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1学年 前期
第19話
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「そうか……柊の協力を得ることになったか?」
「あぁ」
柊家へ行った翌日、伸は回復薬を売りに花紡州の供応市魔闘組合の支部へと向かった。
いつも通りのルートで密かに支部長の紅林に会うと、伸は昨日のことを話した。
柊家に向かうということは、話の流れ次第で柊家と敵対か協力関係を組むかもしれない可能性はあった。
そのことは聞いていたので、紅林は伸の言葉をすんなりと受け入れた。
敵対ではなく、協力関係と聞いて安堵している様子だ。
「おっちゃんにはこれまで世話になったな」
「何言ってんだ。こっちは助かってたんだから気にするな」
伸が倒した魔物は、これまで紅林が倒したことにして査定していた。
本来、伸のような子供に魔物と戦わせるようなことはあり得ない。
大人になるにつれ魔力量が増えていくのだが、その成長力は千差万別。
子供の時は、まずは暴走しないように魔力をコントロールすることから始めるのが普通だ。
しかし、紅林が伸に会った時には、もう魔闘組合の支部長をしている自分以上の魔力量と戦闘力を有していた
家の事情で伸が収入を得る必要があった時、命の恩人でもあることから特別に許可をしていた。
紅林は魔物の討伐の成果も得られ、伸は生活費を稼げるという、お互いwin-winの関係だった。
そのため、紅林は伸の感謝の言葉に、首を振って否定した。
「柊家と協力するって言っても、回復薬の販売はこれまで通りに持ってくるから」
「そうか。ありがたいな」
供応市は、花紡州の中でも田舎の町だ。
有能な魔術師は大きな町へと移ってしまうため、魔術師の過疎化が少し進んでいる。
そのため、多くの数の魔物が出た場合、他の町へ助力を求めたりすることで乗り切ってきた。
しかし、伸が協力してくれるようになったことにより、市民に大きな被害を受けるようなこともなくなった。
魔術師はともかく、一般市民は平和を求める。
供応市は平和な町として知られるようになり、少しずつだが人口は増えつつある。
しかし、魔術師の方はそうはいかず、回復薬の数も心許ない状況だ。
もしもの時のことを考えると、定期的に卸してくれるのはありがたい。
そう言った面でも、紅林は伸に感謝している。
「それに、供応市の近くにでた魔物を倒した時は、これまで通りおっちゃんに任せるから」
「いいのか?」
「あぁ。柊家の当主さんには言っておいたから」
「助かるよ」
柊家としては、協力関係を得られるようになったのだから、伸を密かに魔物退治に参加させるはずだ。
そうなったら、供応市の魔物退治の手伝いに来ることもできなくなると思っていた。
これからは伸に頼らないようにしないといけないと思っていたが、どうやら伸はこの町の魔術師事情を考慮して柊家と交渉してくれていたようだ。
感謝しかない紅林は、嬉しそうに伸に頭を下げた。
「頭なんか下げんなよ。俺とおっちゃんの仲だろ?」
「いや……、そうだな。でもありがとよ」
「あぁ」
困っていた時に助けてもらったことから、伸は紅林を親戚の小父さんのような存在に思っている。
なので、あまり感謝されると照れくさいため、頭を上げるようにいった。
感謝し足りないくらいの紅林だが、伸の言うようにそんな浅い関係ではない。
しかし、どうしても一言いいたくなり、紅林は感謝の言葉をかけたのだった。
「話がある。これを見てくれるか?」
「……何?」
昨日のことと、これからの関係継続のことを話し終わると、伸は予定通り作ってきた回復薬を紅林に買い取ってもらった。
用事も済んだことだし寮に帰ろうかと思っていたのだが、紅林の方に話があるらしく呼び止められた。
そして、机の上に置かれていた書類の中から、一つの資料を持って来た紅林は、伸に目を通すように言ってきた。
「……これ、この前倒した魔物じゃないのか?」
「そうだ。実は、同じ魔物が八郷地区の他の州にも出現していたんだ」
「……どういうこと?」
資料に目を通した伸は、その内容に眉をひそめる。
先日学園内に出現した巨大モグラの魔物が、八郷地区の各地でほぼ同時期に出現していたというものだった。
何故この八郷地区なのかと、どうしてほぼ同時期に出現したのかが分からない。
魔物の行動に違和感を感じた伸は、首を傾げた。
「まだ可能性の段階だが、何者かの指示で動いていたんじゃないかという話が上がっている」
「何者かの? ……って、まさか……」
同じ種類の魔物が、打ち合わせをしたかのように八郷地区の各地に出現する。
そんな事が、知能の低いことの多い魔物にできるとは思えない。
しかし、魔物を従える者がいるというならできないことではない。
魔物を従える者ということに、伸は心当たりがあった。
「あぁ、魔人が出現したのも知れない」
「そんな……」
魔人。
それは、魔物でありながら、人間と同等の知能を手に入れた生物のことだ。
擬態として人の姿で町中に隠れ潜むことが往々にしてありため、見つけるのが困難である。
しかも、魔人単体の実力自体が強力なことが多い上に、魔物を使役する能力があるといわれている。
中には、1体で1つの町を滅ぼせる場合があるといわれている者までいるということだ。
全世界の人類にとって最大の敵となる存在だ。
「魔人島に変化があったなんて話を聞いていないけど?」
「……だから、もしかしたら新種なんじゃないか?」
「新種……?」
伸の言う魔人島とは、海に囲まれた島のことで、4大陸の中央に存在している。
これまで存在が確認された魔人の内、生きて逃れた者はその島へと逃げていっている。
そのため、その魔人島は世界各国の機関も注視しており、異変があればすぐに知らされるようになっている。
島に異変がないのにもかかわらず魔人が出現したとなれば、紅林の言うように新種が確認されたという可能性が高い。
「何でそんなんが八郷地区に?」
「分からん。そもそも、魔人がどうやって出来上がるのかもまだつきとめられていないのだから……」
魔物の出現方法は、魔素が集まったことによる突然発生したものや、繁殖によって増えたりするといわれている。
しかし、個体数が少ない魔人の場合、出現方法はまだ確認されていないため、まだ解明されていない状況だ。
そのため、伸の言うようにこの八郷地区に存在しているというのなら、魔人本人に聞くしかないだろう。
「とりあえず、もしかしたらまた魔物か、魔人が出現するかもしれない。そのことだけ頭に入れておいてくれ」
「分かった」
魔闘組合の調査も継続して行われている段階なので、新種の魔人が出現しているというのもまだ確定した話ではない。
とりあえず、警戒をしておいて損はないため、紅林は伸に教えておくことにしたのだ。
多くの魔物を倒した経験があるが、伸はまだ魔人に遭遇したことはない。
昔出現した時の話を聞くと、かなり危険な存在だという認識しかなく、存在が確認された場合は、多くの魔術師によって討伐することになるだろう。
「いくらお前でも、魔人を相手にするのは危険だ。見つけても倒そうとせず、教師や魔闘組合に報告しろよ」
「あぁ。そん時ばかりは学生の立場に甘えさせてもらうよ」
魔人の強さは未知数のため、いくら伸が強いと言っても戦うには危険すぎる。
そのため、紅林は戦うよりも逃げることを優先するように伸へ指示した。
伸も、どれほどの強さか分からない相手に挑むほど自信家ではない。
紅林の言うように、その時は学生として対応するつもりだ。
「じゃあ、帰るよ」
「あぁ」
昨日のことの報告と回復薬を売りに来たのだが、警戒情報を得ることになった。
しばらくは学園の周囲を警戒する事にして、伸は帰ることにした。
「あぁ」
柊家へ行った翌日、伸は回復薬を売りに花紡州の供応市魔闘組合の支部へと向かった。
いつも通りのルートで密かに支部長の紅林に会うと、伸は昨日のことを話した。
柊家に向かうということは、話の流れ次第で柊家と敵対か協力関係を組むかもしれない可能性はあった。
そのことは聞いていたので、紅林は伸の言葉をすんなりと受け入れた。
敵対ではなく、協力関係と聞いて安堵している様子だ。
「おっちゃんにはこれまで世話になったな」
「何言ってんだ。こっちは助かってたんだから気にするな」
伸が倒した魔物は、これまで紅林が倒したことにして査定していた。
本来、伸のような子供に魔物と戦わせるようなことはあり得ない。
大人になるにつれ魔力量が増えていくのだが、その成長力は千差万別。
子供の時は、まずは暴走しないように魔力をコントロールすることから始めるのが普通だ。
しかし、紅林が伸に会った時には、もう魔闘組合の支部長をしている自分以上の魔力量と戦闘力を有していた
家の事情で伸が収入を得る必要があった時、命の恩人でもあることから特別に許可をしていた。
紅林は魔物の討伐の成果も得られ、伸は生活費を稼げるという、お互いwin-winの関係だった。
そのため、紅林は伸の感謝の言葉に、首を振って否定した。
「柊家と協力するって言っても、回復薬の販売はこれまで通りに持ってくるから」
「そうか。ありがたいな」
供応市は、花紡州の中でも田舎の町だ。
有能な魔術師は大きな町へと移ってしまうため、魔術師の過疎化が少し進んでいる。
そのため、多くの数の魔物が出た場合、他の町へ助力を求めたりすることで乗り切ってきた。
しかし、伸が協力してくれるようになったことにより、市民に大きな被害を受けるようなこともなくなった。
魔術師はともかく、一般市民は平和を求める。
供応市は平和な町として知られるようになり、少しずつだが人口は増えつつある。
しかし、魔術師の方はそうはいかず、回復薬の数も心許ない状況だ。
もしもの時のことを考えると、定期的に卸してくれるのはありがたい。
そう言った面でも、紅林は伸に感謝している。
「それに、供応市の近くにでた魔物を倒した時は、これまで通りおっちゃんに任せるから」
「いいのか?」
「あぁ。柊家の当主さんには言っておいたから」
「助かるよ」
柊家としては、協力関係を得られるようになったのだから、伸を密かに魔物退治に参加させるはずだ。
そうなったら、供応市の魔物退治の手伝いに来ることもできなくなると思っていた。
これからは伸に頼らないようにしないといけないと思っていたが、どうやら伸はこの町の魔術師事情を考慮して柊家と交渉してくれていたようだ。
感謝しかない紅林は、嬉しそうに伸に頭を下げた。
「頭なんか下げんなよ。俺とおっちゃんの仲だろ?」
「いや……、そうだな。でもありがとよ」
「あぁ」
困っていた時に助けてもらったことから、伸は紅林を親戚の小父さんのような存在に思っている。
なので、あまり感謝されると照れくさいため、頭を上げるようにいった。
感謝し足りないくらいの紅林だが、伸の言うようにそんな浅い関係ではない。
しかし、どうしても一言いいたくなり、紅林は感謝の言葉をかけたのだった。
「話がある。これを見てくれるか?」
「……何?」
昨日のことと、これからの関係継続のことを話し終わると、伸は予定通り作ってきた回復薬を紅林に買い取ってもらった。
用事も済んだことだし寮に帰ろうかと思っていたのだが、紅林の方に話があるらしく呼び止められた。
そして、机の上に置かれていた書類の中から、一つの資料を持って来た紅林は、伸に目を通すように言ってきた。
「……これ、この前倒した魔物じゃないのか?」
「そうだ。実は、同じ魔物が八郷地区の他の州にも出現していたんだ」
「……どういうこと?」
資料に目を通した伸は、その内容に眉をひそめる。
先日学園内に出現した巨大モグラの魔物が、八郷地区の各地でほぼ同時期に出現していたというものだった。
何故この八郷地区なのかと、どうしてほぼ同時期に出現したのかが分からない。
魔物の行動に違和感を感じた伸は、首を傾げた。
「まだ可能性の段階だが、何者かの指示で動いていたんじゃないかという話が上がっている」
「何者かの? ……って、まさか……」
同じ種類の魔物が、打ち合わせをしたかのように八郷地区の各地に出現する。
そんな事が、知能の低いことの多い魔物にできるとは思えない。
しかし、魔物を従える者がいるというならできないことではない。
魔物を従える者ということに、伸は心当たりがあった。
「あぁ、魔人が出現したのも知れない」
「そんな……」
魔人。
それは、魔物でありながら、人間と同等の知能を手に入れた生物のことだ。
擬態として人の姿で町中に隠れ潜むことが往々にしてありため、見つけるのが困難である。
しかも、魔人単体の実力自体が強力なことが多い上に、魔物を使役する能力があるといわれている。
中には、1体で1つの町を滅ぼせる場合があるといわれている者までいるということだ。
全世界の人類にとって最大の敵となる存在だ。
「魔人島に変化があったなんて話を聞いていないけど?」
「……だから、もしかしたら新種なんじゃないか?」
「新種……?」
伸の言う魔人島とは、海に囲まれた島のことで、4大陸の中央に存在している。
これまで存在が確認された魔人の内、生きて逃れた者はその島へと逃げていっている。
そのため、その魔人島は世界各国の機関も注視しており、異変があればすぐに知らされるようになっている。
島に異変がないのにもかかわらず魔人が出現したとなれば、紅林の言うように新種が確認されたという可能性が高い。
「何でそんなんが八郷地区に?」
「分からん。そもそも、魔人がどうやって出来上がるのかもまだつきとめられていないのだから……」
魔物の出現方法は、魔素が集まったことによる突然発生したものや、繁殖によって増えたりするといわれている。
しかし、個体数が少ない魔人の場合、出現方法はまだ確認されていないため、まだ解明されていない状況だ。
そのため、伸の言うようにこの八郷地区に存在しているというのなら、魔人本人に聞くしかないだろう。
「とりあえず、もしかしたらまた魔物か、魔人が出現するかもしれない。そのことだけ頭に入れておいてくれ」
「分かった」
魔闘組合の調査も継続して行われている段階なので、新種の魔人が出現しているというのもまだ確定した話ではない。
とりあえず、警戒をしておいて損はないため、紅林は伸に教えておくことにしたのだ。
多くの魔物を倒した経験があるが、伸はまだ魔人に遭遇したことはない。
昔出現した時の話を聞くと、かなり危険な存在だという認識しかなく、存在が確認された場合は、多くの魔術師によって討伐することになるだろう。
「いくらお前でも、魔人を相手にするのは危険だ。見つけても倒そうとせず、教師や魔闘組合に報告しろよ」
「あぁ。そん時ばかりは学生の立場に甘えさせてもらうよ」
魔人の強さは未知数のため、いくら伸が強いと言っても戦うには危険すぎる。
そのため、紅林は戦うよりも逃げることを優先するように伸へ指示した。
伸も、どれほどの強さか分からない相手に挑むほど自信家ではない。
紅林の言うように、その時は学生として対応するつもりだ。
「じゃあ、帰るよ」
「あぁ」
昨日のことの報告と回復薬を売りに来たのだが、警戒情報を得ることになった。
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