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第14章
第372話
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“ブンッ!!”
「あ~……疲れた」
突然扉が出現し、それが開くと、そこからラウルが出てくる。
扉が消えると、ラウルはその場に座り込んだ。
よく見ると、ラウルの服は所々破れており、血も付いている。
ドワーフ王国がある島の西側。
魔王アマドルが封印されている結界内のダンジョン攻略をおこなっているのだが、その姿から相当苦労していることが窺える。
「……あれ? 兄ちゃんか?」
ダンジョン内の攻略を中断し、休息をとるために転移魔法で拠点に帰ってきたのだが、その拠点の方に誰かいるのが見えた。
ドワーフ王国の人間は、危険性から結界内部に入ってくることはない。
そうなると、兄のファビオが様子を見に来たのかもしれないと考えた。
「よう!」
「おぉ!! じいちゃん!」
拠点で待っていたのは、兄のファビオではなく、祖父のケイだった。
久しぶりに会ったケイに、ラウルは驚きと共に表情が明るくなった。
「攻略できたんだ?」
「まあな」
魔王サカリアスが作り出したダンジョンの攻略をおこなっていたケイがここにいるということは、攻略したということだ。
ラウルが確認を込めた質問をし、ケイは頷きで返した。
「やっぱすげえな……」
違う魔王が作り出したと言っても、難易度はここと変わらないという話だった。
ケイの負担を軽くするために、ラウルはここのダンジョンの攻略を開始した。
毎日ダンジョン内に潜っているが、なかなか先に進むのが厳しいため、ラウルは自分が攻略するのは無理ではないかと思いつつあった。
だからこそ、攻略したケイの凄さが分かるというものだ。
「まぁ、積もる話は飯を食ってからにしよう」
「やった! 久々じいちゃんの料理だ!」
ラウルが体を休めるために戻て来たことから、今は日暮れの時間帯。
食事をしてからゆっくりと話し合う方が良いだろう。
そう考えたケイは、料理を買って出る。
ケイの料理と聞いて、ラウルは嬉しそうに拳を握る。
というのも、ケイの料理が美味いことは有名だからだ。
ケイは王になっても趣味として料理をしており、ラウルも小さい頃からその料理を食べていた、
前世の記憶から作る料理は、この世界でも珍しく、美味しい。
そのため、ケイが料理をするという日は、家族みんな1日嬉しそうだ。
そんなケイの料理を食べられるのが嬉しいため、ラウルは喜んだのだ。
「それで? 何層まで進んだ?」
「……30層手前まで進んだ」
「そうか」
食事を終えて一息ついたところで、ケイはラウルにダンジョン攻略の進捗状況を尋ねた。
ケイの料理で気分が上がっていたラウルだったが、その質問に表情がわずかに沈み、進捗状況を伝える。
「ごめん!」
「んっ? 何がだ?」
進捗状況を告げたラウルが、突然謝ってくる。
何か謝られるようなことがあったのか、心当たりのないケイは首を傾げる。
「結構な期間潜ってたんだけど、あんまり深くまで行けなかったから……」
「気にするな」
先程ラウルの表情が沈んだのは、これが原因だったようだ。
しかし、元々は自分1人でクリアするつもりだったため、ラウルの言葉に首を振る
「魔王のダンジョンは危険だからな。無茶してなくて良かったよ」
「危ない目には何度かあったけどね」
経験上言うなら、魔王のダンジョンを1人で攻略するのは危険すぎる。
サカリアスのダンジョンを攻略したが、ケイも従魔がいてこそのスピードだ。
キュウとクウがいなければ、もっと慎重に進めていたはずだ。
1人で攻略を進めていたことを考えると、30層は充分な速度だ。
無理していることを心配していたが、ちゃんと安全マージンを取っていたようで安心した。
「ここは狼種の魔物が多いよ」
「そうか」
翌日、ケイはラウルが攻略を進めていた所まで転移で連れて行ってもらった。
30層の手前の29層。
ケイは、そこでサカリアスのダンジョンとの差を知るため、どんな魔物が出るのか確認しようとした。
そんなケイに、ラウルがこの層に出現する魔物の説明をしてくれる。
どうやらここは主に狼種が出現する層らしく、いくつかの群れが存在しているそうだ。
それ以外はコウモリ系の魔物が、空中を飛び回りながら攻撃してくるそうだ。
「グルル……」
「早速お出ましか……」
ラウルの説明を受けつつ回っていると、数匹の狼がケイたちの前に姿を現した。
その狼を見たケイは、腰に差した銃に手をかけた。
「あっ……」
「ガウッ!!」
目の前の狼がどれほどの強さかを確認するために、ケイは自分が相手をしようとした。
しかし、そのことを言う前に、従魔のクウが動いていた。
狼の群れに飛び込んで行ったかと思うと、バンバン殴り飛ばし、一撃一殺といった具合に狼たちを倒していった。
「ハッハッハッ……」
「……やるな、クウ」
あっという間に狼たちを倒したクウは、ケイの所へと戻ってくる。
褒めて欲しそうにしているため、ケイはクウの頭を撫でてあげた、
「キュウは昔からだけど、クウも強くなってない?」
狼を倒したクウを見て、ラウルは思わずケイに問いかける。
昔からケイと共に行動しているため、キュウの強さは分かっているつもりだ。
しかし、久しぶりに会ったクウの動きが、予想以上に俊敏だった。
見なかった間に、ケイが何か特殊な訓練でもしたのではないかと思えた。
「あっちのダンジョンで魔物倒しまくってたから能力上昇してるかもな」
「なろほど……」
ケイの説明を聞いてラウルは納得した。
魔物を倒してのステータス上昇。
それは普通大幅に起こる訳ではないが、強力な魔物を何匹も倒しているというのなら起こっていても不思議ではない。
「やっぱり、あまり変わらないようだな」
自分で戦った訳ではないが、何となくここの魔物の強さは理解できた。
どうやら、攻略したサカリアスのダンジョンと同様の難易度のようだ。
それにしたって、出てくる魔物は変異種のオンパレードのため、注意しないと危険だ。
「またキュウとクウに頑張ってもらうかな」
【うん!】「ワウッ!」
魔物の強さが同程度なら、ある程度計算できる。
そのため、魔王サカリアスのダンジョンを攻略した時のように、キュウたちに任せるのもいいかもしれない。
ケイがそう呟くと、キュウたちは頼りにされて嬉しそうに声を上げた。
「……俺も従魔を手に入れようかな」
ケイとキュウたちの関係を見ていたラウルは、従魔がいるメリットを目の当たりにして、自分も従魔を持った方が良いのではないかと思うようになっていた。
「あ~……疲れた」
突然扉が出現し、それが開くと、そこからラウルが出てくる。
扉が消えると、ラウルはその場に座り込んだ。
よく見ると、ラウルの服は所々破れており、血も付いている。
ドワーフ王国がある島の西側。
魔王アマドルが封印されている結界内のダンジョン攻略をおこなっているのだが、その姿から相当苦労していることが窺える。
「……あれ? 兄ちゃんか?」
ダンジョン内の攻略を中断し、休息をとるために転移魔法で拠点に帰ってきたのだが、その拠点の方に誰かいるのが見えた。
ドワーフ王国の人間は、危険性から結界内部に入ってくることはない。
そうなると、兄のファビオが様子を見に来たのかもしれないと考えた。
「よう!」
「おぉ!! じいちゃん!」
拠点で待っていたのは、兄のファビオではなく、祖父のケイだった。
久しぶりに会ったケイに、ラウルは驚きと共に表情が明るくなった。
「攻略できたんだ?」
「まあな」
魔王サカリアスが作り出したダンジョンの攻略をおこなっていたケイがここにいるということは、攻略したということだ。
ラウルが確認を込めた質問をし、ケイは頷きで返した。
「やっぱすげえな……」
違う魔王が作り出したと言っても、難易度はここと変わらないという話だった。
ケイの負担を軽くするために、ラウルはここのダンジョンの攻略を開始した。
毎日ダンジョン内に潜っているが、なかなか先に進むのが厳しいため、ラウルは自分が攻略するのは無理ではないかと思いつつあった。
だからこそ、攻略したケイの凄さが分かるというものだ。
「まぁ、積もる話は飯を食ってからにしよう」
「やった! 久々じいちゃんの料理だ!」
ラウルが体を休めるために戻て来たことから、今は日暮れの時間帯。
食事をしてからゆっくりと話し合う方が良いだろう。
そう考えたケイは、料理を買って出る。
ケイの料理と聞いて、ラウルは嬉しそうに拳を握る。
というのも、ケイの料理が美味いことは有名だからだ。
ケイは王になっても趣味として料理をしており、ラウルも小さい頃からその料理を食べていた、
前世の記憶から作る料理は、この世界でも珍しく、美味しい。
そのため、ケイが料理をするという日は、家族みんな1日嬉しそうだ。
そんなケイの料理を食べられるのが嬉しいため、ラウルは喜んだのだ。
「それで? 何層まで進んだ?」
「……30層手前まで進んだ」
「そうか」
食事を終えて一息ついたところで、ケイはラウルにダンジョン攻略の進捗状況を尋ねた。
ケイの料理で気分が上がっていたラウルだったが、その質問に表情がわずかに沈み、進捗状況を伝える。
「ごめん!」
「んっ? 何がだ?」
進捗状況を告げたラウルが、突然謝ってくる。
何か謝られるようなことがあったのか、心当たりのないケイは首を傾げる。
「結構な期間潜ってたんだけど、あんまり深くまで行けなかったから……」
「気にするな」
先程ラウルの表情が沈んだのは、これが原因だったようだ。
しかし、元々は自分1人でクリアするつもりだったため、ラウルの言葉に首を振る
「魔王のダンジョンは危険だからな。無茶してなくて良かったよ」
「危ない目には何度かあったけどね」
経験上言うなら、魔王のダンジョンを1人で攻略するのは危険すぎる。
サカリアスのダンジョンを攻略したが、ケイも従魔がいてこそのスピードだ。
キュウとクウがいなければ、もっと慎重に進めていたはずだ。
1人で攻略を進めていたことを考えると、30層は充分な速度だ。
無理していることを心配していたが、ちゃんと安全マージンを取っていたようで安心した。
「ここは狼種の魔物が多いよ」
「そうか」
翌日、ケイはラウルが攻略を進めていた所まで転移で連れて行ってもらった。
30層の手前の29層。
ケイは、そこでサカリアスのダンジョンとの差を知るため、どんな魔物が出るのか確認しようとした。
そんなケイに、ラウルがこの層に出現する魔物の説明をしてくれる。
どうやらここは主に狼種が出現する層らしく、いくつかの群れが存在しているそうだ。
それ以外はコウモリ系の魔物が、空中を飛び回りながら攻撃してくるそうだ。
「グルル……」
「早速お出ましか……」
ラウルの説明を受けつつ回っていると、数匹の狼がケイたちの前に姿を現した。
その狼を見たケイは、腰に差した銃に手をかけた。
「あっ……」
「ガウッ!!」
目の前の狼がどれほどの強さかを確認するために、ケイは自分が相手をしようとした。
しかし、そのことを言う前に、従魔のクウが動いていた。
狼の群れに飛び込んで行ったかと思うと、バンバン殴り飛ばし、一撃一殺といった具合に狼たちを倒していった。
「ハッハッハッ……」
「……やるな、クウ」
あっという間に狼たちを倒したクウは、ケイの所へと戻ってくる。
褒めて欲しそうにしているため、ケイはクウの頭を撫でてあげた、
「キュウは昔からだけど、クウも強くなってない?」
狼を倒したクウを見て、ラウルは思わずケイに問いかける。
昔からケイと共に行動しているため、キュウの強さは分かっているつもりだ。
しかし、久しぶりに会ったクウの動きが、予想以上に俊敏だった。
見なかった間に、ケイが何か特殊な訓練でもしたのではないかと思えた。
「あっちのダンジョンで魔物倒しまくってたから能力上昇してるかもな」
「なろほど……」
ケイの説明を聞いてラウルは納得した。
魔物を倒してのステータス上昇。
それは普通大幅に起こる訳ではないが、強力な魔物を何匹も倒しているというのなら起こっていても不思議ではない。
「やっぱり、あまり変わらないようだな」
自分で戦った訳ではないが、何となくここの魔物の強さは理解できた。
どうやら、攻略したサカリアスのダンジョンと同様の難易度のようだ。
それにしたって、出てくる魔物は変異種のオンパレードのため、注意しないと危険だ。
「またキュウとクウに頑張ってもらうかな」
【うん!】「ワウッ!」
魔物の強さが同程度なら、ある程度計算できる。
そのため、魔王サカリアスのダンジョンを攻略した時のように、キュウたちに任せるのもいいかもしれない。
ケイがそう呟くと、キュウたちは頼りにされて嬉しそうに声を上げた。
「……俺も従魔を手に入れようかな」
ケイとキュウたちの関係を見ていたラウルは、従魔がいるメリットを目の当たりにして、自分も従魔を持った方が良いのではないかと思うようになっていた。
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