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1学年 前期
第39話
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「魔物の相手は任せるぞ!」
「はいっ! お任せを!」
鷹藤家の当主である康義が、集まった分家の者たちに向かって指示を出す。
魔人が潜伏している場所は、伸たちの想像通り山奥の洞窟だった。
その洞窟を見つけ、中にモグラの魔物の存在を確認した鷹藤家だが、その洞窟が八郷地区にまで繋がっているとまでは分かっていないようだ。
準備万端に集まった者たちは、官林地区側の出入り口周辺しか警戒していないようだ。
「文康! お前は周囲の指示に従え!」
「…はいっ!」
伸と同じ年で、この世代最高の天才といわれている鷹藤文康も、祖父の康義に頼み込んで参戦することに成功した。
しかし、魔人ではなく、他の者に混じっての配下の魔物を討伐することしか認められていない。
高校生を参戦できるだけでもすごいことなのだが、文康としては祖父や父と共に魔人の討伐に行きたいという気持ちでいる。
そのため、返事までワンテンポの間があったように感じる。
「お前たち! 文康が指示に従わなかったときは、強制的にでも避難させろ!」
「了解しました!」
文康の返事に、不満があるということを感じた父の康則は、文康の周囲に付けた魔術師たちに向けて指示を出す。
父の康義と違い、康則は息子の文康を参戦させることは早いと感じているため、勝手な行動をさせないいように釘を打つ。
これで余計なことをして大怪我を負うことはないだろうと、ひとまず肩をなで下ろした。
「行くぞ!!」
「「「「「おぉっ!!」」」」」
打ち合わせも終わり、康義は魔人討伐を開始とする合図を送る。
それにより、鷹藤家の魔術師たちが洞窟内へと進入していった。
「……鷹藤、進入開始しました」
鷹藤家の洞窟内への進入。
それを、遠く離れた場所から眺めていた男性がどこかへ向けて連絡していた。
柊家の運転手である田中である。
◆◆◆◆◆
「っ!?」
鷹藤家の洞窟内進入をしたという連絡が伸に入ったのは、昼休みに入ってすぐだった。
ポケットのスマホが揺れ、伸は了たちいつものメンバーの目を逃れ、慌ててトイレへと向かった。
「腹減ってるけど、そんな事言ってる場合じゃないからな」
スマホのメールを見て、伸は予想通りの内容に溜息を吐く。
出来れば昼食後に始めて欲しかったが、そんな事も言っていられない。
了たちに、体調不良で午後の授業は早退するメールを送り、伸はトイレの個室から密かに転移した。
「どうも」
「あぁ、よく来てくれた」
八郷地区側の洞窟付近に転移した伸は、すぐに柊家の当主である俊夫と合流した。
鷹藤家の進入と共に、伸が魔人をこちらへ誘き出す。
前回は不意打ちを食らい、部下たちにも無様な姿を見せることになってしまった。
その汚名返上をするために訓練を重ねてきたのか、前よりも少し魔力量が増えているように思える。
「予想通りでしたね」
「あぁ、そのお陰で準備は万端だ」
この洞窟のことを伸に指摘され、柊家は密かに探りを入れていた。
鷹藤より先に中にモグラの魔物を発見したため、ここに魔人が潜伏していると確信していた。
魔人からしても、地中を移動できるモグラ型だといっても労力を伴うため、元から穴が開いている場所の方が楽だということなのだろう。
理由はともかく、ここが正解だったことで準備が整えられた。
もしも、魔人が鷹藤や伸たちの方とは違う場所へ逃げたとしたら、近隣の町に被害が及ぶかもしれないため、伸たちが到着するまでの時間を稼ぐように、麓には柊家の人間を集めておいた。
逃走対策もできたため、安心して戦いに専念できるというものだ。
「では、魔力を放って誘き出してみます。準備はいいですか?」
「あぁ、頼む!」
鷹藤家が官林側に進入を開始してから数分経っている。
そろそろ魔物たちとの戦闘が始めっていることだろう。
そのまま鷹藤家が魔人と遭遇してしまう前に、こちらに誘き出すのが伸たちの狙いだ。
殺された木畑のこともあり気合を入れる俊夫に、伸は開始の合図を求めるように問いかける。
その問いに、1回深呼吸をした俊夫は頷きを返した。
「ムンッ!」
俊夫の頷きを合図に、伸は洞窟内へ向かって探知の魔術を開始する。
逃走期間に集めたであろう魔物には目もくれず、魔人と人質となっている医者たちを探し出す。
「また随分地下深くに潜んでるみたいだな……」
前回も洞窟の深部に住処を作っていたようだが、今回も同じように深くに潜んでいるようだ。
魔力を薄く延ばし洞窟内へと広げていくが、なかなか魔人の魔力が見つけられない。
「みつけた!」
「人質は無事か?」
愚痴りつつも探知を広げていくと、ようやく目当ての魔人2体が見つけられた。
そして、伸の発見の言葉に俊夫が反応する。
魔人も大事だが、人質となっている医者たちも救出したい。
そのため、伸に医者の安否を問いかけてきた。
「……言いにくいですが、厳しいかもしれません」
「くっ! そうか……」
魔人たちの近くを探知してみると、人質らしき人間を発見することができた。
しかし、その人間たちに生命反応を感じない。
どうやら、事切れているように感じ、伸は悔し気に俊夫へと返答した。
出来れば生きて助け出したいと思っていたが、言いたくないが可能性は低いと思っていた。
それが当たってしまい、俊夫も表情を歪めた。
「気付いたようです! あとは奴らが来るのを待ちましょう」
魔人に触れた探知の魔力を少しだけ強める。
それにより、探知されてるということをわざと分からせることができた。
戦った時の経験から、片方の魔人が伸の魔力だということを気付いたようだ。
この洞窟を住処にしている魔人なら、これで八郷地区側から探知していることを分かるだろう。
あとは、鷹藤側へと向かうか、それとも伸へのリベンジとしてこちらへ向かってくるか魔人が選ぶだけだ。
「来たっ!!」
「っ!!」
周辺に張り巡らせた伸の魔力にヒットがあった。
その伸の言葉を受け、俊夫は戦闘態勢に入る。
「「「「「ギュギュッ!!」」」」」
「魔物の方か……」
出入り口からワラワラと出てきたのは、前回同様の巨大モグラの魔物たちだった。
魔人を待っていただけに、俊夫は軽く嘆息する。
「こいつらは俺が始末します。柊殿は魔力の温存をしていて下さい」
「……分かった」
前回不意打ちで殺されかけたが、魔人は俊夫とほぼ同等の強さだと伸は思っている。
部下の敵討ちをしたいのなら、魔物相手にも魔力を温存しておいた方が良い。
そのため、出てきた魔物は伸が引き受けることにした。
伸の言いたい意味が分かったため、俊夫は素直に引き下がった。
「シッ!!」
「ギュッ!!」「ギッ!!」
体に魔力を纏って身体強化をすると、伸は魔物たちへと攻撃を開始した。
一瞬のうちに魔物たちに接近すると、腰に差した刀を抜いて斬りかかる。
伸の速度についていけない魔物たちは、バタバタと崩れ落ちていく。
そして、魔も尾たちが反撃をする間もなく、あっという間に出てきた魔物たちは数を減らしていった。
「……さすがだな」
前回は死にかけていたためきちんと見ることができなかったが、改めて伸の戦闘を見て俊夫は唖然とする。
高校生どころか、この国の魔術師の中でも最強と言っていたことは自惚れではなかったようだ。
「この若さでこの強さなら、やはり……」
自分でも対応できるか分からない速度で動く伸に、俊夫はある確信をしていた。
この洞窟で昔起きた事件。
綾愛を誘拐した犯人を密かに倒したのは伸であるということを……。
「はいっ! お任せを!」
鷹藤家の当主である康義が、集まった分家の者たちに向かって指示を出す。
魔人が潜伏している場所は、伸たちの想像通り山奥の洞窟だった。
その洞窟を見つけ、中にモグラの魔物の存在を確認した鷹藤家だが、その洞窟が八郷地区にまで繋がっているとまでは分かっていないようだ。
準備万端に集まった者たちは、官林地区側の出入り口周辺しか警戒していないようだ。
「文康! お前は周囲の指示に従え!」
「…はいっ!」
伸と同じ年で、この世代最高の天才といわれている鷹藤文康も、祖父の康義に頼み込んで参戦することに成功した。
しかし、魔人ではなく、他の者に混じっての配下の魔物を討伐することしか認められていない。
高校生を参戦できるだけでもすごいことなのだが、文康としては祖父や父と共に魔人の討伐に行きたいという気持ちでいる。
そのため、返事までワンテンポの間があったように感じる。
「お前たち! 文康が指示に従わなかったときは、強制的にでも避難させろ!」
「了解しました!」
文康の返事に、不満があるということを感じた父の康則は、文康の周囲に付けた魔術師たちに向けて指示を出す。
父の康義と違い、康則は息子の文康を参戦させることは早いと感じているため、勝手な行動をさせないいように釘を打つ。
これで余計なことをして大怪我を負うことはないだろうと、ひとまず肩をなで下ろした。
「行くぞ!!」
「「「「「おぉっ!!」」」」」
打ち合わせも終わり、康義は魔人討伐を開始とする合図を送る。
それにより、鷹藤家の魔術師たちが洞窟内へと進入していった。
「……鷹藤、進入開始しました」
鷹藤家の洞窟内への進入。
それを、遠く離れた場所から眺めていた男性がどこかへ向けて連絡していた。
柊家の運転手である田中である。
◆◆◆◆◆
「っ!?」
鷹藤家の洞窟内進入をしたという連絡が伸に入ったのは、昼休みに入ってすぐだった。
ポケットのスマホが揺れ、伸は了たちいつものメンバーの目を逃れ、慌ててトイレへと向かった。
「腹減ってるけど、そんな事言ってる場合じゃないからな」
スマホのメールを見て、伸は予想通りの内容に溜息を吐く。
出来れば昼食後に始めて欲しかったが、そんな事も言っていられない。
了たちに、体調不良で午後の授業は早退するメールを送り、伸はトイレの個室から密かに転移した。
「どうも」
「あぁ、よく来てくれた」
八郷地区側の洞窟付近に転移した伸は、すぐに柊家の当主である俊夫と合流した。
鷹藤家の進入と共に、伸が魔人をこちらへ誘き出す。
前回は不意打ちを食らい、部下たちにも無様な姿を見せることになってしまった。
その汚名返上をするために訓練を重ねてきたのか、前よりも少し魔力量が増えているように思える。
「予想通りでしたね」
「あぁ、そのお陰で準備は万端だ」
この洞窟のことを伸に指摘され、柊家は密かに探りを入れていた。
鷹藤より先に中にモグラの魔物を発見したため、ここに魔人が潜伏していると確信していた。
魔人からしても、地中を移動できるモグラ型だといっても労力を伴うため、元から穴が開いている場所の方が楽だということなのだろう。
理由はともかく、ここが正解だったことで準備が整えられた。
もしも、魔人が鷹藤や伸たちの方とは違う場所へ逃げたとしたら、近隣の町に被害が及ぶかもしれないため、伸たちが到着するまでの時間を稼ぐように、麓には柊家の人間を集めておいた。
逃走対策もできたため、安心して戦いに専念できるというものだ。
「では、魔力を放って誘き出してみます。準備はいいですか?」
「あぁ、頼む!」
鷹藤家が官林側に進入を開始してから数分経っている。
そろそろ魔物たちとの戦闘が始めっていることだろう。
そのまま鷹藤家が魔人と遭遇してしまう前に、こちらに誘き出すのが伸たちの狙いだ。
殺された木畑のこともあり気合を入れる俊夫に、伸は開始の合図を求めるように問いかける。
その問いに、1回深呼吸をした俊夫は頷きを返した。
「ムンッ!」
俊夫の頷きを合図に、伸は洞窟内へ向かって探知の魔術を開始する。
逃走期間に集めたであろう魔物には目もくれず、魔人と人質となっている医者たちを探し出す。
「また随分地下深くに潜んでるみたいだな……」
前回も洞窟の深部に住処を作っていたようだが、今回も同じように深くに潜んでいるようだ。
魔力を薄く延ばし洞窟内へと広げていくが、なかなか魔人の魔力が見つけられない。
「みつけた!」
「人質は無事か?」
愚痴りつつも探知を広げていくと、ようやく目当ての魔人2体が見つけられた。
そして、伸の発見の言葉に俊夫が反応する。
魔人も大事だが、人質となっている医者たちも救出したい。
そのため、伸に医者の安否を問いかけてきた。
「……言いにくいですが、厳しいかもしれません」
「くっ! そうか……」
魔人たちの近くを探知してみると、人質らしき人間を発見することができた。
しかし、その人間たちに生命反応を感じない。
どうやら、事切れているように感じ、伸は悔し気に俊夫へと返答した。
出来れば生きて助け出したいと思っていたが、言いたくないが可能性は低いと思っていた。
それが当たってしまい、俊夫も表情を歪めた。
「気付いたようです! あとは奴らが来るのを待ちましょう」
魔人に触れた探知の魔力を少しだけ強める。
それにより、探知されてるということをわざと分からせることができた。
戦った時の経験から、片方の魔人が伸の魔力だということを気付いたようだ。
この洞窟を住処にしている魔人なら、これで八郷地区側から探知していることを分かるだろう。
あとは、鷹藤側へと向かうか、それとも伸へのリベンジとしてこちらへ向かってくるか魔人が選ぶだけだ。
「来たっ!!」
「っ!!」
周辺に張り巡らせた伸の魔力にヒットがあった。
その伸の言葉を受け、俊夫は戦闘態勢に入る。
「「「「「ギュギュッ!!」」」」」
「魔物の方か……」
出入り口からワラワラと出てきたのは、前回同様の巨大モグラの魔物たちだった。
魔人を待っていただけに、俊夫は軽く嘆息する。
「こいつらは俺が始末します。柊殿は魔力の温存をしていて下さい」
「……分かった」
前回不意打ちで殺されかけたが、魔人は俊夫とほぼ同等の強さだと伸は思っている。
部下の敵討ちをしたいのなら、魔物相手にも魔力を温存しておいた方が良い。
そのため、出てきた魔物は伸が引き受けることにした。
伸の言いたい意味が分かったため、俊夫は素直に引き下がった。
「シッ!!」
「ギュッ!!」「ギッ!!」
体に魔力を纏って身体強化をすると、伸は魔物たちへと攻撃を開始した。
一瞬のうちに魔物たちに接近すると、腰に差した刀を抜いて斬りかかる。
伸の速度についていけない魔物たちは、バタバタと崩れ落ちていく。
そして、魔も尾たちが反撃をする間もなく、あっという間に出てきた魔物たちは数を減らしていった。
「……さすがだな」
前回は死にかけていたためきちんと見ることができなかったが、改めて伸の戦闘を見て俊夫は唖然とする。
高校生どころか、この国の魔術師の中でも最強と言っていたことは自惚れではなかったようだ。
「この若さでこの強さなら、やはり……」
自分でも対応できるか分からない速度で動く伸に、俊夫はある確信をしていた。
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