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3学年 後期
第260話
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「ハッ!!」
「ぐっ!!」
オレガリオが攻撃を仕掛ける。
薙ぎ払うようにして振られた刀が、柊家当主俊夫の胴へと迫る。
その攻撃を、俊夫は刀で弾くことで回避した。
「ハァ、ハァ、くそっ!」
連撃によって俊夫の体勢を崩し、そのうえで斬りかかったというのに攻撃を防がれてしまった。
防がれた理由に心当たりがある。
体力の消耗によって踏み込んだ足に力が入り切らず、手で振るだけのような攻撃になってしまったからだ。
ちゃんと踏み込んでいさえすれば、刀で弾かれることなく俊夫の胴に傷をつけることができたはず。
そのため、オレガリオは息を切らしながら悔しそうに呟いた。
『全く……』
賭けともいえる転移魔術を使用したカウンター攻撃を画策したオレガリオだったが、綾愛によってその賭けに失敗した。
それによって大きな精神疲労とダメージを与え、魔石を飲み込んで回復した魔力をかなり消耗させることに成功した。
このまま一気に押し切ろうと攻めかかった柊親子だったが、なかなかオレガリオに深手を負わせることができないでいた。
そのしぶとさに、援護担当の綾愛は辟易していた。
魔力を消費させることに成功した勢いそのままに、オレガリオを打ち倒してしまいたいところだったのだが、なかなか決定打を与えることができずにいたからだ。
『このままでは……』
この事態は俊夫にとっても予想外だった。
精神疲労とダメージによって、オレガリオの魔力の減少速度を速めることに成功した。
しかし、オレガリオが俊夫と綾愛の連携攻撃を回避し続けた。
そのせいで、こちらの方も体力と魔力を消耗してしまった。
このままこの状態が続くと、こちらの方が痛手を負ってしまう可能性があるため、オレガリオから距離を取った俊夫は、どうするべきか思案し始めた。
「ニッ!!」
「っ!! しまった!!」
思案状態に入ったことで、俊夫の動きが一瞬止まる。
それを見逃さず、オレガリオは笑みを浮かべて地面を蹴った。
その向かった先を見て意図に気付いた俊夫は、オレガリオを追って走り出した。
「綾愛!」
「うんっ!!」
オレガリオを追いかける俊夫だが、追いつかないと判断した彼は娘の名前を叫ぶ。
名前を呼ばれただけだというのに、綾愛は俊夫が何を求めているのかを理解するように返事をし、発動寸前で待機させていた魔力で、オレガリオの進路を防ぐように火球の魔術を放った。
「グウッ!!」
「っっっ!?」
足止めを狙っての綾愛の火球だったのだが、オレガリオは飛んできた火球に気付いていたのに直進する。
当然綾愛の火球が直撃して片腕に大火傷を負ったが、あらかじめ受けることを覚悟していたからか、オレガリオはそのまま足を止めずに直進し続けた。
「フッ!!」
「くそっ!!」
目的の場所にたどり着いたオレガリオは笑みを浮かべる。
予想した通りのことをしようとするオレガリオに、俊夫は自分の失策に歯噛みした。
「フフッ!!」
“ゴクンッ!!”
オレガリオの狙い。
それは、魔石を飲み込んでのパワーアップだ。
綾愛の攻撃を受けて片腕が動かなくなろうとも、パワーアップしてしまえば些末な問題だと判断したようだ。
足元に転がる魔人の死体から取り出した魔石を、オレガリオは笑みを浮かべながら飲み込んだ。
「……良いことを教えてやろう!」
「っ!?」
魔石を飲み込んだことにより、オレガリオの肉体に変化が起き始める。
それを受け、オレガリオは俊夫に向かって話しかける。
「先ほども言ったように、魔人は魔石を飲み込めばパワーアップができるが、魔石との相性が悪ければ死に至る可能性もある」
「…………」「…………」
何度か見たことがあるため、俊夫と綾愛は魔人のパワーアップ方法を理解している。
そのため、2人は黙ったまま、オレガリオの言葉の続きを待った。
「だが、それは魔人の中でも雑魚の場合だ。俺のような上位魔人の場合、失敗確率はかなり低いのだ!」
「そんな……」
「……ったく! ご説明どうも……」
オレガリオの言葉を聞いた綾愛は驚きの声を漏らし、俊夫は苦虫を嚙み潰したような表情で返事をした。
先程も失敗したのに、どうしてまた危険を冒してパワーアップを計るのかという思いがあったが、オレガリオの言葉で理解できた。
そもそも、先程のパワーアップも失敗とは言い切れない。
魔力が回復するだけでも、戦闘をおこなう上では充分に成功とも言えるからだ。
「ぐうっ……」
オレガリオが小さく声を漏らす。
肉体の変化が起きているためだろう。
中肉中背の大和皇国人という外見をているオレガリオだが、魔石を飲み込んだことにより、バディービルダーのように全身の筋肉が膨れ上がっている。
その体を見るだけでパワーアップが成功したのだということが分かる。
「ハハハッ! 今度は成功したようだな!?」
筋肉の拡大が治まると、自身の肉体の変化を確かめるように動かすオレガリオ。
その確認が済むと、パワーアップの成功を確信し、オレガリオは大きな笑い声をあげた。
「さて……」
パワーアップの成功を確認した後、オレガリオは次に自分がやるべきことに気付き、柊親子の方へと顔を向ける。
「この腕の怪我の借りを返させてもらおうか?」
パワーアップに成功したが、負った怪我が治るわけではない。
先程綾愛から受けた火球による攻撃によって、左腕は動かないままだ。
その仕返しをおこなうため、オレガリオは綾愛に向かってゆっくりと歩き出した。
「ぐっ!!」
オレガリオが攻撃を仕掛ける。
薙ぎ払うようにして振られた刀が、柊家当主俊夫の胴へと迫る。
その攻撃を、俊夫は刀で弾くことで回避した。
「ハァ、ハァ、くそっ!」
連撃によって俊夫の体勢を崩し、そのうえで斬りかかったというのに攻撃を防がれてしまった。
防がれた理由に心当たりがある。
体力の消耗によって踏み込んだ足に力が入り切らず、手で振るだけのような攻撃になってしまったからだ。
ちゃんと踏み込んでいさえすれば、刀で弾かれることなく俊夫の胴に傷をつけることができたはず。
そのため、オレガリオは息を切らしながら悔しそうに呟いた。
『全く……』
賭けともいえる転移魔術を使用したカウンター攻撃を画策したオレガリオだったが、綾愛によってその賭けに失敗した。
それによって大きな精神疲労とダメージを与え、魔石を飲み込んで回復した魔力をかなり消耗させることに成功した。
このまま一気に押し切ろうと攻めかかった柊親子だったが、なかなかオレガリオに深手を負わせることができないでいた。
そのしぶとさに、援護担当の綾愛は辟易していた。
魔力を消費させることに成功した勢いそのままに、オレガリオを打ち倒してしまいたいところだったのだが、なかなか決定打を与えることができずにいたからだ。
『このままでは……』
この事態は俊夫にとっても予想外だった。
精神疲労とダメージによって、オレガリオの魔力の減少速度を速めることに成功した。
しかし、オレガリオが俊夫と綾愛の連携攻撃を回避し続けた。
そのせいで、こちらの方も体力と魔力を消耗してしまった。
このままこの状態が続くと、こちらの方が痛手を負ってしまう可能性があるため、オレガリオから距離を取った俊夫は、どうするべきか思案し始めた。
「ニッ!!」
「っ!! しまった!!」
思案状態に入ったことで、俊夫の動きが一瞬止まる。
それを見逃さず、オレガリオは笑みを浮かべて地面を蹴った。
その向かった先を見て意図に気付いた俊夫は、オレガリオを追って走り出した。
「綾愛!」
「うんっ!!」
オレガリオを追いかける俊夫だが、追いつかないと判断した彼は娘の名前を叫ぶ。
名前を呼ばれただけだというのに、綾愛は俊夫が何を求めているのかを理解するように返事をし、発動寸前で待機させていた魔力で、オレガリオの進路を防ぐように火球の魔術を放った。
「グウッ!!」
「っっっ!?」
足止めを狙っての綾愛の火球だったのだが、オレガリオは飛んできた火球に気付いていたのに直進する。
当然綾愛の火球が直撃して片腕に大火傷を負ったが、あらかじめ受けることを覚悟していたからか、オレガリオはそのまま足を止めずに直進し続けた。
「フッ!!」
「くそっ!!」
目的の場所にたどり着いたオレガリオは笑みを浮かべる。
予想した通りのことをしようとするオレガリオに、俊夫は自分の失策に歯噛みした。
「フフッ!!」
“ゴクンッ!!”
オレガリオの狙い。
それは、魔石を飲み込んでのパワーアップだ。
綾愛の攻撃を受けて片腕が動かなくなろうとも、パワーアップしてしまえば些末な問題だと判断したようだ。
足元に転がる魔人の死体から取り出した魔石を、オレガリオは笑みを浮かべながら飲み込んだ。
「……良いことを教えてやろう!」
「っ!?」
魔石を飲み込んだことにより、オレガリオの肉体に変化が起き始める。
それを受け、オレガリオは俊夫に向かって話しかける。
「先ほども言ったように、魔人は魔石を飲み込めばパワーアップができるが、魔石との相性が悪ければ死に至る可能性もある」
「…………」「…………」
何度か見たことがあるため、俊夫と綾愛は魔人のパワーアップ方法を理解している。
そのため、2人は黙ったまま、オレガリオの言葉の続きを待った。
「だが、それは魔人の中でも雑魚の場合だ。俺のような上位魔人の場合、失敗確率はかなり低いのだ!」
「そんな……」
「……ったく! ご説明どうも……」
オレガリオの言葉を聞いた綾愛は驚きの声を漏らし、俊夫は苦虫を嚙み潰したような表情で返事をした。
先程も失敗したのに、どうしてまた危険を冒してパワーアップを計るのかという思いがあったが、オレガリオの言葉で理解できた。
そもそも、先程のパワーアップも失敗とは言い切れない。
魔力が回復するだけでも、戦闘をおこなう上では充分に成功とも言えるからだ。
「ぐうっ……」
オレガリオが小さく声を漏らす。
肉体の変化が起きているためだろう。
中肉中背の大和皇国人という外見をているオレガリオだが、魔石を飲み込んだことにより、バディービルダーのように全身の筋肉が膨れ上がっている。
その体を見るだけでパワーアップが成功したのだということが分かる。
「ハハハッ! 今度は成功したようだな!?」
筋肉の拡大が治まると、自身の肉体の変化を確かめるように動かすオレガリオ。
その確認が済むと、パワーアップの成功を確信し、オレガリオは大きな笑い声をあげた。
「さて……」
パワーアップの成功を確認した後、オレガリオは次に自分がやるべきことに気付き、柊親子の方へと顔を向ける。
「この腕の怪我の借りを返させてもらおうか?」
パワーアップに成功したが、負った怪我が治るわけではない。
先程綾愛から受けた火球による攻撃によって、左腕は動かないままだ。
その仕返しをおこなうため、オレガリオは綾愛に向かってゆっくりと歩き出した。
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