高い。そうなれば交渉の余地はある」
こんな状況の中でも、何とか出来る事がないかと思考を回し続けている亜門に驚き、そしてただ泣いているだけの自分を恥じた。自分はまだ子供で、亜門は大人なのだと思い知らされた気すらした。
(そう、よ。こんな写真イタズラの可能性もあるし、もしそうで無くても聡に何か事情があるかもしれない)
「それで、その、結局私に話したのって…」
亜門は大事な内容を忘れていたとばかりに、動揺して一方的に話した事を詫び、千佳を呼び出した理由を話し始めた。
「実は犯人が動く前に、当時者に話を聞こうと思っているんだ。ただもしイタズラだった場合、無闇にレイ達を傷付けるだけの結果なってしまう。だから大人であるレイの方に、近いうち話を聞こうと考えてる」
でもその前に彼女である千佳に、土田の最近の様子におかしい部分は無かったか聞きたかったのだと亜門は説明した。
「済まないな。川村にも黙っておくべきかと考えたんだが」
「いえ…確かにショックですけど、後から知るよりは今聞いておいて良かったと思ってます」
千佳は少しだけ身体に力が戻ってきた気がした。手の震えは既に止まり、鼻はグズグズとしたままだが涙は止まった。目の前で亜門が手本を見せてくれたように、泣いているだけでなく、何か行動しなければと少しだけ勇気が湧いた。
「それで川村から見て、土田はどんな様子だった?例えばそうだな、家庭環境の問題だったり、あとは思春期だろうし、色々欲求不満になっていたり、とか」
「あっ…」
千佳は狼狽した。
(どっちも…当てはまってる…)
そして、まだキスすらしていないプラトニックな関係である事。それ以上の行為は卒業してからと約束した事。聡が自分の身体を求めている様子はあったが気付かないフリをしていた事。聡の家庭環境の事。
所々声が震えたが、ポツリポツリと亜門に思い当たる事を溢した。
「なるほどな、土田にとってはここ最近ストレス要因が多かったのかもしれない。そこにレイが付け込んだ可能性も否定できないな…」
「そんな…」
「まぁそう早まるなよ、あくまで可能性の話をしているんだ。それにどんな理由があっても校内で教師と生徒があんな事をして良い理由にはならないしな」
(私の、せいなのかな…聡はサインを出していたのに、私が蔑ろにしたから…)
一度は閉じた涙腺がまた震え始める。
「その顔、自分の責任かもって思っているんじゃないか?それは違う。セックスなんて二人でどうするか決めるものだからな。相手に合わせるだけというのは違う。でもまぁ、今時の高校生カップルにしては珍しいかもしれないな」
その亜門の言葉で、千佳はやはり自分が少数派なのだとのレッテルを植え付けられてしまう。
(やっぱり、私のせいでもあるんだ…)
「その、先生!私、私も森先生から話を聞きたい、です…」
「辛い思いをするかもしれないが」
子供の出る幕では無いと諭される事を覚悟していたが、案外と素直に亜門は千佳の提案を飲んだ。
「構いません」
「わかった、じゃあ日程が決まったら川村にも知らせる。連絡先を教えてくれ。あと一つ」
「土田にはこの事は言うな。本人を守る為だし、もしこの写真の事を知ったら川村からも離れてしまうかもしれない」
ーーーーーーーーーー
「最低の教師ね」
「なんだレイ、聞いていたのか」
「この間の仕返しよ、全くあんな写真、いつの間に撮られていたのかしら。それに、あなたに役者の才能があったとはね、あの憔悴し切った演技なんて堂に入っていたわよ」
「たまにはお前みたいに回りくどくやってみようと思ったのさ」
「それにしてもひどいわよ。さっきの話ほとんどが嘘じゃない。よくもまぁ私を恋人役に仕立てたものだわ」
「あまり褒めるな」
「写真だけが本物というのが皮肉ね。でも関心もしたのよ?川村さんに"俺達二人は同じ境遇の仲間"と思わせるように誘導して、"高校生にもなってセックスもしないのは少数派"と決め付けてまで自責の念を煽るなんて。この後亜門先生はどう事を運ぶつもりかしら?」
「いやもう役者は飽きたよ、向いてないってわかった。あとは俺のやり方でやるさ。悪いが適当にさっきの話にだけ合わせておいてくれ」
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