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3学年 後期
第271話
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「痛て……」
観客席の壁にぶつけた背中をさすりながら、伸は立ち上がる。
「爆風のことを考える余裕がなかったからな……」
バルタサールの攻撃から逃げ回ることに集中しながら、更に爆発の魔法陣を作る作業を行っていた。
余裕による油断から、バルタサールは見え難くした魔法陣に気付くこともなく、魔法陣攻撃の直撃を受けることになった。
魔王と呼ばれるほどの戦闘力を有したバルタサールを倒すために、結構な威力の攻撃に設定していたが、その爆発によって発生する風のことまで考えられなかった。
そのため、魔法陣の近くにいた伸は、自分の放った攻撃だというのにもかかわらず、吹き飛ばされることになってしまった。
「ふぅ~、何とか倒せたな。魔力も結構消費しちまったな」
一息ついた伸は、服の埃を叩き落としつつ呟く。
直撃を食らえば一発で重症になりそうな攻撃に晒され続けたが、何とか倒すことができた。
泥だらけになってしまったが、それも勝つためなら大したことではない。
魔力消費による疲労感も、むしろ心地良いくらいだ。
体の調子を確認し終えて一息ついたところで、伸は踵を返す。
他の魔人たちを倒すために、もうひと仕事をしなければならないと、この場を後にしようとした。
「…………くっ!」
「っっっ!!」
小さい呻き声が耳に入り、伸は信じられない思いで振り返る。
そして、爆発によって巻き起こった土煙の中に、一体の生物の姿を確認した。
「ぐうぅ……、やってくれたな……」
「……おいおい、嘘だろ……」
武舞台を消し去り、クレーターを作るほどの大爆発攻撃を受けたのにもかかわらず、バルタサールは生きていた。
驚きの状況に、伸は思わず呟いた。
「ぐうぅ、片足が吹き飛んでしまったな……」
膝をついた状態で苦しそうに話すバルタサール。
大爆発の直撃を受けて無事なわけもなく、体中に怪我を負っており、左足の足首から先を欠損した状態だ。
その痛みを耐えるため、顔をしかめている。
「しかし、残念だったな……」
「なっ!?」
一言呟いた後、バルタサールの体に異変が起きる。
体中の怪我と、欠損した足が再生し始めたのだ。
「回復・再生魔術!? しかも、そんな速度で……」
魔術のあるこの世界では、欠損した足を再生することは可能だ。
伸も回復・再生魔術を使うことはできるが、足首から先を再生するには膨大な魔力と時間が必要になる。
それが普通だというのに、バルタサールは大した時間もかけずに再生させてしまった。
非常識な状況に、伸は開いた口が塞がらない。
「ま、まさか……」
「気付いたか? 私が最も得意なのは、剣術などではなく回復魔術だ」
強力な戦闘力を有しているのだから、当然にそこに目が行く。
そのため、バルタサールは剣術の能力で魔王の地位にまで伸し上がったのだと考えていた。
しかし、それでは大した時間をかけずに足を再生させた能力の説明ができない。
剣術に加えて再生魔術までとんでもないのではなく、再生魔術が得意な魔人が剣術も鍛えたのがバルタサールが魔王になれた理由のようだ。
「魔人の中には、姑息な手段で仕掛けてくる者もいた。ここまで伸し上がってこれたのも、この能力があったからだ」
人間だけでなく、魔人の中にも姑息な手段で邪魔者を排除しようとする者は存在している。
そう言った者の手によって、バルタサールは大きな怪我を負うこともあった。
怪我を負っていると分かれば、自分を蹴落とす好機と襲い掛かってくる者も少なくない。
しかし、バルタサールはこの回復・再生魔術を駆使することでその難を逃れてきたようだ。
「ふざけんなよ……」
とんでもない強さのくせに、回復・再生魔術が得意だなんてチートすぎる。
勝利を確信していただけに、伸は思わず愚痴った。
「ずいぶん魔力が落ちているな?」
先程の魔法陣に相当な魔力を込めたため、伸は魔力をかなり消耗している。
そのことに気付いたバルタサールは、指摘するように問いかける。
「……それはお前もだろ?」
たしかに自分はかなりの魔力を消耗している。
しかし、それを言うのならバルタサールの方も同じだ。
というより、バルタサールの方が大量の魔力を消費しているように見える。
そのため、伸はバルタサールに質問をし返した。
「フッ!! たしかにな……」
伸が作り出した魔法陣によって捕えられ、バルタサールは大爆発が起こるまでの僅かな時間で魔力による全身強化を図った。
そのお陰で木っ端微塵にならなくて済んだのだが、片足を欠損することになってしまった。
伸を相手に片足では、いくら自分でも勝てる見込みは低くなる。
それならばと、得意の回復・再生魔術で怪我と足を治した。
しかし、当然ながらそれには大量の魔力を必要とする。
魔法陣の爆発から身を守るためと、足を再生することに魔力を大量に使用した。
今は一気に疲労が押し寄せてきているため、伸の言うことは当たっている。
「くそっ!」
折角与えた怪我も回復されてしまい、またもバルタサールを相手にしなければならない。
魔力が減ったとはいっても、まだどれほどの実力を残しているのか分からない。
そのため、伸はせっかく鞘に納めた刀を抜いて、バルタサールに向かって構えた。
観客席の壁にぶつけた背中をさすりながら、伸は立ち上がる。
「爆風のことを考える余裕がなかったからな……」
バルタサールの攻撃から逃げ回ることに集中しながら、更に爆発の魔法陣を作る作業を行っていた。
余裕による油断から、バルタサールは見え難くした魔法陣に気付くこともなく、魔法陣攻撃の直撃を受けることになった。
魔王と呼ばれるほどの戦闘力を有したバルタサールを倒すために、結構な威力の攻撃に設定していたが、その爆発によって発生する風のことまで考えられなかった。
そのため、魔法陣の近くにいた伸は、自分の放った攻撃だというのにもかかわらず、吹き飛ばされることになってしまった。
「ふぅ~、何とか倒せたな。魔力も結構消費しちまったな」
一息ついた伸は、服の埃を叩き落としつつ呟く。
直撃を食らえば一発で重症になりそうな攻撃に晒され続けたが、何とか倒すことができた。
泥だらけになってしまったが、それも勝つためなら大したことではない。
魔力消費による疲労感も、むしろ心地良いくらいだ。
体の調子を確認し終えて一息ついたところで、伸は踵を返す。
他の魔人たちを倒すために、もうひと仕事をしなければならないと、この場を後にしようとした。
「…………くっ!」
「っっっ!!」
小さい呻き声が耳に入り、伸は信じられない思いで振り返る。
そして、爆発によって巻き起こった土煙の中に、一体の生物の姿を確認した。
「ぐうぅ……、やってくれたな……」
「……おいおい、嘘だろ……」
武舞台を消し去り、クレーターを作るほどの大爆発攻撃を受けたのにもかかわらず、バルタサールは生きていた。
驚きの状況に、伸は思わず呟いた。
「ぐうぅ、片足が吹き飛んでしまったな……」
膝をついた状態で苦しそうに話すバルタサール。
大爆発の直撃を受けて無事なわけもなく、体中に怪我を負っており、左足の足首から先を欠損した状態だ。
その痛みを耐えるため、顔をしかめている。
「しかし、残念だったな……」
「なっ!?」
一言呟いた後、バルタサールの体に異変が起きる。
体中の怪我と、欠損した足が再生し始めたのだ。
「回復・再生魔術!? しかも、そんな速度で……」
魔術のあるこの世界では、欠損した足を再生することは可能だ。
伸も回復・再生魔術を使うことはできるが、足首から先を再生するには膨大な魔力と時間が必要になる。
それが普通だというのに、バルタサールは大した時間もかけずに再生させてしまった。
非常識な状況に、伸は開いた口が塞がらない。
「ま、まさか……」
「気付いたか? 私が最も得意なのは、剣術などではなく回復魔術だ」
強力な戦闘力を有しているのだから、当然にそこに目が行く。
そのため、バルタサールは剣術の能力で魔王の地位にまで伸し上がったのだと考えていた。
しかし、それでは大した時間をかけずに足を再生させた能力の説明ができない。
剣術に加えて再生魔術までとんでもないのではなく、再生魔術が得意な魔人が剣術も鍛えたのがバルタサールが魔王になれた理由のようだ。
「魔人の中には、姑息な手段で仕掛けてくる者もいた。ここまで伸し上がってこれたのも、この能力があったからだ」
人間だけでなく、魔人の中にも姑息な手段で邪魔者を排除しようとする者は存在している。
そう言った者の手によって、バルタサールは大きな怪我を負うこともあった。
怪我を負っていると分かれば、自分を蹴落とす好機と襲い掛かってくる者も少なくない。
しかし、バルタサールはこの回復・再生魔術を駆使することでその難を逃れてきたようだ。
「ふざけんなよ……」
とんでもない強さのくせに、回復・再生魔術が得意だなんてチートすぎる。
勝利を確信していただけに、伸は思わず愚痴った。
「ずいぶん魔力が落ちているな?」
先程の魔法陣に相当な魔力を込めたため、伸は魔力をかなり消耗している。
そのことに気付いたバルタサールは、指摘するように問いかける。
「……それはお前もだろ?」
たしかに自分はかなりの魔力を消耗している。
しかし、それを言うのならバルタサールの方も同じだ。
というより、バルタサールの方が大量の魔力を消費しているように見える。
そのため、伸はバルタサールに質問をし返した。
「フッ!! たしかにな……」
伸が作り出した魔法陣によって捕えられ、バルタサールは大爆発が起こるまでの僅かな時間で魔力による全身強化を図った。
そのお陰で木っ端微塵にならなくて済んだのだが、片足を欠損することになってしまった。
伸を相手に片足では、いくら自分でも勝てる見込みは低くなる。
それならばと、得意の回復・再生魔術で怪我と足を治した。
しかし、当然ながらそれには大量の魔力を必要とする。
魔法陣の爆発から身を守るためと、足を再生することに魔力を大量に使用した。
今は一気に疲労が押し寄せてきているため、伸の言うことは当たっている。
「くそっ!」
折角与えた怪我も回復されてしまい、またもバルタサールを相手にしなければならない。
魔力が減ったとはいっても、まだどれほどの実力を残しているのか分からない。
そのため、伸はせっかく鞘に納めた刀を抜いて、バルタサールに向かって構えた。
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