上 下
1 / 5
第Ⅰ章 はじまりの鐘

第1話 はじまり

しおりを挟む
私の名前はセリシール・フィオーレ。ここは私の住むフィオーレ国、そして私はこの国の第一王女として生をうけました。そんな私は実は誰にも言えない秘密を抱えていたりします。私は過去、…いえ、この場合前世と言ったら正解なのかもしれないセリシールわたしという人物じゃない人間の記憶を持っているんです。所謂、転生者といったらわかりやすいのかも。まぁ、正直前世の記憶があってもどこかのヒロインみたいにがんばっちゃおー!ってならないのが私なんだけども、ひとつだけ言いたいことといえば…。

「ただの乙女ゲーマーが王女とか泣ける……!!!」
「また何を訳のわからないことを言ってるんですか、姫様」

そう前世はただの乙女ゲーマー×オタクだった私は、さっきも説明した通りものすごーーーーく小さな国だったとしても大国に負けないくらい栄えちゃってると思われるこの国の王女として誕生しちゃったがために、大国の皇子も嫁ぎに行くというまさかの地獄入口コースへ強制ルートに突入させられている(←現在ここ)

「嫁ぐとかマジ泣ける!!!」
「まだ言ってのですか…。大国の皇子、しかもサピルス国の第一皇子に嫁ぐということが、他の国の姫君たちからみたらどんなにうらやましいことか…、往生際の悪い」
「聞こえてますけど!?私にとったら第一だろうが、第四だろうがどーでもいいわ…」
「またそのようなことを…。あなた様はもう少し権力者に媚びることを覚えてはいかがですか??」
「あーあー!何もきこえないーーー!またメアリーのお小言が始まったーーー!」

メアリーのお説教に耳をふさいで顔をそむけると、ため息を吐く気配を察知するけどため息を吐きたいのはこっちだよ…。と、実際ため息を吐きながら、こうなってしまった元凶ともいえる数日前の出来事を頭の中で思い出した。

* * * * *

私が生まれ落ちた国、通称小花の国とよばれる小さな小さな田舎の国。それが、フィオーレ国。そんな国の国王である父様はヘタレわんこ属性で、王妃である母様は自由奔放腹黒属性の間に生まれたのがこの私、セリシール・フィオーレである。そして、そーーーしーーーて!そんな私の9つ下にうまれた天使。そう、天使!コクリコ・フィオーレの4人がフィオーレ国の王族となっているんですが、小国故に基本町の人たちとは交流しっぱなしだし、王城には数人のメイドと執事のみ。……基本は自分たちでできることはやりましょーねスタイルだし、それプラス母様が放任主義だったからか知らないけど、まぁ現代の一般市民として育った身としては全然かまわないけどね。そんなスタイルのおかげか姫なのに、ちょーっと自由奔放だし、料理・掃除・洗濯という第三家事はメイド並みにできるように育てられたけど!姫なのに!

「セリ様。またこのような場所に…」
「げぇ、メアリー」
「またそのような言葉遣いを…。いい年した年齢なのですから、いい加減まともに授業をお受けください」
「何いってんのメアリー!ちゃんと習った上でこの言葉遣いですけどー?」
「……ああ言えばこう言う。そもそもそのような場所で足を広げないでください」

少しだけ眉がよったメアリーによって、おおっぴろげになっていた足を強制的に閉ざされて引っ張られて立ち上がらされた場所は、民家の屋根の上。今日は春の陽気の暖かさに誘われて、城下偵察としつつお昼寝でもしようかなって思っていたところに専属侍女であるメアリーに発見されてしまったのだ。悲しい。ちなみに屋根の下ではこの間入ったばかりの新人侍女ちゃんがおろおろしている。

「ちぇー。折角いいお昼寝スポットだったのになぁ」

ため息をつく私をみてため息をつくメアリー。そんな彼女をみてそのまま屋根から一歩踏み出す、もちろん踏みだした先に地面があるわけもなく重力に従って沈む足と目線。私の奇行に慣れてしまったメアリーは一言も発さず呆れた視線だけをこちらによこすのだ。いや、せめて何か言ってよ姫だよ私。ちゃんと小さな悲鳴を上げた新人ちゃんの横に微笑みつつ降り立てば、すぐ横に立ったメアリーが「性悪」と口が動いたのをしっかり私はみたよー?

「メアリーったらぁ、こーんなに性格がよくて愛されちゃってる王女なんてどこさがしても私だけだと思うんだけどなぁ?」
「王城にお戻りください」
「無視!?」
「…グラジオラス様がお呼びです」
「とーさまがー?」

用事ってなによー。うーんと考えながら父様の用だったら別に今すぐに帰らなくてもよくない?いいよね?ヘタレわんこパパは娘ちゃんに激甘だし?ちょーっと甘えた声だせばころっと許しちゃうカモじゃん。っていう思考が瞬時に頭を駆け巡るそんな考えを読んだのか、メアリーが心底いやそうな顔をして口を開いた。

「アンリス様」
「さぁ、帰ろっかー!なにしてるのメアリー!さぁ帰ろう今すぐ帰ろう瞬時に帰ろう早く帰りたくなっちゃったなーー!!」
「瞬時に帰れるのはあなた様だけかと」
「言葉の綾だよ!!あと私もさすがにこの距離瞬時に帰るのは無理!」

というか、母様より父様の名前だすあたりが悪意あるよね!?先に母様のこといえばすぐに帰るって言ったのに!
なんで父様の名前だしたの!?本当にこの子ったら主で遊ぶんだからぁ!!!




2024.10月 修正
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

魔法機械技師ルカ

神谷モロ
ファンタジー
 機械魔剣ベヒモス製作者、ルカ・レスレクシオンのお話。  魔法文明は成熟期にある。  人類が初めて魔法を発見して数世紀がたった。魔法は生活を豊かにした。そして戦争でも大いに活躍した。  しかし、当然、全ての生き物は平等ではない。知能や身体能力の差は弱肉強食の世界を生み出している。  だがそんなマクロ的な視点ではなく人類同士でさえも格差は広がったのだった。ただ魔力を持つか持たないかの理由で……。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

主人公を助ける実力者を目指して、

漆黒 光(ダークネス ライト)
ファンタジー
主人公でもなく、ラスボスでもなく、影に潜み実力を見せつけるものでもない、表に出でて、主人公を助ける実力者を目指すものの物語の異世界転生です。舞台は中世の世界観で主人公がブランド王国の第三王子に転生する、転生した世界では魔力があり理不尽で殺されることがなくなる、自分自身の考えで自分自身のエゴで正義を語る、僕は主人公を助ける実力者を目指してーー!

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

異世界で俺はチーター

田中 歩
ファンタジー
とある高校に通う普通の高校生だが、クラスメイトからはバイトなどもせずゲームやアニメばかり見て学校以外ではあまり家から出ないため「ヒキニート」呼ばわりされている。 そんな彼が子供のころ入ったことがあるはずなのに思い出せない祖父の家の蔵に友達に話したのを機にもう一度入ってみることを決意する。 蔵に入って気がつくとそこは異世界だった?! しかも、おじさんや爺ちゃんも異世界に行ったことがあるらしい?

処理中です...