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3学年 後期
第247話
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「グウゥ……!!」
魔石を飲み込んだオレガリオに、すぐさま異変が起きる。
肉体自体に変化はないというのに、オレガリオからは魔力が溢れて出してきた。
「くっ!」
「魔力が……っ!!」
多くの魔人を呼ぶ出す転移魔術を使用したことで、オレガリオは魔力をかなり消費していた。
それがあって自分たち親子は戦いを有利に進めることができたのだが、魔力が回復したとなっては、これまでのアドバンテージがなくなってしまう。
しかも、パワーアップしたとなったら、これまでのように上手くいくとは考えにくい。
そのため、柊親子は警戒心から攻めかかれないでいた。
「フゥ~……」
「…………」
魔力が回復したオレガリオは、大きく息を吐きだす。
その表情は、心の底から安堵したような表情だ。
それを見て、俊夫は若干の違和感を覚えた。
「……どうやらそのパワーアップも諸刃の剣のようだな?」
「…………」
魔人の魔石を取り込むことでパワーアップを果たせるようだが、オレガリオの表情を見る限り、必ずともそうではないのではないかと俊夫は感じた。
それに、たしかに多少はパワーアップしているようだが、モグラ兄弟の時のように大幅な成果を得ているようには思えない。
ほとんど魔力を回復させるためだけに、魔石を飲み込んだのだろうか。
それにしては、先ほどのオレガリオの安堵の表情はどういった意味があるのか。
もしかしたら、魔石を体内に取り込むことで、絶対パワーアップできるとは限らないのかもしれない。
そう考えた俊夫が問いかけると、オレガリオは無言で若干嫌そうな表情をする。
どうやら、指摘したことはあたっているようだ。
「魔石を取り込んだとしてもパワーアップするとは限らない、場合によっては何か不都合が生じる可能性があった……といったところか?」
「……フッ! 本当に目敏いな……」
何も言っていないというのに、俊夫は自分の僅かな反応から答えを導き出したようだ。
その考えが的を射ているため、オレガリオは俊夫のことを褒めざるを得なった。
やはり、大和皇国の中で危険なのは、もう鷹藤家よりも柊家なのではないかと思うようになっていた。
「魔力が回復した以上、もうこれまでのようにいくと思うなよ!」
「チッ! 気を付けろよ綾愛!」
「う、うんっ!」
これ以上俊夫と話していると、先程のパワーアップに関する情報が全て暴かれてしまうかもしれない。
それを危惧したオレガリオは、俊夫たちを倒すことを倒すために刀を構える。
オレガリオとは逆に、魔人に関する情報を手に入れるためにもう少し話していたいところだ。
しかし、これまでとは違って濃厚な魔力を身に纏ったオレガリオからの圧力を受け、それどころではないことを察した俊夫は、綾愛に警戒するように促す。
綾愛自身脅威を感じているからか、すぐに返事をした。
「ハッ!!」
脅威が増したオレガリオ。
好きに戦わせてペースを与えてしまうわけにはいかない。
そのため、綾愛はこれまで通り、自分の魔術による攻撃を放つことで父の援護をする目的で火球を放つ。
「フンッ!」
“パンッ!!”
ソフトボール大の火球がオレガリオに迫る。
少し前なら躱そうとしていたオレガリオだが、魔力が回復したことで脅威にならなくなったらしく、濃密な魔力で身体強化した左手の裏拳一発で、綾愛の放った火球を弾き飛ばした。
「っっっ!! くっ!」
自分の火球があまりにも簡単に弾かれてしまったため、綾愛は驚きで目を見開く。
これでは、全然父の援護にならない。
今までのように、また役に立てないのではないかという嫌なイメージが頭に浮かび、綾愛はそれを打ち消すように、また火球を放とうと刀に魔力を集め始めた。
「おっと!!」
ソフトボール大で通用しないのなら、今度はバスケットボール大で。
そう考えて魔力を集める綾愛を見て邪魔になると判断したのか、オレガリオは綾愛との距離を詰めて斬りかかるべく振りかぶった。
「させるか!!」
「っ!!」
狙いを察した俊夫は、娘を守るためにオレガリオとの間に割り込み、振りかぶって隙ができた腹目掛けて薙ぎ払いを放った。
魔力が回復して、強力な身体強化ができるようになったからといって、俊夫の攻撃を受ければ致命傷となってしまう。
そのため、オレガリオは綾愛への攻撃を中断し、バックステップをすることで俊夫の攻撃を躱した。
「シッ!!」
「っと!!」
バックステップをしたオレガリオを追いかけるようにして、俊夫はそのまま突きを放つ。
喉元に向かって一直線に飛んできた俊夫の突きを、オレガリオは刀で弾いて横に飛ぶことで回避した。
「ハッ!!」
「くっ!!」
攻撃を回避したオレガリオは、今度は自分の番だと言わんばかりに斬りかかる。
上段から振り下ろした攻撃を、俊夫は刀で受け止めて防御した。
「ググッ!!」
「グウゥ!!」
両者の刀がぶつかり合い、鍔迫り合いのような状況になる。
力勝負のような押し合いが始まり、両者共に刀に思いっきり力を込める。
『やはり、魔力が回復しただけか……?』
短い攻防の情報から、俊夫は冷静に魔力を飲み込む前のオレガリオと比較しての変化を読み取った。
パワーアップしたと思ったが、それは魔力が回復したことによってそう思えただけだということを。
『だからといって、危険なことには変わりはないが……』
この鍔迫り合いで、魔力が回復したオレガリオの強さはかなりのものだ。
転移魔術だけの魔人ではない。
何故なら、自分が全力に近い力を出しているというのに、オレガリオはまだ少し余裕があるような表情をしているからだ。
それを受け、俊夫はオレガリオへの脅威をもう一段階上げた。
魔石を飲み込んだオレガリオに、すぐさま異変が起きる。
肉体自体に変化はないというのに、オレガリオからは魔力が溢れて出してきた。
「くっ!」
「魔力が……っ!!」
多くの魔人を呼ぶ出す転移魔術を使用したことで、オレガリオは魔力をかなり消費していた。
それがあって自分たち親子は戦いを有利に進めることができたのだが、魔力が回復したとなっては、これまでのアドバンテージがなくなってしまう。
しかも、パワーアップしたとなったら、これまでのように上手くいくとは考えにくい。
そのため、柊親子は警戒心から攻めかかれないでいた。
「フゥ~……」
「…………」
魔力が回復したオレガリオは、大きく息を吐きだす。
その表情は、心の底から安堵したような表情だ。
それを見て、俊夫は若干の違和感を覚えた。
「……どうやらそのパワーアップも諸刃の剣のようだな?」
「…………」
魔人の魔石を取り込むことでパワーアップを果たせるようだが、オレガリオの表情を見る限り、必ずともそうではないのではないかと俊夫は感じた。
それに、たしかに多少はパワーアップしているようだが、モグラ兄弟の時のように大幅な成果を得ているようには思えない。
ほとんど魔力を回復させるためだけに、魔石を飲み込んだのだろうか。
それにしては、先ほどのオレガリオの安堵の表情はどういった意味があるのか。
もしかしたら、魔石を体内に取り込むことで、絶対パワーアップできるとは限らないのかもしれない。
そう考えた俊夫が問いかけると、オレガリオは無言で若干嫌そうな表情をする。
どうやら、指摘したことはあたっているようだ。
「魔石を取り込んだとしてもパワーアップするとは限らない、場合によっては何か不都合が生じる可能性があった……といったところか?」
「……フッ! 本当に目敏いな……」
何も言っていないというのに、俊夫は自分の僅かな反応から答えを導き出したようだ。
その考えが的を射ているため、オレガリオは俊夫のことを褒めざるを得なった。
やはり、大和皇国の中で危険なのは、もう鷹藤家よりも柊家なのではないかと思うようになっていた。
「魔力が回復した以上、もうこれまでのようにいくと思うなよ!」
「チッ! 気を付けろよ綾愛!」
「う、うんっ!」
これ以上俊夫と話していると、先程のパワーアップに関する情報が全て暴かれてしまうかもしれない。
それを危惧したオレガリオは、俊夫たちを倒すことを倒すために刀を構える。
オレガリオとは逆に、魔人に関する情報を手に入れるためにもう少し話していたいところだ。
しかし、これまでとは違って濃厚な魔力を身に纏ったオレガリオからの圧力を受け、それどころではないことを察した俊夫は、綾愛に警戒するように促す。
綾愛自身脅威を感じているからか、すぐに返事をした。
「ハッ!!」
脅威が増したオレガリオ。
好きに戦わせてペースを与えてしまうわけにはいかない。
そのため、綾愛はこれまで通り、自分の魔術による攻撃を放つことで父の援護をする目的で火球を放つ。
「フンッ!」
“パンッ!!”
ソフトボール大の火球がオレガリオに迫る。
少し前なら躱そうとしていたオレガリオだが、魔力が回復したことで脅威にならなくなったらしく、濃密な魔力で身体強化した左手の裏拳一発で、綾愛の放った火球を弾き飛ばした。
「っっっ!! くっ!」
自分の火球があまりにも簡単に弾かれてしまったため、綾愛は驚きで目を見開く。
これでは、全然父の援護にならない。
今までのように、また役に立てないのではないかという嫌なイメージが頭に浮かび、綾愛はそれを打ち消すように、また火球を放とうと刀に魔力を集め始めた。
「おっと!!」
ソフトボール大で通用しないのなら、今度はバスケットボール大で。
そう考えて魔力を集める綾愛を見て邪魔になると判断したのか、オレガリオは綾愛との距離を詰めて斬りかかるべく振りかぶった。
「させるか!!」
「っ!!」
狙いを察した俊夫は、娘を守るためにオレガリオとの間に割り込み、振りかぶって隙ができた腹目掛けて薙ぎ払いを放った。
魔力が回復して、強力な身体強化ができるようになったからといって、俊夫の攻撃を受ければ致命傷となってしまう。
そのため、オレガリオは綾愛への攻撃を中断し、バックステップをすることで俊夫の攻撃を躱した。
「シッ!!」
「っと!!」
バックステップをしたオレガリオを追いかけるようにして、俊夫はそのまま突きを放つ。
喉元に向かって一直線に飛んできた俊夫の突きを、オレガリオは刀で弾いて横に飛ぶことで回避した。
「ハッ!!」
「くっ!!」
攻撃を回避したオレガリオは、今度は自分の番だと言わんばかりに斬りかかる。
上段から振り下ろした攻撃を、俊夫は刀で受け止めて防御した。
「ググッ!!」
「グウゥ!!」
両者の刀がぶつかり合い、鍔迫り合いのような状況になる。
力勝負のような押し合いが始まり、両者共に刀に思いっきり力を込める。
『やはり、魔力が回復しただけか……?』
短い攻防の情報から、俊夫は冷静に魔力を飲み込む前のオレガリオと比較しての変化を読み取った。
パワーアップしたと思ったが、それは魔力が回復したことによってそう思えただけだということを。
『だからといって、危険なことには変わりはないが……』
この鍔迫り合いで、魔力が回復したオレガリオの強さはかなりのものだ。
転移魔術だけの魔人ではない。
何故なら、自分が全力に近い力を出しているというのに、オレガリオはまだ少し余裕があるような表情をしているからだ。
それを受け、俊夫はオレガリオへの脅威をもう一段階上げた。
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