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3学年 後期
第246話
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『勝てる!!』
この数年、魔人たちと遭遇することもあり、何度か魔人を倒すこともできるようになった。
しかし、父や伸たちが相手にしているのは、魔人の中でも上位に位置するような強力な実力の持ち主ばかりだった。
そんな相手と戦う時、自分はただの足手まといにしかならないため、戦闘に加わるよりも安全な場所に避難していなければならない状況だった。
その度に、自分も役に立ちたいという思いが綾愛の中で沸き上がっていた。
だが、今回は違う。
伸すらも警戒するような魔人を相手に、援護役とはいえ自分も役に立っている。
そして、勝利が近づいていることに、綾愛は内心で勝利を確信していた。
「シッ!!」
「くっ!!」
疲労によって力が出し切れないため、受け止めることすら危険でしかない。
そのため、オレガリオはオレガリオの攻撃を必死になって躱す。
「フゥ、フゥ……」
「息切れしているくらいだ。これ以上戦うならお前に勝ち目はない。諦めろ!」
魔力の消費によって、柊親子から繰り出される攻撃を必死に躱すことに集中するしかないオレガリオ。
休む暇を与えない攻撃に、息が切れている。
このまま続ければ、オレガリオの敗北は必至。
そのため、無駄な時間を浪費したくない俊夫は、オレガリオに潔く死を受け入れることを求める。
「……フッ! 勝ち目がないか……」
「…………?」
魔力を大量消費したことによる疲労困憊状態。
そんな状態では、たしかに俊夫が言うように勝ち目がないだろう。
しかし、それが分かっているというのに、オレガリオは何故か笑みを浮かべる。
その笑みの意味が分からず、俊夫は首を傾げた。
「綾愛!!」
「ハッ!!」
勝てる見込みがないというのに、オレガリオはまだ諦めていない目をしている。
それが不気味に思えた俊夫は、何かしようとする前に仕留めた方がいいと判断した。
そのため、俊夫は綾愛に声をかける。
それに応じ、綾愛はすぐさま火球を放った。
「くっ!」
「っ!?」
綾愛の放った火球を、刀で弾きつつ回避するオレガリオ。
しかし、その反応に俊夫は違和感を覚える。
『何故そっちへ?』
火球が飛んできた方向を考えると、右の方向の方が避けやすいはず。
それなのに、オレガリオが避けたのは反対方向。
避けるのを見越して右から迫っていた自分が見えたのかもしれないが、だからと言ってもそちらに向かう意味が分からないため、俊夫は内心訝しんだ。
「フフッ!」
オレガリオは、柊親子の攻撃から逃れるように動き回る。
そして、ある地点に来たところで足を止め、笑みを浮かべる。
「…………?」
特別、オレガリオに変化はない。
それなのに何が可笑しいのか。
俊夫としては、またも首を傾げるしかない。
「フンッ!!」
“ドッ!!”
「……っ?」
先程と違うのは、近くに俊夫が殺した魔人の死体が転がっているだけだ。
そして、何を思ったのか、オレガリオはその死体に刀を突き刺した。
気でも狂ったのかと思いたくなるような行いに、俊夫は「何がしたいんだ?」と問いたい気持ちでいっぱいになった。
「フッ!」
“パシッ!!”
軽く息を吐きだすと共に、オレガリオは突き刺した刀を掬い上げる。
それによって、魔人の死体の胸から何かを取り出し、手で受け止めた。
「……魔石? っっっ!! まさかっ!?」
オレガリオが取り出したのは魔石だった。
死体から魔石を取り出して何をするつもりなのか。
そう考えていると、俊夫の中に思い当たる記憶があった。
それを思い出した俊夫は、次にオレガリオがやろうとしていることを阻止しようと、すぐさま地を蹴り、斬りかかった。
「ハッ!!」
“フッ!!”
「っっっ!!」
オレガリオの体を斜めに斬り離してやろうと、俊夫は思いっきり振りかぶっての袈裟斬りを放つ。
しかし、俊夫の刀が斬り裂く前に、オレガリオの姿がその場から消えた。
高速で移動したわけではない。
恐らく、転移魔術を使用したのだろう。
どこに行ったのを探るため、俊夫は周囲に視線を巡らせた。
「いたっ!」
「っ!!」
転移によって、オレガリオは自分たちから離れた場所へと移動していた。
綾愛が声によってオレガリオを視界に入れた俊夫は、斬りかかるためにすぐさま距離を詰めようとする。
“ゴクンッ!!”
「くっ! 間に合わなかったか……!?」
俊夫が距離を詰めるよりも速く、オレガリオは仲間の死体から取り出した魔石を飲み込んだ。
予想通りの行動。
それを止めることができなかった俊夫は、悔しそうに呟いた。
「お父さん! 奴は何を……?」
「魔石を飲み込んで、パワーアップするつもりだ!」
魔石を飲み込んで、何の意味があるというのか。
答えが分からない綾愛は、俊夫に返答を求める。
その問いに、俊夫は手短に説明した。
以前、モグラの魔人の兄弟が出た時、弟の魔人が兄の魔人を殺し、その魔石を食べてパワーアップを果たしたことがあった。
それと同じことをオレガリオはするつもりなのだと。
「何ですって!?」
モグラの魔人の兄弟と戦ったことは、父や伸から後になって話を聞いていた。
しかし、自分はその場にいなかったため、どのような戦闘だったかは完全には把握できていなかった。
そのため、魔石を飲み込んだだけでパワーアップするなんてことが信じられない綾愛は、驚きの声を上げるしかなかった。
この数年、魔人たちと遭遇することもあり、何度か魔人を倒すこともできるようになった。
しかし、父や伸たちが相手にしているのは、魔人の中でも上位に位置するような強力な実力の持ち主ばかりだった。
そんな相手と戦う時、自分はただの足手まといにしかならないため、戦闘に加わるよりも安全な場所に避難していなければならない状況だった。
その度に、自分も役に立ちたいという思いが綾愛の中で沸き上がっていた。
だが、今回は違う。
伸すらも警戒するような魔人を相手に、援護役とはいえ自分も役に立っている。
そして、勝利が近づいていることに、綾愛は内心で勝利を確信していた。
「シッ!!」
「くっ!!」
疲労によって力が出し切れないため、受け止めることすら危険でしかない。
そのため、オレガリオはオレガリオの攻撃を必死になって躱す。
「フゥ、フゥ……」
「息切れしているくらいだ。これ以上戦うならお前に勝ち目はない。諦めろ!」
魔力の消費によって、柊親子から繰り出される攻撃を必死に躱すことに集中するしかないオレガリオ。
休む暇を与えない攻撃に、息が切れている。
このまま続ければ、オレガリオの敗北は必至。
そのため、無駄な時間を浪費したくない俊夫は、オレガリオに潔く死を受け入れることを求める。
「……フッ! 勝ち目がないか……」
「…………?」
魔力を大量消費したことによる疲労困憊状態。
そんな状態では、たしかに俊夫が言うように勝ち目がないだろう。
しかし、それが分かっているというのに、オレガリオは何故か笑みを浮かべる。
その笑みの意味が分からず、俊夫は首を傾げた。
「綾愛!!」
「ハッ!!」
勝てる見込みがないというのに、オレガリオはまだ諦めていない目をしている。
それが不気味に思えた俊夫は、何かしようとする前に仕留めた方がいいと判断した。
そのため、俊夫は綾愛に声をかける。
それに応じ、綾愛はすぐさま火球を放った。
「くっ!」
「っ!?」
綾愛の放った火球を、刀で弾きつつ回避するオレガリオ。
しかし、その反応に俊夫は違和感を覚える。
『何故そっちへ?』
火球が飛んできた方向を考えると、右の方向の方が避けやすいはず。
それなのに、オレガリオが避けたのは反対方向。
避けるのを見越して右から迫っていた自分が見えたのかもしれないが、だからと言ってもそちらに向かう意味が分からないため、俊夫は内心訝しんだ。
「フフッ!」
オレガリオは、柊親子の攻撃から逃れるように動き回る。
そして、ある地点に来たところで足を止め、笑みを浮かべる。
「…………?」
特別、オレガリオに変化はない。
それなのに何が可笑しいのか。
俊夫としては、またも首を傾げるしかない。
「フンッ!!」
“ドッ!!”
「……っ?」
先程と違うのは、近くに俊夫が殺した魔人の死体が転がっているだけだ。
そして、何を思ったのか、オレガリオはその死体に刀を突き刺した。
気でも狂ったのかと思いたくなるような行いに、俊夫は「何がしたいんだ?」と問いたい気持ちでいっぱいになった。
「フッ!」
“パシッ!!”
軽く息を吐きだすと共に、オレガリオは突き刺した刀を掬い上げる。
それによって、魔人の死体の胸から何かを取り出し、手で受け止めた。
「……魔石? っっっ!! まさかっ!?」
オレガリオが取り出したのは魔石だった。
死体から魔石を取り出して何をするつもりなのか。
そう考えていると、俊夫の中に思い当たる記憶があった。
それを思い出した俊夫は、次にオレガリオがやろうとしていることを阻止しようと、すぐさま地を蹴り、斬りかかった。
「ハッ!!」
“フッ!!”
「っっっ!!」
オレガリオの体を斜めに斬り離してやろうと、俊夫は思いっきり振りかぶっての袈裟斬りを放つ。
しかし、俊夫の刀が斬り裂く前に、オレガリオの姿がその場から消えた。
高速で移動したわけではない。
恐らく、転移魔術を使用したのだろう。
どこに行ったのを探るため、俊夫は周囲に視線を巡らせた。
「いたっ!」
「っ!!」
転移によって、オレガリオは自分たちから離れた場所へと移動していた。
綾愛が声によってオレガリオを視界に入れた俊夫は、斬りかかるためにすぐさま距離を詰めようとする。
“ゴクンッ!!”
「くっ! 間に合わなかったか……!?」
俊夫が距離を詰めるよりも速く、オレガリオは仲間の死体から取り出した魔石を飲み込んだ。
予想通りの行動。
それを止めることができなかった俊夫は、悔しそうに呟いた。
「お父さん! 奴は何を……?」
「魔石を飲み込んで、パワーアップするつもりだ!」
魔石を飲み込んで、何の意味があるというのか。
答えが分からない綾愛は、俊夫に返答を求める。
その問いに、俊夫は手短に説明した。
以前、モグラの魔人の兄弟が出た時、弟の魔人が兄の魔人を殺し、その魔石を食べてパワーアップを果たしたことがあった。
それと同じことをオレガリオはするつもりなのだと。
「何ですって!?」
モグラの魔人の兄弟と戦ったことは、父や伸から後になって話を聞いていた。
しかし、自分はその場にいなかったため、どのような戦闘だったかは完全には把握できていなかった。
そのため、魔石を飲み込んだだけでパワーアップするなんてことが信じられない綾愛は、驚きの声を上げるしかなかった。
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