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君はメデゥーサを知っているか!
しおりを挟む「もう一度、もう一度だあ!何度でも私は挫けない!
どんな困難な状況にも耐えきって見せる!」
私は抗う、この世の不条理から、この世界の理から、
どんな時でもどんな状況でも諦めたりはしない!
「まったくまだ足りないのかい?とんだ豚野郎だ…ほら!これがイイのかい!」
バシンッ!!バシンッ!!
「くう…絶対に…絶対に…私は挫けない!」
「ほら、鳴いてみな!!」
「ブヒー―――――ッ!!」
――――――――――――――――気が付くと私はモーニングコーヒーを片手に、
ニュースペーパーを読んでいた。注文したベーグルサンドも美味しい。
おっと、自己紹介が遅れた、私の名はアヌス(48)
街を巡り、その土地土地を研究する風来坊だ。
今回は首都アルセウスからほど近い交易都市ベルダンディに来ている。
私が何の研究をしているかって?
おっと慌てるな慌てるな坊主ども、先走り汁がでているぞ?
私は食事を済ませた後、
タバコにゆっくりと火をつけ煙をくゆらせる。
ふう―っと煙を吐き出し、
「君はメデゥーサという怪物を知っているだろうか?」
誰に話すでも無く一人で語り始める。
「ギリシア神話に登場するゴルゴ―ン三姉妹の一人、
見たものを恐怖で石のように硬直させてしまい、
頭髪には無数のヘビを飼い、背中には黄金の翼が生えているという恐ろしい怪物だ。」
何故そんな話をするのか、察し良い先走りボーイズなら既に予想がついているだう。
「そう、このベルダンディの街にそのメデゥ―サが現れたというのだ。
これは街を研究する研究者として調査しない訳にはいかない。」
私はいつものモーニングルーティンを済ませると、
いつものローションを片手に、風の噂で聞いた怪しげな雑居ビルに向かった―
しばらくして目的の場所に到着、
辺りをキョロキョロと見回すと、信じられない看板を目撃した。
[メデゥ―サプレイでカッチカチ!オンボロビル4F」
私は足早にビルの4階に向かう。
古めかしい引き扉をギィーッと開けると、私よりも少し年上だろうか、
初老の男に中へと案内された。
「ここがメデゥ―サの巣、この男はその部下か?
いや、メデゥ―サに操られているのかもしれん…直ぐに救い出してやるぞ!。」
待合室のような場所で椅子に掛けて待っていて欲しいと言われ、
私はその通り従う。
再び初老の男性から話しかけられる。
「お客様…本日の内容はスタンダードコースの60分で宜しいでしょうか?」
私は何を言っているのか分からなかったが、
とりあえず何故か持っていた30%オフクーポンを差し出す。
「…申し訳ございませんお客様、こちら期限が切れております…あともう一点、
そちらのローション、持ち込みは禁止とさせて頂いております。
すみませんが、ご希望の場合はオプションで追加して頂く形になっておりまして…」
私は動揺を隠しきれない、訳も分からず一枚のチラシを差し出す。
「ああ、こちらアルキメデス店でのみの対応となっておりまして、
申し訳ございません、一旦そちらのローションお預かりさせて頂いても
よろしいでしょうか?」
「………横にするとこぼれるから気を付けてくれ。あとゴニョゴニョ…」
「かしこまりました。鞭とローション、あとピ――――――――をオプションで。」
「声に出すな!!」
待つこと約45分、やっと私の順番が回ってきたようだ。
「アヌス様…6階609号室にてお待ちくださいませ。」
私はカギを受け取ると階段を上がり、そのまま部屋に入るとシャワーを浴び始める。
「昨日風呂に入らなかったからな…」
バスローブを着て、ベッドに座りメデゥ―サを待つ。
待つこと8分19秒、ドアからコンコンとノックの音が聞こえた。
「来たか…」
私はソワソワとしながらもドアをゆっくり空けると、
扉の前にいたメデゥ―サらしき女が急に襲い掛かってきた!
私はいきなりバシーン!と鞭でケツをぶっ叩かれる。
何故メデゥ―サが鞭を!
「くっ!何をする!貴様が噂に聞くメデゥ―サか!」
間違いない、頭にはヘビの形をしたエクステを付けているし、
リュックのように背負った、禿げかけの金色の翼をつけている。
「ふふふっ…よく来たね!あら?よく見たら年は喰ってるが、
なかなかダンディなジジイじゃないかい。これは可愛がってあげないとね。」
「ふっ、可愛がるだと…舐めたことを言うな、メデゥ―サ。
可愛がってやるのは私の方だ!お前を私の元に膝まづかせて見せる!」
メデゥ―サは何故かそこで少し立ち止まって考え始めると、
私を通り過ぎ、備え付けの電話でどこかに電話を掛け始めた。
「あ、すいません。609号室のお客さん何ですけど、
ピ――――――オプションで付けてますよね?はい、私がSですよね?
はい…ああ、大丈夫です。鞭とローションは持ってきてます。」
ガチャッと受話器を置くとさっきの場所までメデゥ―サは戻り、
「ふふふっ、ホントに生意気なジジイだね!たっぷり可愛がってあげないと!」
レビューで星1つけてやる…
ふう…私も気を取り直し、また攻撃体制を取る。
「やれるものなら、やってみろ!」
その後、戦いは言うまでも無く激戦となった。
メデゥ―サに風呂場まで追い込まれると何故かローションを垂らしたマットがあり、
俺はそのヌメヌメに足を取られ、苦しくも倒されてしまう。
倒れこむ態勢も悪かった、背中側を向けて倒れるとメデゥ―サは私にのしかかり、
腰を動かしながら鞭で叩き、罵詈雑言を浴びせてくる。
私は何とかスキをついてその場から抜け出し、広い場所で戦う為にベッドまで移動する。
その時だった、メデゥ―サの真骨頂、
石化の呪文によっておれはカチコチになってしまう。
これが不幸中の幸いだったかは分からない…
幸運にも私はまだ四肢を動かすことができた。
しかし、その代償にトンデモナイものが石化してしまう。
「くっ!これがメデゥ―サの力!」
ピ―――が反り立った状態でカチコチに固まってしまったのである。
私は圧倒的不利な状況の中で、
その後もメデゥーサとくんずほぐれつ、抜き差しならない激しい戦いを繰り広げる。
がしかし、60分を過ぎたところでメデゥ―サの方が、私の希薄に気圧されたのだろう。
「今日はこのくらいにしておいてあげる!」
と捨て台詞を吐き、その場から立ち去ってしまう。
私は追いかけようとしたが、戦いの後で急激な疲労と眠気に襲われ、
メデゥ―サを取り逃がし、その場に倒れこんでしまった。
――――
気づくと私はいつものモーニングコーヒーを飲みながらニュースペーパーを読み、
ベーグルをほおばっていた。
私の財布からいつの間にか数万ジェリーが盗まれていたが、ローションは無事だった。
「全く、街研究とはなんと興味深いものだ…これだから探訪は止められない。」
いつものモーニングルーティンをこなすと、
新たな研究材料を探す為、私は次の街へと向かうのだった。
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