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3学年 前期
第184話
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「おっす。お疲れさん」
ゴブリンクイーンの退治を終えた伸は、ゴブリンの生き残りがいないかを確認した後、洞窟から出る。
すると、洞窟の出入り口には綾愛たちが武器を手に待ち受けていた。
出てきたのが伸だと気付き、全員が安堵のため息と共に武器を降ろす。
そんな彼女たちに、伸は労いの言葉をかけた。
「……お疲れさまでした」
「……お疲れ様です」
大量発生したゴブリンの巣。
その中にいたゴブリンクイーンをはじめとする上位種たちの討伐。
それを、ほぼ1人で討伐するなんて、とても人間業とは思えない。
そのため、森川家の正大と上長家の麻里は、信じられないといったような表情で伸に返答した。
『明らかに親父や兄貴以上だ……』
正大からすると、伸は従魔を使役して鷹藤家の人間を試合で倒した先輩という印象だった。
従魔と共に戦うことで有名な森川家の正大としては、伸から学ぶことが自分の成長につながると思い、地元ではない八郷学園に通うことを決めたのだ。
しかし、今回のことで、違う印象を持つようになった。
伸は、従魔なんて使用しなくても強力な戦闘力を持つ人間なのだというようにだ。
その実力は、自分の父や兄よりも上だということを、正大は心の中で確信していた。
『その強さを知りたい!』
上位種を含めた3000近いゴブリンを、たった1人で壊滅させるなんて父たちには無理だ。
個人としての実力が飛び抜けた伸に、従魔がいるというだけだったようだ。
従魔と共に戦うという強さを求めていたが、全く見当違いだった。
だからと言って、正大が伸から学びたいという思いが消えることはなかった。
むしろ、その強さへの憧れが増したといったところだった。
『ここまでなんて……』
麻里も正大同様、心の中で伸のことを考えていた。
強さに憧れて八郷学園に入学したのは正大と同じだ。
しかし、相手が違う。
麻里が憧れたのは、対抗戦2連覇している綾愛にだった。
綾愛に憧れているからこそ、婚約者だという伸のことを認めきれないでいた。
何故なら、伸は綾愛のセコンドに付いているだけで、対抗戦に参加できるような実力を持っているとは思えなかったからだ。
それなのに、今回のことで印象が完全に変わった。
綾愛がゴブリンの巣の退治を伸に任せたとき、婚約者を死地に向かわせるのかと思っていた。
その思いとは違い、綾愛はこの結果を信じているような目をしていた。
その目を信じて指示に従ったが、まさか本当に討伐してしまうとは思いもしなかった。
『柊先輩は男を見る目もただしかったようね……』
伸がとんでもない強さを持っているのは理解した。
だからと言って、麻里の中で憧れているのは綾愛のままだ。
ただ、伸が綾愛の婚約者であることを認めただけだった。
「私は柊家の人間を呼びに行ってくる」
「そうね。お願い」
ゴブリンの巣の発見と討伐の完了。
それを伝えると共にゴブリンの死体処理の協力を求め、奈津希は少し離れた駐車場に待機している柊家の者のところに向かうことにした。
自分たちだけでは手が足りない。
それが分かっているため、綾愛は奈津希の提案を受け入れた。
「奈津希が家の者を呼んでくるまで、できる限り死体の焼却処理をしましょう」
「そうだな」
大量のゴブリンを討伐したことで、周辺の町や村に被害が及ぶことは阻止することができた。
しかし、倒したからそれで終了というわけにはいかない。
死体をそのままにしておくと死体に魔素が貯まり、 アンデッドの魔物となって動き出すかもしれない。
そうなったら、ただのゴブリンの集団に襲われるよりも酷いことになるかもしれない。
もしも3000ものアンデッドに襲われれば、町や村は土や水が腐食し、数年の間作物を育てることなどできなくなるかもしれない。
そうならないようにするためにも、ゴブリンの死体を処理しなければならない。
柊家の人間を呼びに行った奈津希を除き、ここにいる4人だけではどれだけの時間がかかるか分かったものではない。
とはいっても、少しでもその数を減らしておいた方が良いと判断した綾愛の進言を受け、伸たちはゴブリンの死体処理を開始することにした。
「結構逃げてたんだな……」
「いや……、俺たちより先輩の方が……」
「そうですよ……」
洞窟内で伸が暴れまわることで、中には逃げ出すゴブリンがいるかもしれない。
それを阻止するために、綾愛たちには出入り口になりそうな場所で待機してもらっていた。
案の定、小さい出入り口から逃げ出そうとしたゴブリンがいたらしく、ゴブリンの死体を一ヶ所に集めるべく、綾愛たちは倒したゴブリンの死体を洞窟付近に運んできた。
運んできたその数を見た伸は、思っていた以上にゴブリンたちが逃げ出そうとしていたことを意外に思っていた。
ジェネラルなどの上位種があれだけいたのだから、多くのゴブリンがそれらの指示に従って命を賭して戦うものだと思っていたからだ。
しかし、思っていた以上に指示に従わないビビりのゴブリンが多かったようだ。
そんな伸の呟いた感想に、正大と麻里は伸の方が相手にした数が多いだろうとツッコミを入れたい気持ちだった。
ゴブリンクイーンの退治を終えた伸は、ゴブリンの生き残りがいないかを確認した後、洞窟から出る。
すると、洞窟の出入り口には綾愛たちが武器を手に待ち受けていた。
出てきたのが伸だと気付き、全員が安堵のため息と共に武器を降ろす。
そんな彼女たちに、伸は労いの言葉をかけた。
「……お疲れさまでした」
「……お疲れ様です」
大量発生したゴブリンの巣。
その中にいたゴブリンクイーンをはじめとする上位種たちの討伐。
それを、ほぼ1人で討伐するなんて、とても人間業とは思えない。
そのため、森川家の正大と上長家の麻里は、信じられないといったような表情で伸に返答した。
『明らかに親父や兄貴以上だ……』
正大からすると、伸は従魔を使役して鷹藤家の人間を試合で倒した先輩という印象だった。
従魔と共に戦うことで有名な森川家の正大としては、伸から学ぶことが自分の成長につながると思い、地元ではない八郷学園に通うことを決めたのだ。
しかし、今回のことで、違う印象を持つようになった。
伸は、従魔なんて使用しなくても強力な戦闘力を持つ人間なのだというようにだ。
その実力は、自分の父や兄よりも上だということを、正大は心の中で確信していた。
『その強さを知りたい!』
上位種を含めた3000近いゴブリンを、たった1人で壊滅させるなんて父たちには無理だ。
個人としての実力が飛び抜けた伸に、従魔がいるというだけだったようだ。
従魔と共に戦うという強さを求めていたが、全く見当違いだった。
だからと言って、正大が伸から学びたいという思いが消えることはなかった。
むしろ、その強さへの憧れが増したといったところだった。
『ここまでなんて……』
麻里も正大同様、心の中で伸のことを考えていた。
強さに憧れて八郷学園に入学したのは正大と同じだ。
しかし、相手が違う。
麻里が憧れたのは、対抗戦2連覇している綾愛にだった。
綾愛に憧れているからこそ、婚約者だという伸のことを認めきれないでいた。
何故なら、伸は綾愛のセコンドに付いているだけで、対抗戦に参加できるような実力を持っているとは思えなかったからだ。
それなのに、今回のことで印象が完全に変わった。
綾愛がゴブリンの巣の退治を伸に任せたとき、婚約者を死地に向かわせるのかと思っていた。
その思いとは違い、綾愛はこの結果を信じているような目をしていた。
その目を信じて指示に従ったが、まさか本当に討伐してしまうとは思いもしなかった。
『柊先輩は男を見る目もただしかったようね……』
伸がとんでもない強さを持っているのは理解した。
だからと言って、麻里の中で憧れているのは綾愛のままだ。
ただ、伸が綾愛の婚約者であることを認めただけだった。
「私は柊家の人間を呼びに行ってくる」
「そうね。お願い」
ゴブリンの巣の発見と討伐の完了。
それを伝えると共にゴブリンの死体処理の協力を求め、奈津希は少し離れた駐車場に待機している柊家の者のところに向かうことにした。
自分たちだけでは手が足りない。
それが分かっているため、綾愛は奈津希の提案を受け入れた。
「奈津希が家の者を呼んでくるまで、できる限り死体の焼却処理をしましょう」
「そうだな」
大量のゴブリンを討伐したことで、周辺の町や村に被害が及ぶことは阻止することができた。
しかし、倒したからそれで終了というわけにはいかない。
死体をそのままにしておくと死体に魔素が貯まり、 アンデッドの魔物となって動き出すかもしれない。
そうなったら、ただのゴブリンの集団に襲われるよりも酷いことになるかもしれない。
もしも3000ものアンデッドに襲われれば、町や村は土や水が腐食し、数年の間作物を育てることなどできなくなるかもしれない。
そうならないようにするためにも、ゴブリンの死体を処理しなければならない。
柊家の人間を呼びに行った奈津希を除き、ここにいる4人だけではどれだけの時間がかかるか分かったものではない。
とはいっても、少しでもその数を減らしておいた方が良いと判断した綾愛の進言を受け、伸たちはゴブリンの死体処理を開始することにした。
「結構逃げてたんだな……」
「いや……、俺たちより先輩の方が……」
「そうですよ……」
洞窟内で伸が暴れまわることで、中には逃げ出すゴブリンがいるかもしれない。
それを阻止するために、綾愛たちには出入り口になりそうな場所で待機してもらっていた。
案の定、小さい出入り口から逃げ出そうとしたゴブリンがいたらしく、ゴブリンの死体を一ヶ所に集めるべく、綾愛たちは倒したゴブリンの死体を洞窟付近に運んできた。
運んできたその数を見た伸は、思っていた以上にゴブリンたちが逃げ出そうとしていたことを意外に思っていた。
ジェネラルなどの上位種があれだけいたのだから、多くのゴブリンがそれらの指示に従って命を賭して戦うものだと思っていたからだ。
しかし、思っていた以上に指示に従わないビビりのゴブリンが多かったようだ。
そんな伸の呟いた感想に、正大と麻里は伸の方が相手にした数が多いだろうとツッコミを入れたい気持ちだった。
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