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第一幕 転生

第一話

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拝啓、前世の喪女で処女膜破れたが一生未経験だった私へ。なんて時代遅れもいい感じの出だしから失礼させていただくけれど、竜の乙女と獣の騎士ことオトナイに転生したことに気づいたのははるか昔、私がセレニアという名を受ける数百年前。現代でいう神話時代、国が出来上がる太古の時代。他種族の部族が争い、血が流れ、子供達が成長することもなく息絶えていく時代。ちなみに非公式情報だから私も当初知らなかったんだよね!話は戻るけど、そんな太古の時代に他種族で夫婦ができた。神ともいわれるドラゴンと最弱であった人間ヒューマンの夫婦。まあ、二次創作でも乙女ゲームでも、二次元でもよく使われるネタだよね~、結果から言うと戦争は終わって旦那の竜が無双して世界は平和になりましたっていう話なんだけど。その初他種族の夫婦の子供が私。
数百年ていうあっという間に時間がすぎて、なんだかんだとあって今に至る。え?省きすぎかー。

「にあ!外にあそびに行きませんこと?」
「のあ。きょうはべんきょーの日ですよ」

私の腕を引く私の顔立ちが少し似た幼女。名前はセレノア・クラーク。この国の3つしかない公爵家のご令嬢だ。そんな私は彼女の双子の姉として席をおいている。序盤で話した実親は私が孵化する前に3公爵に私を預け深い眠りについたそうな。何やら、世界を守りうる核としてずっと見守ってるやらなんちゃら。

「すこしくらいさぼってもだいじょうぶですわ、きっと」
「少しくらいさぼってもだいじょーぶかもしれませんが、怒っちゃいますね。きっと」
「それまで、かくれんぼをしましょう!」
「どろんこ玉をつくってなげるのもたのしそうですね」
「いいあんだわ!」
「いい案でしょう?」

くすくすと笑い合う私とセレノア。あーかわいい。やっぱり女の子の家にして正解だったなぁと過去の私の選択に拍手。話は戻すけど、まあ3公爵に私を預けて眠りについた父と母ふうふと、居眠り空間から寝坊に寝坊して今頃起きた私は起き抜けにどの公爵に住まうか選択を迫られたのだ。

国に害をもたらす敵をすべて排除する攻撃の要、絶槍のガルシア。
絶壁の防御で敵の攻撃をすべて防ぐ鋼の盾、守りのウォード。
傷ついたすべてのものを癒やす絶対的治癒術、癒やしのクラーク。

3公爵はオトナイで言う主要キャラクターが必ず生まれるのを知っていたし、関わるのがめんどくさ…面倒くさいが、安定期に入るまではこの地にいないという契約らしく離れることもできなかった。女の子が生まれるのを知っていたので、クラークを選ばせてもらったが3公爵はジョブに言い換えればDPSかタンク、ヒーラーになる。オンラインゲームでしてたとき初手は火力出すヒーラーだった私がそこを選択しないのもおかしな話ていうのも勝手に考えながらクラークにお世話になっている。
ちなみに、セレノアは先月に私との血の繋がりのないことに大泣きしたが、あの光景は何度見ても可愛かった。そして、クラーク家は治癒士としても有名だが、一族の殆どはエルフである。いいよね、エルフ…漫画とかで見るエルフさんみたいに長身ではないにしろ美男美女たまらん、眼福眼福。他公爵は盾は熊、槍は狼の獣人が代表だ。そして、王家は獅子、なぜクラーク家だけ人の形をたもったエルフなのか。まあ、タイトルの通り乙女ゲームの攻略対象がでなければいけなかったんだろうと、誰に語るでもなく一人考え込む。

「にあ!」
「はぁい」

まあ、クラーク家はオトナイの悪役令嬢が輩出される一族だ。そう、言わずもがな目の前にいる美幼女であるセレノア・クラークその人である。

「のあ、オスにほんろうされてはいけないですよ」

幼女が何をいうかと言われても、中身は18禁大好きの癖が歪みまくった喪女。こんなにかわいいセレノアが泣かされたなんて知ったら、覚醒ドラゴンで泣かせた相手を完膚なきまで叩きのめしてしまうかもしれないしね。
たとえそれがこの世界の主人公だったとしても、前世からずっとそうなのだ。私は、私の大切でだーいすきな女の子に手を出されるのはこの世で一番嫌いだということを。前世はそう吠えたところで何もできなかったが、今世はちがう。私は、このエロゲーと呼ばれる18禁の世界である意味チートな能力があり、国を壊すほどの魔力ちからもある。

「なんのことですの?まあ、でもわたくしはにあにほんろうされてさしあげますわ!」
「ありがとうございます。私もずっとのあに翻弄されますね」
「おそろいですわね」
「おそろいですね」

小さな紅葉の手を2枚合わせてきゅっと握る。幼女特有の高い体温とぷにぷにの手に、口元が緩む。嗚呼、かわいい可愛い私の双子の妹セレノア。強い光に惑わされる愚かなオスなんてにあなたをあげられないなぁ。最低ライン、竜を超えるくらいに強くないと、ね。

「セレノア!セレニア!」
「おとうさま!」
「まあ、こんなに汚れて!どこを冒険してきたのかしら?」
「うふふ、わたしたちはどこでもいっしょなんですのよ!」
「そうですね、わたしとセレノアは大事な姉妹ですからね」

セレノアの両親はセレノアを大層愛している。そんな愛娘にこの世でもっと尊く、神と称される竜の娘の寵愛があればいたく安心だろう。

「セレニア、お顔が汚れてらっしゃいますよ」
「! ありがとうございます、おかあさま」

娘を持つ親だからか。はたまた竜の娘だからか。セレノアと変わらない態度に少しだけ安心する自分もいた。前世とは全く違う世界は、喪女であり、コミュ障であり、オタクである私には少しだけ刺激が強いのかもしれない。

「にあ!」

ストロベリーブロンドのおそろいの髪。隙間から見える、クラーク家特有の鮮やかな緑の瞳。キラキラ輝く眩しい笑顔に少しだけ目を細める。

「おかあさまが、きょうはおうじさまとおひめさまのおはなしをしてくださるのですって!」
「のあはおひめさまのお話だいすきですもんね」
「たのしみだわ!でも、ぼうけんきっとたのしいわ」

孵化する前、ずっと眠っていた。暗く、温かく、揺り籠のなかで。あの中にずっといる間、親が眠り、私も眠り、人々が世界が回っていた。気づけば数百年。人間だった頃には感じることのできなかった長過ぎるようであっという間の時間に時折考えることもあったけれど、この小さな彼女と過ごす時間が少しでもゆっくり流れることを祈ってしまう。

「(拝啓、前世のわたし)」

やっぱ幼女最高だわ。



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