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1学年 前期
第7話
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「……おいおい! マジかよ……」
放課後になり、伸たちは訓練場へと向かった。
B組の渡辺たちとの試合の申し込みが受理されたからだ。
そして、いざ会場となる訓練場に来ると、2階の観覧席やギャラリーには多くの1年の生徒たちが集まっていた。
魔術師同士の試合なんて、ちょっとした娯楽だ。
それが無料で見られるのだから、みんな見に来ているのだろう。
「何でこんなに人が集まってんだ?」
「相手が相手だからだろ」
石塚の呟きに対し、吉井が答える。
単純に観戦に来ている者も多いが、観覧席の最前線にいるのは女生徒ばかり。
吉井の言いたいのは、対戦相手の渡辺たちに集まった女子もいるということだ。
別に伸たちは不細工ではないが、渡辺たちの顔と比べるとどうしても好む人間が少ないのは仕方がない。
それが自分でも分かっているからだろうか、吉井は自分で言っておいて若干不機嫌そうだ。
「1年の食堂で起きた揉め事だから、1年が集まるのは分かる。けど、2、3年の人まで混じってるのは何でだ?」
この学園の校舎は、1年が1階、2年が2階、3年が3階と分かれている。
そのため、学食もそれぞれの階層に1つずつ置かれている。
メニューも同じため、わざわざ他学年の学食で食事をするようなことはしないため、渡辺に決闘を申し込まれた時は1年しかいなかったはずだ。
それなのに、よく見ると観覧席には2年や3年の先輩たちも少ないとはいえ見受けられる。
1年の試合なんて、上級生からすると1段下の戦いに見えるだけでそんなに面白いと思えないはずだが、何を目的に見に来ているのか了は気になった。
「青田買いかもな……」
「なるほど」
了の疑問に、伸が予想の入った答えを返す。
それを聞いて、了も納得した。
魔闘組合に入ったら、実力主義のプロになるのだから年齢なんて関係ない。
才能や実力がある人間を見つけたら、自分たちの隊に引き込んだり、下部組織として確保したりなど、理由はともかく協力関係を築いておきたいと考えているのかもしれない。
数を確保することで、安全に魔物を倒そうと考える者もいるということだ。
魔物討伐の収益が減るとはいえ、やはり安全性を考えれば利口な考え方と言える。
見に来ている2、3年生もそういった類の人たちなのかもしれない。
この戦いで目に留まる人間がいないか、しっかりチェックしに来たのだろう。
「全く。お前ら揉め事起こすペースが速いな……」
「あっ、もしかして先生が審判ですか?」
「あぁ」
伸たちが話していると、Ⅽ組担任の三門が近付いてきた。
生徒同士の試合の場合、教師が審判役に入る。
B組の渡辺が審判を用意するのだから、B組の担任が来ると思っていたが、三門が来るなんて伸たちには予想外だった。
「お前らの担任って理由で押し付けられた」
「……何かすいません」
渡辺たちは、色々なクラスの人間が集まった隊になっている。
他のクラスの担任にも話がいき、その中で話し合って、三門が審判をやることが決まった。
1年同士の小競り合いなんて、教師たちからすれば魔術をかじった子供の喧嘩程度にしか思えない。
単純に、他の担任は面倒だから三門に任せた感が強いのだ。
三門の言いようから、面倒事を押し付けられたことが分かり、伸はなんとなく謝るしかなかった。
「できれば、こうなる前にお前に止めてもらいたかったがな」
「3人を完全になんて無理っすよ」
文句気味の三門の言葉に、伸は不服そうに返した。
三門は、伸のことを自分と同じタイプの魔術師だと思っている。
実際はそうではないのだが、伸は平凡な学園生活を送るために、隠れ蓑としてそう演じることにしている。
だからだろうか、三門は金井・石塚・吉井の3人の手綱を握ることを伸に期待していた。
しかし、そう言われても、気絶させて止める訳にもいかないのだから、いくら伸でもどうしようもない。
「まぁ、試合に関しては平等に判定するからな。とりあえず頑張れよ」
「はい」
勘違いとはいえ、似た者同士として三門に気にいられているのは分かる。
期待してもらえているのだから、伸はとりあえず無様な結果にならないようにすることにした。
「「「「「キャーー!!」」」」」
「……来たみたいだ」
三門との話が終わると、観覧席から黄色い声が上がった。
それを聞いて、了が反応する。
女子が期待していた渡辺たちが来た合図だ。
「人気あるんだな」
「面が良いからな」
「あっさり断られたのに」
「「「ブー―ー!!」」」
近付いてくる渡辺たちを見ながら、了たちは昼のことを蒸し返す。
そして、わざと聞こえるような大きさで、バカにするようなやり取りをして笑い出した。
「くっ! 貴様ら……」
案の定、渡辺は怒りで顔を引きつらせている。
冷静さを失わせるという意味では成功と言えるので、伸はとりあえず黙っていることにした。
「そうしていられるのも今のうちだ。すぐに笑えなくしてやる!」
そう言うと、渡辺は少し離れた開始線へと向かっていった。
すぐにでも始めようという意思表示だろう。
「上等だよ!」
「女子が混じっているからって関係ねえ!」
「ぶっ潰してやる!」
渡辺の決め言葉に反応するように、こっちの3人がそれぞれ言葉を返す。
4対4とはいえ、相手は1人女子が混じっている。
しかし、魔闘組合では実力重視が常識のため、魔物を倒すのに男女なんて関係ない。
とはいえ、やはり性別的に男性の方が向いているため、こういった戦闘では女子が不利な気がする。
だが、そんなこと言って油断していると負ける可能性があるため、こっちの3人は全く考慮に入れないつもりのようだ。
「さて……」
「戦い方は……」
「どうするか……」
「「「伸!!」」」
開始の合図を受けるために、伸たちも開始線へと向かい出す。
しかし、その時になって、急に3人は声をそろえたように伸へと目を向ける。
完全に伸に任せたと言いたげな視線だ。
「……もしかして、お前ら策もなしに対戦受けたのか?」
「「「あぁ!」」」
さっきの言葉を聞いたことで、少し前に言ったこととお同じことを言うことになった。
2度目の了はなんとなく予想できたが、石塚と吉井も同じだったようだ。
「そんなんだから、3人は入学してすぐに揉め事を起こしまくることになんだよ!」
「「「お前も一緒だろ?」」」
「俺は巻き込まれているだけだ!」
せめて対戦相手の何か知っていることがあるのかと思ったが、それすら無い様子だ。
この3人は、その場の感情と流れで揉め事を起こしたらしい。
注意のつもりで伸が文句を言うと、3人は声を揃えてツッコミを入れてきた。
たしかに、伸も揉め事の関係者だが、いつも止めようとしているのに巻き込まれているだけだ。
3人のツッコミに対し、伸はツッコミ返すことになった。
「何にしても、この4人の中だと、頭使うのは伸の役割だろ?」
「……いつの間にそんなことになったんだよ」
伸のツッコミを気にすることなく、了が当然と言うかのように話す。
自分たちがあんまり頭を使いたくないだけのようにも聞こえるが、この場合仕方がない。
「まぁ、良いか……」
たしかに何の策もなしに戦う訳にはいかない。
一応この隊の初戦になるのだから、伸は勝てるように策を考えることにした。
当然、自分が目立たないようにして勝つためのだ。
「まず……」
開始線に着くまでの短い時間で、伸は3人に簡単なフォーメーションなどを指示することにした。
「では、始めるぞ!」
「「「「はい!」」」」「「「「はい!」」」」
簡単な打ち合わせが済み、伸たちが開始線へとたどり着く。
それを見て、審判の三門は両チームへの確認を取る。
両チームとも、声を合わせるように返事をし、それぞれ武器を構えたのだった。
放課後になり、伸たちは訓練場へと向かった。
B組の渡辺たちとの試合の申し込みが受理されたからだ。
そして、いざ会場となる訓練場に来ると、2階の観覧席やギャラリーには多くの1年の生徒たちが集まっていた。
魔術師同士の試合なんて、ちょっとした娯楽だ。
それが無料で見られるのだから、みんな見に来ているのだろう。
「何でこんなに人が集まってんだ?」
「相手が相手だからだろ」
石塚の呟きに対し、吉井が答える。
単純に観戦に来ている者も多いが、観覧席の最前線にいるのは女生徒ばかり。
吉井の言いたいのは、対戦相手の渡辺たちに集まった女子もいるということだ。
別に伸たちは不細工ではないが、渡辺たちの顔と比べるとどうしても好む人間が少ないのは仕方がない。
それが自分でも分かっているからだろうか、吉井は自分で言っておいて若干不機嫌そうだ。
「1年の食堂で起きた揉め事だから、1年が集まるのは分かる。けど、2、3年の人まで混じってるのは何でだ?」
この学園の校舎は、1年が1階、2年が2階、3年が3階と分かれている。
そのため、学食もそれぞれの階層に1つずつ置かれている。
メニューも同じため、わざわざ他学年の学食で食事をするようなことはしないため、渡辺に決闘を申し込まれた時は1年しかいなかったはずだ。
それなのに、よく見ると観覧席には2年や3年の先輩たちも少ないとはいえ見受けられる。
1年の試合なんて、上級生からすると1段下の戦いに見えるだけでそんなに面白いと思えないはずだが、何を目的に見に来ているのか了は気になった。
「青田買いかもな……」
「なるほど」
了の疑問に、伸が予想の入った答えを返す。
それを聞いて、了も納得した。
魔闘組合に入ったら、実力主義のプロになるのだから年齢なんて関係ない。
才能や実力がある人間を見つけたら、自分たちの隊に引き込んだり、下部組織として確保したりなど、理由はともかく協力関係を築いておきたいと考えているのかもしれない。
数を確保することで、安全に魔物を倒そうと考える者もいるということだ。
魔物討伐の収益が減るとはいえ、やはり安全性を考えれば利口な考え方と言える。
見に来ている2、3年生もそういった類の人たちなのかもしれない。
この戦いで目に留まる人間がいないか、しっかりチェックしに来たのだろう。
「全く。お前ら揉め事起こすペースが速いな……」
「あっ、もしかして先生が審判ですか?」
「あぁ」
伸たちが話していると、Ⅽ組担任の三門が近付いてきた。
生徒同士の試合の場合、教師が審判役に入る。
B組の渡辺が審判を用意するのだから、B組の担任が来ると思っていたが、三門が来るなんて伸たちには予想外だった。
「お前らの担任って理由で押し付けられた」
「……何かすいません」
渡辺たちは、色々なクラスの人間が集まった隊になっている。
他のクラスの担任にも話がいき、その中で話し合って、三門が審判をやることが決まった。
1年同士の小競り合いなんて、教師たちからすれば魔術をかじった子供の喧嘩程度にしか思えない。
単純に、他の担任は面倒だから三門に任せた感が強いのだ。
三門の言いようから、面倒事を押し付けられたことが分かり、伸はなんとなく謝るしかなかった。
「できれば、こうなる前にお前に止めてもらいたかったがな」
「3人を完全になんて無理っすよ」
文句気味の三門の言葉に、伸は不服そうに返した。
三門は、伸のことを自分と同じタイプの魔術師だと思っている。
実際はそうではないのだが、伸は平凡な学園生活を送るために、隠れ蓑としてそう演じることにしている。
だからだろうか、三門は金井・石塚・吉井の3人の手綱を握ることを伸に期待していた。
しかし、そう言われても、気絶させて止める訳にもいかないのだから、いくら伸でもどうしようもない。
「まぁ、試合に関しては平等に判定するからな。とりあえず頑張れよ」
「はい」
勘違いとはいえ、似た者同士として三門に気にいられているのは分かる。
期待してもらえているのだから、伸はとりあえず無様な結果にならないようにすることにした。
「「「「「キャーー!!」」」」」
「……来たみたいだ」
三門との話が終わると、観覧席から黄色い声が上がった。
それを聞いて、了が反応する。
女子が期待していた渡辺たちが来た合図だ。
「人気あるんだな」
「面が良いからな」
「あっさり断られたのに」
「「「ブー―ー!!」」」
近付いてくる渡辺たちを見ながら、了たちは昼のことを蒸し返す。
そして、わざと聞こえるような大きさで、バカにするようなやり取りをして笑い出した。
「くっ! 貴様ら……」
案の定、渡辺は怒りで顔を引きつらせている。
冷静さを失わせるという意味では成功と言えるので、伸はとりあえず黙っていることにした。
「そうしていられるのも今のうちだ。すぐに笑えなくしてやる!」
そう言うと、渡辺は少し離れた開始線へと向かっていった。
すぐにでも始めようという意思表示だろう。
「上等だよ!」
「女子が混じっているからって関係ねえ!」
「ぶっ潰してやる!」
渡辺の決め言葉に反応するように、こっちの3人がそれぞれ言葉を返す。
4対4とはいえ、相手は1人女子が混じっている。
しかし、魔闘組合では実力重視が常識のため、魔物を倒すのに男女なんて関係ない。
とはいえ、やはり性別的に男性の方が向いているため、こういった戦闘では女子が不利な気がする。
だが、そんなこと言って油断していると負ける可能性があるため、こっちの3人は全く考慮に入れないつもりのようだ。
「さて……」
「戦い方は……」
「どうするか……」
「「「伸!!」」」
開始の合図を受けるために、伸たちも開始線へと向かい出す。
しかし、その時になって、急に3人は声をそろえたように伸へと目を向ける。
完全に伸に任せたと言いたげな視線だ。
「……もしかして、お前ら策もなしに対戦受けたのか?」
「「「あぁ!」」」
さっきの言葉を聞いたことで、少し前に言ったこととお同じことを言うことになった。
2度目の了はなんとなく予想できたが、石塚と吉井も同じだったようだ。
「そんなんだから、3人は入学してすぐに揉め事を起こしまくることになんだよ!」
「「「お前も一緒だろ?」」」
「俺は巻き込まれているだけだ!」
せめて対戦相手の何か知っていることがあるのかと思ったが、それすら無い様子だ。
この3人は、その場の感情と流れで揉め事を起こしたらしい。
注意のつもりで伸が文句を言うと、3人は声を揃えてツッコミを入れてきた。
たしかに、伸も揉め事の関係者だが、いつも止めようとしているのに巻き込まれているだけだ。
3人のツッコミに対し、伸はツッコミ返すことになった。
「何にしても、この4人の中だと、頭使うのは伸の役割だろ?」
「……いつの間にそんなことになったんだよ」
伸のツッコミを気にすることなく、了が当然と言うかのように話す。
自分たちがあんまり頭を使いたくないだけのようにも聞こえるが、この場合仕方がない。
「まぁ、良いか……」
たしかに何の策もなしに戦う訳にはいかない。
一応この隊の初戦になるのだから、伸は勝てるように策を考えることにした。
当然、自分が目立たないようにして勝つためのだ。
「まず……」
開始線に着くまでの短い時間で、伸は3人に簡単なフォーメーションなどを指示することにした。
「では、始めるぞ!」
「「「「はい!」」」」「「「「はい!」」」」
簡単な打ち合わせが済み、伸たちが開始線へとたどり着く。
それを見て、審判の三門は両チームへの確認を取る。
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