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第13章

第338話

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「着いたよ。父さん」

「あ、あぁ……」

 四魔王の一体を封印することに成功したケイ。
 回復薬で傷を治したカルロスに転移をしてもらい、一旦エルフの国へと戻ってきた。
 大量の魔力を有するエルフのケイでも、封印のために一気に魔力を消費したせいで気分が良くない。
 そのため、軽く足をふらつかせながら、居住地へと向かうことにした。

「「っ!?」」

 もう少しで居住地という所で、ケイとカルロスは強力な魔法の発動の反応を確認した。

「あの反応は……」

「兄さんも封印することにしたようだね」

 その魔法の反応は、少し前にケイが発動した封印魔法と同じものだった。
 その反応から、ケイとカルロスはレイナルドが封印魔法を発動させたのだと理解した。

「人工島の方だね」

「予定通りだな」

 エルフ王国のあるアンヘル島は、ケイたちの魔法によって少しずつ形を変えてきた。
 居住地や農作地などせっかく整備したというのに、もしも魔王とか言うのが攻めてきた時に潰されては迷惑極まりない。
 そのため、島から少し離れた場所に人工島を作り、そこで魔王と戦うように決めていた。
 封印魔法の反応があった場所から予想するに、レイナルドは予定通り人工島で戦闘をおこなったようだ。

「じゃあ、あっちへ向かおう」

「あぁ」

 もしも魔王を相手に戦っていたら自分たちも戦闘に参戦するつもりで帰ってきたのだが、探知してみると魔王らしき者の魔力は感じられない。
 どうやらここは心配ないようなので、ケイとカルロスはひとまずレイナルドの所へと向かうことにした。





「ケイ様!! カルロス様!!」

「やぁ、帰ったよ……」

 昔からある東の海岸。
 そこから人工島へ向かうつもりでいたのだが、島の住民みんながこの場所に集まっていた。
 ふらつきながらもたどり着いたケイと、ペースを合わせて歩いてきたカルロスに、島の住人たちが気が付く。
 その様子を見て、心配そうに近付いて声をかけてきたきた。
 そんなみんなに、ケイは軽く手を上げて返答をした。
 みんなに道を開けてもらい、魔王と戦ったであろう者たちの所へと通させてもらった。

「お疲れ……」

「ハァ、ハァ……、父さん……?」

 明けてもらった道を通り海岸に着くと、そこには多くの兵士たちが集まっていた。
 人工島から戻ったばかりなのか、見つけてケイが声をかけた時、レイナルドは海岸に横になって息を切らしていた。
 声をかけてきたのが父のケイだと気付くと、レイナルドは咄嗟に上半身を起こした。

「父さんがそんな状態ってことは……」

「あぁ、日向に向かう途中で遭遇した。カルロスと2人で日向近くの無人島に封印してやったよ」

 膝が震えているケイを見て、相当疲労しているのが窺える。
 父がそんな状態になる原因を考えると、レイナルドは自分たちが戦った魔王が言っていたことを思いだした。
 四魔王とか言うのが同時に眠りから覚め、各地へと散らばったと。
 その1体と遭遇したからこそ、父が疲労しているのだと理解した。
 その考えは正解だったらしく、ケイは簡単に結果を説明した。

「……よく2人で抑え込んだね?」

「カルロスに負担をかけたよ」

「なるほど……」

 自分たちは多くの仲間と戦いようやく封印にこぎつけたというのに、カルロスと2人だけで封印してしまったというのは驚きの一言だ。
 よく見てみると、カルロスの服のあちこちが汚れていたり穴が開いたりしている。
 魔王相手に相当痛手を負ったことであろう。
 我が弟ながら、たいしたものだと褒めたいところだ。

「キュウとクウだけでも連れていけばよかったな」

 魔王が一斉に出現するなんて想像していなかった。
 そのため、もしも留守中にエルフ王国に出現した時のことを考え、ケイはキュウやクウといった従魔を置いて行くことにした。
 魔王と戦うことになると分かっていれば、キュウも連れて行けばよかった。
 そうすれば、カルロスの苦労も和らげることができたことだろう。

「いや、父さんがキュウたちを置いていてくれて、これでも被害が少なく済んだよ……」

「そうか……」

 レイナルドの悲痛な表情に、ケイは何が言いたいのか分かった。
 この海岸には多く島の戦士たちがいる。
 なかには、全く動かない者や四肢の一部を失っている者もいる。
 恐らく魔王と戦って怪我をしたのだろう。
 治療魔法が得意な者たちが怪我の治療をしているが、数人姿が見えない。
 どうやら何人か亡くなってしまったのかもしれない。
 ケイも、家族同然と言って良い仲間である島民が被害に遭ったことは辛い。
 しかし、魔王の強さによっては全滅の可能性もあり得た。
 亡くなった者たちには悪いが、数人で済んで良かったといったところだろうか。

【ご主人!!】「ワフッ!」

「ただいま。キュウ! クウ!」

 怪我人の回復に当たっていたキュウが一通り回復し終えると、主人であるケイを見つけ、柴犬そっくりの魔物であるクウの頭に乗っててこちらへと向かってきた。
 クウは元々はケイの妻である美花の従魔だったが、美花が亡くなってから自分の従魔にした柴犬そっくりの魔物だ。
 2匹は主人であるケイに甘えるように、キュウは肩へ、クウは足元へと体を擦り付けてきた。
 そんな2匹を撫で、ケイは帰ってきた挨拶をした。

「ここに来た魔王はどんな奴だった?」

 怪我人の応急処置が済み、治療所へと運んだ後、一息ついたケイとレイナルドは今回現れた魔王の情報を共有することにした。

「父さん! それよりも、ドワーフ王国にも……」

「分かってる! でも、もしも弱点でもあれば戦いやすいだろ?」

「あ、あぁ……」

 父と共に戦ったサンティアゴは、ドワーフ王国にも魔王が向かっているようなことを言っていた。
 ドワーフ王国に危機あれば、獣人族や魔人族が黙っていない。
 カルロスが心配しているのはカンタルボス王国が誰を援軍に送ったかということだ。
 カンタルボス王国のリカルドはケイの友人だし、そのリカルドの次男のファウストはカルロスの友人だ。
 しかも、ファウストの妹にであるルシアは、レイナルドの息子であるラウルの妻だ。
 それに、エルフ王国の住人は、元はカンタルボス王国の住人だった者たちだ。
 つまり、この国とカンタルボスの関係から、この国もドワーフ王国へ援軍を送って最悪の結果になる前に封印してしまうべきだろう。
 そのためにカルロスは焦っているのだが、ケイは援軍に向かうためにもレイナルドから情報を得ておこうと考えたのだ。

「手短に話すよ」

「あぁ」

 レイナルドも、ソフロニオという魔王からドワーフ王国に他の魔王が向かっていると聞いていた。
 そのため、ケイが何か攻略法を見つけて繰っれることを期待し、時間もないことだし手短に自分たちが戦った印象を話すことにした。

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