23 / 55
第二章 呪いからの解放編
呪いだけは解けた
しおりを挟む呪われているため二十人の子供たちは隔離室にいる。
目的があるのでぼくは躊躇わずその中に入った。
子供達はたとえ呪われていても平和そうに、和やかに談笑していた。
その空間を壊すことには、躊躇いを覚えないこともない。
だが時間がもったいないので片っ端からハリセンで殴っていこうと思ったが、ぼくの急な行動にあせった白い子に後ろから羽交い絞めにされた。
「何をする?」
「せめて事情を説明させて!」
「時間の無駄だ」
「ほ、本気なのね。みんな!私たちの呪いを解く方法がわかったわ!」
白い子の言葉に子供達全員が騒ぎ出す。その瞳には希望が生まれていた。
そして白い子への質問責めが始まったようだ。
「本当か!」
「アンナ、どうすればいいんだ?」
「クルギスの持っているハリセンで殴られれば、呪いの模様が消えるの。大人しく殴られて!」
「ええ!殴られるのか?」
「早く覚悟を決めなさい!この部屋から逃げたら私が殺すわよ!」
「「ひっ!」」
「クルギス、手を離すけどあまり強く殴らないであげて!」
その白い子の言葉と共に、ぼくの体が自由になった。
即座に子供達全員を殴ろうと思ったが、ふと冷静になった。
「よく考えたらぼくが殴る必要はないか。ほら、きみがみんなを殴ってやるといい」
ぼくは白い子にハリセンを手渡した。
「私がやっていいの?なら」
白い子はおそらく、全く痛くないようにハリセンで一人の子供の頭をぺしっと叩いた。
「模様、消えないよ?」
だが、当たり前のように呪いは消えない。
「クルギス、どういうこと?」
「そんなに弱く殴って効果があるわけがないだろう。本気で殴るのが必要なんだ。だからこそ、本気で殴っても死なないようにハリセンにしたんだから」
「そうなの、じゃあ。いや私が本気で殴ったらハリセンでも簡単に死ぬわね。やっぱりクルギスがやって」
「結局、ぼくがやるのか?」
「やっぱり、強すぎるってのも色々と上手くいかないわね」
「てい!」
ぼくはハリセンで二十人の頭を順番に殴った。
すると効果は確かだったようで全員の呪いが解けた。
その証拠に模様が完全に消えている。
「女の子にも、まだ六歳の子にも何一つ遠慮すらしないのね」
白い子は戦慄したような顔でぼくを見ていた。
ただ呪いを治してもらっただけのくせに全く図々しい。
呪いを解かなくても国に被害がなかったり、国王の直々の命令でなければぼくが助けることなど決してなかったのに。
「やった!」
「これで、外に出られる!」
「うええええん!」
「みんな、よかったわね」
一足早く呪いが解けていた白い子が子供達に喜びの言葉を送った。
やはり、子供を呪うのが村の風習とはいっても不満がなかったわけではないのだろう。
呪いがかかっている以上、村の外に出してもらうことすら許されなかったのだろうから。
自由が欲しいというのは、子供なら当たり前の感情なのだから。
それは決して責められるような感情ではないはずだと思う。
「……」
いちいち、子供たちの喜びに水を差し、反発を受けるのは面倒なので騒ぎが落ち着くまで優雅に待つことにする。
適当なテーブルに座り、使用人に飲み物を持ってこさせる。
味にこだわりなど特にはないが、喉が渇いていたようでとても美味しく感じた。
しばらく経つと、喜びが収まってきた子供たちが白い子に話しかけてくる。
「ところで、アンナ。久しぶりね。今までなにやってたの?」
「クルギスの所にいたわ」
「誰だ、それ?」
白い子は、ぼくの方を指さしてきた。
「この人って、あたしたちを助けてくれた人よね?」
「そうよ。みんなはショックを受けてたから今までほとんど関わってなかったけど、名前はクルギスって言ってこの国の第十皇子よ」
「えっと、そんな凄い人があたしたちの呪いを解いてくれたの?」
「アンナじゃなかったのか?」
「クルギスが王様の命令で私たちの呪いを解く方法を探してくれたの」
「そうなんだ。ってことはあたしたちの呪いを解くためにここに来てくれたのね?」
「残念だけど、それだけじゃない。ついでに君たちに質問をしようと思ってきたんだ」
「質問?」
「きみたちはこれからどうする予定になってるんだ?」
ぼくはとりあえず思ったことを子供達に単刀直入に尋ねてみた。
「えっと、さっき偉い人たちが来て呪いが解けたら騎士団に入ってほしいって言われたわ」
「ふむ、それでどうするつもりなんだ?大人しく従うつもり?」
「意見が割れてるの。どうすればいいのかよくわからなくて」
「は?何を言っているんだ?」
「え?」
「お前たちは国王に買われたんだぞ。自由なんてあるわけがないだろう?」
「か、買われたってどういうことよ!」
必要な説明とはいえ、一々、噛みついてくるのが鬱陶しい。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
異世界に転生!堪能させて頂きます
葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。
大手企業の庶務課に勤める普通のOL。
今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。
ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ!
死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。
女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。
「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」
笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉
鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉
趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。
こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。
何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる