上 下
273 / 281
3学年 後期

第272話

しおりを挟む
「フンッ!!」

「くっ!!」

 距離を詰め、刀を振る伸とバルタサール。
 上段から振り下ろした伸の刀と、斬り上げを放ったバルタサールの刀がぶつかり合う。
 ぶつかり合った衝撃で、両者とも少しの距離ノックバックする。
 しかし、その距離は微妙に違う。
 どちらかと言うと、伸の方が遠くまで戻されている。
 そのことからも分かるように、やはりパワーはバルタサールの方が上のようだ。

『でも、両手でこの差なら……』

 パワーで劣っていることが分かっても、伸は落ち込むことはない。
 それよりも、これまでは接近戦では片手で相手にされていたが、今回は両手で刀を持ったバルタサールとぶつかっても、この程度の差で済んでいるということに喜びを感じていた。

「ハーッ!!」

「っ!!」

 再度接近しあう2人。
 自分の間合いに入った瞬間、伸が連撃を放つ。
 その攻撃を、バルタサールは刀で弾いて防ぐ。
 真剣な表情をしていることから、バルタサールに余裕はないらしい。
 そのことから、スピードに関しては伸の方が有利のようだ。

「…………」「…………」

 攻防を繰り広げた2人は、距離を取り睨みあう。
 相手より勝っている部分を使い、どう攻めるべきかを無言で思案する。

「ハッ!!」

「っ!!」

 先に動いたのはバルタサール。
 掌サイズの魔力球を作り出し、伸に向かって放出する。
 速いが躱せない速度ではない。
 恐らく、攻撃を躱して少しでも体勢を崩すのが狙いだろう。
 それを分かっていながらも、躱す以外の選択肢はないため、伸は横に跳ぶことで攻撃を回避した。

「シッ!!」

「くっ!!」

 魔力球を躱した伸に向かって、接近したバルタサールが突きを放つ。
 それを刀で受け止めた伸は、後方へと少しの距離飛ばされる。

「ハッ!!」

「ぐっ!!」

 飛ばされて着地した伸に、バルタサールは刀を振り下ろす。
 どうやら、伸を吹き飛ばすと同時に追いかけてきたようだ。
 重い一撃が迫る。
 それを足に力を入れて思いっきり踏ん張ることで、伸は攻撃を受け止めることに成功した。
 
「ぐぅ、くそ重い……」

 魔力を消費し、身体強化が弱まったとはいっても、やはりバルタサールのパワーは半端ではない。
 そのまま鍔迫り合いの状態になったが、伸はジリジリを押されていた。

「フンッ!」

「おわっ!」

 バルタサールが力を込めて思いっきり押す。
 それによって、伸はまたも後方へと飛ばされた。

「シッ!」

「このっ!」

「くっ!?」

 このままでは、パワーに押されてどんどん後方へ飛ばされ続ける。
 そうなると壁に追いつめられて、逃げ場を失うことになる。
 バルタサールの狙いを阻止するために、伸は反撃に出た。
 追いかけてくるバルタサールが刀を振り上げた瞬間を狙って、薙ぎ払いを放つ。
 それを、バルタサールは攻撃から防御へと切り替えることで防いだ。

「ハアァー!!」

「くっ!!」

 攻撃を防いだことで、バルタサールの足が一旦止まる。
 吹き飛ばすことはできないが、後退させることは不可能ではない。
 足が止まったところに連撃を放って、伸はバルタサールを押し戻した。

「ハアァー!!」

「くっ!」

 こっちのターンと言わんばかりに、伸はバルタサールに連撃を放ち続ける。
 スピードで勝る伸の攻撃を、バルタサールはギリギリのところで防ぎ続ける。

「このっ!」

「ぐっ!」

 このままでは伸の攻撃を防ぎきれない。
 そう考えたバルタサールは、伸が放つ連撃の一つに合わせるように、力を込めて刀を弾く。
 防御をしつつ、バルタサールは伸の連撃を止めることに成功した。

「フンッ!」

「くっ!」

 攻撃を弾かれたことで一瞬無防備になったところを狙って、バルタサールは伸に斬り上げを放つ。
 仰け反りつつ後方へ跳ぶことで、伸はギリギリのところで回避した。

「ハッ!!」

「このっ!」

 またも攻守交替。
 後退した伸を追いかけ、バルタサールは突きを放ってきた。
 まともに受け止めれば、また後方へ吹き飛ばされる。
 そうならないために、伸は体を捻りながらバルタサールの攻撃を弾いて回避する。

「シッ!!」

「チッ!」

 またも伸の連撃が開始される。
 止めない限り止まらないため、バルタサールは舌打ちしつつ、力任せに止めに入る。
 そこから、何度も攻守が入れ替わる展開になった。
 伸が押せば、今度はバルタサールが押し返す。
 多少位置がズレたりするが、半径数mの円の範囲内で高度な攻防が繰り広げられた。 

「このっ!」

「ハアァー!」

““パキンッ!!””

「「っっっ!!」」

 両者共に力を込めた攻撃を放ち、刀がぶつかり合う。
 それと同時に、両者の刀がへし折れた。
 魔力を纏って強化しているとはいっても、両者の強力な攻撃に耐えきれなくなったようだ。

「くそっ!」

「チッ!」

 伸とバルタサールは、折れた刀を放り投げる。
 これ以上は、刀での戦闘では勝負がつかないと判断したためだ。

「仕方ない……」

「そうだな……」

「「肉弾戦で勝負だ!!」」

 刀での攻防で勝負が付かないなら、拳で決着をつけるしかない。
 同じ意見になった両者は、拳を握ってファイティングポーズを取った。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

追放された最弱ハンター、最強を目指して本気出す〜実は【伝説の魔獣王】と魔法で【融合】してるので無双はじめたら、元仲間が落ちぶれていきました〜

里海慧
ファンタジー
「カイト、お前さぁ、もういらないわ」  魔力がほぼない最低ランクの最弱ハンターと罵られ、パーティーから追放されてしまったカイト。  実は、唯一使えた魔法で伝説の魔獣王リュカオンと融合していた。カイトの実力はSSSランクだったが、魔獣王と融合してると言っても信じてもらえなくて、サポートに徹していたのだ。  追放の際のあまりにもひどい仕打ちに吹っ切れたカイトは、これからは誰にも何も奪われないように、最強のハンターになると決意する。  魔獣を討伐しまくり、様々な人たちから認められていくカイト。  途中で追放されたり、裏切られたり、そんな同じ境遇の者が仲間になって、ハンターライフをより満喫していた。  一方、カイトを追放したミリオンたちは、Sランクパーティーの座からあっという間に転げ落ちていき、最後には盛大に自滅してゆくのだった。 ※ヒロインの登場は遅めです。

転移術士の成り上がり

名無し
ファンタジー
 ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

処理中です...