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第6話
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「何っ? うちの津田からフットサルの試合を申し込まれただと?」
「「「「「はい!」」」」」
公衆の面前で津田から試合を申し込まれ、善之たちはすぐさまサッカー部顧問の猪原がいる職員室へと向かった。
優介だけはいつものように声が小さいが、5人はわざと他の教師にも聞こえるように大きく返事をする。
「なので、先生に会場の手配をお願いしようと思いまして……」
「……そんなことがあったなんて俺は知らん。そもそも本当にそんなやり取りがあったとしても、そんな試合する訳ないだろ?」
猪原に事の顛末を話すと、善之たちが思っていた通りの答えが返ってきた。
たしかに、津田が大きな声で善之たちに試合を申し込んだのを多くの生徒が見ていた。
だからと言って、猪原の言う通り、津田一人の勝手な意見で試合をわざわざする理由も意味もがない。
「まぁ、無しにしてあげてもいいですけど、文句言ってきたのはサッカー部の方ですから、何も無しでは嫌です」
「……何?」
善之たちからすると、せっかくフットサル部を立ち上げる絶好の機会を得たのだ。
すんなり引き下がるのは、はっきり言ってあり得ない。
そのため、ワザと猪原を挑発するような言い方をして引っかかってくるのを待つ。
サッカー部の練習は、津田に会うと殴りたくなるのでまじまじとは見ていないが、下校時にはグラウンド横を通らないといけないので、どうしても視界に入ってしまう。
その光景から考えると、猪原は威張りくさった古いタイプの指導者で、そのうち教育委員会に訴えられるんじゃないかと思えるおっさんだ。
一応毎年ベスト8に入り、1回だけ選手権で県代表にしたこともあるため、指導者としてはほんの少し有名な指導者だ。
生徒に上から見られたら、恐らくあっという間に血が上るタイプだろう。
案の定、善之の言葉に顔が赤くなってくる。
「先生の名前だけでも貸してください。フットサル部の顧問になってくれるだけでチャラにしますよ」
「何でそんなもんの顧問になんてならなければならないんだ? お前らもサッカー部に入れば良いだろ?」
職員室内でさすがに切れることはないだろうが、言葉のトーンは明らかにイラついている感じだ。
はっきり言って、この学校のサッカー部の実力は口だけではない。
津田ですらまあまあ実力がある方だ。
そのため、試合をして絶対勝てるとは言えないので、出来ればこっちとしても試合はしたくない。
なので、揉め事の方向に持って行っておいてなんだが、猪原が名前だけの顧問としてフットサル部の創部を許可してくれれば済む話だ。
それを提案してみたのだが、猪原からはもっともな意見が返ってきた。
「え~……、あんな横暴な先輩のいる部なんて入りたくないっす」
「……マジない」
「嫌っす!」
「嫌です!」
そもそも、津田がいるから嫌なのであって、その津田が卒業するまで我慢すればいい話だ。
しかし、それまで我慢できるかと言われると、ちょっと無理そうなため、竜一、優介、勝也、海の順で入部の拒否をはっきり告げる。
「それに、あの先輩の本性も見抜けない先生も信用できないので……」
「……お前ら問題児がどの口で言ってるんだ?」
「「「「「この口です!」」」」」
「てめえら……」
明らかに猪原を馬鹿にした態度の善之たちの受け答え。
それに我慢の限界が来たのか、猪原はこめかみに血管を浮き出させ、声は低く、目つきが鋭くなっている。
「大体、何で俺たちが先生に怒鳴られないといけないんですか?」
「津田……先輩がフットサル勝負をして勝ったら、先生が部として認めてくれるって言ってましたよ!」
「……先生のくせに嘘ついたんですか?」
「問題児を相手にするにしても嘘つきはいけないと思います!」
「……分かったから騒ぐな!」
猪原に睨まれたからと言って、それで引っ込む問題児4人ではない。
竜一、善之、優介、勝也の順で、職員室内の先生方に聞こえるように声を大きくする。
その中でも善之は小狡く、津田は勝負を吹っ掛けただけなのに、いつの間にか勝負に勝てば部の創部を認めているかのようなように話を誘導した。
いつもは呼び出されたらアウェーな職員室も、今は善之たちの方が有利な立場に立っている。
逆に、猪原が腹を立てて怒鳴りつければ、後でどんな風に他の教師や生徒に思われるか分かったものではない。
そのため、先程の怒りを抑え、猪原は何とか善之たちを静かにさせる。
「勝ったら部にすることを考えてもいい……」
「考えてもいい?」
「……中途半端」
「見苦しい!」
「大人の答えというやつっすか?」
これ以上ここで騒がれるくらいなら、1回勝負してことを収めようと猪原は考えたのだろう。
しかし、この問題児どもに良いように話を持って行かれたという思いがあるからか、しっかりと創部を認めると言わず、考えるだけという寒い言葉を言い放つ。
いい年をしたおっさんがそんな子供じみたことを言ってきたので、善之たちは総口撃を開始する。
「分かった! ……お前らが勝ったら創部できるようにしてやる」
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
津田を上手く利用すれば創部に近付けると思っていたが、5人は上手く顧問の猪原からも言質が取れた。
その瞬間、これまで舐めた態度をとっていた善之たち5人は、一気に態度を変え、声をそろえて頭を下げた。
しかも満面の笑みだ。
そんな普通の高校1年生らしい純粋そうな表情を見せられ、猪原だけでけなく近くにいた他の教師たちも毒気を抜かれて呆気にとられた。
「じゃあ、公式フットサルルールで、会場の手配お願いします!」
「「「「「失礼しました!!」」」」」
試合さえ決まれば、後は勝つために作戦を練るだけだ。
そもそも、職員室なんて彼らからしたら居心地の良いところではない。
会場の手配だけ猪原に任せ、善之たちは足早に職員室を後にしたのだった。
「「「「「はい!」」」」」
公衆の面前で津田から試合を申し込まれ、善之たちはすぐさまサッカー部顧問の猪原がいる職員室へと向かった。
優介だけはいつものように声が小さいが、5人はわざと他の教師にも聞こえるように大きく返事をする。
「なので、先生に会場の手配をお願いしようと思いまして……」
「……そんなことがあったなんて俺は知らん。そもそも本当にそんなやり取りがあったとしても、そんな試合する訳ないだろ?」
猪原に事の顛末を話すと、善之たちが思っていた通りの答えが返ってきた。
たしかに、津田が大きな声で善之たちに試合を申し込んだのを多くの生徒が見ていた。
だからと言って、猪原の言う通り、津田一人の勝手な意見で試合をわざわざする理由も意味もがない。
「まぁ、無しにしてあげてもいいですけど、文句言ってきたのはサッカー部の方ですから、何も無しでは嫌です」
「……何?」
善之たちからすると、せっかくフットサル部を立ち上げる絶好の機会を得たのだ。
すんなり引き下がるのは、はっきり言ってあり得ない。
そのため、ワザと猪原を挑発するような言い方をして引っかかってくるのを待つ。
サッカー部の練習は、津田に会うと殴りたくなるのでまじまじとは見ていないが、下校時にはグラウンド横を通らないといけないので、どうしても視界に入ってしまう。
その光景から考えると、猪原は威張りくさった古いタイプの指導者で、そのうち教育委員会に訴えられるんじゃないかと思えるおっさんだ。
一応毎年ベスト8に入り、1回だけ選手権で県代表にしたこともあるため、指導者としてはほんの少し有名な指導者だ。
生徒に上から見られたら、恐らくあっという間に血が上るタイプだろう。
案の定、善之の言葉に顔が赤くなってくる。
「先生の名前だけでも貸してください。フットサル部の顧問になってくれるだけでチャラにしますよ」
「何でそんなもんの顧問になんてならなければならないんだ? お前らもサッカー部に入れば良いだろ?」
職員室内でさすがに切れることはないだろうが、言葉のトーンは明らかにイラついている感じだ。
はっきり言って、この学校のサッカー部の実力は口だけではない。
津田ですらまあまあ実力がある方だ。
そのため、試合をして絶対勝てるとは言えないので、出来ればこっちとしても試合はしたくない。
なので、揉め事の方向に持って行っておいてなんだが、猪原が名前だけの顧問としてフットサル部の創部を許可してくれれば済む話だ。
それを提案してみたのだが、猪原からはもっともな意見が返ってきた。
「え~……、あんな横暴な先輩のいる部なんて入りたくないっす」
「……マジない」
「嫌っす!」
「嫌です!」
そもそも、津田がいるから嫌なのであって、その津田が卒業するまで我慢すればいい話だ。
しかし、それまで我慢できるかと言われると、ちょっと無理そうなため、竜一、優介、勝也、海の順で入部の拒否をはっきり告げる。
「それに、あの先輩の本性も見抜けない先生も信用できないので……」
「……お前ら問題児がどの口で言ってるんだ?」
「「「「「この口です!」」」」」
「てめえら……」
明らかに猪原を馬鹿にした態度の善之たちの受け答え。
それに我慢の限界が来たのか、猪原はこめかみに血管を浮き出させ、声は低く、目つきが鋭くなっている。
「大体、何で俺たちが先生に怒鳴られないといけないんですか?」
「津田……先輩がフットサル勝負をして勝ったら、先生が部として認めてくれるって言ってましたよ!」
「……先生のくせに嘘ついたんですか?」
「問題児を相手にするにしても嘘つきはいけないと思います!」
「……分かったから騒ぐな!」
猪原に睨まれたからと言って、それで引っ込む問題児4人ではない。
竜一、善之、優介、勝也の順で、職員室内の先生方に聞こえるように声を大きくする。
その中でも善之は小狡く、津田は勝負を吹っ掛けただけなのに、いつの間にか勝負に勝てば部の創部を認めているかのようなように話を誘導した。
いつもは呼び出されたらアウェーな職員室も、今は善之たちの方が有利な立場に立っている。
逆に、猪原が腹を立てて怒鳴りつければ、後でどんな風に他の教師や生徒に思われるか分かったものではない。
そのため、先程の怒りを抑え、猪原は何とか善之たちを静かにさせる。
「勝ったら部にすることを考えてもいい……」
「考えてもいい?」
「……中途半端」
「見苦しい!」
「大人の答えというやつっすか?」
これ以上ここで騒がれるくらいなら、1回勝負してことを収めようと猪原は考えたのだろう。
しかし、この問題児どもに良いように話を持って行かれたという思いがあるからか、しっかりと創部を認めると言わず、考えるだけという寒い言葉を言い放つ。
いい年をしたおっさんがそんな子供じみたことを言ってきたので、善之たちは総口撃を開始する。
「分かった! ……お前らが勝ったら創部できるようにしてやる」
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
津田を上手く利用すれば創部に近付けると思っていたが、5人は上手く顧問の猪原からも言質が取れた。
その瞬間、これまで舐めた態度をとっていた善之たち5人は、一気に態度を変え、声をそろえて頭を下げた。
しかも満面の笑みだ。
そんな普通の高校1年生らしい純粋そうな表情を見せられ、猪原だけでけなく近くにいた他の教師たちも毒気を抜かれて呆気にとられた。
「じゃあ、公式フットサルルールで、会場の手配お願いします!」
「「「「「失礼しました!!」」」」」
試合さえ決まれば、後は勝つために作戦を練るだけだ。
そもそも、職員室なんて彼らからしたら居心地の良いところではない。
会場の手配だけ猪原に任せ、善之たちは足早に職員室を後にしたのだった。
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