文化研究部

ポリ 外丸

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第7話

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「黒田!」

「よう!」

 サッカー部の顧問の猪原から言質が取れ、サッカー部と勝負をすることになった善之たち。
 その翌日、教室に入り朝のホームルームが始まるまでの間ボ~っとしていると、善之の前の席に同じクラスの瀬田が座って話しかけてきたため、善之は返事をする。
 津田が嫌いだからと言って、サッカー部の人間全員を嫌っている訳ではない。
 特に瀬田はどこか勘のいいところがあるので、サッカー部員だからと言って特に思う所はない。
 むしろ、このクラスの中で、海以外で善之に話しかける数少ない人間の一人だ。
 
「何かウチサッカー部とフットサル勝負するって話だけど?」

「あぁ、そうなった」

 自分たちと勝負をすることを決めた後、顧問の猪原が部活で部員にそのことを報告したのだろう。
 瀬田もそこで知ったらしい。

「そうなるように仕向けたの間違いじゃないのか?」

「……お前鋭いな。ちょっとキショイわ!」

「失礼な……」

 少し前に話した時、瀬田も津田のことを良く思っていないような口調だった。
 勝負することになった経緯を聞いて、もしかしたらそういう風に推理したのかもしれないが、善之の言う通り鋭すぎて気味が悪い。
 瀬田も流石にそこまで言われるとは思っていなかったのか、若干眉をしかめる。

「まぁ、がんばれよ」

「がんばれって……お前も一応サッカー部だろ?」

 瀬田からのまさかの言葉に、善之は思わず聞き返す。
 サッカー部の者たちは、みんな訳も分からない問題児たちの相手をしなければならないことに腹を立てているのだと思っていたからだ。

「たぶん俺たち1年は関係ないだろ?」

 瀬田からすると、喧嘩を売ったのは津田だし、押しきられたのは頭が固い顧問の猪原だ。
 フットサルだからとはいえ善之たちに負ける訳にはいかないだろうが、そうなると、入部したてでまだ実力が完全に把握できていない1年を使うよりも、2、3年を使ってガチで勝負を勝ちに行くだろう。
 だから、試合の時は自分たちは審判なりボール拾いをすることになることが予想される。
 蚊帳の外の自分たちには、勝とうが負けようが知ったことではない。

「分かんねえぞ……あの監督のことだから、問題児の相手なんて1年にやらせれば十分だって言うかもしれないぞ?」

「あり得るな……」

 善之も津田を相手にして勝利するのが一番気分がいいが、あの猪原がどこまで本気で来るのか分からない。
 むしろ、1年を出して来てくれた方が勝てる気がするので、希望としては瀬田たちが出て来てくれるとありがたい。

「まぁ、勝負することになったら勘弁な」

「……お前ら勝つ気なのか?」

 若干上から言っている善之の態度に、瀬田はどこからその自信が来るのか不思議に思った。
 1年だけのチームだろうが、2、3年のチームだろうが、それがたとえフットサルでの勝負であろうと、自分たちサッカー部が負けると瀬田は思ってもいない。
 そのため、善之の自信がハッタリなのではないかと思い、探りを入れた。

「当たり前だろ? むしろお前らの方が勝てると思っているのか?」

「……随分な自信だな?」

「そっちこそ」

 善之の反応が全然ハッタリで言っているような態度ではないので、さすがに瀬田もカチンときた。
 この高校のサッカー部は、県でもまあまあ強いことで有名で、昔は全国に出たこともあるくらいだ。
 そこで毎日練習している自分たちが、まだ帰宅部状態の善之たちに負けるとは思えない。
 なのに、自信満々に勝てると思われているとなると、舐められていると思っても仕方がない。

「お~し、席付け~」

 若干睨み合う形になりお互いだ待っていると、担任が教室に入って来た。
 そのため、瀬田は少し手を上げ、その場から離れる合図をして善之の側から自分の席へと戻っていった。
 それに善之も手を上げ返し、瀬田を見送った。

 



「何? サッカー部と勝負する?」

「そうなんスよ」

 その日の放課後、善之はいつものように練習相手を求めていた海の兄である中原陸と話す。
 陸は関林学園サッカー部のOBで、善之たちにフットサルを教えてくれた先生でもある。
 善之たちの実力からいって、サッカー部に入ってもやっていけると思っていたのだが、今日になってそのサッカー部と勝負すると聞いて首を傾げた。
 どうしたらそんなことになるんだという疑問だ。

「サッカー部に最悪な先輩がいて、俺たちじゃ我慢できないから新しく部でも創っちゃおうぜ! ってなって、そいつを罠に引っ掛けて、フットサル部を創部するための勝負をすることになった」

 善之が説明してくれるが、陸からするとあの猪原がそう簡単に勝負に乗ってくるとは思えない。
 そのため、陸は善之たちのことだから何かしらの罠に引っ掛けたのだろうと思ったら案の定だった。

「誰の発案だ?」

「「「「黒!!」」」」

「っ!? お前らだって賛成しただろ?」

 陸の問いかける声が低くなったため、5人はヤバいと思った。
 高校に入ったらサッカー部に入るからと教えてもらっていたのに、それを反故にしたからだ。
 そのことを怒られると思ったのか、他の4人はすぐに善之のせいにした。
 まさかの裏切りに、善之は慌てる。

「勝つのは結構厳しいぞ?」

「……そうかな?」

 5人が思ったより陸は怒っていないようだ。
 しかし、その表情は真剣で、本気で善之たちへ注意を促しているようだ。
 陸も瀬田と同様で、善之たちの方が不利だと思っているみたいだ。

「あいつらミニゲーム感覚で来るだろうし、フットサルのルールの碌に覚えてこないだろうから、慣れる前に点差を広げれば何んとなかなるんじゃないか?」

「……まぁ、面白そうだし、がんばれや」

 たしかに、サッカーとフットサルでは細かいルールが違う。
 ゼロからそれに慣れるには多少の時間がかかるだろう。
 そうなると、善之の言う通り可能性はあるかもしれない。
 陸としては、どっちが勝っても複雑な感情だが、何にしても面白い試合になると思い5人のことを応援したのだった。

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