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第二章 呪いからの解放編
落ちこぼれ
しおりを挟むその日の午後から国営のコロシアムで子供たちの入団試験が始まった。
国王を筆頭に王族は一番いい席で観戦している。
ぼくは国王の隣に座り、その隣に第一王子が座っている。さらにその周囲にも他の王子が出席している。
勿論、この場に出席できる王子だけだが。
ぼくに対する他の王子の敵愾心や、嫉妬の感情が鬱陶しい。
何故ならぼくは皇子であり、次期国王がほぼ確約されているからだ。
だがそんなことよりも、子供たちと騎士団との戦いはあまりにも一方的だった。
「人間が紙きれのように舞っているな。何かのアトラクションのようだ」
ぼんやりと呟く第一は、子供達の実力を始めて知ったらしい。
この試合が始まってから感嘆しきりだ。
「そうだな。ここまでの実力差があるとは驚きだ。団員はたくさんのアイテムを使い、子供たちは何の力も宿っていない武器以外は、何一つ使っていないというのに」
「ふう、私は試験に参加しなくて正解だったな」
第一は心底安心したように息を吐いた。
「第一王子という面子のために、私はなんとか自分の団長に任せることが出来たが、お前は最後には参加するのだろう?」
「全ての騎士団が子供たちに負けたらな」
「それは負けるだろう。この国の人間でお前以外に誰が勝てるというのだ?」
「一応はまだ、白鴎団長が残っているだろう?」
「確かにそうだが、この人数差で勝てるのだろうか?」
確かに一対二十だが、もともとトール村の大人と子供にはそのぐらいの実力差があるはずだ。
「さあ?ぼくは団長の本気は見たことがないからな。子供たちは彼のことを落ちこぼれと言っていたが、実際はどうなんだろうな」
「落ちこぼれ?」
「ああ、村の外の集団に属するようなやつは落ちこぼれなんだと」
「なるほどな。強者の心理、あるいはルールなのだな。常識的に言えば動物は群れて初めて強くなるものなのだが」
それも無理矢理な気がするが。
「トール村の人間は、その程度の強さではないんだろうさ」
「それは恐ろしい話だなクルギスよ。疑っているわけではないが、お前は本当に子供たちに勝てるのか?」
「別に確証はないけど。考えてみればぼくが負けることってあるのかな?」
ぼくの心からの疑問だ。
「頼もしい言葉だ。参謀も軍師も負けた。あとは白鴎騎士団の団長だけだ。彼が相手ならクルギスのなにかの参考になるといいが」
★
ついに子供たちと、第一王子が率いる王国で最強と呼ばれる白鴎騎士団との戦いが始まる。
だが、始まる前に彼らは何らかの会話をしているようなので集音アイテムを作動する。
「恨みはないが。勝たせてもらおう」
大人の声なので団長の声なのだろう。
彼が子供達の言うカラスかな?
「ああ、これなら声がよく聞こえるな」
「なんだこれは?」
第一が興味を持ち、ぼくのアイテムに耳を寄せる。
「情報を収集しようと思ってな」
「余にも聞かせてくれ」
国王もアイテムに興味を持ち始めた。相変わらずいい年をして子供のような好奇心を持っている。
そんなところも、あれに似ていてとても嫌だ。
だが、ぼくの思いなど関係なく子供たちとカラスの会話が続く。
「へっ!落ちこぼれごときにおれたちが負けるわけがないだろうが」
「やめろキオン!……カラスさん。おれたちは同じ村の出身です。だから選んでくれませんか?」
「選ぶ?」
カラスは不思議そうに茶髪の子に問いかける。
茶髪の子は心苦しそうに言葉を吐き出した。
「相手を殺すのは有りなのか、無しなのか」
「一応、この試験のルールでは、対戦相手を殺すのは無しになっているのだが?」
「確かにそうです。ですが、いくら落ちこぼれでもあなたは同じ故郷の出身です。おれたちは一定の敬意は払うべきだ。あなたの矜持を尊重したいんです」
簡単に言ってしまうと、茶髪の子は自分たちが負けることなど有り得ないのだから、プライドを持って殺さるか、プライドを捨ててでも生き残りたいかと聞いているのだろう。
随分な自信だが味方に白い子がいる以上、十分に有り得る話だ。
「気を使ってもらって悪いが。私はこの国の騎士なのでな、この国のルールに従わせてもらう。……ルールでは殺しはなしだ」
「なるほど。あなたが何に忠誠を誓っているのかはおれにはわかりませんが、自らの意思を貫く人間はとても素晴らしいものだと思います」
茶髪の子はカラスがプライドを捨てて生き残ることを選んだと理解したようだ。
それも自分の意思ではなくカラスの上司のために。
だが、本当に?
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