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3学年 後期
第244話
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「………‥」
「どうした? かかってこないのか?」
伸が恐ろしい魔力を持っていた子供の魔人と共に去り、魔人化した文康が祖父の康義と戦い始めていた。
大量に出現した他の魔人たちは配置していた魔闘師たちに任せ、自分は目の前の適に集中しなければと、綾愛はオレガリオと睨みあった状態でいた。
奈津希が渡してくれた刀を腰に差し、居合斬りの体勢で構え、オレガリオの隙を窺う綾愛。
その状態でいる綾愛に対し、刀を抜いて正眼の構えで待ち受けているオレガリオが問いかける。
「…………」
若干の挑発も加わったオレガリオの問い。
それを受けても、綾愛は動けないでいた。
何故なら、伸から目の前の相手の能力を聞いていたからだ。
使い手が限られる転移魔術を使用し、大和皇国の人間の特徴をした魔人。
伸から言わせれば、魔人の中でも倒す優先度の高い存在だと言っていた。
伸ほどの人間が警戒する魔人。
それが頭にあるからこそ、綾愛の中で不用意な攻撃をすることを躊躇っていた。
「っと! 来てしまったか……」
「綾愛!」
「お父さん!」
オレガリオが何を言っているのかと思ったら、どうやら柊家当主で綾愛の父の俊夫が来たことに気付いたようだ。
すぐにでも娘の所にと向かっていたが、他の魔人が邪魔をして遅れたらしい。
しかし、ところどころに返り血を浴びているところを見ると、その魔人たちを斬り倒してきたのだろう。
「……こいつがオレガリオか?」
「えぇ……」
隣に並んだ俊夫の問いかけに、綾愛は短く返事をする。
上空に作り出された魔法陣によって転移してきた多数の魔人たち。
伸からオレガリオという転移魔術を使用する魔人がいるということを聞いていたため、特徴が一致するこの魔人がオレガリオなのだとすぐに気づいたようだ。
「標的でもある柊家の2人が来てくれるなんてありがたい。まあ、本当は鷹藤文康に任せる予定だったのだけど、こちらの言うことを聞かない奴は扱い辛いね」
元々、オレガリオは文康に柊家の相手をさせるつもりだった。
大和皇国の魔闘師と言ったら、昔から鷹藤家だったが、この数年によってその考えが変化した。
柊家が毎年のように出現する魔人を討伐し、一気に名声を上げたからだ。
そして、当主同士の実力にも差が生じていた。
年齢的にも成長よりも現状維持の鷹藤康義とは違い、まだ成長する余地があった俊夫の方が僅かながら実力的に上に立っているように思える。
だからこそ、オレガリオとしては鷹藤家よりも柊家の討伐優先の方向でいたのだが、その予定を崩した文康には文句を言いたいところだ。
「一つ聞きたいのだが……」
「んっ? 何だ?」
戦闘を始める前に、俊夫としてはオレガリオに聞きたいことがある。
そのことを確認しようとした。
「去年、世界中に魔人が出現したことがあったが、あれもお前の仕業か?」
「あぁ、その通りだ」
去年の4月、世界中の色々な国に魔人が出現し、多くの被害をもたらした事件があった。
それぞれの国が、自国の優秀な魔闘師たちを終結して敷なり現れた魔人たちを討伐しようと考えたが、いざ討伐に向かった時には姿を消していた。
魔人の死体が見つかるわけでもなく、被害を受けた町のみが残っていたという怪事件だ。
いまだにその真相が掴めていなかったが、オレガリオの出現によって話が変わった。
転移魔術を使える魔人がいるとすれば、同じことができるのではないかと言うことだ。
その確認をするために俊夫が問いかけると、オレガリオは勿体つけることなく返答した。
「それなら、こちらとしてはこの場でお前を確実に仕留めておかないとな……」
「そうか……。まぁ、やれるもんならやってみな!」
転移が使える魔人なんて、人間にどれだけの被害を与えることになるか分かったものではない。
そのことが分かっているから、伸はオレガリオが現れたら優先的に倒すべきだと言っていた。
俊夫もその考えに賛成だ。
そのため、この場で仕留めるべく、刀をオレガリオに向けて構えた。
それに対応するように、オレガリオは俊夫と綾愛を視野に入れるように構えなおした。
「やるぞ! 綾愛!」
「うん! でも、あいつには転移魔術があるから……」
この国だけでなく、世界のためにもオレガリオは倒さなければならない。
それは分かっているが、攻めかかっても転移魔術で回避されてしまう可能性が高い。
それがあるため、綾愛は不用意に攻めかかることができなかったのだ。
父が来てくれたことで気持ち的に戦いやすくなったが、それでもオレガリオと戦うには転移魔術のことが綾愛の頭に浮かんでしまう。
「大丈夫だ。あれだけの人数の魔人を転移させたことで、奴の魔力はかなり減っているはずだ。戦闘で何度も使うとは思えない」
「そうか!」
伸の話だと、転移魔術は距離や移動させる物の数などで消費魔力が変化すると言っていた。
それならば、これだけの魔人を転移させたオレガリオは、かなりの魔力を消費している。
そのため、頻繁に転移して攻撃を回避するということはできないはず。
そのことを俊夫が指摘すると、綾愛は納得の声を上げた。
「行くぞ!」
「うんっ!」
軽い打ち合わせをすまし、柊親子は今度こそオレガリオに向けって攻めかかることを決意した。
「どうした? かかってこないのか?」
伸が恐ろしい魔力を持っていた子供の魔人と共に去り、魔人化した文康が祖父の康義と戦い始めていた。
大量に出現した他の魔人たちは配置していた魔闘師たちに任せ、自分は目の前の適に集中しなければと、綾愛はオレガリオと睨みあった状態でいた。
奈津希が渡してくれた刀を腰に差し、居合斬りの体勢で構え、オレガリオの隙を窺う綾愛。
その状態でいる綾愛に対し、刀を抜いて正眼の構えで待ち受けているオレガリオが問いかける。
「…………」
若干の挑発も加わったオレガリオの問い。
それを受けても、綾愛は動けないでいた。
何故なら、伸から目の前の相手の能力を聞いていたからだ。
使い手が限られる転移魔術を使用し、大和皇国の人間の特徴をした魔人。
伸から言わせれば、魔人の中でも倒す優先度の高い存在だと言っていた。
伸ほどの人間が警戒する魔人。
それが頭にあるからこそ、綾愛の中で不用意な攻撃をすることを躊躇っていた。
「っと! 来てしまったか……」
「綾愛!」
「お父さん!」
オレガリオが何を言っているのかと思ったら、どうやら柊家当主で綾愛の父の俊夫が来たことに気付いたようだ。
すぐにでも娘の所にと向かっていたが、他の魔人が邪魔をして遅れたらしい。
しかし、ところどころに返り血を浴びているところを見ると、その魔人たちを斬り倒してきたのだろう。
「……こいつがオレガリオか?」
「えぇ……」
隣に並んだ俊夫の問いかけに、綾愛は短く返事をする。
上空に作り出された魔法陣によって転移してきた多数の魔人たち。
伸からオレガリオという転移魔術を使用する魔人がいるということを聞いていたため、特徴が一致するこの魔人がオレガリオなのだとすぐに気づいたようだ。
「標的でもある柊家の2人が来てくれるなんてありがたい。まあ、本当は鷹藤文康に任せる予定だったのだけど、こちらの言うことを聞かない奴は扱い辛いね」
元々、オレガリオは文康に柊家の相手をさせるつもりだった。
大和皇国の魔闘師と言ったら、昔から鷹藤家だったが、この数年によってその考えが変化した。
柊家が毎年のように出現する魔人を討伐し、一気に名声を上げたからだ。
そして、当主同士の実力にも差が生じていた。
年齢的にも成長よりも現状維持の鷹藤康義とは違い、まだ成長する余地があった俊夫の方が僅かながら実力的に上に立っているように思える。
だからこそ、オレガリオとしては鷹藤家よりも柊家の討伐優先の方向でいたのだが、その予定を崩した文康には文句を言いたいところだ。
「一つ聞きたいのだが……」
「んっ? 何だ?」
戦闘を始める前に、俊夫としてはオレガリオに聞きたいことがある。
そのことを確認しようとした。
「去年、世界中に魔人が出現したことがあったが、あれもお前の仕業か?」
「あぁ、その通りだ」
去年の4月、世界中の色々な国に魔人が出現し、多くの被害をもたらした事件があった。
それぞれの国が、自国の優秀な魔闘師たちを終結して敷なり現れた魔人たちを討伐しようと考えたが、いざ討伐に向かった時には姿を消していた。
魔人の死体が見つかるわけでもなく、被害を受けた町のみが残っていたという怪事件だ。
いまだにその真相が掴めていなかったが、オレガリオの出現によって話が変わった。
転移魔術を使える魔人がいるとすれば、同じことができるのではないかと言うことだ。
その確認をするために俊夫が問いかけると、オレガリオは勿体つけることなく返答した。
「それなら、こちらとしてはこの場でお前を確実に仕留めておかないとな……」
「そうか……。まぁ、やれるもんならやってみな!」
転移が使える魔人なんて、人間にどれだけの被害を与えることになるか分かったものではない。
そのことが分かっているから、伸はオレガリオが現れたら優先的に倒すべきだと言っていた。
俊夫もその考えに賛成だ。
そのため、この場で仕留めるべく、刀をオレガリオに向けて構えた。
それに対応するように、オレガリオは俊夫と綾愛を視野に入れるように構えなおした。
「やるぞ! 綾愛!」
「うん! でも、あいつには転移魔術があるから……」
この国だけでなく、世界のためにもオレガリオは倒さなければならない。
それは分かっているが、攻めかかっても転移魔術で回避されてしまう可能性が高い。
それがあるため、綾愛は不用意に攻めかかることができなかったのだ。
父が来てくれたことで気持ち的に戦いやすくなったが、それでもオレガリオと戦うには転移魔術のことが綾愛の頭に浮かんでしまう。
「大丈夫だ。あれだけの人数の魔人を転移させたことで、奴の魔力はかなり減っているはずだ。戦闘で何度も使うとは思えない」
「そうか!」
伸の話だと、転移魔術は距離や移動させる物の数などで消費魔力が変化すると言っていた。
それならば、これだけの魔人を転移させたオレガリオは、かなりの魔力を消費している。
そのため、頻繁に転移して攻撃を回避するということはできないはず。
そのことを俊夫が指摘すると、綾愛は納得の声を上げた。
「行くぞ!」
「うんっ!」
軽い打ち合わせをすまし、柊親子は今度こそオレガリオに向けって攻めかかることを決意した。
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