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第14章

第364話

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「ワウッ!」

「ガッ!!」

 突然現れた赤ゴリラを、ケイの従魔であるクウが倒す。

【エイッ!!】

「キシャッ!!」

 次に現れたカンパネロを、キュウが魔法で倒す。

「あまり無理をするなよ」

【うんっ!】「ワウッ!」

 魔力を吸い取る階層の出現により、ケイは従魔たちを拠点において自分一人での攻略をする事に決めた。
 しかし、1人で行動してすぐにこの階層での戦闘方法を思いついたケイは、従魔たちも同じようにすれば戦えると、また一緒に攻略をする事にした。
 拠点に戻ったケイは、思いついた戦闘法である瞬間魔闘術をキュウとクウに指導した。
 それが問題なくできるようになったため、2匹も攻略に同行している。
 拠点に置いてけぼりになりどことなく落ち込んでいた2匹だったが、またケイと共にこう不動で斬るのが嬉しいのか、出現した魔物を元気に倒している。
 ケイの役に立てるのが嬉しくて仕方がないと言った感じだが、ちょっと張り切り過ぎている。
 ただでさえ魔力の消費が激しいこの階層だというのに、このままではあっという間に魔力が尽きてしまう。
 魔力が無くなれば、クウはともかく、ケセランパセランのキュウは戦う術がない。
 それを危惧したケイは2匹に注意を促した。

「魔石をとったら先へ進むぞ」

【ハ~イ!】「ワウッ!」

 考えてみれば、長い間2匹に魔力のコントロールを教えてきたのは自分だ。
 その指導によって、2匹は魔物でありながらかなり精密な魔法を使えるようになっている。
 基礎ができていれば応用もきくのは、どんなことでも一緒。
 教えたその日のうちに形になっていたが、戦闘本番ではどうなるかと少し心配していた。
 しかし、2匹にその考えは意味がなかったらしく、問題なくここの魔物と戦えている。
 ここの魔物の魔石は色々と利用価値があるため、俊輔は倒した魔物の魔石をとって先へ進むことにした。

【ハァハァ……】「ハッハッハ……」

『息切れしてきたか……』

 戦闘方法さえ確立してしまえば、ここの魔物とも問題なく戦える。
 しかし、探知を常時使うわけにはいかないため、次の階層へと向かう通路がなかなか見つからない。
 そのせいか、時間が経過すると共にキュウとクウの様子に変化が起きていた。
 魔力をなるべく使用しないようにしていたとしても、常に少しずつ吸い取られているらしく、疲労感が増してきているのだろう。
 朝きた時のはしゃぎっぷりが嘘のように、2匹は疲労している。

「「「「「ガアァーー!!」」」」」

【っ!!】「っ!!」

 何もしていないのに息切れしているキュウとクウ。
 その目の前にまたも赤ゴリラが5体も現れた。
 こちらに向かって猛烈な勢いで迫ってきている。
 そんな赤ゴリラに対し、疲労しているキュウとクウの反応が鈍い。

「お前たちはその場にいろ」

【……ハイ】「……ワウッ」

 この状態で2匹がこの数の赤ゴリラを相手にするのは危険だ。
 なので、2匹にはその場に待機していてもらい、ケイが赤ゴリラの相手をすることにした。
 ケイの露払いをするのが自分たちの仕事だというのに、今の状態ではそれができない。
 本当は、ケイのためなら自分たちが怪我をしても構わないのだが、そうなると余計にケイの手を煩わせることになり、ダンジョン攻略が遅れるだけだ。
 他にも攻略しなければならないダンジョンがあるため、2匹はケイの指示に従うしかなかった。

「ハッ!!」

「ガッ!?」

 エルフのケイは莫大な魔力を有しているため、従魔の2匹とは違いまだ魔力は充分に残っている。
 瞬間魔闘術の使用にも慣れ、もう赤ゴリラは相手にならない。
 ケイたちに接近した赤ゴリラがその剛腕による拳打を放とうとするのに対し、ケイはカウンターで斬りかかる。
 腰に差していた妻の形見の刀を抜き斬ると、赤ゴリラの体は斜めに分かれた。
 赤ゴリラからしたら、自分の攻撃が躱されただけだと思っていた。
 にもかかわらず、体が2つに分かれていったため、理解できないというような表情をしつつ地面へ落下していった。

「「「「ガッ、ガ……!?」」」」

 ケイのあまりの速度に、残りの赤ゴリラたちは戸惑いの反応を示す。
 先程斬り殺されたのと同じように、ケイの動きがしっかり見えていなかったのかもしれない。

「止まっていていいのか?」 

「「ガッ!!」」「「グルアッ!!」」

 仲間を殺られて戸惑い、脚の止まった赤ゴリラたち。
 ケイにとってはありがたい状況だ。
 4体の赤ゴリラに近付いたケイは、銃を抜いて引き金を引く。
 一瞬で4発発射された魔力弾は、2体の赤ゴリラを即死させ、咄嗟に反応した残り2体に深手を負わせた。

「ガ、ガアッ!!」

「甘い!」

 生き残った2体のうち、左肩を撃ち抜かれた方がケイに反撃に出る。
 無事な右腕を振り下ろし、ケイを殴り潰そうとする。
 しかし、瞬間魔闘術を使えるケイからすると、その反応は遅すぎる。
 拳が振り下ろされた時には、ケイは安全地帯へと逃れていた。

「ガアァーー!!」

 生き残った赤ゴリラのうち、腹を撃ち抜かれた方は、血を噴き出しながらケイを両手で掴みにかかる。
 いくら速くても、捕まえてしまえば握りつぶせると思ったのだろう。

「無駄だ!」

「ギャウ!!」

 捕まえようと迫る両腕を、ケイは刀を抜いて斬り落とす。
 そして、両腕を失った痛みに声を上げた赤ゴリラに、もう一度魔力の弾丸を撃ちこむ。
 今度は回避できず、赤ゴリラの心臓を撃ち抜いた。

「ガ、ガアァーー!!」

「逃がすか!」

「ガッ!!」

 あっという間に仲間が全員殺られ、肩を怪我した残りの一体は恐怖する。
 その恐怖に耐えられなかったのか、その赤ゴリラはケイに背を向けて逃げ出した。 
 当然逃がす訳もなく、ケイは距離を詰めて銃で赤ゴリラの脳天を撃ち抜いた。

「さて、今日は帰ろう」

【えっ? もう?】

 5体の赤ゴリラの死体から魔石を取り出したケイは、拠点へ帰還することをキュウとケイに告げる。
 それに対し、キュウが意外と言いたげな反応をする。
 まだ夕方の時間帯に入っていない。
 なのに帰るなんて、速すぎると思ったのだろう。

「お前たちは魔力を相当消費している。俺にまだ余裕があるうちに戻るのがベストだ」

【分かった!】「わうっ!」

 ケイには余力があるが、キュウとクウはもうかなり魔力を消費している。
 これ以上先へ進もうとして、魔力が無くなるようなことになってはいけない。
 リスクはできるだけ回避した方が良いと判断したため、ケイは帰還を選択したのだ。
 その説明を受けたキュウとクウも納得の反応を示し、彼らは拠点へと帰還したのだった。

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