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……の配下3
45話
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「はっ?」
映しだされている映像を一度消す。
もう一度、魔力を送り2人の魔王がいる世界を映しだす。
「見間違いじゃないのか……」
視線の先に映し出されているのは、蝙蝠の姿をした魔王と人の姿をした魔王。
蝙蝠の方は問題ない。
いや、問題がないわけでは無いか。
「あれは魔力か? なぜ、羽があんな事になっているんだ?」
映像に映し出された蝙蝠の羽。
なぜか黒い魔力に覆われている。
「何があったんだ? それに……」
蝙蝠の羽も気になるが、それよりももう1人の魔王の姿が問題だ。
映像を拡大して、元はヘビだったはずの魔王の姿を確認する。
映し出された姿は人の姿をしている。
確かにゲームでレベルを上げると、人の姿になれるよう人型が用意されている。
時間制限があり、使い勝手はよくないが人気だ。
映し出されている映像の隣にある、キーを操作し2人のレベルを確認する。
「エラー?」
龍がゲームの流れを壊してしまったのか?
だが、すぐに修復システムが起動するはずだが……。
もう1度キーを操作し、修復システムの状態を確認する。
「こちらは正常みたいだな。……なら、どうして起動しないんだ?」
手動で修復システムの実行ボタンを押す。
「エラー?」
何が起こっている?
今までにこんなエラーを起こしたことは無い。
あの方が、完璧に作り上げたゲームなのだから。
「この問題を調べると、2人の事が知られるな」
さて、どうしようかな?
「あれ? この人型、ゲームで用意した物とは違うんじゃないか?」
映し出されている魔王をよく見る。
顔に黒い鱗があり、尻尾まである。
「やはり違う」
ゲームで用意した人型は、こんな変化が起こらないように固定されている。
どうやってこの人型を手に入れたんだ?
「本当に何があったんだ? それにこの魔力はなんだ?」
映像から微かに感じる魔力。
確かにゲームに登場する魔王の魔力なのだが、微かに違和感を覚える。
何か違う魔力が混じっているような。
もう一度、キーを操作し2人の魔王の解析を実行してみる。
「エラーか」
仕事のため、魔王たちの確認が出来なかった。
だが、たった4日でこれほど変化があるのはおかしい。
何かの力が影響しているのか?
「俺が与えた魔力が、何かしたのか? だがあれは……」
外の魔力を強制的に与えた場合、時々予想とは異なる結果を生むことがある。
俺はそれを恐れて、彼らにはごく普通の魔力を与えた。
何度か、同じ魔力をゲーム内の勇者、天使、魔王に与えたが、特に問題は起きなかった。
だから、あの魔力のせいだとは思えない。
「送り込む方法がいつもと違ったか」
時間がなかったため、映像から強制的に魔力を送り込んだ。
考えられる原因は、それぐらいだが……。
だが、この方法も別に初めてというわけでは無い。
長い過去で数回だけだが、同じ事をしたことはある。
その時には問題は起きなかったはずだ。
問題が起きていたら、注意が促されるから気付く。
「はぁ、原因が分からない」
小さくため息を吐き、2人の魔王を見る。
どうも、魔王城へ戻るようだ。
そう言えば、魔王城から感じるはずの魔力が無くなっているな。
魔王が生きている以上、これもありえない事なんだが。
「ん? 卵?」
配下の卵か。
おかしいな、なぜ5個だけなんだ?
20個あったはずだ。
4日前は順調に育っていたよな?
「あっ、龍の魔力にやられたのか」
だとしたら、もっとおかしい。
なぜ、生き残った配下がいるんだ?
龍の魔力は、かなり強い。
産まれる前のまだ形すら出来ていなかった配下が生き残れるわけないんだが……。
無駄だと気付きながら、キーを操作し配下の解析を実行する。
「やはり、エラーか」
映像の卵を見た感じ。
そろそろ産まれてもいい頃だと気付く。
いや、違う。
既に産まれていないとおかしいほど、卵から魔力を感じる。
「ふっ、ここまで予定外だと次に何が起こるのか興味がわいてくるな」
始めは、排除対象だった。
1人しか許容できない世界に、2人の魔王がいる。
確かにその事に少しは驚いたが、ただそれだけ。
だから排除指示がきて、映像を確認した時も何かを思う事は無かった。
ただ、「ヘビと蝙蝠の魔王だったのか」と、思ったぐらいだ。
だから、迷いなく排除を実行した。
彼らは死に、全てが終るはずだった。
「それが生き残った。そして今は姿も変えた」
予想外の事が、これほど面白く感じるとは思わなかったな。
気まぐれを、時には起こしてみるのもいいものだな。
見つかれば、ただでは済まないだろうが。
「そろそろ気付かれる頃かもしれないな。どうするべきか」
足元を見る。
彼らがあの世界から移動するための、マジックアイテムを準備してきた。
これがあれば、生きている事がばれる前に移動が出来るはずだ。
だが、これを彼らに渡すと俺は……。
「迷う必要はないか」
既に、俺は裏切り者だ。
マジックアイテムを木箱に詰める。
それを自分の魔力で包み込み、映像に手を振れて転移魔法で木箱を2人の元に送り込む。
「上手く使えよ」
だが、2人の事が見つかるのは時間の問題だろう。
エラーが出たが、感じる魔力はまだ小さく弱い。
「彼らを生かすために、何が必要だ?」
最初は、戦うより逃げることを優先させた方がいいだろう。
そのためのマジックアイテムを、急いで準備する必要があるな。
強くなるためには、彼らのレベルに合わせた魔物を送りこみたいが……これはリスクがデカい
「何度も送り込めば、異変に気付かれる可能性がある」
魔物を送りこむのは駄目だな。
それにエラーのせいで彼らのレベルが把握できない。
他の方法で強くするには?
逃げる時に他の世界を渡る事になる。
ならば、逃げ込んだ世界で戦っていけば強くなれるか?
確か、レベルや魔力を奪うマジックカードがあったはずだ。
あれも準備しておくか。
あっ、経験値を奪うカードもあったな。
「……はぁ。順番を間違えたな」
世界を出るマジックアイテムの前に、今考えた物を送り届けるのが先だよな?
というか、そもそも人の姿になっているとは考えもしなかったからな。
ヘビと蝙蝠の姿の時だったら、俺の魔力で彼らを変化させることが出来た。
永遠とはいかないが、それでも5、6年ぐらいは魔王だと知られずに済んだはずだ。
その間に、少しずつ力をつけさせる予定だったが。
人の姿になっていたら無理だ。
最終形態になってしまえば、外から進化も変化も起こせない。
「予定をここまで狂わされるとは……くくくっ、面白い」
部屋に小さな笑い声が響く。
いつぶりかな?
こんなに面白く、わくわくするのは。
かつて仲間と共に笑いあった過去が思い出される。
それを首を振って、振り払う。
もうあれは過去だ。
「急いで準備をしないとな」
彼らがまた予想外の事をする前に。
映像に映し出される魔王たちを見る。
卵に魔力を送っているが、また産まれないようだ。
映像を消し、マジックアイテムやマジックカードが置いてある部屋に向かう。
映しだされている映像を一度消す。
もう一度、魔力を送り2人の魔王がいる世界を映しだす。
「見間違いじゃないのか……」
視線の先に映し出されているのは、蝙蝠の姿をした魔王と人の姿をした魔王。
蝙蝠の方は問題ない。
いや、問題がないわけでは無いか。
「あれは魔力か? なぜ、羽があんな事になっているんだ?」
映像に映し出された蝙蝠の羽。
なぜか黒い魔力に覆われている。
「何があったんだ? それに……」
蝙蝠の羽も気になるが、それよりももう1人の魔王の姿が問題だ。
映像を拡大して、元はヘビだったはずの魔王の姿を確認する。
映し出された姿は人の姿をしている。
確かにゲームでレベルを上げると、人の姿になれるよう人型が用意されている。
時間制限があり、使い勝手はよくないが人気だ。
映し出されている映像の隣にある、キーを操作し2人のレベルを確認する。
「エラー?」
龍がゲームの流れを壊してしまったのか?
だが、すぐに修復システムが起動するはずだが……。
もう1度キーを操作し、修復システムの状態を確認する。
「こちらは正常みたいだな。……なら、どうして起動しないんだ?」
手動で修復システムの実行ボタンを押す。
「エラー?」
何が起こっている?
今までにこんなエラーを起こしたことは無い。
あの方が、完璧に作り上げたゲームなのだから。
「この問題を調べると、2人の事が知られるな」
さて、どうしようかな?
「あれ? この人型、ゲームで用意した物とは違うんじゃないか?」
映し出されている魔王をよく見る。
顔に黒い鱗があり、尻尾まである。
「やはり違う」
ゲームで用意した人型は、こんな変化が起こらないように固定されている。
どうやってこの人型を手に入れたんだ?
「本当に何があったんだ? それにこの魔力はなんだ?」
映像から微かに感じる魔力。
確かにゲームに登場する魔王の魔力なのだが、微かに違和感を覚える。
何か違う魔力が混じっているような。
もう一度、キーを操作し2人の魔王の解析を実行してみる。
「エラーか」
仕事のため、魔王たちの確認が出来なかった。
だが、たった4日でこれほど変化があるのはおかしい。
何かの力が影響しているのか?
「俺が与えた魔力が、何かしたのか? だがあれは……」
外の魔力を強制的に与えた場合、時々予想とは異なる結果を生むことがある。
俺はそれを恐れて、彼らにはごく普通の魔力を与えた。
何度か、同じ魔力をゲーム内の勇者、天使、魔王に与えたが、特に問題は起きなかった。
だから、あの魔力のせいだとは思えない。
「送り込む方法がいつもと違ったか」
時間がなかったため、映像から強制的に魔力を送り込んだ。
考えられる原因は、それぐらいだが……。
だが、この方法も別に初めてというわけでは無い。
長い過去で数回だけだが、同じ事をしたことはある。
その時には問題は起きなかったはずだ。
問題が起きていたら、注意が促されるから気付く。
「はぁ、原因が分からない」
小さくため息を吐き、2人の魔王を見る。
どうも、魔王城へ戻るようだ。
そう言えば、魔王城から感じるはずの魔力が無くなっているな。
魔王が生きている以上、これもありえない事なんだが。
「ん? 卵?」
配下の卵か。
おかしいな、なぜ5個だけなんだ?
20個あったはずだ。
4日前は順調に育っていたよな?
「あっ、龍の魔力にやられたのか」
だとしたら、もっとおかしい。
なぜ、生き残った配下がいるんだ?
龍の魔力は、かなり強い。
産まれる前のまだ形すら出来ていなかった配下が生き残れるわけないんだが……。
無駄だと気付きながら、キーを操作し配下の解析を実行する。
「やはり、エラーか」
映像の卵を見た感じ。
そろそろ産まれてもいい頃だと気付く。
いや、違う。
既に産まれていないとおかしいほど、卵から魔力を感じる。
「ふっ、ここまで予定外だと次に何が起こるのか興味がわいてくるな」
始めは、排除対象だった。
1人しか許容できない世界に、2人の魔王がいる。
確かにその事に少しは驚いたが、ただそれだけ。
だから排除指示がきて、映像を確認した時も何かを思う事は無かった。
ただ、「ヘビと蝙蝠の魔王だったのか」と、思ったぐらいだ。
だから、迷いなく排除を実行した。
彼らは死に、全てが終るはずだった。
「それが生き残った。そして今は姿も変えた」
予想外の事が、これほど面白く感じるとは思わなかったな。
気まぐれを、時には起こしてみるのもいいものだな。
見つかれば、ただでは済まないだろうが。
「そろそろ気付かれる頃かもしれないな。どうするべきか」
足元を見る。
彼らがあの世界から移動するための、マジックアイテムを準備してきた。
これがあれば、生きている事がばれる前に移動が出来るはずだ。
だが、これを彼らに渡すと俺は……。
「迷う必要はないか」
既に、俺は裏切り者だ。
マジックアイテムを木箱に詰める。
それを自分の魔力で包み込み、映像に手を振れて転移魔法で木箱を2人の元に送り込む。
「上手く使えよ」
だが、2人の事が見つかるのは時間の問題だろう。
エラーが出たが、感じる魔力はまだ小さく弱い。
「彼らを生かすために、何が必要だ?」
最初は、戦うより逃げることを優先させた方がいいだろう。
そのためのマジックアイテムを、急いで準備する必要があるな。
強くなるためには、彼らのレベルに合わせた魔物を送りこみたいが……これはリスクがデカい
「何度も送り込めば、異変に気付かれる可能性がある」
魔物を送りこむのは駄目だな。
それにエラーのせいで彼らのレベルが把握できない。
他の方法で強くするには?
逃げる時に他の世界を渡る事になる。
ならば、逃げ込んだ世界で戦っていけば強くなれるか?
確か、レベルや魔力を奪うマジックカードがあったはずだ。
あれも準備しておくか。
あっ、経験値を奪うカードもあったな。
「……はぁ。順番を間違えたな」
世界を出るマジックアイテムの前に、今考えた物を送り届けるのが先だよな?
というか、そもそも人の姿になっているとは考えもしなかったからな。
ヘビと蝙蝠の姿の時だったら、俺の魔力で彼らを変化させることが出来た。
永遠とはいかないが、それでも5、6年ぐらいは魔王だと知られずに済んだはずだ。
その間に、少しずつ力をつけさせる予定だったが。
人の姿になっていたら無理だ。
最終形態になってしまえば、外から進化も変化も起こせない。
「予定をここまで狂わされるとは……くくくっ、面白い」
部屋に小さな笑い声が響く。
いつぶりかな?
こんなに面白く、わくわくするのは。
かつて仲間と共に笑いあった過去が思い出される。
それを首を振って、振り払う。
もうあれは過去だ。
「急いで準備をしないとな」
彼らがまた予想外の事をする前に。
映像に映し出される魔王たちを見る。
卵に魔力を送っているが、また産まれないようだ。
映像を消し、マジックアイテムやマジックカードが置いてある部屋に向かう。
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