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第一章 始まり

復讐者の転生

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「なぜですか!?」

 俺は老人達に向かって大声をあげた。
 しかし彼等は動じない、まるで初めから俺がこう反応すると分かっていたかのようである。椅子に座り、両手を組んで俺を淡々と見やる。

「ふぅ~・・・」

 そのうちの一人が俺にたばこの煙を吹きかけた、そしてそれを灰皿に押しつけて言う。

「黒崎君・・・理解したまえ。プロジェクトが失敗した以上誰かが責任を取らねばならんのだよ」

「だとしてもどうして私なのですか!?納得いきません!」

「君にはそれ相応のポジションを与えていたはずだ、全ては君を中心に動いていた、ならば責任も君にあるはずだろ?」

「責任?プロジェクトに参加して3日、突然マスコミに騒がれて計画が破たんしたんですよ?私に不備は無かった。どう考えてもここに至るプロセスの方に問題があったかと。責任を問うなら私の前任者に問うべきです!」

「はぁ・・・黒崎君、前任者は社長の息子だよ、我が社の未来を担う彼に責任を取ってもらう訳にはいかんだろ?」

「なっ!?」

 納得した。季節外れの人事異動、そして突然の昇格、全てはこのためか!会社の役員共は最初から知っていたのだ、このプロジェクトが失敗することを。そして社長の息子を逃がし、俺を生贄に祭り上げた。全ての責任を俺にかぶせて切り捨てる気だ。

 これが会社の・・・8年間務めた社員にすることか!?
 くそったれ同族企業!こんな会社潰れちまえ!!

「別に君に納得してもらわなくてもいいんだよ、世間さえ納得してくれればそれでいい。なぁに、君はまだ若い。我々と違ってすぐに次の職が見つかるだろう」

「そこで一つ、ひいては相談なのだが辞職するにあたり自主的に退職してもらえると助かるのだがどうかね?そちらの方が君にとっても・・・」

「えぇ、良いですよ。こんな会社こちらから辞めてやりますよ」

 俺は一礼すると足早に会議室を出た。
 自分のデスクに戻りパソコンを開くとカタカタとキーボードを鳴らす。

 あ~、イライラする。だが落ち着け兎卿、こういう時こそ冷静になるのだ。伊達に8年間この会社に勤めていた訳ではない、ここのことなら何だって知っている。
 違法労働、収支改ざん、脱税、その他色々・・・定時まであと2時間、退職届を書きながら役員のサーバーに侵入してそれらの証拠を揃えてやる。
 そして明日からすぐに就活だ、目指すはライバル会社、そこである程度の地位についたらマスコミにこのネタを売る、それから俺が息をかけたこの会社の有能な人間を根こそぎ引き抜いてやる。
痛いどころの騒ぎではない、きっと傾く。
そうだ、その時俺の持っているこの会社の株も全部売ってやろう。

 データをUSBに保存すると俺はニヤリと笑う。

 完璧だ。

 そして俺は部長のところに行き辞表を提出した。
 部長は何の躊躇いもなくそれを受け取る。

「お疲れさん」

 お疲れさん?惜しむならまだしもそれが有能な部下に対する最後の言葉か?一体どれだけ俺がお前に手柄を譲ったと思っている。そもそも俺を推薦したのはこいつだ、上の連中とグルになってたと思うと余計に腹立たしい。



 “絶対に復讐してやる!”



 俺は決意を固めて8年間勤めた会社を出た。
 

 春一番の風が吹く。
 あぁ、なんと気持ちのいい春なんだ。
 体が軽い、まるでがんじがらめになっていた枷から解き放たれたようである。
 手に握られたこのメモリが今の俺に勇気をくれる。


               ーグサッー


「・・・えっ?」

 ただ一点を見つめる。胸が熱い、身体は動かない、思考も完全に停止している。だが、音?音だけは鮮明に聴こえる、一人、二人・・・いや五人か、恐怖で震えあがる声、悲鳴、それが今を物語る。手を伸ばしても誰もそれを掴んでくれず、どうしてか皆俺を見捨てて遠ざかっていく。

「なんで・・・どう・・・して・・・」

 助けを求めようとしても言葉がうまく紡げない。

「お前らがいけないんだぞ、お前らばっかいい思いしやがって、くたばれリア充!」

 誰かが俺にそう囁いた。
 リア充とは現実の生活が充実している人間の事だ、パーティ、バーベキュー、海水よく、旅行、クリスマス、合コン、いわゆるアウトドア派を指す。
 だが待ってほしい、俺はそんな人間じゃない。たった今無職となり、人との付き合いもほとんどなく、家ではクラシック音楽を聴きながらインターネット、週二日の休みはゲームをやって過ごしている。言うならば無職、ネト充というやつだ。

 胸からナイフが引き抜かれると俺の体は瞬く間に血で赤く染まった、そして糸の切れた人形のように地面に崩れる。

 誰にも迷惑をかけず、真面目に生き、人に妬まれるような人生を送ってきたわけではないのに・・・どうしてこうなった?自問する。だがその問いに答えは出なかった。そして俺の意識は深い闇に閉ざされる。

「覚えて・・・いろ。いつか・・・必ず復讐してやる」

 例え遊びでもやられたらやり返す、それが俺の人生哲学だ。
 3月3日、春、今日は黒崎兎卿くろさきうきょう30歳の誕生日。そして享年30、俺の人生は静かに幕を閉じた。




















 光が視細胞を刺激する。

 ん?

 ふと意識が戻る、深い眠りから覚めたような感覚だった。起動したばかりのパソコンのように状況を整理しようと脳がフル回転する。

「先生、赤ちゃんが産声を上げません、ひっくり返してお尻をたたきます」

 バシッ!バシッ!!

 ま、待て。痛い!いきなり何をする!!

「ミィ~!ミィ~~ッ!!」

 ミィ~!?こ、言葉が出ない。どうなってるんだ?

「泣きました。おめでとうございます旦那様、元気な男の子ですよ」

 すると俺の顔を黒いウサギがのぞいた、どうしてこんなところにウサギがいる?そもそもここはどこだ、病院か?怪我人のケツをいきなり叩くなんてとんでもないところだ。

「でかしたぞ、これでこの家も安泰だ!」

 “!?”

 何語か分からないが今ウサギが話したように思えた。視界がぼやけているが確かにそう見えた。いやいや、ウサギが喋るなんてまさか・・・そんな事ある筈がない。

「奥様どうぞお抱き下さい、旦那様に良く似た黒ウサギの妖精ですよ」

「あぁ、おいで私の坊や、長い耳、色艶のある黒毛、そしてこのちっちゃな尻尾。なんてかわいらしいの?」

 今度は白いウサギが喋っている!?英語でもない、フランス語でもない、何らかの言語を発している、バカな!・・・得体のしれない生命体に抱かれ抵抗しようとすると俺は自分の体に違和感を覚えた。

 何だこれは!?

 毛むくじゃらの体、ウサギの足、丸い尻尾、どっからどう見てもウサギの赤ん坊だ。きっとこれは何かの悪い夢だ、夢なら早く覚めてくれ!



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