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3学年 後期
第228話
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「フゥ~……」
「……ちょ、ちょっと…待て!」
勝者の名乗りを受け、伸は木刀を収めて一息吐く。
そして、そのまま退場しようと歩き出したところで、対戦相手だった道康が待ったをかけてくる。
「……なんだ?」
道康の性格からして、何を言ってくるかは何となく予想できる。
なので、相手をするだけ時間の無駄になると無視することもできるが、もしかしたら予想と違うことを言いたいのかもしれない。
そう考えた伸は、嫌そうな表情をしながら道康に発言を促した。
「……き、貴様! また何か…細工をしたのだろ!?」
顎を殴られたダメージで足はふらつきも立ち上がり、言葉を詰まらせつつ、道康は不正を訴えだした。
「…………」『うわ~、思った通りだよ……』
道康の発言に、伸は無言でうんざりした表情をする。
足を止めて、わざわざ聞いてやるべきではなかったと後悔していた。
「……俺が? どんな不正を?」
「それは……」
当然ながら、自分は不正をした覚えなんて全くない。
しかし、こんな公の場で不正と言うからには、何かしら根拠でもあるのだろう。
そんなものないと分かっているが、伸はどんな不正をしたのか道康に説明を求めた。
「と、とにかく! 俺がお前なんかに負けるはずがない! 今の勝敗は無効だ! もう一度勝負しろ!」
「…………」『こいつ何言ってんだ? 不正の根拠も言わずにもう一度って……』
どんな不正をされたのかもわからないのに勝敗を取り消せなんて、園児のようなことを言われても、そんなことを受け入れられるわけがない。
道康の物言いに、伸は呆れるしかない。
「おい……」
「あぁ……」
会場の観客たちも小声で話している。
その目が道康を蔑んでいるように見えるところから、恐らく伸と同じように思っているのかもしれない。
圧倒的な実力差による勝敗だったのは明白。
それなのに、根拠もなく不正扱いして負けを認めないなんてみっともないと言ったらない。
それが鷹藤家の人間と言うのだから、さらに観客たちを苛立たせている。
去年の兄同様、弟の道康もせっかくの大会にケチをつけるようなことをしているからだ。
「バカバカしい……」
「ま、待て! 待ちやがれ!!」
相手をするだけ時間の無駄だ。
そう判断した伸は、道康の相手をするのをやめて、武舞台上から降りようと歩を進めた。
すると、自分の意見を無視され、道康は必死に伸を止めようとする。
「待てって言っているだろ!!」
「っっっ!? おいっ! 伸!」
何度言っても止まらない伸に怒りが一気に沸き上がった道康は、木刀を構えて武舞台の床を蹴る。
話しているうちにダメージが抜けたのか、そのスピードはかなりのものだ。
あっという間に距離を詰めた道康は、自分に背中を向けている伸に向かって思いっきり木刀を振り下ろそうとした。
そんな道康のことを、セコンドの石塚が伸に気付かせるために大きな声を上げた。
「フッ!!」
「なっ!?」
脳天目掛けて振り下ろされた木刀に対し、伸は背を向けたまま横に飛んで直撃を回避する。
自分のことを見ることなく躱され道康は、驚きのあまり驚愕の声を上げる。
「フンッ!!」
「ごぼっ!!」
思いっきり振ったため、道康は隙だらけだ。
そんな道康の横に移動した伸は、隙だらけの腹に左拳を打ち込んだ。
綺麗にボディーブローが直撃し、道康は腹を抑えてその場に膝をついて悶絶した。
「……ハァ~、ったく……」
腹の痛みで蹲り、動けなくなった道康を見て、伸はため息を吐く。
いくら下に見ていた自分に負けて納得できないのは分かるが、勝敗が決定したというのに相手に斬りかかるなんて言語道断だ。
去年の兄に続いて今回は弟が問題を起こすなんて、鷹藤家の教育はどうなっているのだろうか。
一応その鷹藤家の血が流れているだけに、伸としてはこんな家で育たなくて良かったと心の底から思った。
「ありゃりゃ、相当お怒りだ……」
伸は特別観客席に目を向ける。
鷹藤家の当主である康義が、今どんな表情しているのかを確認するためだ。
孫2人の教育が完全に失敗だったと、公の場で知らしめることになってしまった。
いちゃもんを付けて背後からの奇襲をするなんて、正々堂々から最も外れた行為をしておいて、綺麗に返り討ちにあった道康を見て康義は怒りで顔を真っ赤にしている。
康義の隣に座る康則は、自分の息子の失態に恥じて顔を伏せているようだ。
「さてと、行こうぜ」
「お、おう!」
手の感触から、道康はもうしばらくは動けないだろう。
これでガタガタ言われて時間を無駄にすることはなくなった。
そう考えた伸は、セコンドの石塚に声をかけて選手の入場口の方へと歩き出した。
「お前すげえな! よく背後を見ずに攻撃躱せたな!」
「向かって来そうだったから、あいつを探知してたんだ」
背後からの攻撃を躱しただけでもすごいが、伸は一度も道康の方に顔を向けていなかった。
石塚がその理由を知りたそうに声をかけてきたので、伸は種明かしをすることにした。
道康だけ探知して、伸は見なくても準備をしていた。
だから伸は攻撃を回避できたのだ。
「「「「「ワーーー!!」」」」」
選手入場口に向かって行く伸に対し、観客はよくやったと言わんばかりに大歓声と拍手で見送った。
「……ちょ、ちょっと…待て!」
勝者の名乗りを受け、伸は木刀を収めて一息吐く。
そして、そのまま退場しようと歩き出したところで、対戦相手だった道康が待ったをかけてくる。
「……なんだ?」
道康の性格からして、何を言ってくるかは何となく予想できる。
なので、相手をするだけ時間の無駄になると無視することもできるが、もしかしたら予想と違うことを言いたいのかもしれない。
そう考えた伸は、嫌そうな表情をしながら道康に発言を促した。
「……き、貴様! また何か…細工をしたのだろ!?」
顎を殴られたダメージで足はふらつきも立ち上がり、言葉を詰まらせつつ、道康は不正を訴えだした。
「…………」『うわ~、思った通りだよ……』
道康の発言に、伸は無言でうんざりした表情をする。
足を止めて、わざわざ聞いてやるべきではなかったと後悔していた。
「……俺が? どんな不正を?」
「それは……」
当然ながら、自分は不正をした覚えなんて全くない。
しかし、こんな公の場で不正と言うからには、何かしら根拠でもあるのだろう。
そんなものないと分かっているが、伸はどんな不正をしたのか道康に説明を求めた。
「と、とにかく! 俺がお前なんかに負けるはずがない! 今の勝敗は無効だ! もう一度勝負しろ!」
「…………」『こいつ何言ってんだ? 不正の根拠も言わずにもう一度って……』
どんな不正をされたのかもわからないのに勝敗を取り消せなんて、園児のようなことを言われても、そんなことを受け入れられるわけがない。
道康の物言いに、伸は呆れるしかない。
「おい……」
「あぁ……」
会場の観客たちも小声で話している。
その目が道康を蔑んでいるように見えるところから、恐らく伸と同じように思っているのかもしれない。
圧倒的な実力差による勝敗だったのは明白。
それなのに、根拠もなく不正扱いして負けを認めないなんてみっともないと言ったらない。
それが鷹藤家の人間と言うのだから、さらに観客たちを苛立たせている。
去年の兄同様、弟の道康もせっかくの大会にケチをつけるようなことをしているからだ。
「バカバカしい……」
「ま、待て! 待ちやがれ!!」
相手をするだけ時間の無駄だ。
そう判断した伸は、道康の相手をするのをやめて、武舞台上から降りようと歩を進めた。
すると、自分の意見を無視され、道康は必死に伸を止めようとする。
「待てって言っているだろ!!」
「っっっ!? おいっ! 伸!」
何度言っても止まらない伸に怒りが一気に沸き上がった道康は、木刀を構えて武舞台の床を蹴る。
話しているうちにダメージが抜けたのか、そのスピードはかなりのものだ。
あっという間に距離を詰めた道康は、自分に背中を向けている伸に向かって思いっきり木刀を振り下ろそうとした。
そんな道康のことを、セコンドの石塚が伸に気付かせるために大きな声を上げた。
「フッ!!」
「なっ!?」
脳天目掛けて振り下ろされた木刀に対し、伸は背を向けたまま横に飛んで直撃を回避する。
自分のことを見ることなく躱され道康は、驚きのあまり驚愕の声を上げる。
「フンッ!!」
「ごぼっ!!」
思いっきり振ったため、道康は隙だらけだ。
そんな道康の横に移動した伸は、隙だらけの腹に左拳を打ち込んだ。
綺麗にボディーブローが直撃し、道康は腹を抑えてその場に膝をついて悶絶した。
「……ハァ~、ったく……」
腹の痛みで蹲り、動けなくなった道康を見て、伸はため息を吐く。
いくら下に見ていた自分に負けて納得できないのは分かるが、勝敗が決定したというのに相手に斬りかかるなんて言語道断だ。
去年の兄に続いて今回は弟が問題を起こすなんて、鷹藤家の教育はどうなっているのだろうか。
一応その鷹藤家の血が流れているだけに、伸としてはこんな家で育たなくて良かったと心の底から思った。
「ありゃりゃ、相当お怒りだ……」
伸は特別観客席に目を向ける。
鷹藤家の当主である康義が、今どんな表情しているのかを確認するためだ。
孫2人の教育が完全に失敗だったと、公の場で知らしめることになってしまった。
いちゃもんを付けて背後からの奇襲をするなんて、正々堂々から最も外れた行為をしておいて、綺麗に返り討ちにあった道康を見て康義は怒りで顔を真っ赤にしている。
康義の隣に座る康則は、自分の息子の失態に恥じて顔を伏せているようだ。
「さてと、行こうぜ」
「お、おう!」
手の感触から、道康はもうしばらくは動けないだろう。
これでガタガタ言われて時間を無駄にすることはなくなった。
そう考えた伸は、セコンドの石塚に声をかけて選手の入場口の方へと歩き出した。
「お前すげえな! よく背後を見ずに攻撃躱せたな!」
「向かって来そうだったから、あいつを探知してたんだ」
背後からの攻撃を躱しただけでもすごいが、伸は一度も道康の方に顔を向けていなかった。
石塚がその理由を知りたそうに声をかけてきたので、伸は種明かしをすることにした。
道康だけ探知して、伸は見なくても準備をしていた。
だから伸は攻撃を回避できたのだ。
「「「「「ワーーー!!」」」」」
選手入場口に向かって行く伸に対し、観客はよくやったと言わんばかりに大歓声と拍手で見送った。
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