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1学年 後期
第68話
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「今年も予定通りだな」
「何も知らないで呑気なものだな……」
選考会も終了した翌日。
今年も在校生の保護者や近隣住民が来場しているが、その中に紛れ込んだ3人の男が、人気のない場所で密かに話し合っていた。
犯罪歴がないためにたいしたチェックもされず、まんまと校内へ進入できた3人は笑みを浮かべる。
「今年はあの柊の連中も来ているようだな……」
「娘がいるからだろ?」
選考会で1年の優勝者となった柊綾愛の父で、柊家の現当主である俊夫も、妻の静奈と一緒に来ている。
その姿を横目で見ていた1人が忌々しそうに呟き、1人がその理由を答えた。
「他にも柊の関係者が結構来ているようだ。予定通りあれを設置してさっさとずらかろう」
「あぁ」
この学園内に進入しようとなると、なかなかその機会はない。
在校生でもない自分たちが、校内に入っても咎められない方法といったら、毎年開催されるこの文化祭の時しかありえない。
この日のために計画を練って来たのだから、柊家の人間に怪しまれないように、早々に事に当たった方が良いと判断した。
各自が持ちこんだ液体入りペットボトルを、この場で組み立てた装置に設置した。
「これで、このスイッチを押せば爆発する」
彼らが作ったのは、液体爆弾と呼ばれる装置だ。
2種類の液体が混ぜると爆発する仕掛けになっている。
ある程度の持ち物の検査はしているが、バラバラに入った人間の飲み物の中身までは警戒されていなかったため、計画通りに事が運んだという形になる。
「後はこれを人の集まっている所へ持って行けば作戦成功だ」
「よしっ!」「じゃあ行くか!」
「…………」
「「「っっっ!?」」」
狙い通りに完成した爆弾に、3人は行動を開始しようとした
そして、その時になってようやく自分たちを見ている視線に気が付くことになった。
慌てて爆弾を隠しつつ、男たちはその人間へ身構える。
「さっきからあんたら何やってんだ?」
3人を見ていたのは伸だった。
彼らがなんとなく怪しい行動をしていたので魔力を使って追跡をしていたら、人気のない場所で合流したため様子を見に来たのだが、爆弾とかいう明らかに怪しい話をしていたため声をかけることにした。
「何だ貴様は!?」
「いや、聞いてんのはこっちだし……」
自分たちの話がどこまで聞かれていたのか、ここの生徒に見られて慌てた男が問いかける。
その問いに、先程の自分の質問を無視された形になった伸はツッコミを入れた。
「んっ? そのバッジ……」
よく見てみれば、この3人は入場時には着けていなかった小さなバッジを胸に付けている。
そのバッジを見て、伸には心当たりがあった。
「お前ら……赤烏とか組織の奴らか?」
「「「っ!?」」」
伸の問いかけに、2人は目を見開いて声を失う。
赤烏とは、元々は義賊として結成された魔術師集団だった。
悪徳権力者から資金などを盗み、孤児院などへ送るなどの行為をおこなっていた。
魔闘組合に登録できる実力がない者も受け入れて構成員を増やしていったのだが、そのせいで大きな団体となってしまったがため、政府から目をつけられることになり、幹部となる者たちは逮捕されることになった。
そのため、構成員たちはそれぞれが勝手に行動するようになってしまい、今ではただの犯罪団体として知られる存在になっている。
その団体の象徴が、赤いカラスが羽を広げているもので、構成員を名乗る者はたいていこのバッジを付けている。
彼らがそのバッジを付けているということは、その犯罪集団の一味だということを示しているということだ。
「……って言っても、どうせあんたら団体の名前を借りただけの犯罪者だろ?」
赤烏の幹部は捕まってしまい、今では団体名とマークだけが独り歩きしている状態で、世の中に不平不満がある人間が、勝手に名乗って犯罪を起こすことがある。
この3人もその口だろうと伸は解釈した。
「何っ!?」「このガキッ!」「舐めやがって!」
自分たちの決死の決意をバカにされていると判断したのか、3人は一気に怒りが沸き上がった。
隠していた爆弾と、起爆スイッチを伸へと見せてきた。
「動くな! こいつは爆弾だ!」
「……爆弾? 小声で話していたのはそれか?」
「その通りだ!」
見せつけてきた爆弾を見て、伸は若干眉をひそめる。
小声で全部聞こえなかったが、この3人はこの爆弾を使って何かしようとしていたようだ。
爆弾を見せつけた男の1人が、端的に伸の質問に返答した。
「このスイッチを押せば2つの液体が合わさって爆発を起こす。スイッチを押されたくなかったらそのまま動かないことだ」
男の1人が爆弾の説明をする。
それによって伸が動けなくなったことを確認して、3人は笑みを浮かべた。
「我々が赤烏だと気付いたのは褒めてやろう。しかし、1人でいたのは間違いだったな」
学園生とは言っても、何人かと共に来ていれば自分たちは捕まえることは可能だったかもしれない。
しかし、自分たちの話を聞かれたのはこの少年1人だ。
この1人さえ何とかしてしまえば、作戦に問題はないと爆弾を持った男は考えた。
「どうする? こいつ人質として連れていくか?」
「いや、騒がれても困る。この場で始末してしまおう」
「そうだな」
人のいる場所にこの爆弾を置いて立ち去り、自分たちは安全な場所から爆発させるのが目的だ。
人質として連れていき、騒がれたら作戦が失敗する。
そのため、3人は伸を始末することにした。
「お前たちが俺を始末? 冗談だろ?」
「何っ!? まさかこれが偽物だとでも思っているのか?」
「いいや」
男たちの発言に、伸は半笑いで話しかける。
まるでバカにしているような態度に、爆弾を持った男はイラ立ったように爆弾をちらつかせて問いかける。
恐怖を煽っているようだが、伸はそれでも変わる様子がない。
「じゃあ、大人しく……」
「本物でも偽物でも関係ないってことだよ!」
「「「っ!?」」」
男が話をしている最中に、伸は気付かれないように身体強化の魔術を発動させ、爆弾を持つ男との距離を詰める。
警戒していたというのに魔術発動の兆候が感じられなかったため、男たちは反応できずに固まる。
「ホイッ!」
「がっ!?」
距離を詰めた伸は、爆弾を持っている男の鳩尾へ一撃加える。
そして、右手の爆弾と、左手の起爆装置を奪い取る。
「爆弾とスイッチは分けて持っていた方がよかったな?」
「「なっ!?」」
爆弾とスイッチを持っていた男があっという間に伸され、その場に蹲る。
あっという間の出来事に、残りの2人は理解できずに呆けている。
「そんな……」
「ここはこんなのばっかなのか……」
伸に爆弾とスイッチを奪われたのを見て、2人は崩れるように膝をついた。
学生相手なら何とかなると思っていたが、ここまでの強さだとは思ってもいなかった。
学生でこれなのだから、魔闘組合に登録されている魔術師はもっとすごいことになる。
一応は魔術師の自分たちとは桁が違い過ぎる。
「寝てろ」
腹を抑えて動けない1人と、戦意喪失となった2人に対し、伸は睡眠魔術をかける。
それにより、3人の犯罪者は眠りについた。
「何が目的だか分からないが、おかしなもん入れやがって……」
学園祭での爆発事件なんて、とてもではないが放置できることではない。
なんとなくで探ってみただけだったが、阻止できて良かった。
「ってか、こいつらどうしよう……そうだ。柊殿に任せよう」
捕まえたはいいが、このままにしておく訳にはいかない。
どうしたものかと思ったが、文化祭には柊家の人間が来ている。
連絡すれば何とかしてくれるだろうと、伸はスマホで連絡を入れることにしたのだった。
「何も知らないで呑気なものだな……」
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今年も在校生の保護者や近隣住民が来場しているが、その中に紛れ込んだ3人の男が、人気のない場所で密かに話し合っていた。
犯罪歴がないためにたいしたチェックもされず、まんまと校内へ進入できた3人は笑みを浮かべる。
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その姿を横目で見ていた1人が忌々しそうに呟き、1人がその理由を答えた。
「他にも柊の関係者が結構来ているようだ。予定通りあれを設置してさっさとずらかろう」
「あぁ」
この学園内に進入しようとなると、なかなかその機会はない。
在校生でもない自分たちが、校内に入っても咎められない方法といったら、毎年開催されるこの文化祭の時しかありえない。
この日のために計画を練って来たのだから、柊家の人間に怪しまれないように、早々に事に当たった方が良いと判断した。
各自が持ちこんだ液体入りペットボトルを、この場で組み立てた装置に設置した。
「これで、このスイッチを押せば爆発する」
彼らが作ったのは、液体爆弾と呼ばれる装置だ。
2種類の液体が混ぜると爆発する仕掛けになっている。
ある程度の持ち物の検査はしているが、バラバラに入った人間の飲み物の中身までは警戒されていなかったため、計画通りに事が運んだという形になる。
「後はこれを人の集まっている所へ持って行けば作戦成功だ」
「よしっ!」「じゃあ行くか!」
「…………」
「「「っっっ!?」」」
狙い通りに完成した爆弾に、3人は行動を開始しようとした
そして、その時になってようやく自分たちを見ている視線に気が付くことになった。
慌てて爆弾を隠しつつ、男たちはその人間へ身構える。
「さっきからあんたら何やってんだ?」
3人を見ていたのは伸だった。
彼らがなんとなく怪しい行動をしていたので魔力を使って追跡をしていたら、人気のない場所で合流したため様子を見に来たのだが、爆弾とかいう明らかに怪しい話をしていたため声をかけることにした。
「何だ貴様は!?」
「いや、聞いてんのはこっちだし……」
自分たちの話がどこまで聞かれていたのか、ここの生徒に見られて慌てた男が問いかける。
その問いに、先程の自分の質問を無視された形になった伸はツッコミを入れた。
「んっ? そのバッジ……」
よく見てみれば、この3人は入場時には着けていなかった小さなバッジを胸に付けている。
そのバッジを見て、伸には心当たりがあった。
「お前ら……赤烏とか組織の奴らか?」
「「「っ!?」」」
伸の問いかけに、2人は目を見開いて声を失う。
赤烏とは、元々は義賊として結成された魔術師集団だった。
悪徳権力者から資金などを盗み、孤児院などへ送るなどの行為をおこなっていた。
魔闘組合に登録できる実力がない者も受け入れて構成員を増やしていったのだが、そのせいで大きな団体となってしまったがため、政府から目をつけられることになり、幹部となる者たちは逮捕されることになった。
そのため、構成員たちはそれぞれが勝手に行動するようになってしまい、今ではただの犯罪団体として知られる存在になっている。
その団体の象徴が、赤いカラスが羽を広げているもので、構成員を名乗る者はたいていこのバッジを付けている。
彼らがそのバッジを付けているということは、その犯罪集団の一味だということを示しているということだ。
「……って言っても、どうせあんたら団体の名前を借りただけの犯罪者だろ?」
赤烏の幹部は捕まってしまい、今では団体名とマークだけが独り歩きしている状態で、世の中に不平不満がある人間が、勝手に名乗って犯罪を起こすことがある。
この3人もその口だろうと伸は解釈した。
「何っ!?」「このガキッ!」「舐めやがって!」
自分たちの決死の決意をバカにされていると判断したのか、3人は一気に怒りが沸き上がった。
隠していた爆弾と、起爆スイッチを伸へと見せてきた。
「動くな! こいつは爆弾だ!」
「……爆弾? 小声で話していたのはそれか?」
「その通りだ!」
見せつけてきた爆弾を見て、伸は若干眉をひそめる。
小声で全部聞こえなかったが、この3人はこの爆弾を使って何かしようとしていたようだ。
爆弾を見せつけた男の1人が、端的に伸の質問に返答した。
「このスイッチを押せば2つの液体が合わさって爆発を起こす。スイッチを押されたくなかったらそのまま動かないことだ」
男の1人が爆弾の説明をする。
それによって伸が動けなくなったことを確認して、3人は笑みを浮かべた。
「我々が赤烏だと気付いたのは褒めてやろう。しかし、1人でいたのは間違いだったな」
学園生とは言っても、何人かと共に来ていれば自分たちは捕まえることは可能だったかもしれない。
しかし、自分たちの話を聞かれたのはこの少年1人だ。
この1人さえ何とかしてしまえば、作戦に問題はないと爆弾を持った男は考えた。
「どうする? こいつ人質として連れていくか?」
「いや、騒がれても困る。この場で始末してしまおう」
「そうだな」
人のいる場所にこの爆弾を置いて立ち去り、自分たちは安全な場所から爆発させるのが目的だ。
人質として連れていき、騒がれたら作戦が失敗する。
そのため、3人は伸を始末することにした。
「お前たちが俺を始末? 冗談だろ?」
「何っ!? まさかこれが偽物だとでも思っているのか?」
「いいや」
男たちの発言に、伸は半笑いで話しかける。
まるでバカにしているような態度に、爆弾を持った男はイラ立ったように爆弾をちらつかせて問いかける。
恐怖を煽っているようだが、伸はそれでも変わる様子がない。
「じゃあ、大人しく……」
「本物でも偽物でも関係ないってことだよ!」
「「「っ!?」」」
男が話をしている最中に、伸は気付かれないように身体強化の魔術を発動させ、爆弾を持つ男との距離を詰める。
警戒していたというのに魔術発動の兆候が感じられなかったため、男たちは反応できずに固まる。
「ホイッ!」
「がっ!?」
距離を詰めた伸は、爆弾を持っている男の鳩尾へ一撃加える。
そして、右手の爆弾と、左手の起爆装置を奪い取る。
「爆弾とスイッチは分けて持っていた方がよかったな?」
「「なっ!?」」
爆弾とスイッチを持っていた男があっという間に伸され、その場に蹲る。
あっという間の出来事に、残りの2人は理解できずに呆けている。
「そんな……」
「ここはこんなのばっかなのか……」
伸に爆弾とスイッチを奪われたのを見て、2人は崩れるように膝をついた。
学生相手なら何とかなると思っていたが、ここまでの強さだとは思ってもいなかった。
学生でこれなのだから、魔闘組合に登録されている魔術師はもっとすごいことになる。
一応は魔術師の自分たちとは桁が違い過ぎる。
「寝てろ」
腹を抑えて動けない1人と、戦意喪失となった2人に対し、伸は睡眠魔術をかける。
それにより、3人の犯罪者は眠りについた。
「何が目的だか分からないが、おかしなもん入れやがって……」
学園祭での爆発事件なんて、とてもではないが放置できることではない。
なんとなくで探ってみただけだったが、阻止できて良かった。
「ってか、こいつらどうしよう……そうだ。柊殿に任せよう」
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