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3学年 前期
第206話
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「魔力の隠蔽も上がっているようだな……」
カサンドラのブーメランによって怪我を負った理由。
それは、自分に接近するまで隠蔽されていたからだ。
『操る能力が上がったからか……』
変身したことで細かい魔力操作が上がっていたのだから、この可能性も考えておくべきだった。
魔力操作によって、自分が躱したブーメランを隠蔽したのだろう。
魔物であるウングルの姿では威力や範囲重視で、もしかしたら細かい魔力操作は難しかったのかもしれない。
エラズモがいる時は、それでも問題なかったのかもしれないが、単独で戦うときは半人半魔の姿の方が戦いやすいらしく、別に力を抑えて弱体化したというわけではないようだ。
「厄介だな……」
近接戦もできるようになったことで、カサンドラの隙がなくなった。
そうなると、倒すには時間が掛かってしまう。
1体の魔人が綾愛たちの方に行ってしまっているため、時間を掛けたくないところだが、そうも言っていられない。
無理に急げば、自分自身が深手を負うかもしれないからだ。
そう考えると、伸は思わず眉をひそめるしかなかった。
『でも……』
全員の安全を考えるなら自分が全ての魔人を相手するのが望ましいが、今の状況からいってそれは難しい。
いくら自分が強いとはいっても、万能でないことは理解しているからだ。
しかし、伸は大して焦っていなかった。
『柊なら何とかなるだろ……』
今の綾愛の実力なら、先ほどの魔人を相手にしても対抗できるだろうと予想していたからだ。
◆◆◆◆◆
「みんな! 気を付けて!」
「うんっ!」「「はいっ!」」
先制攻撃をおこなうために、伸が側から離れた。
しかし、伸からはあらかじめこのような状況になる可能性を知らされていたため、綾愛たちは慌てることなく受け入れていた。
魔人がこちらに向かってくる可能性をだ。
「……お前が柊家の娘だな?」
伸の脇を抜け、当初の目的である綾愛たちの始末に向かった魔人は、ここに来るまでに変身を遂げていたらしく、人の姿をしていなかった。
そして、4人の前に到着すると、綾愛を指さして問いかけてきた。
「その姿……、ザントマン……?」
正確に言えば、長い鼻と耳が尖った老人といった風貌をしている。
そして、袋を背負っているその姿から、綾愛はその魔人がどんな魔物から進化したのか理解できた。
ザントマンと呼ばれ、背負っている袋の中に入った砂を使用して戦う魔物だ。
「我が名はベルナベ。お前たちには死んでもらう」
先程の問いに対し、何の返答もない。
そのため、諦めたザントマンことベルナベは、名乗ると共に背負っている袋の口を開いた。
「っ!! 砂に気を付けて!」
「「「っっっ!!」」」
ベルナベが何をしてくるのかを理解した綾愛は、奈津希・正大・麻里の3人に指示を出す。
綾愛の発したザントマンという魔物の特徴を思い出し、3人は防御を図った。
「砂を利用しての睡眠を狙ったようだけど、無駄よ!」
「チッ!」
ザントマンは、砂を利用して眠りを誘うことを得意とする魔物だ。
魔力の込められた砂を吸い込んでしまうと、魔闘師でも眠らされてしまう場合がある。
しかし、その対処法は確立されていて、魔闘師を育成する学園でも授業で教えられている。
そうでなくても、ここにいるのは名門家の子息子女たち。
子供のころから魔物に関する情報を教えられてきているため、対策は万全だ。
やることは簡単。
ザントマンの砂には魔力が込められており、その魔力を弾くために、身体強化で口や鼻に纏う魔力を多くするだけだ。
魔力を弾いて、ただの砂に変えてしまうという方法だ。
どんな生物でも、眠ってしまえば無防備になる。
そうすることで、苦も無く綾愛たちを始末するつもりだったため、思い通りにいかなかったベルナベは舌打ちをした。
「ならば仕方ない……」
「っっっ!?」
砂による睡眠が通用しないことを理解したベルナベは、今度は砂で空中に矢を作り出す。
しかも、こちらの人数分だ。
「私の砂が眠りだけだと思うなよ!」
言い終わりと共に、ベルナベは砂の矢を綾愛たちに向かって発射する。
「フンッ!」
「さすがっ!」「「おぉっ!」」
発射された4本の砂の矢を、綾愛は刀で弾き落とした。
反応できたか分からないような高速の矢を弾いてくれた綾愛に対し、奈津希たちは感嘆の声を上げた。
「やはり貴様だな……」
「…………」
どうやら、先ほどの矢は誰が綾愛なのかを探るために放ったものだったようだ。
他の3人に比べ、ある程度余裕をもって反応できた綾愛を見て確信を持ったらしく、ベルナベは標的を綾愛だけに変えたようだ。
「フッ!」
一息吐くと、ベルナベの手には槍が出現する。
砂を固めて作り出したトライデントと呼ばれる三叉の槍だ。
その槍を手にしたベルナベは、綾愛に向かって構えをとった。
「……みんなは援護をお願い」
「分かった!」「「分かりました!」」
先程の攻撃に対する反応から、自分たちではベルナベの相手をするのは厳しいかもしれない。
そう考えていたため、奈津希たちは綾愛の指示に従い、頷きを返した。
カサンドラのブーメランによって怪我を負った理由。
それは、自分に接近するまで隠蔽されていたからだ。
『操る能力が上がったからか……』
変身したことで細かい魔力操作が上がっていたのだから、この可能性も考えておくべきだった。
魔力操作によって、自分が躱したブーメランを隠蔽したのだろう。
魔物であるウングルの姿では威力や範囲重視で、もしかしたら細かい魔力操作は難しかったのかもしれない。
エラズモがいる時は、それでも問題なかったのかもしれないが、単独で戦うときは半人半魔の姿の方が戦いやすいらしく、別に力を抑えて弱体化したというわけではないようだ。
「厄介だな……」
近接戦もできるようになったことで、カサンドラの隙がなくなった。
そうなると、倒すには時間が掛かってしまう。
1体の魔人が綾愛たちの方に行ってしまっているため、時間を掛けたくないところだが、そうも言っていられない。
無理に急げば、自分自身が深手を負うかもしれないからだ。
そう考えると、伸は思わず眉をひそめるしかなかった。
『でも……』
全員の安全を考えるなら自分が全ての魔人を相手するのが望ましいが、今の状況からいってそれは難しい。
いくら自分が強いとはいっても、万能でないことは理解しているからだ。
しかし、伸は大して焦っていなかった。
『柊なら何とかなるだろ……』
今の綾愛の実力なら、先ほどの魔人を相手にしても対抗できるだろうと予想していたからだ。
◆◆◆◆◆
「みんな! 気を付けて!」
「うんっ!」「「はいっ!」」
先制攻撃をおこなうために、伸が側から離れた。
しかし、伸からはあらかじめこのような状況になる可能性を知らされていたため、綾愛たちは慌てることなく受け入れていた。
魔人がこちらに向かってくる可能性をだ。
「……お前が柊家の娘だな?」
伸の脇を抜け、当初の目的である綾愛たちの始末に向かった魔人は、ここに来るまでに変身を遂げていたらしく、人の姿をしていなかった。
そして、4人の前に到着すると、綾愛を指さして問いかけてきた。
「その姿……、ザントマン……?」
正確に言えば、長い鼻と耳が尖った老人といった風貌をしている。
そして、袋を背負っているその姿から、綾愛はその魔人がどんな魔物から進化したのか理解できた。
ザントマンと呼ばれ、背負っている袋の中に入った砂を使用して戦う魔物だ。
「我が名はベルナベ。お前たちには死んでもらう」
先程の問いに対し、何の返答もない。
そのため、諦めたザントマンことベルナベは、名乗ると共に背負っている袋の口を開いた。
「っ!! 砂に気を付けて!」
「「「っっっ!!」」」
ベルナベが何をしてくるのかを理解した綾愛は、奈津希・正大・麻里の3人に指示を出す。
綾愛の発したザントマンという魔物の特徴を思い出し、3人は防御を図った。
「砂を利用しての睡眠を狙ったようだけど、無駄よ!」
「チッ!」
ザントマンは、砂を利用して眠りを誘うことを得意とする魔物だ。
魔力の込められた砂を吸い込んでしまうと、魔闘師でも眠らされてしまう場合がある。
しかし、その対処法は確立されていて、魔闘師を育成する学園でも授業で教えられている。
そうでなくても、ここにいるのは名門家の子息子女たち。
子供のころから魔物に関する情報を教えられてきているため、対策は万全だ。
やることは簡単。
ザントマンの砂には魔力が込められており、その魔力を弾くために、身体強化で口や鼻に纏う魔力を多くするだけだ。
魔力を弾いて、ただの砂に変えてしまうという方法だ。
どんな生物でも、眠ってしまえば無防備になる。
そうすることで、苦も無く綾愛たちを始末するつもりだったため、思い通りにいかなかったベルナベは舌打ちをした。
「ならば仕方ない……」
「っっっ!?」
砂による睡眠が通用しないことを理解したベルナベは、今度は砂で空中に矢を作り出す。
しかも、こちらの人数分だ。
「私の砂が眠りだけだと思うなよ!」
言い終わりと共に、ベルナベは砂の矢を綾愛たちに向かって発射する。
「フンッ!」
「さすがっ!」「「おぉっ!」」
発射された4本の砂の矢を、綾愛は刀で弾き落とした。
反応できたか分からないような高速の矢を弾いてくれた綾愛に対し、奈津希たちは感嘆の声を上げた。
「やはり貴様だな……」
「…………」
どうやら、先ほどの矢は誰が綾愛なのかを探るために放ったものだったようだ。
他の3人に比べ、ある程度余裕をもって反応できた綾愛を見て確信を持ったらしく、ベルナベは標的を綾愛だけに変えたようだ。
「フッ!」
一息吐くと、ベルナベの手には槍が出現する。
砂を固めて作り出したトライデントと呼ばれる三叉の槍だ。
その槍を手にしたベルナベは、綾愛に向かって構えをとった。
「……みんなは援護をお願い」
「分かった!」「「分かりました!」」
先程の攻撃に対する反応から、自分たちではベルナベの相手をするのは厳しいかもしれない。
そう考えていたため、奈津希たちは綾愛の指示に従い、頷きを返した。
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