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3.箍が外れた二人は愛欲に溺れ

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"カチャ"

時刻は二十一時、寝かし付けに一時間強は要しただろうか。スースーと寝室で眠る夏美を起こさないよう物音を消して、賢人は寝室のドアの隙間を潜る。先程のキッチンでの情事は未だ鮮烈な刺激を頭に刻んでいて、普段は夏美と寝転んでいる内に襲ってくる眠気も今日は全く気配が無かった。

リビングに戻ると、ソファーに腰掛けスマートフォンを触っていた薫がカチリと電源ボタンを押し込み、掛けていた眼鏡と一緒にリビングテーブルに置く。それが合図だった。

「んっ…」

薫をソファーへ押し倒し、唇を重ねる。先程のような様子見はお互いにもはや不要で、すぐにネットリと舌が絡み合う。薫のシャンプーの残り香、卸し立ての衣類の香り、仄かに残るマウスウォッシュのアルコール名残り、それら全てが賢人の興奮を促し、ペニスは既に痛いくらいに勃起している。

「ごめん、もう我慢出来ない」

「いいよ、私もそうだから…早く…」

唇を離さないままお互いが自分の下半身を露出させる。雰囲気作りさえどうだって良く、下着ごと乱雑に脱ぎ捨てる。

ボクサーパンツを脱いだ途端にそそり立った陰茎はビタンと腹部に跳ね、既に先端には先走り汁が透明な水玉を形成している。

手早くゴムを巻き付け、仰向けで待つ薫の秘部へ先端を当てがう。

「すごい濡れてる」

「い、言わないで…恥ずかしい…」

過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに雄を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされた陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。

「んっ…くっ…♡前より、ずっと…ふか、い…」

「ふっ…ぅ…」

下半身からの悦びに薫が震える度に、正常位で奥まで繋がった陰茎を肉壁がキュウキュウと締め付ける。甘美な刺激は早くも賢人の射精感を昂らせ、ペニスはビクンビクンと膨張を繰り返す。

「やば…久しぶりすぎて、持たないかも」

一度自分で抜いておけば良かったと後悔する程に薫の中を蠢く快感は強烈だった。数週間は自慰すら出来ていない敏感なペニスでは到底長いピストンに絶えられそうもない。

「んっ…い、いいよ…好きに動いて…うぅ…♡」

ペニスの先端は膣奥に到着しており、射精の心配に反して賢人の腰は薫の肉圧に押し出され、また吸い込まれ、自然に前後に動く。その度に薫の顎は仰け反り嬌声が漏れた。

「薫…舌、出して」

「えっ…う、むっ♡」

加減も何もなく欲望のままに妻の唇と舌を貪る。酸素を求めて漏れる吐息が尚の事賢人を興奮させる。薫が苦悶の喘ぎを上げる度に膣内はピクピクとペニスを締め上げ、互いの性器が別の生き物のように交配する。

「…ぅ……んんっ♡…ぅ……ふっ…ん♡」

何とか湧き上がる吐精感をなだめる為、賢人は腰を引き薫の肉圧の接触面積を減らそうとする。しかしぷっくりと膨張しきった亀頭のカリをヌメった肉壁は優しく絞るばかりで、むしろ送られてくる快感は増してしまう。

その刺激が腹側の肉を抉り、Gスポットを襲う摩擦挿入に薫の喘ぎも一段と大きくなる。

「それっ…だ、め……んんっ♡」

「ここ?」

「そ、そう…そこ…んっ…今日、なにか…おかし…んっ♡」

賢人はピストンを前後動作から斜め上方向に変え、膣内から薫の臍を押し上げる角度で亀頭を押し込む。

「あっ!んっ♡…だめっ!そこ…だめな、の…」

薫の狼狽具合がここまで顕著であると、賢人もピストンの当たりを付けることが容易だ。薫の太腿ははしたなく彷徨い、喘ぎ声が一定周期に収束していくにつれて賢人を強く締め上げる。

「ふっ…くっ…」

妻のオーガズムまでは耐えようと、来週の仕事の山を思い出しながら射精感を何とか抑え込む。薫の汗ばんだ苦悶の表情や、雌悦びの喘ぎ、はだけた胸元にブラの中でゆさゆさと揺れるEカップの柔肉、どれもが賢人を昂らせるには十分ないやらしさで、別の事に意識を持っていかなければあっという間に果ててしまいそうだ。

「ぁ…ぁっ…あっ…んっ…く、…ぅ…♡」

「か…おるっ…うっ…」

賢人の腰を薫の腿が強烈に締める。やがて力んだ脚が脱力し、薫は膣内から腹、胸、喉へと肉波を打ちながら、断続的に酸素を取り込み甘いオーガズムを受け入れる。

同時に溜め込んだ精液を吐き出した賢人も薫の上体へ倒れ込んだ。亀頭に触れるゴムの先端が多量の精液で膨らんでいるのがわかる。

「んっ…」

はぁはぁと荒い口呼吸が収まった薫が、未だ残るオーガズム余韻にフーフーと鼻で呼吸し、胸を上下に揺らす。余韻は呼吸だけでは無く、膣内は肉収縮で断続的にペニスを締め、余すこと無く精液を搾り取ろうとする。その刺激に応え、亀頭は何度も膨張を繰り返し、尿道の中に残る白濁液を小刻みに吐き出す。

「んっ…ふっ…」

断続的な粘膜接触が甘い快楽波を二人へ送る。そのやり取りは酷く充足感があり、危うく最高に良かったよと小っ恥ずかしくなる台詞を吐き出しそうになった。

「…ティッシュ取ってくる」

五分は正常位で挿入したままお互いの呼吸を整えていただろうか。ペニスの収縮に合わせて避妊具の隙間から精液が漏れ出てはいけないと、上体を起こそうとした賢人だったが、それを薫の両の脚が捕えた。

「待って…抜かないで…」

「えっ?んっ…」

「んっ…ふっ♡」

唐突な薫からの口付け。それも性交事後に済ませるような軽いキスではなく、唇を割る濃厚なものだった。薫から舌を入れてくるなんてことは初めてであり、戸惑いながらも賢人は薫に応える。

互いの舌が擦れれば、薫の膣内はまたピクピクと蠢き始める。それは余韻から来るものではなく、貪欲に再度の性交を求めていた。

二十歳前後であれば二回戦も出来たものだが、今となってはもう暫く時間を開けなければ厳しい。

「ん…あ、む…♡」

ただこれまでからは考えられない薫の積極性やそのギャップに、ペニスに早くも硬さが戻って来ているのを賢人は感じていた。それは異様な興奮だった。

「…中で硬くなってきた」

まだ接吻を止めない薫が浮ついた声で指摘する。

「薫のせいだよ、どうしたの?なんかいつもとその…違うというか」

「違う…?」

「セックス、そんな好きじゃなかっただろ」

「うーん…嫌いじゃないんだよ。私だってそういう気分になることあるもん。ただ…」

「ただ?」

「…何か今日はムラムラするの」

生理前か何かなのかと勘繰った賢人だが、自分もまた異様に興奮しているのは事実で、答えに窮する。少しハイになっているのか薫が続けた。

「何かして欲しいことある?」

「えっ?それは…どっちの?」

日常生活の方か、それともセックスに絡めてなのか迷ったが、まだ唇を離さない薫を見れば後者の方なのは明らかだった。

「いつもその…賢人にしてもらってばっかりだし…」



確かに薫とのセックスは所謂普通の枠を出ないものばかりで、それは薫が嫌がるプレイを避けてきた着地点であった。賢人自身は若気の至りで多少アブノーマルな性癖に走ったこともあるが、薫と出会ってからは教科書的な、それも初心者向けであろう範囲に留まっていた。

相手の望まぬ内容を強いるべきではないという良識が賢人にはあったし、これ以上薫に避けられては元も子もないという打算もあった。

(うーん…せっかく薫から歩み寄ってくれているわけだし)

性欲の昂ぶりに反比例し、ポンコツに貶められている思考で落とし所を探す。

「何でも良いの?」

時間稼ぎ。

「えっ?その…あんまり恥ずかしいのは、ダメだよ?」

「じゃあ…手とか、口でして欲しい、かな」

特にフェラチオには人並みの執着があった。特に薫の柔らかい唇や生暖かい口内に自分の性器包まれたらとの期待に、いつの間にか海綿体は挿入に足るだけの血液を十分に吸い込んでいる。

「…いいよ…んっ…」

二人で寝そべるには狭いソファーの上でお互いの体制を交代する。名残惜しそうに抜けたペニスは薫の愛液でテラテラとぬめり、ゴムの先端は吐き出された精液でタプタプと揺れる。

「ちょっと待って、ティッシュ取ってきてくれるかな」

「う、うん」

早速ゴムを外そうとしていた薫を制止する。今抜き身で外そうものなら白濁液が溢れてしまいそうだった。

「すごく出たんだね…やっぱりその、溜まってたの?」

薫からティッシュ箱を受け取った賢人がゴムを外すのを眺めながら、寄り添ってきた薫が尋ねる。

「うん、正直我慢してた」

「そっか、だからまだこんなに…硬いんだ?」

薫の細い指が未だ起立を続けるペニスを包む。始めこそ力が入りすぎていたり、粗末な動きが目立った手淫だった。

「ぅっ…」

「…こんな感じ?」

賢人の腰反応や表情を観察しながら、薫が指の動きを探ってくる。その妖艶な相貌と貪欲な向上心に賢人はゾクリとした。今日の薫は何が取り憑いたように性に愚直であった。

「ふふっ、これがいいの?」

「それやば…い」

小指が裏筋に触れたかと思えば、薬指、中指、人差し指が順になぞり賢人を愚弄する。

「熱くて…硬いね。ビクビクしてて、賢人が感じてるのわかるよ」

乾いてしまった亀頭への刺激が強すぎるのを察した薫の手は肉棒へと移り、上下に緩やかなしごきを与えてくる。

「かお、る…」

妻の小悪魔的な奉仕に堪らなくなった賢人は薫の顔を引き寄せ粘膜接触を求める。暫くは薫の唇の柔らかさを貪った賢人だが、ペニスに与えられる上下刺激に惑わされ、いつの間にか口と性器を薫に一方的に犯されていた。

「ん…チュ…気持ちいい?」

「…すごく」

思いもよらぬ手淫の巧みさに驚きながら、素直に返答する。

「ねぇ…もう一回…」

何度目かもわからない深いキスの後、前髪を耳に流しながら薫が挿入を強請る。

されるがままの二回吐精になびきかけていた賢人は薫を抱き寄せ、再びマウントを取る体勢となり薫の唇を塞ぐ。

「あっ…♡」

唇から耳朶、耳から顎、顎から首筋にかけて舌と唇を使い愛でる。今日は金曜日で、跡が残っても構わないだろうと特に首筋を強めに唇で食み、食み跡を舌先でチロチロと舐める。

身を捩る薫の服を腕から脱がせ、白のブラが露わになる。ふくよかな谷間はじっとりと湿り気を帯び、汗ばむ乳房は薫の荒い呼吸に合わせ上下している。その情景に辛抱堪らず、賢人は乱暴に下着ごとバストに右手を沈ませる。

「…んっ…ふっ…」

薫もまた官能で応え、堅く閉じた両の唇から甘い吐息が漏れる。互いの汗で濡れたバストは賢人の指に吸い付き、その柔和さを掌全体で堪能しようとホックへ手を伸ばす。

「ん…チュ…」

早く脱がせてとばかりに上体を起こす薫とまた唾液を交換しながら、解放されたふるふると弛むEカップを両の手で支えるように包んだ。

しっとりとした柔肌が賢人の指の力に何の抵抗も無く沈んでいく。欲望のままに掌でバストを弄べば、薫が官能に腰をくねらせる。

(あぁダメだ。興奮しすぎて馬鹿になる…)

今すぐにでも薫の肉壺へギンギンにそそり立ったペニスを捻じ込みたい衝動を何とか抑え、バストを弄ぶ指を薫の下腹部へ這わせ向かう。

「だ…めっ…うぅ…」

言葉とは裏腹に、薫の秘部は大陰唇まで挿入を待つ体液に濡れ、他の腕や腹の皮膚に比べ遥かに熱を帯びていた。賢人が膣口に当てがうと中指は簡単に愛液を纏い、親指と擦り合わせればヌルヌルと糸を引いた。

これだけ濡れていれば直接触れても問題ないと、陰核を隠す包皮を下から剝き上げる。

「くっ…う…」

先程までとは全く異質の反応を示す薫の身体はビクンと跳ね上がり、当てがった中指の狙いが外れる。このままではいけないと、賢人は薫を座ったまま後ろから抱き、腕で薫の腿を大きく開いた。

「やっ…は、恥ずかしい…」

「いいから、閉じちゃダメだよ」

「えっ…でも…勝手に…ひっ♡」

開脚したことで露出を高めた陰核を再度中指の腹で摩る。ビクビクと苛烈な官能に筋肉が震える薫が必死に脚を閉じないよう力む様は賢人の興奮をまた一段と高めた。

「ん……んっ……っ……っふ……うっ…」

愛撫を受け入れ、次第に充血しプックリと勃起した陰核は接触面積が拡充し、さらなる官能を薫の脳髄へ送り込む。嬌声は徐々に低い呻き声に変わり、薫の呼吸は浅く荒くなっていく。

妻の絶頂予兆を感じ取った賢人は爪を立てないよう注意しながら、愛撫を加速させ、一定のリズムで摩擦刺激を送る。賢人の右手全体が薫の太腿にギリギリと挟まれ、薫の身体は弓ぞりに反っていく。

「イク時はイクって言ってごらん」

「ぅっ…く……ふっ♡………ぃ……く……い…く…ぅ…」

官能に蕩けた薫は抵抗なく絶頂報告を口走り、賢人の腕の中で全身を震わせながらオーガズムに上り沈む。賢人は小さくなった妻の身体を抱きしめ、断続的な痙攣が収まるのを待った。


「次は薫が上においで」

二人は抱き合ったまま、賢人がソファーを背に寝転び、薫が騎乗位でゴムを付け直したペニスを自身の中へと誘導する。ゴムを中から押し広げる亀頭はまるまると膨れ上がり、挿入を待ちきれずにビクンと震えている。

「…あっ…おっき…ぃ」

「くっ…」

ミチミチとゴムが呻きを上げ、そそり立ったペニスが妻の生殖器に飲み込まれていく。二度目の挿入はより柔らかで温かく、一度目の射精を催促するような締め付けではなく、肉壁が自分のペニスに合わせ形を変え、適度な摩擦を与えるよう包み込む。

「ぁ…ぅ…んっ…」

薫が腰を前後に揺すり、シュッ、シュッと性器が擦れ合う摩擦音とお互いのくぐもった声だけが部屋に響く。

「んっ…ふっ……え?…こ、こう?」

さらなる膣内摩擦を求める賢人が、膝立ちで挿入する薫の両足裏をソファーに立て、上下のピストンを促す。

「うっ…うっ…うっ…うっ♡」

それまでのシュッ、シュッと擦れ合う摩擦が、バチンッ、バチンッと鮮烈な上下運動に変わる。賢人はさらに薫の両臀を持ち上げ、亀頭スレスレから一気に根本まで貫くように腰の動きを合わせる。

「う゛っ…あぁ…う゛っ、う゛っ、う゛っ」

薫の体重が加わり、ポルチオまで届くピストンは賢人の亀頭にはクニクニとした衝突で最奥を告げ、薫の嬌声はより動物的な低いものへと変わっていく。

「う゛っ…ぃ…ぐっ…う゛っ…っ…」

キュウキュウと肉壁が震え締り、薫が賢人の胸へ倒れ込む。その状態は下腹部から波が立ち込めるように震えが伝搬し、熱い吐息を賢人の方へ吐き出しながら薫は何度目かのオーガズムに浸る。

「…ごめん…なさい。もう、ちから…はいんない…」

「だ、大丈夫…俺もそんなに締め付けられたら、もう…うっ!」

ピストンが終わった後も薫の膣内は収縮と緩和を行き来しており、絶頂に震える薫の身体の微細動も相まって、薫に遅れて賢人も生殖液を妻の体内に吐き出す。ドクドクと尿道を通る精液量は一度目の吐精に劣らず、何度も何度もかけて溜まった体液を吐き出した。

それから二人は何も話さず、下半身から送られる深い官能余韻と重い倦怠感をただただ受け入れ、身を重ねたまま相手をそっと抱きしめた。
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