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1学年 前期
第21話
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「平和だ……」
「何言ってんだ? 平和が一番だろ?」
「そうなんだけど……」
授業が終わっていつものように4人で固まって下駄箱へ向かう途中、了がふとつまんなそうに呟いた。
入学早々に決闘起こして、魔物が出現するなどの大きな出来事があったため、緊張の糸が弛んでいるのかもしれない。
6月に入った今になって、五月病にでもなっているかのようだ。
「しかし、こうも暇だと……」
「何かな……」
「……お前らもか」
了だけでなく、石塚と吉井も同じような状況だ。
3人とも魔物との戦闘に参加して、自分に実力がないことを痛感したからか、最近は能力向上に力を入れるようになった。
了は剣の腕を磨くために剣道部で頑張っているし、石塚は連射を生かした戦闘を求めて地元のサバイバルチームに入ったそうだし、吉井も地元の射撃クラブで命中度を上げるような訓練をおこなっているそうで、表向き変わっていないのは伸だけといった感じになっている。
「あっ!」
「こんにちは」
伸たちが下駄箱にたどり着くと、そこには柊綾愛が杉山奈津希と共に立っていた。
綾愛との変な噂が立ち、なるべく学園内では関わりを持たないようにしていたのだが、綾愛の方はそれを利用するかのように伸へと近付いて来ているように思える。
綾愛の父である柊俊夫にも言ってあるから、綾愛は伸と鷹藤との関係のことを知らないのだろう。
目立つことは控えたい伸にとっては迷惑なことだ。
「じゃ! 俺たちはこれで……」
「あぁ……」
最初の内はからかっていた了たちだったが、伸と綾愛に何かあると空気を読むようになったのか、そのようなことはなくなっていた。
邪魔にならないようにとの配慮なのか、3人はそれぞれ部活やクラブへと向かっていった。
「いきましょうか?」
「へいへい……」
奈津希もいるというのに、他の生徒の好奇の目に晒されながら学校から出ると、伸は前回と同じ料亭へと案内された。
これではいつまで経っても噂が消えることはないと、伸は諦めることも考え始めていた。
「魔物の討伐?」
「えぇ。伝言するように言われたの」
無関係の人間に聞かれないように料亭に呼ばれたのだろうが、その理由はやはり柊家の仕事関連の話だった。
魔物は、いつどこにどれだけ出現するか分からないため、人間側は後手に回るしかない。
柊家の情報網なら、出現してそれ程の時間が経たずに発見に至れる事だろう。
その情報網から、かなりの数の魔物が巣くっている場所を発見したという話だ。
数が多いため、伸にもそれに参加するように要請が来たのだ。
「分かったけど、何で君から聞くことに……?」
「さぁ? 私もよく分からないわ」
先日行った時に、伸はスマホのメールアドレスを俊夫へ教えていた。
そのため、この要請もメールでやり取りした方が手っ取り早いように思える。
綾愛との噂も抑えられるかもしれないし、そっちの方が良い気がする。
そう思って聞いたのだが、綾愛の方も分かっていないようだ。
「重要なことだから直接話せと母から言われたので……」
「そこまで重要な気がしないけど……」
綾愛が言うには、何でも母親から言われて直接話すように言われたようだ。
しかし、無関係の人間に知られないようにする必要があるとは言っても、やはりメールでもよかったような気がする。
世代間でのギャップなのだろうか。
「明後日の土曜日にお願いしますとのことです」
「あぁ、了解したと伝えてくれ」
「えぇ」
今週は特に用もなかったことだし、伸としては別に構わない。
そのため、魔物の討伐の要請を受けることにした。
「たまには魔物相手に魔術を使いたいところだからな」
「……そうですか」
中学の時は、週に1度は魔物を相手に魔術を使っていた。
訓練はどこでも出来るが、学園生活だとそう言う訳にもいかず、若干のストレスを感じていた。
好きに魔術を使用していいというのなら、伸はそのストレス発散にさせてもらおうとした。
魔物を相手にするというのに、伸は笑みを浮かべている。
先日初めて魔物と戦った綾愛は、とてもそんな反応ができそうにない。
それだけで、伸とは実力だけでなく、魔物との戦闘経験の差が違うのだと感じていた。
「そう言えば、例の件は聞いているか?」
「……魔人の件?」
「あぁ」
先日の魔物の行動から、新種の魔人の発生も疑われていた。
魔闘組合の関係者なら知っているため、柊家にも情報は入っているだろう。
学園の教師陣にも通っているだろうが、魔物だけでも先日のことで混乱が大きかったというのに、それ以上の存在である魔人が出現するなどとは言えるわけもないため、まだ生徒には話さない方針のようだ。
しかし、綾愛は柊家の人間のため、親などから聞かされていると思ったが、やはり知っているようだ。
「魔人というのも噂の段階のようで、確たる証拠はないそうよ。何の変化も起きていないし、もしかしたらただの取り越し苦労じゃないかしら?」
「それか。それならいいんだけど」
魔人を相手に戦うなんて危険な目に遭いたくない。
なので、出来れば空振りで済んで欲しいと思っていたのだが、あれから何も起きていないことを考えると、綾愛の言うように取り越し苦労なのかもしれない。
「魔人なんて、数十年に一体出るくらいだって話だし、出ることなんてないんじゃない?」
「そうだな……」
魔物は毎日どこかに発生しているといわれているが、魔人はそう簡単に現れるものではない。
以前大和に現れた魔人は、50年くらい前のことだ。
その時に活躍したのが、鷹藤家の現当主である康義だ。
高校卒業してたいした年月が経っていないというのに、誰よりも魔物を倒して魔人を追い詰めることに尽力したことが、更に名を広める要因になったのだ。
「話は終わりにして、ここに呼んだって事は、注文していいのか?」
「えぇ、支払いは柊家に行くから大丈夫よ」
「よっしゃ!」
話は終わたのでもう帰ってもいいのだが、この料亭に来て何も食べられないのは拷問だ。
先日の味が忘れられなかった伸は、また食べられることになりこぶしを握って喜んだ。
その様子を見て、ずっと黙って部屋の隅に座っていた奈津希は、伸のことを『現金な人間だ』と思っていた。
◆◆◆◆◆
「この周囲で魔力の多い人間がいるのはあそこか……」
「ギュ……」
伸が料亭の料理に舌鼓を打ち、上機嫌に学園寮に帰っている頃。
ある場所で魔物と話をしている者がいた。
話している相手は、先日伸が倒した巨大モグラの魔物だ。
「先日は失敗に終わったが、そもそもは今回がメインの策だ。お前らも気を引き締めて当たれ!」
「「「「「ギュッ!!」」」」」
その者の周りにいる魔物は1体ではない。
数多くの魔物が、その者の言葉に反応している所を見ると、完全に魔物たちはその者に従っているようだ。
多くの魔物たちの返事を聞いて、その者は笑みを浮かべる。
「魔力の多い人間ほど美味いらしいぞ。楽しみにしておけ」
「「「「「ギュッ!!」」」」」
魔物は個体によって異なるが、雑食性なことが多い。
人間を襲う理由も、単に食料として見ている所が多い。
魔物の間での話なのだろうか、人間は魔物にとって美味とされていて、特に魔力量の多い人間ほど美味いらしい。
あながちそれも嘘ではないのか、魔物たちはもうすぐ人間を食べられると知って歓喜しているようだ。
「どれほどの人間が死ぬのか楽しみだ……」
魔物へ指示を出しているこの者。
伸たちの言う新種の魔人は、実際の所出現していた。
そして、その魔人の手によって、もうすぐ事件が起こされることになる。
「何言ってんだ? 平和が一番だろ?」
「そうなんだけど……」
授業が終わっていつものように4人で固まって下駄箱へ向かう途中、了がふとつまんなそうに呟いた。
入学早々に決闘起こして、魔物が出現するなどの大きな出来事があったため、緊張の糸が弛んでいるのかもしれない。
6月に入った今になって、五月病にでもなっているかのようだ。
「しかし、こうも暇だと……」
「何かな……」
「……お前らもか」
了だけでなく、石塚と吉井も同じような状況だ。
3人とも魔物との戦闘に参加して、自分に実力がないことを痛感したからか、最近は能力向上に力を入れるようになった。
了は剣の腕を磨くために剣道部で頑張っているし、石塚は連射を生かした戦闘を求めて地元のサバイバルチームに入ったそうだし、吉井も地元の射撃クラブで命中度を上げるような訓練をおこなっているそうで、表向き変わっていないのは伸だけといった感じになっている。
「あっ!」
「こんにちは」
伸たちが下駄箱にたどり着くと、そこには柊綾愛が杉山奈津希と共に立っていた。
綾愛との変な噂が立ち、なるべく学園内では関わりを持たないようにしていたのだが、綾愛の方はそれを利用するかのように伸へと近付いて来ているように思える。
綾愛の父である柊俊夫にも言ってあるから、綾愛は伸と鷹藤との関係のことを知らないのだろう。
目立つことは控えたい伸にとっては迷惑なことだ。
「じゃ! 俺たちはこれで……」
「あぁ……」
最初の内はからかっていた了たちだったが、伸と綾愛に何かあると空気を読むようになったのか、そのようなことはなくなっていた。
邪魔にならないようにとの配慮なのか、3人はそれぞれ部活やクラブへと向かっていった。
「いきましょうか?」
「へいへい……」
奈津希もいるというのに、他の生徒の好奇の目に晒されながら学校から出ると、伸は前回と同じ料亭へと案内された。
これではいつまで経っても噂が消えることはないと、伸は諦めることも考え始めていた。
「魔物の討伐?」
「えぇ。伝言するように言われたの」
無関係の人間に聞かれないように料亭に呼ばれたのだろうが、その理由はやはり柊家の仕事関連の話だった。
魔物は、いつどこにどれだけ出現するか分からないため、人間側は後手に回るしかない。
柊家の情報網なら、出現してそれ程の時間が経たずに発見に至れる事だろう。
その情報網から、かなりの数の魔物が巣くっている場所を発見したという話だ。
数が多いため、伸にもそれに参加するように要請が来たのだ。
「分かったけど、何で君から聞くことに……?」
「さぁ? 私もよく分からないわ」
先日行った時に、伸はスマホのメールアドレスを俊夫へ教えていた。
そのため、この要請もメールでやり取りした方が手っ取り早いように思える。
綾愛との噂も抑えられるかもしれないし、そっちの方が良い気がする。
そう思って聞いたのだが、綾愛の方も分かっていないようだ。
「重要なことだから直接話せと母から言われたので……」
「そこまで重要な気がしないけど……」
綾愛が言うには、何でも母親から言われて直接話すように言われたようだ。
しかし、無関係の人間に知られないようにする必要があるとは言っても、やはりメールでもよかったような気がする。
世代間でのギャップなのだろうか。
「明後日の土曜日にお願いしますとのことです」
「あぁ、了解したと伝えてくれ」
「えぇ」
今週は特に用もなかったことだし、伸としては別に構わない。
そのため、魔物の討伐の要請を受けることにした。
「たまには魔物相手に魔術を使いたいところだからな」
「……そうですか」
中学の時は、週に1度は魔物を相手に魔術を使っていた。
訓練はどこでも出来るが、学園生活だとそう言う訳にもいかず、若干のストレスを感じていた。
好きに魔術を使用していいというのなら、伸はそのストレス発散にさせてもらおうとした。
魔物を相手にするというのに、伸は笑みを浮かべている。
先日初めて魔物と戦った綾愛は、とてもそんな反応ができそうにない。
それだけで、伸とは実力だけでなく、魔物との戦闘経験の差が違うのだと感じていた。
「そう言えば、例の件は聞いているか?」
「……魔人の件?」
「あぁ」
先日の魔物の行動から、新種の魔人の発生も疑われていた。
魔闘組合の関係者なら知っているため、柊家にも情報は入っているだろう。
学園の教師陣にも通っているだろうが、魔物だけでも先日のことで混乱が大きかったというのに、それ以上の存在である魔人が出現するなどとは言えるわけもないため、まだ生徒には話さない方針のようだ。
しかし、綾愛は柊家の人間のため、親などから聞かされていると思ったが、やはり知っているようだ。
「魔人というのも噂の段階のようで、確たる証拠はないそうよ。何の変化も起きていないし、もしかしたらただの取り越し苦労じゃないかしら?」
「それか。それならいいんだけど」
魔人を相手に戦うなんて危険な目に遭いたくない。
なので、出来れば空振りで済んで欲しいと思っていたのだが、あれから何も起きていないことを考えると、綾愛の言うように取り越し苦労なのかもしれない。
「魔人なんて、数十年に一体出るくらいだって話だし、出ることなんてないんじゃない?」
「そうだな……」
魔物は毎日どこかに発生しているといわれているが、魔人はそう簡単に現れるものではない。
以前大和に現れた魔人は、50年くらい前のことだ。
その時に活躍したのが、鷹藤家の現当主である康義だ。
高校卒業してたいした年月が経っていないというのに、誰よりも魔物を倒して魔人を追い詰めることに尽力したことが、更に名を広める要因になったのだ。
「話は終わりにして、ここに呼んだって事は、注文していいのか?」
「えぇ、支払いは柊家に行くから大丈夫よ」
「よっしゃ!」
話は終わたのでもう帰ってもいいのだが、この料亭に来て何も食べられないのは拷問だ。
先日の味が忘れられなかった伸は、また食べられることになりこぶしを握って喜んだ。
その様子を見て、ずっと黙って部屋の隅に座っていた奈津希は、伸のことを『現金な人間だ』と思っていた。
◆◆◆◆◆
「この周囲で魔力の多い人間がいるのはあそこか……」
「ギュ……」
伸が料亭の料理に舌鼓を打ち、上機嫌に学園寮に帰っている頃。
ある場所で魔物と話をしている者がいた。
話している相手は、先日伸が倒した巨大モグラの魔物だ。
「先日は失敗に終わったが、そもそもは今回がメインの策だ。お前らも気を引き締めて当たれ!」
「「「「「ギュッ!!」」」」」
その者の周りにいる魔物は1体ではない。
数多くの魔物が、その者の言葉に反応している所を見ると、完全に魔物たちはその者に従っているようだ。
多くの魔物たちの返事を聞いて、その者は笑みを浮かべる。
「魔力の多い人間ほど美味いらしいぞ。楽しみにしておけ」
「「「「「ギュッ!!」」」」」
魔物は個体によって異なるが、雑食性なことが多い。
人間を襲う理由も、単に食料として見ている所が多い。
魔物の間での話なのだろうか、人間は魔物にとって美味とされていて、特に魔力量の多い人間ほど美味いらしい。
あながちそれも嘘ではないのか、魔物たちはもうすぐ人間を食べられると知って歓喜しているようだ。
「どれほどの人間が死ぬのか楽しみだ……」
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