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3学年 後期
第278話
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対抗戦も終わり、すぐに新年を迎えた。
もう去年のこととなった魔人たちの襲撃事件だが、そう簡単に収まるわけもなく。
新学期が開始された今でも、色々な媒体のニュースがトピックスの一つとして報道している。
そんなこと気にすることなく、登校した伸はいつもの3人と固まってホームルーム前の雑談をしていた。
「へぇ~、2人も柊家の関連企業に就職できることになったのか……」
高校3年の3学期にもなれば、多くの者が進学・就職等の進路先は決定している。
これまで魔闘師としての仕事をおこなう企業に就職を希望していた石塚・吉井の2人も、柊家が経営する魔闘師を派遣する企業に就職することが決定したそうだ。
魔闘師の仕事は、魔物を相手にするため危険が伴う。
しかし、その分得られる給料も良いため、就職の倍率は高い。
特に、名家の経営する企業は能力の高い魔闘師が多く存在しているため、死亡率は低く、更に倍率は高くなる。
そんな中で、今の魔闘師業界で鷹藤家に代わって1番人気になっている柊家の関連企業に就職できるなんて、筆記の成績がそこまで良くない石塚・吉井の2人が内定を得られる可能性は低いと、伸は友人ながら思っていた。
「あぁ、まあな!」
「伸と了はともかく、俺たちもなんてなんてな……」
大抵の魔闘師関連企業の入社試験は、筆記試験・面接・実力診断の3点で評価される。
石塚・吉井の2人は、実力はあっても筆記と面接が不安が残る。
面接はある程度聞かれることが予想できるので対策のしようがあるが、筆記試験は3年間赤点ギリギリで切り抜けてきた2人では、内定をもらうのは難しいと思っていた。
それなのにこの結果になり、石塚・吉井の2人自身も意外に思っていた。
「それを言うなら、俺もだよ」
「いや、お前は対抗戦に3年連続出場しているんだから……」
「そうだよ。しかも3年次は3位だし……」
石塚・吉井だけでなく、了も柊家関連の企業に就職の内定が出ている。
了も2人同様に筆記試験が心配だったため、内定をもらえたことが予想外だったようだ。
しかし、そんな了の呟きに、石塚・吉井の2人はツッコミを入れる。
たしかに2人同様に筆記試験は心配だが、それ以上に了は対抗戦に出場して名前が知られていた。
学生3年間のうち1回でも出場できればそれだけでも優秀な魔闘師候補だと言われているところを、3年連続出場し、最高順位は3位だったのだから、どこの魔闘師関連企業も欲しいと思う存在になっているはずだ。
しかも、地元八郷地区出身である了を、柊家としては当然手に入れたかったため、筆記の成績なんて、ほとんどどうでも良かったのではないだろうか。
そう考えると、2人が言うように内定をもらえるのは必然だろう。
「伸の場合、試験すら必要ないってのは羨ましいな」
「「だなっ!」」
「何だよいきなり……」
3人の話の矛先が伸へと向く。
了の言うように、試験を受けて内定を得た3人とは違い、伸は試験なんて受けないで柊家の関連企業に就職することが決まっている。
「しかも、本社だろ?」
「そりゃそうだろ。実力もあるし……」
「婿殿だもんな……」
八郷地区に本社といくつかの支社が存在している柊家の魔闘師派遣企業。
その中で、伸は本社に配属されることが決定しており、了たち3人はまだどこに配属になるか分かっていない。
八郷地区の中でも、魔物の強弱や出現頻度などで危険度が違う。
本社の人間は、その実力から八郷地区全土の危険な場所に派遣されるのに対し、支社は地域ごとに危険度は変わってくる。
新人の多くは、最初危険度の低い支社に派遣され、経験と実力に応じて別の支社へと移っていくことが基本だ。
伸のように、学園卒業からすぐさま本社に配属されるなんて、異例中の異例だ。
しかし、そのようになるのも納得できる理由がある。
石塚と吉井が言ったように、実力があり、なおかつ柊家の一人娘である綾愛の婿候補筆頭だからだ。
「っていうか……」
「そうなると……」
「そうだな……」
「んっ?」
話していて何かに思い至ったのか、3人が顔を合わせて頷き合う。
仲間外れになっている伸は、何のことか分からないため首を傾げるしかない。
「「「当主殿!」」」
「……その呼び方はやめろ!」
綾愛の婿と言うことは、いつかは柊家当主になる可能性があるということだ。
そのことから、関連企業に就職する自分たちからすると、伸が上司になる事は確実だ。
そのため、今から慣れておこうと、3人は声を揃えて伸のことを「当主殿」と呼んだ。
伸からすると、綾愛と結婚してもいないのに、友人の3人にそんな呼ばれかたするのは恥ずかしい。
恐らく、3人のニヤケ顔からすると、自分をからかっていっていることが分かる。
そのため、伸は3人にツッコミを入れた。
「っと! 先生来た!」
フザケ話をしているうちに時間が経過したらしく、担任の三門が来たことに了が気付く。
そのため、4人はそれぞれ自分の席へと戻って行った。
そして、その日から二か月経過し、
【それでは、八郷学園本年度卒業式を開始します!】
伸たちは学園の卒業式を迎えることになった。
もう去年のこととなった魔人たちの襲撃事件だが、そう簡単に収まるわけもなく。
新学期が開始された今でも、色々な媒体のニュースがトピックスの一つとして報道している。
そんなこと気にすることなく、登校した伸はいつもの3人と固まってホームルーム前の雑談をしていた。
「へぇ~、2人も柊家の関連企業に就職できることになったのか……」
高校3年の3学期にもなれば、多くの者が進学・就職等の進路先は決定している。
これまで魔闘師としての仕事をおこなう企業に就職を希望していた石塚・吉井の2人も、柊家が経営する魔闘師を派遣する企業に就職することが決定したそうだ。
魔闘師の仕事は、魔物を相手にするため危険が伴う。
しかし、その分得られる給料も良いため、就職の倍率は高い。
特に、名家の経営する企業は能力の高い魔闘師が多く存在しているため、死亡率は低く、更に倍率は高くなる。
そんな中で、今の魔闘師業界で鷹藤家に代わって1番人気になっている柊家の関連企業に就職できるなんて、筆記の成績がそこまで良くない石塚・吉井の2人が内定を得られる可能性は低いと、伸は友人ながら思っていた。
「あぁ、まあな!」
「伸と了はともかく、俺たちもなんてなんてな……」
大抵の魔闘師関連企業の入社試験は、筆記試験・面接・実力診断の3点で評価される。
石塚・吉井の2人は、実力はあっても筆記と面接が不安が残る。
面接はある程度聞かれることが予想できるので対策のしようがあるが、筆記試験は3年間赤点ギリギリで切り抜けてきた2人では、内定をもらうのは難しいと思っていた。
それなのにこの結果になり、石塚・吉井の2人自身も意外に思っていた。
「それを言うなら、俺もだよ」
「いや、お前は対抗戦に3年連続出場しているんだから……」
「そうだよ。しかも3年次は3位だし……」
石塚・吉井だけでなく、了も柊家関連の企業に就職の内定が出ている。
了も2人同様に筆記試験が心配だったため、内定をもらえたことが予想外だったようだ。
しかし、そんな了の呟きに、石塚・吉井の2人はツッコミを入れる。
たしかに2人同様に筆記試験は心配だが、それ以上に了は対抗戦に出場して名前が知られていた。
学生3年間のうち1回でも出場できればそれだけでも優秀な魔闘師候補だと言われているところを、3年連続出場し、最高順位は3位だったのだから、どこの魔闘師関連企業も欲しいと思う存在になっているはずだ。
しかも、地元八郷地区出身である了を、柊家としては当然手に入れたかったため、筆記の成績なんて、ほとんどどうでも良かったのではないだろうか。
そう考えると、2人が言うように内定をもらえるのは必然だろう。
「伸の場合、試験すら必要ないってのは羨ましいな」
「「だなっ!」」
「何だよいきなり……」
3人の話の矛先が伸へと向く。
了の言うように、試験を受けて内定を得た3人とは違い、伸は試験なんて受けないで柊家の関連企業に就職することが決まっている。
「しかも、本社だろ?」
「そりゃそうだろ。実力もあるし……」
「婿殿だもんな……」
八郷地区に本社といくつかの支社が存在している柊家の魔闘師派遣企業。
その中で、伸は本社に配属されることが決定しており、了たち3人はまだどこに配属になるか分かっていない。
八郷地区の中でも、魔物の強弱や出現頻度などで危険度が違う。
本社の人間は、その実力から八郷地区全土の危険な場所に派遣されるのに対し、支社は地域ごとに危険度は変わってくる。
新人の多くは、最初危険度の低い支社に派遣され、経験と実力に応じて別の支社へと移っていくことが基本だ。
伸のように、学園卒業からすぐさま本社に配属されるなんて、異例中の異例だ。
しかし、そのようになるのも納得できる理由がある。
石塚と吉井が言ったように、実力があり、なおかつ柊家の一人娘である綾愛の婿候補筆頭だからだ。
「っていうか……」
「そうなると……」
「そうだな……」
「んっ?」
話していて何かに思い至ったのか、3人が顔を合わせて頷き合う。
仲間外れになっている伸は、何のことか分からないため首を傾げるしかない。
「「「当主殿!」」」
「……その呼び方はやめろ!」
綾愛の婿と言うことは、いつかは柊家当主になる可能性があるということだ。
そのことから、関連企業に就職する自分たちからすると、伸が上司になる事は確実だ。
そのため、今から慣れておこうと、3人は声を揃えて伸のことを「当主殿」と呼んだ。
伸からすると、綾愛と結婚してもいないのに、友人の3人にそんな呼ばれかたするのは恥ずかしい。
恐らく、3人のニヤケ顔からすると、自分をからかっていっていることが分かる。
そのため、伸は3人にツッコミを入れた。
「っと! 先生来た!」
フザケ話をしているうちに時間が経過したらしく、担任の三門が来たことに了が気付く。
そのため、4人はそれぞれ自分の席へと戻って行った。
そして、その日から二か月経過し、
【それでは、八郷学園本年度卒業式を開始します!】
伸たちは学園の卒業式を迎えることになった。
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