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第14章

第371話

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「ハァ~……」

 しばらく休憩をとり、魔力を回復したケイは地上へと帰還する。
 そして、拠点へと戻ったケイは、椅子に座ってため息を吐く。

【…………】「ワフッ……」

 ダンジョンの攻略を果たしたのは良いが、玄武との戦いは結構ギリギリの勝利だった。
 体力や魔力だけでなく精神的にもかなりしんどい思いをしたケイは、従魔のキュウとクウを撫でて回復を図ることにした。
 ケイの膝の上に座るクウ。
 そのクウの背に乗っているキュウ。
 2匹は、主人のケイに撫でられて嬉しいのか、大人しく丸まっている。

「オッス!」

「おぉ、ご苦労さん」

 ケイが従魔2匹とともに拠点でのんびりしていると、息子のカルロスが現れた。
 いつものように、ケイの生存確認に来たのだろう。

「んっ? 今週はいつもより来るの早くないか?」

 挨拶をしといてなんだが、ケイはあることに気付く。
 カルロスは週一でケイの所に食料の補充と安否確認に来てくれているのだが、今週はいつもよりも来るのが早いのではないかと感じたのだ。

「そろそろ最下層に挑むと思って毎日確認に来ていたんだけど、今日来たら封印の結界が消えていたから」

「なるほど」

 カルロスに言われて納得した。
 前回来た時、ケイはカルロスにもうすぐ最下層に着くと言っていた。
 もしものことを考え、様子を見に来ていてもおかしくない。
 そして今日来て結界が消えていたのなら、確認に来たのも分かる。

「魔王死んだの?」

「……いや、地下の結界が消えていない。一時的に弱っただけだろう」

「そうか……」

 ケイの作った魔法により、魔王がこの地に封印されている。
 カルロスも封印魔法を使えるが、封印体が死ぬまで結界が消えることはないと聞いていた。
 しかし、自分と繋がるダンジョンを破壊されだけで魔王が死ぬのだろうか。
 その疑問に対し、ケイは少し間を空けてから答える。
 封印魔法の魔力を探知をして、魔王の生存を確認したのだ。
 その探知によると、地上の結界は消えたが、地下の方には残っている。
 そのことから、ダンジョン破壊により魔力供給が止まり、魔王が弱ったことによる結界縮小になったのだと判断した。

「もうこれで復活しないの?」

「……魔王だからな。またダンジョンを作って復活を目論むだろよ」

 ダンジョンからの魔力供給もなくなり、カルロスはこれで魔王がどんどんと弱っていくのではないかと期待する。
 しかし、魔王と呼ばれるだけあってとんでもない魔力と再生力をしていたことを考えると、ケイはそんな都合よくいかないのではないかと考えている。
 ダンジョンを攻略されて力を蓄えることができなくなったが、魔王ならまだダンジョンを復活させることもできるだろう。

「そうなったら、またダンジョンを破壊しないとダメなのか?」

「そうなるな。魔王が消滅するまで何度も破壊するしかない」

「……メンドくさ!」

 魔王ほどの存在が消滅するまでとなると、何回ダンジョンを攻略しないといけないのか分からない。
 復活するダンジョンを何度も攻略しないといけないなんて、カルロスが言うようにとんでもなく面倒だ。

「魔王と戦うよりかはまだマシだろ」

「……そりゃそうか」

 魔王と1体と戦った経験があるため、カルロスはケイの意見に納得した。
 何度怪我を負わせても、あっという間に回復してしまうよな生命体。
 そんなのとまともに戦って消滅させるなんて、父であるケイでも無理だ。
 父以上の力を持たない自分ではなおさら無理だ。

「その最下層は?」

「かなりヤバかった。場合によってはやられていたかもな」

 何度も攻略するしかないということは分かった。
 それなら、攻略するダンジョンのことが気になり、カルロスは最下層のボスのことを問いかけた。
 その問いにケイは思った通りのことを述べる。
 玄武の防御力を攻略するのは、正直かなりきつかった。
 ケイの策に玄武がまんまと引っかかったからこそ、倒すことができたと言ってもいい。

「父さんでもそうなるなんて、どんだけ強力なダンジョンなんだよ……」

 何度も攻略しなければならないダンジョンの難易度に、カルロスは思わず呟く。
 魔王のいなくなったこの世界で、父であるケイは最強なのではないかと思っている。
 そのケイが苦戦するなんて、他に誰がダンジョンの攻略ができるというのだろうか。

「レイやお前も訓練した方が良いかもしれないな」

「……そうかもね」

 魔王封印した場所は4ヵ所。
 その4か所にダンジョンができており、攻略しなければならない。
 それをケイ1人に任せておいていいわけがない。
 もしもの時のことを考えて、攻略できる人間を作り出さないといけない。
 ケイ以外となると、次に実力のあるレイナルドやカルロスになる。
 国王のレイナルドは、エルフ王国から長期間離れるわけにはいかない。
 そうなると、自分になる。
 きついことになる未来しか見えないため、カルロスはケイの提案に引き気味で頷くしかなかった。

「どうする? 一旦国に帰るかい?」

 何か月もの間結界内に閉じこもり、ダンジョン攻略に力を注いできた。
 そんなケイに、カルロスは一度国に帰ることを薦める。

「いや、このまま次の場所の攻略に向かう」

「えっ? 休んでからの方が良いんじゃないか?」

 カルロスの提案を、ケイは首を左右に振って拒否する。
 ケイも国民や孫たちの顔が見たいはずだ。
 そう思っての提案だったのだが、まさかの拒否にカルロスは意外そうな表情をする。 
 しかも、このまま次の攻略に向かうなんて、精神的にしんどいのではないだろうか。

「ここのダンジョンは、一瞬でも油断すれば命を落としかねない。ラウルが無茶していないか心配なんだ」

 ケイが次のダンジョンを攻略するために、ラウルが先行して西の封印地のダンジョンを攻略に向かった。
 とは言っても、ラウルは本気で攻略を目指している訳ではない。
 あくまでもケイがショートカットできるように、ラウルが攻略を進めているだけだ。
 西の封印地のダンジョンの難易度がここと同程度なら、ラウルのことが心配だ。
 少しでも無理をすれば、タダでは済まないかもしれない。

「……じゃあ、送るよ」

「あぁ、頼む」

 拠点の後片付けを澄まし、ケイはラウルが攻略をおこなっている西の封印地へ向かうことにした。
 転移するのなら自分が送るとなり、カルロスは転移の魔法を発動する。

「じゃあ、行って来る」

「あぁ、気を付けてくれよ」

「分かっているよ」

 西の封印地はドワーフの国の近くの森だ。
 許可を得てその森へと向かったケイは、結界前に着くとカルロスと挨拶を交わし、またダンジョンの攻略をおこなうために中へと入って行った。

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