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1学年 前期
第24話
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「ハッ!! ハッ!!」
「ギッ!!」「ギャ!!」
コガネムシを大きくしたような魔物2体に、それぞれ綾愛の魔力弾が飛ぶ。
それが直撃し、魔物は動かなくなる。
探知で見ると、擬死などではなく魔物が死んでいるのが確認できる。
「この程度の魔物ならもう大丈夫そうだな」
「そうね。学園で学んでいることをそのままやっている感じだけど……」
何度かの戦闘により、綾愛は単体だけでなく数体の魔物を相手にしても落ち着いて戦えるようになってきた。
最初は緊張などで失敗したが、落ち着いてからは全く問題なくなってきたところを見ると、さすが学園主席といったところだ。
その様子を見て、これからは徐々に数を増やしていくか、他の魔物と戦わせることも伸は検討し始めていた。
綾愛としては虫の魔物相手に放っている魔術は、学園で習っていることをそのまま使っているだけに過ぎないため、何だか緊張していたのがバカバカしく思えてきていた。
「次は魔術じゃなくて剣で戦ってみるか?」
「分かったわ」
安全性を考えるなら、離れた位置から魔術で倒す方が良いに決まっている。
しかし、戦闘においてはいつも距離を取って戦えるとは限らない。
そのために、学園でも近接戦のための授業も設けられている。
入試で試験官から一本取った綾愛なら、この程度の魔物なら問題ないだろうと、今度は剣の訓練に入ることにした。
「……? 何っ?」
「騒がしいな……」
剣での訓練も問題なく進み、伸は綾愛の訓練用に他の魔物を探そうかと考えていた。
そこで、伸たちが入ってきた入り口の方から足音が近づいてきた。
なにやら慌てているのか、走っているようだ。
「お嬢!!」
「田中さん?」『運転手さん?』
走ってきた人間を見て、綾愛が反応する。
同時に、伸も心の中で見た顔だと分かった。
先日柊家に案内してくれた時に、運転手をしていた男性だ。
あの時助手席にいた木畑とは話したが、運転手をしていた彼の方とは話すことはなかった。
そのため、名前を知らなかったが、どうやら田中という人らしい。
ムキムキの肉体を見る限り鍛えているようだが、魔術面がいまいちらしく、戦闘に関与するタイプではないようだ。
「良かった! 無事のようですね?」
「えぇ、無事だけど……。何かあったのですか?」
その運転手の田中さんは、綾愛が無事の様子を見て安心したように呟く。
強張った表情をしているところを見ると、いい予感はしない。
「この洞窟の最奥に魔物の大群が発見されました!」
「「っ!!」」
田中さんの説明によると、洞窟内の坑道を進んでいた一班が最奥に進んだ時、大量の魔物に遭遇し、すぐさま避難を開始したそうだ。
他の班にもそのことは伝えられ、全員が避難を開始したそうだ。
その情報が地上に控えていたメンバーにも伝えられ、田中さんが入り口からそれほど離れていない場所にいるであろう綾愛たちに直接伝えに来てくれたらしい。
魔物が多いとは言っても、たいした魔物がいないと思っていたが、柊家の人間が逃げるほどなのだから、よっぽどの数と強さの魔物なのだろう。
その話を聞いた伸と綾愛は、驚きで目を見開いた。
「お嬢はあっしと一緒にすぐにでも外へ避難を開始してください!」
「わ、分かったわ」
プロの魔闘組合員が逃げ出すような強さと数の魔物を相手に、弱い魔物相手に慣れただけの綾愛では危険しかない。
田中さんの言うように、早々にここから出て安全な場所へと避難をするべきだ。
その指示を受け、綾愛は了承したように頷いた。
「あの……」
「あぁ! 新田殿は身の安全を最優先に、魔物の相手をしてほしいとの話です」
柊家の御姫様である綾愛のことで頭がいっぱいなのか、田中は伸がいることを忘れているようだ。
指示を綾愛に話し終えたのを見計らい、伸は自分はどうするべきか問いかけようとした。
ようやく伸に気付いた田中は、伸に対して出されていた指示を伝えた。
綾愛とは違い、伸は柊家当主の俊夫が太鼓判を押した強さの持ち主。
それを知っているうえでの指示らしく、自分も高校生だという配慮は皆無の指示だった。
「……了解しました『面倒だな……』」
別に魔物と戦うのは構わないが、プロでも危険な相手を相手をしないといけないとなると、骨が折れそうだ。
断ろうかとも思ったが、プロが逃げるような魔物を放置する訳にもいかないので、内心では面倒くさいとおもいつつ、伸は了承した。
「それではお気をつけて!」
「新田君! 無理しないでね?」
「ハイハイ……」
ここからは単独行動をすることになった伸に、避難を開始する2人は労いの言葉をかける。
無理するつもりはさらさらない伸は、その言葉に軽い感じで返答した。
「っ!! 危ない!!」
「「っ!?」」
2人が数歩進んだところで、伸は探知を広げて警戒を高めようとした。
そして、すぐに地下から勢いよく迫り来る魔物の存在に気が付いた。
しかも、その魔物は綾愛と田中に向かって進んでいたため、伸はすぐさま2人に対して制止の声をかけた。
「チッ!!」
「キャッ!!」
呼び止めたのは良いが、魔物はそのまま向かって来ている。
しかも、綾愛に向かって一直線だった。
綾愛に説明している時間もないため、伸は綾愛を抱き寄せて、その場から引き離した。
“ゴッ!!”
「ギュッ!!」
「「っ!!」」
先ほどまで綾愛のいた地面に穴が開き、そこから魔物が飛び出してきた。
それによって、伸と綾愛は田中と分断されてしまった。
「お嬢!! 新田殿!!」
「柊のことは俺に任せて、田中さんは逃げろ!!」
「くっ!! 新田殿、お嬢を頼みます!!」
「大丈夫っす!」
穴からは魔物が何匹も出てきている。
分断されて出口の方にいる田中は、2人のことを心配するように声をかけて来るが、そんな状況ではない。
そのままでいても危険でしかないため、伸は田中に逃げるように指示する。
状況的に何もできないことを理解した田中は、歯噛みして悔しがった後、綾愛のことを伸に頼んで退避を開始した。
「こいつらは……」
「学園に出たのと同じ魔物?」
穴から出てきた魔物を見て、伸と綾愛は御姫様抱っこの状態というのを忘れて呟く。
その魔物は、2人とも見知った魔物だった。
綾愛が呟いたように、学園に侵入してきた巨大モグラの魔物だ。
「……マズイな」
「えっ?」
魔物を見て、伸は表情を曇らせつつ呟く。
その呟きに反応した綾愛は首を傾げる。
「この魔物を操る魔人がいるかもしれないって話だったろ?」
「っっっ!!」
最奥で見つけた大量の魔物たちとは、この巨大モグラのことだろう。
魔闘組合の間ではまだ噂の段階だったが、この魔物を操る魔人が存在しているという話だった。
そうなると、もしかしたら噂などではなく本当に魔人が存在しているかもしれない。
しかも、ここにだ。
そのことを思いだした綾愛は、一気に顔を青くなった。
弱い魔物に慣れたばかりの綾愛では、魔人どころかこの巨大モグラですら相手にならない。
そのことが分かったからこその反応だろう。
「とりあえず、こいつらを相手にするから降りてくれ」
「あっ!」
穴から魔物がぞろぞろと出てくる。
魔力に反応しているのか、綾愛の方に目を向けている。
そのお陰で田中さんを追う様子がないのが救いだ。
綾愛を逃がすためにも、まずは魔物を倒す必要があるため、伸は綾愛に降りることを促す。
そこでようやく自分が御姫様抱っこの状態だということを思いだしたのか、綾愛は顔を真っ赤にさせて伸の腕から降りた。
「……どんだけいんだ?」
穴から出てきたモグラたちは、ジワジワと伸たちに迫り来る。
それにしても、大量に出てきた魔物にうんざりしたように、伸は腰に差していた刀を抜いた。
「ギッ!!」「ギャ!!」
コガネムシを大きくしたような魔物2体に、それぞれ綾愛の魔力弾が飛ぶ。
それが直撃し、魔物は動かなくなる。
探知で見ると、擬死などではなく魔物が死んでいるのが確認できる。
「この程度の魔物ならもう大丈夫そうだな」
「そうね。学園で学んでいることをそのままやっている感じだけど……」
何度かの戦闘により、綾愛は単体だけでなく数体の魔物を相手にしても落ち着いて戦えるようになってきた。
最初は緊張などで失敗したが、落ち着いてからは全く問題なくなってきたところを見ると、さすが学園主席といったところだ。
その様子を見て、これからは徐々に数を増やしていくか、他の魔物と戦わせることも伸は検討し始めていた。
綾愛としては虫の魔物相手に放っている魔術は、学園で習っていることをそのまま使っているだけに過ぎないため、何だか緊張していたのがバカバカしく思えてきていた。
「次は魔術じゃなくて剣で戦ってみるか?」
「分かったわ」
安全性を考えるなら、離れた位置から魔術で倒す方が良いに決まっている。
しかし、戦闘においてはいつも距離を取って戦えるとは限らない。
そのために、学園でも近接戦のための授業も設けられている。
入試で試験官から一本取った綾愛なら、この程度の魔物なら問題ないだろうと、今度は剣の訓練に入ることにした。
「……? 何っ?」
「騒がしいな……」
剣での訓練も問題なく進み、伸は綾愛の訓練用に他の魔物を探そうかと考えていた。
そこで、伸たちが入ってきた入り口の方から足音が近づいてきた。
なにやら慌てているのか、走っているようだ。
「お嬢!!」
「田中さん?」『運転手さん?』
走ってきた人間を見て、綾愛が反応する。
同時に、伸も心の中で見た顔だと分かった。
先日柊家に案内してくれた時に、運転手をしていた男性だ。
あの時助手席にいた木畑とは話したが、運転手をしていた彼の方とは話すことはなかった。
そのため、名前を知らなかったが、どうやら田中という人らしい。
ムキムキの肉体を見る限り鍛えているようだが、魔術面がいまいちらしく、戦闘に関与するタイプではないようだ。
「良かった! 無事のようですね?」
「えぇ、無事だけど……。何かあったのですか?」
その運転手の田中さんは、綾愛が無事の様子を見て安心したように呟く。
強張った表情をしているところを見ると、いい予感はしない。
「この洞窟の最奥に魔物の大群が発見されました!」
「「っ!!」」
田中さんの説明によると、洞窟内の坑道を進んでいた一班が最奥に進んだ時、大量の魔物に遭遇し、すぐさま避難を開始したそうだ。
他の班にもそのことは伝えられ、全員が避難を開始したそうだ。
その情報が地上に控えていたメンバーにも伝えられ、田中さんが入り口からそれほど離れていない場所にいるであろう綾愛たちに直接伝えに来てくれたらしい。
魔物が多いとは言っても、たいした魔物がいないと思っていたが、柊家の人間が逃げるほどなのだから、よっぽどの数と強さの魔物なのだろう。
その話を聞いた伸と綾愛は、驚きで目を見開いた。
「お嬢はあっしと一緒にすぐにでも外へ避難を開始してください!」
「わ、分かったわ」
プロの魔闘組合員が逃げ出すような強さと数の魔物を相手に、弱い魔物相手に慣れただけの綾愛では危険しかない。
田中さんの言うように、早々にここから出て安全な場所へと避難をするべきだ。
その指示を受け、綾愛は了承したように頷いた。
「あの……」
「あぁ! 新田殿は身の安全を最優先に、魔物の相手をしてほしいとの話です」
柊家の御姫様である綾愛のことで頭がいっぱいなのか、田中は伸がいることを忘れているようだ。
指示を綾愛に話し終えたのを見計らい、伸は自分はどうするべきか問いかけようとした。
ようやく伸に気付いた田中は、伸に対して出されていた指示を伝えた。
綾愛とは違い、伸は柊家当主の俊夫が太鼓判を押した強さの持ち主。
それを知っているうえでの指示らしく、自分も高校生だという配慮は皆無の指示だった。
「……了解しました『面倒だな……』」
別に魔物と戦うのは構わないが、プロでも危険な相手を相手をしないといけないとなると、骨が折れそうだ。
断ろうかとも思ったが、プロが逃げるような魔物を放置する訳にもいかないので、内心では面倒くさいとおもいつつ、伸は了承した。
「それではお気をつけて!」
「新田君! 無理しないでね?」
「ハイハイ……」
ここからは単独行動をすることになった伸に、避難を開始する2人は労いの言葉をかける。
無理するつもりはさらさらない伸は、その言葉に軽い感じで返答した。
「っ!! 危ない!!」
「「っ!?」」
2人が数歩進んだところで、伸は探知を広げて警戒を高めようとした。
そして、すぐに地下から勢いよく迫り来る魔物の存在に気が付いた。
しかも、その魔物は綾愛と田中に向かって進んでいたため、伸はすぐさま2人に対して制止の声をかけた。
「チッ!!」
「キャッ!!」
呼び止めたのは良いが、魔物はそのまま向かって来ている。
しかも、綾愛に向かって一直線だった。
綾愛に説明している時間もないため、伸は綾愛を抱き寄せて、その場から引き離した。
“ゴッ!!”
「ギュッ!!」
「「っ!!」」
先ほどまで綾愛のいた地面に穴が開き、そこから魔物が飛び出してきた。
それによって、伸と綾愛は田中と分断されてしまった。
「お嬢!! 新田殿!!」
「柊のことは俺に任せて、田中さんは逃げろ!!」
「くっ!! 新田殿、お嬢を頼みます!!」
「大丈夫っす!」
穴からは魔物が何匹も出てきている。
分断されて出口の方にいる田中は、2人のことを心配するように声をかけて来るが、そんな状況ではない。
そのままでいても危険でしかないため、伸は田中に逃げるように指示する。
状況的に何もできないことを理解した田中は、歯噛みして悔しがった後、綾愛のことを伸に頼んで退避を開始した。
「こいつらは……」
「学園に出たのと同じ魔物?」
穴から出てきた魔物を見て、伸と綾愛は御姫様抱っこの状態というのを忘れて呟く。
その魔物は、2人とも見知った魔物だった。
綾愛が呟いたように、学園に侵入してきた巨大モグラの魔物だ。
「……マズイな」
「えっ?」
魔物を見て、伸は表情を曇らせつつ呟く。
その呟きに反応した綾愛は首を傾げる。
「この魔物を操る魔人がいるかもしれないって話だったろ?」
「っっっ!!」
最奥で見つけた大量の魔物たちとは、この巨大モグラのことだろう。
魔闘組合の間ではまだ噂の段階だったが、この魔物を操る魔人が存在しているという話だった。
そうなると、もしかしたら噂などではなく本当に魔人が存在しているかもしれない。
しかも、ここにだ。
そのことを思いだした綾愛は、一気に顔を青くなった。
弱い魔物に慣れたばかりの綾愛では、魔人どころかこの巨大モグラですら相手にならない。
そのことが分かったからこその反応だろう。
「とりあえず、こいつらを相手にするから降りてくれ」
「あっ!」
穴から魔物がぞろぞろと出てくる。
魔力に反応しているのか、綾愛の方に目を向けている。
そのお陰で田中さんを追う様子がないのが救いだ。
綾愛を逃がすためにも、まずは魔物を倒す必要があるため、伸は綾愛に降りることを促す。
そこでようやく自分が御姫様抱っこの状態だということを思いだしたのか、綾愛は顔を真っ赤にさせて伸の腕から降りた。
「……どんだけいんだ?」
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