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第13章
第348話
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「ハァ……、疲れた……」
魔王アマドルの喚き声も聞こえなくなり、リカルドは息を吐いて座り込んだ。
ファビオとラウルのお陰で、何とかアマドルを封印することができた。
2人の封印魔法がなかったら、とてもではないが勝てる相手ではなかっただろう。
あの回復力は反則だ。
こっちがどんなにダメージを与えてもすぐに回復してしまうのだから。
「こっちも疲れました……」
ファビオとラウルも疲れた顔をして休憩する。
封印魔法の設置には、かなりの量の魔力と時間を必要とする。
この魔法を生み出したケイでもそうだというのに、孫の自分が設置するとなると更にだ。
そのため、ファビオは弟のラウルと2人で封印魔法を作成することで消費魔力と時間を半分に短縮した。
消費した魔力も半分とはいったが、ファビオとラウルはほとんどの魔力を消費することになった。
アマドルを封じるためには、その分魔力を込める必要があると感じたからだ。
「これを1人でやる父さんや爺ちゃんはとんでもないな……」
「比較するだけ無駄だよ」
祖父のケイや父のレイナルドは、この魔法を1人で使用している。
それを考えると、やはり跡継ぎの立場にいるファビオとしては彼らの偉大さを感じざるを得ない。
ラウルは呑気なもので、元々祖父や父たちに勝てると思っていないようだ。
それもそのはず、エルフやハーフエルフの父や祖父たちと、クオーターの自分たちでは魔力量が違い過ぎるからだ。
しかも、自分たちは獣人の血も入っているだから仕方がない。
だからといって、獣人が悪いとは思わない。
獣人には獣人の良いところがある。
身体能力の高さだ。
魔闘術を使わなけれ戦えないエルフとは違い、獣人は使用しなくても戦える。
リカルドが最たるものだ。
自分たちは獣人の血の方が濃いため、むしろそっちを参考にすべきかもしれない。
かと言って、普通の獣人と違いかなりの魔力量がある。
それを利用し、両面を鍛えることで祖父たちに近付くしかない。
「ファビオ兄、ラウル兄、お疲れ」
「オスカル……」
「お前もな……」
ファビオとラウルが休憩を取っていると、オスカルがこちらへと向かってきた。
アマドルの風魔法によって吹き飛ばされて最後までこの場にいることはなかったが、ラファエルと共に時間稼ぎをしてくれた。
それによって封印魔法を作る時間ができたので、2人は労いの言葉を返した。
「2人共お疲れさまでした」
「ラファエルもお疲れ」
「お疲れ」
オスカルに続き、ラファエルも話しかけてくる。
以前ラファエルはエルフ王国にいたことがあるため、ファビオやラウルも仲はいい。
そのため、2人はラファエルに軽い口調で言葉を返した。
「ありがとう。君たちのお陰で生き残ることができた」
「いいえ。時間を稼いでいただきありがとうございました」
オスカルたちに続いて、ハノイがファビオたちに感謝の言葉をかけてきた。
リカルドから聞いていたとは言っても、ハノイはどんな方法でアマドルを倒すのか分からないでいた。
リカルドの言う作戦が通用するか確信が持てなかったはずなのに、最後まで付き合ってくれたことには感謝しかない。
立ち上がって頭を下げたファビオたちは、ハノイと握手を交わして健闘を称え合った。
「君はたしかリカルド殿のとこのルシア嬢と結婚した……」
「ラウルです。ハノイ殿」
「おぉ、そうだった」
ファビオの次にラウルと握手した時、ハノイはあることを思いだした。
リカルドの娘が、エルフ王国のケイの息子と婚姻した時のことを。
カンタルボス王国での結婚式にはハノイも参加した。
その時にラウルと会っていたことを思いだしたのだ。
ケイやその息子たちと話すことが多かったが、挨拶は躱していた。
顏は覚えていたのに、名前はなかなかでなかったのはそう言うことだろう。
「良い娘婿をお持ちで何よりだ。リカルド殿」
「ハハッ! そう言って頂けるのはありがたい」
ファビオたちと握手を交わしたハノイは、今度はリカルドと握手を交わす。
死すら頭をよぎるような強力な敵との戦闘を、乗り切ったことを称え合っての握手だろう。
そして、ハノイはリカルドの義理の息子に当たるラウルのことを褒める。
ファビオと共にとは言っても、倒す術のなかった自分たちを救ってくれた感謝の気持ちを込めてのことだろう。
リカルドも娘婿のラウルが評価されて、まんざらでもなく嬉しそうだ。
「それにしても、他の地は大丈夫だろうか?」
「エルフの地は大丈夫だろうが、人族大陸に向かったのはどうなるかは分からないな……」
リカルドとハノイの話しているのは、アマドルが言っていたドワーフ王国の他にも魔王が出現しているという話だ。
アマドルと同じような存在が他にも3体いるということもだが、場合によってはそれを相手にしなければならないかと思うと気の重い話だ。
「割り込んで失礼。その件ですが、恐らく祖父や父が動いてくれると思います」
「……そうだな。彼らに任せるしかないしな」
他の魔王がどうなっているのか話合っている2の所へ、ファビオが一声かけて割り込む。
魔王が出ると分かっていたが、それがどこに現れるかまでは予想できていなかった。
しかし、祖父のケイや父のレイナルドならば、どこに出てもいい様に考えていたかもしれない。
恐らくエルフ王国、獣人大陸、ドワーフ王国、魔人大陸、人族大陸といった順で対応するはずだ。
そのことを告げると、リカルドたちは納得したように頷く。
そもそも、人族大陸以外に出現した場合、止められれば協力はするつもりだった。
しかし、戦った今では魔王たちは倒せないことが分かった。
頼みの綱は、ケイたちが使える封印魔法のみだ。
任せるようで悪いが、彼らに頑張ってもらうしかない。
「魔力が回復次第、一旦エルフ王国に向かいたいと思います」
「あぁ、了解した」
エルフ王国には父のレイナルドやみんながいるため、魔王が出現していたとしても心配はしていない。
それよりも、今後他の地域に出現した魔王たちのことを話し合うために、一旦国に戻った方が良いだろう。
そのことを告げると、リカルドはファビオの言葉を了承した。
◆◆◆◆◆
「ただいま!」
「おぉ、帰ったか……」
ケイとレイナルドが話し合っている所に、オスカルが戻ってきた。
そして、ドワーフ王国に現れた魔王アマドルをファビオとラウルの手によって封印したと報告が入ったのだった。
魔王アマドルの喚き声も聞こえなくなり、リカルドは息を吐いて座り込んだ。
ファビオとラウルのお陰で、何とかアマドルを封印することができた。
2人の封印魔法がなかったら、とてもではないが勝てる相手ではなかっただろう。
あの回復力は反則だ。
こっちがどんなにダメージを与えてもすぐに回復してしまうのだから。
「こっちも疲れました……」
ファビオとラウルも疲れた顔をして休憩する。
封印魔法の設置には、かなりの量の魔力と時間を必要とする。
この魔法を生み出したケイでもそうだというのに、孫の自分が設置するとなると更にだ。
そのため、ファビオは弟のラウルと2人で封印魔法を作成することで消費魔力と時間を半分に短縮した。
消費した魔力も半分とはいったが、ファビオとラウルはほとんどの魔力を消費することになった。
アマドルを封じるためには、その分魔力を込める必要があると感じたからだ。
「これを1人でやる父さんや爺ちゃんはとんでもないな……」
「比較するだけ無駄だよ」
祖父のケイや父のレイナルドは、この魔法を1人で使用している。
それを考えると、やはり跡継ぎの立場にいるファビオとしては彼らの偉大さを感じざるを得ない。
ラウルは呑気なもので、元々祖父や父たちに勝てると思っていないようだ。
それもそのはず、エルフやハーフエルフの父や祖父たちと、クオーターの自分たちでは魔力量が違い過ぎるからだ。
しかも、自分たちは獣人の血も入っているだから仕方がない。
だからといって、獣人が悪いとは思わない。
獣人には獣人の良いところがある。
身体能力の高さだ。
魔闘術を使わなけれ戦えないエルフとは違い、獣人は使用しなくても戦える。
リカルドが最たるものだ。
自分たちは獣人の血の方が濃いため、むしろそっちを参考にすべきかもしれない。
かと言って、普通の獣人と違いかなりの魔力量がある。
それを利用し、両面を鍛えることで祖父たちに近付くしかない。
「ファビオ兄、ラウル兄、お疲れ」
「オスカル……」
「お前もな……」
ファビオとラウルが休憩を取っていると、オスカルがこちらへと向かってきた。
アマドルの風魔法によって吹き飛ばされて最後までこの場にいることはなかったが、ラファエルと共に時間稼ぎをしてくれた。
それによって封印魔法を作る時間ができたので、2人は労いの言葉を返した。
「2人共お疲れさまでした」
「ラファエルもお疲れ」
「お疲れ」
オスカルに続き、ラファエルも話しかけてくる。
以前ラファエルはエルフ王国にいたことがあるため、ファビオやラウルも仲はいい。
そのため、2人はラファエルに軽い口調で言葉を返した。
「ありがとう。君たちのお陰で生き残ることができた」
「いいえ。時間を稼いでいただきありがとうございました」
オスカルたちに続いて、ハノイがファビオたちに感謝の言葉をかけてきた。
リカルドから聞いていたとは言っても、ハノイはどんな方法でアマドルを倒すのか分からないでいた。
リカルドの言う作戦が通用するか確信が持てなかったはずなのに、最後まで付き合ってくれたことには感謝しかない。
立ち上がって頭を下げたファビオたちは、ハノイと握手を交わして健闘を称え合った。
「君はたしかリカルド殿のとこのルシア嬢と結婚した……」
「ラウルです。ハノイ殿」
「おぉ、そうだった」
ファビオの次にラウルと握手した時、ハノイはあることを思いだした。
リカルドの娘が、エルフ王国のケイの息子と婚姻した時のことを。
カンタルボス王国での結婚式にはハノイも参加した。
その時にラウルと会っていたことを思いだしたのだ。
ケイやその息子たちと話すことが多かったが、挨拶は躱していた。
顏は覚えていたのに、名前はなかなかでなかったのはそう言うことだろう。
「良い娘婿をお持ちで何よりだ。リカルド殿」
「ハハッ! そう言って頂けるのはありがたい」
ファビオたちと握手を交わしたハノイは、今度はリカルドと握手を交わす。
死すら頭をよぎるような強力な敵との戦闘を、乗り切ったことを称え合っての握手だろう。
そして、ハノイはリカルドの義理の息子に当たるラウルのことを褒める。
ファビオと共にとは言っても、倒す術のなかった自分たちを救ってくれた感謝の気持ちを込めてのことだろう。
リカルドも娘婿のラウルが評価されて、まんざらでもなく嬉しそうだ。
「それにしても、他の地は大丈夫だろうか?」
「エルフの地は大丈夫だろうが、人族大陸に向かったのはどうなるかは分からないな……」
リカルドとハノイの話しているのは、アマドルが言っていたドワーフ王国の他にも魔王が出現しているという話だ。
アマドルと同じような存在が他にも3体いるということもだが、場合によってはそれを相手にしなければならないかと思うと気の重い話だ。
「割り込んで失礼。その件ですが、恐らく祖父や父が動いてくれると思います」
「……そうだな。彼らに任せるしかないしな」
他の魔王がどうなっているのか話合っている2の所へ、ファビオが一声かけて割り込む。
魔王が出ると分かっていたが、それがどこに現れるかまでは予想できていなかった。
しかし、祖父のケイや父のレイナルドならば、どこに出てもいい様に考えていたかもしれない。
恐らくエルフ王国、獣人大陸、ドワーフ王国、魔人大陸、人族大陸といった順で対応するはずだ。
そのことを告げると、リカルドたちは納得したように頷く。
そもそも、人族大陸以外に出現した場合、止められれば協力はするつもりだった。
しかし、戦った今では魔王たちは倒せないことが分かった。
頼みの綱は、ケイたちが使える封印魔法のみだ。
任せるようで悪いが、彼らに頑張ってもらうしかない。
「魔力が回復次第、一旦エルフ王国に向かいたいと思います」
「あぁ、了解した」
エルフ王国には父のレイナルドやみんながいるため、魔王が出現していたとしても心配はしていない。
それよりも、今後他の地域に出現した魔王たちのことを話し合うために、一旦国に戻った方が良いだろう。
そのことを告げると、リカルドはファビオの言葉を了承した。
◆◆◆◆◆
「ただいま!」
「おぉ、帰ったか……」
ケイとレイナルドが話し合っている所に、オスカルが戻ってきた。
そして、ドワーフ王国に現れた魔王アマドルをファビオとラウルの手によって封印したと報告が入ったのだった。
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