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誕生日パーティ編 その6
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「リティシア様!」
すると突如見知った二人組が現れる。一人は手を振り上げ、もう一人は軽くこちらに会釈をする。
髪を結い上げ、ドレスはやはり周りに合わせて派手ではないものであったが、非常によく二人に似合っていた。
「デイジー嬢!来てくれたのね」
「勿論、リティシア様の誕生日パーティーとあれば世界中どこにいても駆けつけますよ」
「いくらなんでもそれは無理じゃないかしら…」
相変わらずの忠誠心に呆れつつも、私は隣に立つ控えめで大人しい少女に笑いかける。
「マリーアイ嬢も来てくれてありがとう」
「い、いえ…ご招待有難うございます」
私に挨拶に来てくれるご令嬢ができるなんて一体誰が予想できたかしら…。デイジー嬢はあの時助けたから分からなくもないけどその友人のマリーアイ嬢にまで好かれるとは思ってもいなかったわ。
「えっと、こちらの方は噂の護衛騎士様ですよね。ではそちらのお方は…」
「この子はイサベルよ。私の侍女なの」
「えっ、侍女なんですか!?こんなに可愛らしいのに!?」
イサベルはアルターニャに続きデイジー嬢にまで褒められ困惑した様子を見せる。
平民である彼女からしたら令嬢達はきっと実物以上に輝いて見えるはずだ。そんな彼らに言われるのだからその反応は仕方ないのかもしれない。
さてデイジー嬢に平民であることを伝えても問題はないでしょうけど…ここはイサベルに任せるか。
「ご令嬢、お褒めの言葉を有難うございます。私はイサベル=シャルレッタ。……平民です。」
「……リティシア様は本当に不思議なことをなさるのですね。公女が平民を侍女にしてしかも可愛らしいドレスを着せるなんて前代未聞ですよ。流石リティシア様です!」
イサベルも私と同じ判断をしたらしく、あっさりと身分を明かす。
デイジー嬢とマリーアイ嬢は揃って驚いた様子を見せたが、それまでで、彼女を貶す様子は一切見えなかった。今のデイジーの発言にも嫌味は全く感じられず、単純に私の功績を褒めているようであった。
「ありがとう。このことは周りには秘密にしてね。このパーティは一応貴族しか招待してないから平民がいるとなれば騒ぎになるかもしれないわ。」
「分かりました!イサベルさん、これからよろしくお願いしますね」
「はい。こちらこそ宜しくお願い致します!」
アーグレンもイサベルも平民の身分のままではもったいない程に美男美女だから、この場に平民が紛れ込んでいるだなんて誰も夢にも思わないのでしょう。これは下手なことは言わずに黙っておくべきね。
「リティシア様、お誕生日本当におめでとうございます!私からのプレゼントです!」
「えっ、プレゼント?プレゼントって来る時に使用人に渡しておくものじゃないの?」
「本来はそうなんですけど、直接渡したかったんです。リティシア様の喜ぶお顔が見たかったので!」
この子もこの子で常識破りよね…。
そう心で思いながらも彼女が取り出そうとするプレゼントにわくわくしている自分がいることに気づく。友達から貰える誕生日プレゼントだなんていつぶりかな…。
これが本当に私の誕生日だったら最高だったんだけどなぁ。
「リティシア様、私からはハンカチのプレゼントです!刺繍入りですよ」
「ありがとう」
デイジー嬢から薄いピンク色のハンカチを受け取ると、刺繍の文字を見てみる。英語の文字で「リティシア様よ、永遠に」と書かれてあった。あぁ…このまま封印しよう。
「あっ、やっぱりまずかったですか?ただリティシア様って入れるのもなんか物足りないなぁと思って付け足しちゃったんですよね」
「いや、そんなことないわよ。大切に引き出しにしまっておくわね」
「使う気ないじゃないですか!」
デイジー嬢の不満そうな表情を無視してマリーアイ嬢の方を向く。彼女も何かを言いたげに口を動かしていた。
「あの、私はリボンを…」
そう言って手渡されたリボンは赤ではなく、真っ青に染められていた。
「…青色?」
「はい、えっと…殿下のお色です…今お召しになられているドレスにもよくお似合いになられると思います…」
マリーアイ嬢は少しずつ自分のペースで言葉を紡いでいく。
彼女のその言葉で自分が今青いドレスを着ていることを思い出した。赤い髪に青いドレスは似合うのかどうか不安であったがこれが意外と似合っていて対象的な色がお互いの良さを引き出していた。
それはまるで……私のために作られたドレスのようであった。
「あっ!よく見るとイサベルさんとリティシア様お揃いのドレス着てるじゃないですか!ずるい!私もマリーとやればよかった…」
「イジー、そんなのいくらでもできるわよ。それよりリティシア様に対して『ずるい』はないでしょ。」
「あっ、そうですね、申し訳ございません」
「それは構わないのだけど…二人の愛称を初めて聞いたから驚いちゃったわ。そこまで仲が良かったなんて知らなかった」
「あっ、そうでしたか?実は私達は幼馴染みで小さい頃からずっと仲良しなんです。何をするにもどんな時も一緒でした。私はマリーのためならなんだってできますよ」
「ちょ、ちょっとイジー、何もリティシア様の前で言わなくても…」
「……似てるわね。私の友人と」
アーグレンは微妙な表情をして令嬢二人を見つめていた。
すると突如見知った二人組が現れる。一人は手を振り上げ、もう一人は軽くこちらに会釈をする。
髪を結い上げ、ドレスはやはり周りに合わせて派手ではないものであったが、非常によく二人に似合っていた。
「デイジー嬢!来てくれたのね」
「勿論、リティシア様の誕生日パーティーとあれば世界中どこにいても駆けつけますよ」
「いくらなんでもそれは無理じゃないかしら…」
相変わらずの忠誠心に呆れつつも、私は隣に立つ控えめで大人しい少女に笑いかける。
「マリーアイ嬢も来てくれてありがとう」
「い、いえ…ご招待有難うございます」
私に挨拶に来てくれるご令嬢ができるなんて一体誰が予想できたかしら…。デイジー嬢はあの時助けたから分からなくもないけどその友人のマリーアイ嬢にまで好かれるとは思ってもいなかったわ。
「えっと、こちらの方は噂の護衛騎士様ですよね。ではそちらのお方は…」
「この子はイサベルよ。私の侍女なの」
「えっ、侍女なんですか!?こんなに可愛らしいのに!?」
イサベルはアルターニャに続きデイジー嬢にまで褒められ困惑した様子を見せる。
平民である彼女からしたら令嬢達はきっと実物以上に輝いて見えるはずだ。そんな彼らに言われるのだからその反応は仕方ないのかもしれない。
さてデイジー嬢に平民であることを伝えても問題はないでしょうけど…ここはイサベルに任せるか。
「ご令嬢、お褒めの言葉を有難うございます。私はイサベル=シャルレッタ。……平民です。」
「……リティシア様は本当に不思議なことをなさるのですね。公女が平民を侍女にしてしかも可愛らしいドレスを着せるなんて前代未聞ですよ。流石リティシア様です!」
イサベルも私と同じ判断をしたらしく、あっさりと身分を明かす。
デイジー嬢とマリーアイ嬢は揃って驚いた様子を見せたが、それまでで、彼女を貶す様子は一切見えなかった。今のデイジーの発言にも嫌味は全く感じられず、単純に私の功績を褒めているようであった。
「ありがとう。このことは周りには秘密にしてね。このパーティは一応貴族しか招待してないから平民がいるとなれば騒ぎになるかもしれないわ。」
「分かりました!イサベルさん、これからよろしくお願いしますね」
「はい。こちらこそ宜しくお願い致します!」
アーグレンもイサベルも平民の身分のままではもったいない程に美男美女だから、この場に平民が紛れ込んでいるだなんて誰も夢にも思わないのでしょう。これは下手なことは言わずに黙っておくべきね。
「リティシア様、お誕生日本当におめでとうございます!私からのプレゼントです!」
「えっ、プレゼント?プレゼントって来る時に使用人に渡しておくものじゃないの?」
「本来はそうなんですけど、直接渡したかったんです。リティシア様の喜ぶお顔が見たかったので!」
この子もこの子で常識破りよね…。
そう心で思いながらも彼女が取り出そうとするプレゼントにわくわくしている自分がいることに気づく。友達から貰える誕生日プレゼントだなんていつぶりかな…。
これが本当に私の誕生日だったら最高だったんだけどなぁ。
「リティシア様、私からはハンカチのプレゼントです!刺繍入りですよ」
「ありがとう」
デイジー嬢から薄いピンク色のハンカチを受け取ると、刺繍の文字を見てみる。英語の文字で「リティシア様よ、永遠に」と書かれてあった。あぁ…このまま封印しよう。
「あっ、やっぱりまずかったですか?ただリティシア様って入れるのもなんか物足りないなぁと思って付け足しちゃったんですよね」
「いや、そんなことないわよ。大切に引き出しにしまっておくわね」
「使う気ないじゃないですか!」
デイジー嬢の不満そうな表情を無視してマリーアイ嬢の方を向く。彼女も何かを言いたげに口を動かしていた。
「あの、私はリボンを…」
そう言って手渡されたリボンは赤ではなく、真っ青に染められていた。
「…青色?」
「はい、えっと…殿下のお色です…今お召しになられているドレスにもよくお似合いになられると思います…」
マリーアイ嬢は少しずつ自分のペースで言葉を紡いでいく。
彼女のその言葉で自分が今青いドレスを着ていることを思い出した。赤い髪に青いドレスは似合うのかどうか不安であったがこれが意外と似合っていて対象的な色がお互いの良さを引き出していた。
それはまるで……私のために作られたドレスのようであった。
「あっ!よく見るとイサベルさんとリティシア様お揃いのドレス着てるじゃないですか!ずるい!私もマリーとやればよかった…」
「イジー、そんなのいくらでもできるわよ。それよりリティシア様に対して『ずるい』はないでしょ。」
「あっ、そうですね、申し訳ございません」
「それは構わないのだけど…二人の愛称を初めて聞いたから驚いちゃったわ。そこまで仲が良かったなんて知らなかった」
「あっ、そうでしたか?実は私達は幼馴染みで小さい頃からずっと仲良しなんです。何をするにもどんな時も一緒でした。私はマリーのためならなんだってできますよ」
「ちょ、ちょっとイジー、何もリティシア様の前で言わなくても…」
「……似てるわね。私の友人と」
アーグレンは微妙な表情をして令嬢二人を見つめていた。
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