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第11章
第273話
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「そう簡単には行かないか……」
魔人の国のエナグアの国王の謁見は、すんなり円満に終わった。
ドワーフ王国皇太子のセベリノから細かく説明を受けていたのか、国王はすんなりケイを受け入れ、助力を感謝されたほどだ。
その後、昨日に引き続き魔人族たちに魔力の使い方を教え始めたケイだったが、いまいちな進歩具合に思わず愚痴る。
思った通り、魔人のみんなは魔力操作の訓練をたいしてしてこなかったせいか、なかなか上手くならない。
それに、指導を受けているのは20代、30代の大人の者たちばかり。
魔人は人数が少ないため、若いうちに10代は魔物と戦わせたりしないらしい。
その代わり訓練はさせているのだそうだが、出来れば彼らの方を鍛えたいくらいだ。
というのも、ケイの勝手な感覚だが、魔力操作の向上は若いうちの方が適しているからだ。
今でもケイは時間を見て魔力操作の上達を計っているが、若い時ほどのような急激な向上は見受けられなくなってきた。
それもあって若い子たちの指導をしたいけど、彼らの言い分も分かるので強く言えない。
「フッ!! ……まだ少し遅いな?」
ケイの指導を一番熱心に受けているのはバレリオだ。
初対面でケイと戦ったことが功を奏したのか、完全にケイの指導を信頼しているかのようだ。
今も進展具合を確認するように、小さい魔力を火に変換する速度を計っている。
しかし、他の兵たちはケイの強さを実際に見ていないし体験していないせいか、いまいち指導を本気に受けていない気がする。
隊長であるバレリオが素直に従っているから、自分たちも従っているという姿勢が見え隠れしている。
それも成長がいまいちな理由になっているのかもしれない。
「これができたからって何になるんだよ?」
魔力操作の訓練が上手くいっていない者の一人が、小さく呟く。
30代後半の彼は、最初から自分のことを良く思っていないと、ケイは目付きで分かっていた。
若い者程の上達が期待できない年齢の上に、訓練を真剣にやっていないのが分かる態度。
上達をしないのは当然のことだ。
しかも、30代中盤のバレリオよりも年齢は上だ。
バレリオが真面目に従っているのもどこか不愉快に思っているかもしれない。
「これができれば遠距離にいる敵への攻撃が可能になる」
「っ!?」
その呟きが聞こえたケイは、彼に近付いて行き説明を始める。
彼だけでなく、他の兵たちもメリットが分からない迷いが邪魔をしている可能性がある。
それは良くないと思ったため、全員に聞こえるように話す。
そんな中、独り言を聞かれているとは思わなかったのか、その兵は一瞬驚きの表情を浮かべた。
「ドワーフ製の武器は確かに楽だ。けど、その性能は自分の訓練次第で会得できる技術に過ぎない。弓の武器以外に中・遠距離から攻撃できる手段がかなり乏しい。これができれば、ドワーフ製の武器が無くても同じことができ、戦略にも幅が出る」
これができるだけでも色々と戦闘が楽になるということが、みんな分かっていないようだ。
こう言っては何だが、魔人たちは教育が行き届いていないようだ。
それも仕方ないかもしれない。
大昔に、人族の間に生まれ、赤ん坊の時だったり、物心つくかつかないかくらいでこの大陸に捨てられた子供が魔人族の先祖になる。
言葉は何とか受け継がれてきたのかもしれないが、教育という考えが浸透するまで国として成長していないのだろう。
ドワーフとの交流から計算なども入って来たようだが、それを専門に扱う者以外、覚える意味がないと思っている部分もあるようだ。
勉強などによって先を読むという感覚を鍛えることがないため、発想力が鈍い。
ケイとしてはそのように考えている。
「そもそも、これができれば身体強化もできるようになってくる。そうすれば、離れた魔物を探知できるようになるし、上手ければ魔物を素手で倒せるようになる」
「探知? それに素手で?」「冗談だろ?」「ここの魔物の強さを知らないのか?」
ケイの言葉に、またも兵たちはざわめく。
魔人にとって人族とのことも大変だが、強力な魔物に囲まれている状況の方が困っている。
それは、ここに住む以上ずっと続くことだからだ。
これまではいきなり現れた魔物を相手にするという後手を踏んでいたが、探知ができるということは周辺の魔物をこちらから減らしに行けるということになる。
当面の安全は確保できることになり、安心して夜に眠りに浸けるようになるということだ。
ケイの言葉が本当なら、ここでの生活がだいぶ楽になり、子供も増え、人口の増加も期待できる。
良いことずくめだ。
だが、話がうますぎると感じたの者もおり、その内容に疑問を持つ者もいた。
「本当だ。ケイ殿はカスアリオを素手で倒した」
「えっ!?」「まさか……」「本当ですか? 隊長!」
兵たちの疑問は、バレリオが取ってくれた。
カスアリオとは、別名ヒクイドリと呼ばれる鳥型の魔物のことだ。
飛べない鳥が魔物化したことにより、強力な脚力を手に入れたという話だ。
自慢の脚力を使用した移動速度と、蹴りの威力が強力で、その名の由来となる火を使い、吐き出すように火の球を放って攻撃してくることもある。
その蹴りを食らえば、人なんて無力。
何人もの魔人が、カスアリオの蹴りを食らって吹き飛ばされ即死してきた。
移動速度も速く、逃げるのも苦労させられる魔物を、目の前の優男が素手で倒したなんて驚き以外の何物でもない。
「恐らくみんなの中でそれが使えるようになるのは一握りだ。だけど、魔力が多い君たちが使えるようになれば、人族に遅れをとることはないだろう」
人族侵攻まで早くて半年。
そうなると、かなり優秀な人間でないと魔闘術の会得は困難だ。
色々と基礎があればそうでもないが、普通は何年もかかるのが普通だ。
もしも、出来るようになったとしたら、天才といってもいい。
なので、1人でもいいから使えるようにしたいと思っている。
バレリオのいうことなのだから本当なのだろうと、兵たちは先程より真剣に訓練に励むようになった。
「まずは目の前の目標をクリアしてもらう。ドワーフ兵との連携もあるし、問題は山積みだ……」
魔力操作、それによる魔法の訓練、ドワーフ族の兵も参戦するらしいので、その兵たちとの連携、考えなければならないことのオンパレードだ。
そう考えると、悩みが尽きないケイだった。
魔人の国のエナグアの国王の謁見は、すんなり円満に終わった。
ドワーフ王国皇太子のセベリノから細かく説明を受けていたのか、国王はすんなりケイを受け入れ、助力を感謝されたほどだ。
その後、昨日に引き続き魔人族たちに魔力の使い方を教え始めたケイだったが、いまいちな進歩具合に思わず愚痴る。
思った通り、魔人のみんなは魔力操作の訓練をたいしてしてこなかったせいか、なかなか上手くならない。
それに、指導を受けているのは20代、30代の大人の者たちばかり。
魔人は人数が少ないため、若いうちに10代は魔物と戦わせたりしないらしい。
その代わり訓練はさせているのだそうだが、出来れば彼らの方を鍛えたいくらいだ。
というのも、ケイの勝手な感覚だが、魔力操作の向上は若いうちの方が適しているからだ。
今でもケイは時間を見て魔力操作の上達を計っているが、若い時ほどのような急激な向上は見受けられなくなってきた。
それもあって若い子たちの指導をしたいけど、彼らの言い分も分かるので強く言えない。
「フッ!! ……まだ少し遅いな?」
ケイの指導を一番熱心に受けているのはバレリオだ。
初対面でケイと戦ったことが功を奏したのか、完全にケイの指導を信頼しているかのようだ。
今も進展具合を確認するように、小さい魔力を火に変換する速度を計っている。
しかし、他の兵たちはケイの強さを実際に見ていないし体験していないせいか、いまいち指導を本気に受けていない気がする。
隊長であるバレリオが素直に従っているから、自分たちも従っているという姿勢が見え隠れしている。
それも成長がいまいちな理由になっているのかもしれない。
「これができたからって何になるんだよ?」
魔力操作の訓練が上手くいっていない者の一人が、小さく呟く。
30代後半の彼は、最初から自分のことを良く思っていないと、ケイは目付きで分かっていた。
若い者程の上達が期待できない年齢の上に、訓練を真剣にやっていないのが分かる態度。
上達をしないのは当然のことだ。
しかも、30代中盤のバレリオよりも年齢は上だ。
バレリオが真面目に従っているのもどこか不愉快に思っているかもしれない。
「これができれば遠距離にいる敵への攻撃が可能になる」
「っ!?」
その呟きが聞こえたケイは、彼に近付いて行き説明を始める。
彼だけでなく、他の兵たちもメリットが分からない迷いが邪魔をしている可能性がある。
それは良くないと思ったため、全員に聞こえるように話す。
そんな中、独り言を聞かれているとは思わなかったのか、その兵は一瞬驚きの表情を浮かべた。
「ドワーフ製の武器は確かに楽だ。けど、その性能は自分の訓練次第で会得できる技術に過ぎない。弓の武器以外に中・遠距離から攻撃できる手段がかなり乏しい。これができれば、ドワーフ製の武器が無くても同じことができ、戦略にも幅が出る」
これができるだけでも色々と戦闘が楽になるということが、みんな分かっていないようだ。
こう言っては何だが、魔人たちは教育が行き届いていないようだ。
それも仕方ないかもしれない。
大昔に、人族の間に生まれ、赤ん坊の時だったり、物心つくかつかないかくらいでこの大陸に捨てられた子供が魔人族の先祖になる。
言葉は何とか受け継がれてきたのかもしれないが、教育という考えが浸透するまで国として成長していないのだろう。
ドワーフとの交流から計算なども入って来たようだが、それを専門に扱う者以外、覚える意味がないと思っている部分もあるようだ。
勉強などによって先を読むという感覚を鍛えることがないため、発想力が鈍い。
ケイとしてはそのように考えている。
「そもそも、これができれば身体強化もできるようになってくる。そうすれば、離れた魔物を探知できるようになるし、上手ければ魔物を素手で倒せるようになる」
「探知? それに素手で?」「冗談だろ?」「ここの魔物の強さを知らないのか?」
ケイの言葉に、またも兵たちはざわめく。
魔人にとって人族とのことも大変だが、強力な魔物に囲まれている状況の方が困っている。
それは、ここに住む以上ずっと続くことだからだ。
これまではいきなり現れた魔物を相手にするという後手を踏んでいたが、探知ができるということは周辺の魔物をこちらから減らしに行けるということになる。
当面の安全は確保できることになり、安心して夜に眠りに浸けるようになるということだ。
ケイの言葉が本当なら、ここでの生活がだいぶ楽になり、子供も増え、人口の増加も期待できる。
良いことずくめだ。
だが、話がうますぎると感じたの者もおり、その内容に疑問を持つ者もいた。
「本当だ。ケイ殿はカスアリオを素手で倒した」
「えっ!?」「まさか……」「本当ですか? 隊長!」
兵たちの疑問は、バレリオが取ってくれた。
カスアリオとは、別名ヒクイドリと呼ばれる鳥型の魔物のことだ。
飛べない鳥が魔物化したことにより、強力な脚力を手に入れたという話だ。
自慢の脚力を使用した移動速度と、蹴りの威力が強力で、その名の由来となる火を使い、吐き出すように火の球を放って攻撃してくることもある。
その蹴りを食らえば、人なんて無力。
何人もの魔人が、カスアリオの蹴りを食らって吹き飛ばされ即死してきた。
移動速度も速く、逃げるのも苦労させられる魔物を、目の前の優男が素手で倒したなんて驚き以外の何物でもない。
「恐らくみんなの中でそれが使えるようになるのは一握りだ。だけど、魔力が多い君たちが使えるようになれば、人族に遅れをとることはないだろう」
人族侵攻まで早くて半年。
そうなると、かなり優秀な人間でないと魔闘術の会得は困難だ。
色々と基礎があればそうでもないが、普通は何年もかかるのが普通だ。
もしも、出来るようになったとしたら、天才といってもいい。
なので、1人でもいいから使えるようにしたいと思っている。
バレリオのいうことなのだから本当なのだろうと、兵たちは先程より真剣に訓練に励むようになった。
「まずは目の前の目標をクリアしてもらう。ドワーフ兵との連携もあるし、問題は山積みだ……」
魔力操作、それによる魔法の訓練、ドワーフ族の兵も参戦するらしいので、その兵たちとの連携、考えなければならないことのオンパレードだ。
そう考えると、悩みが尽きないケイだった。
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