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第11章
第266話
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「あっ!!」
「あっ!!」
転移魔法を使って、アンヘル島へと戻ってきたケイ。
戻ってきたはいいが、家出のように姿を消したため、バツが悪いので誰にも見つからないように物陰に隠れながら自宅へ向かっていた。
しかし、その途中に、たまたま通りすがった孫のラウルと目が合ってしまった。
「お父さん! じいちゃんが返って来たよ!」
「あっ!! ちょっ……ラウル……」
折角バレないようにしていたというのに、ラウルはあっさりと大声を出してレイナルドを呼びに行ってしまった。
その声に反応し、島のみんなにも自分が戻って来た事がバレた。
みんな心配していたため、ケイが戻ってきたことを喜んでくれた。
しかし、ケイなら死ぬこともないだろうと、そこまで心配していなかったと言う者がほとんどだった。
「「お・帰・り」」
「た、ただいま……」
皆と挨拶をして自宅に戻ると、息子のレイナルドとカルロスが、仁王立ちして待ち受けていた。
その背後には、炎のような物が燃え盛っているような錯覚に陥る。
それだけで、相当腹が立っているんだろうと理解できた。
そのため、ケイは少し低姿勢で挨拶を返した。
「ったく! いきなり後は任せるとか言っていなくなるなんて、何考えているんだよ!」
「いや~、すまんすまん」
とりあえず椅子に座ると、ケイはレイナルドから説教を受けた。
それはそうだろう。
美花の死で沈んでいた人間がいきなり姿を消したものだから、いくらケイでもどこかで野垂れ死んでいる可能性も考えられたからだ。
「まぁ、まぁ、父さんも無事戻って来たんだし良しとしようよ」
「……そうだな」
カルロスの方はレイナルドほど心配していなかったようで、ケイが元気そうなので怒りも跳んでしまったようだ。
こんな時キュウとクウが入ってくれればもっとありがたいのだが、2匹とも島の子供に捕まって外で遊んでいる状況だ。
ケイとしては、援護がもらえて助かった。
レイナルドも怒りも治まったようだ。
「……じゃあ、これ返すよ」
もしもの時に使えるように、ケイは大容量の方をレイナルドに、美花の形見の方の魔法の指輪をそれぞれ2人に渡しておいた。
それも、ケイが戻って来たので、レイナルドたちは返そうとする。
「いや、それはお前らに渡したんだし、お前らがそのまま使えよ」
「「えっ?」」
指輪を返そうとする2人を、ケイは止めた。
ドワーフ特製の魔法の指輪は、この島にもしもの時が起こった時にを必要な物。
以前から島外へ出る機会が多かったケイが付けているよりも、しっかり者のレイナルドが付けている方が安心できる。
カルロスでも良いかとも思うが、脳筋な部分が感じ取れるのでやめておいた。
その代わりと言っては何だが、カルロスには美花の付けていた魔法の指輪を渡すことにした。
美花の魔法の指輪は、狩りや戦いで使うには十分な容量だ。
ケイのよりも容量があるので、使い勝手がいいはずだ。
「島のことはこのまま俺らに任せるってこと?」
「あぁ」
予定はないが、獣人国やドワーフ王国と関わる時、島を離れたケイに代わって島を仕切るのはこの2人が適任だ。
ケイがいなかった時も何事もなかったようなので、このまま任せることにした。
「……もしかして、面倒だから押し付けたってことないよな?」
「……ないよ」
何だかまた島からいなくなりそうな気がしたのか、レイナルドは鋭い質問をしてきた。
それに対し、ケイはすぐに言葉を返すことができなかった。
「今間があったぞ!」
「そんなことないって……」
カルロスに間が空いたことを突っ込まれたが、ケイは首を横に振って否定する。
実は図星とは言える訳がない。
この島は大好きだが、まだまだ心配なことは尽きない。
以前のように、どこかの人族の国が攻めて来る可能性も完全には否定できないし、北にある火山も時折地震を起こすなどしており、噴火する気配も残っている。
対策をしてるが、他にも色々と練っておきたい。
そのためには、ドワーフ王国の力を借りて何か魔道具を開発して貰おうかと思っている。
決して、以前の魔道具開発が楽しくて行きたいと思っている訳ではない。
「父さんは好きにしてもいいよ」
「本当か?」
これまでのことがあるからだろうか、レイナルドはケイが島の外で動き回るのも別に文句はない。
結局それはこの島のためになることばかりだったからだ。
むしろ、母である美花が亡くなった時、父のケイが相当落ち込んでいたのが心配だった。
急にいなくなり、更に心配が膨らんだが、今のケイを見る限りもう大丈夫そうだ。
あの時のように沈んだ父を見ているよりも、どこに行っているか分かった上で好きに動いてもらった方が何倍もマシだ。
なので、レイナルドはケイの好きにさせることにしたのだ。
「そうだ!」
「んっ?」
色々と一段落したところで、レイナルドはあることを思い出した。
どうせケイはここにいたら問題が起こる。
それ自体は大したことではないのだが、それとは別のことでケイには動いてもらいたい。
「この魔法の指輪で思い出したんだけど……」
「あぁ……」
レイナルドの付けているのは、ドワーフ王国でもらった魔法の指輪だ。
ということは、ドワーフ王国のことなのだろう。
「魔人のことで用があるから、家の島からも誰か来てくれないかって話だった」
「魔人……?」
そう言えば日向を去る時に八坂にも言われていた。
人族のどこかの国が魔人族の領に侵攻するとかしないとか。
どうやらそれにドワーフ族が関わっているのかもしれない。
レイナルドたちからしたら、ケイがこの時に帰って来たのは都合が良かった。
「しょうがない。行くか……」
折角島に帰ってきたと言うのに、また外へと行けなくてはならなくなった。
ドワーフ王国にいつか遊びに行くつもりだったとは言っても、急できな臭い話になりどうなことに嫌そうな顔をするケイだった。
「あっ!!」
転移魔法を使って、アンヘル島へと戻ってきたケイ。
戻ってきたはいいが、家出のように姿を消したため、バツが悪いので誰にも見つからないように物陰に隠れながら自宅へ向かっていた。
しかし、その途中に、たまたま通りすがった孫のラウルと目が合ってしまった。
「お父さん! じいちゃんが返って来たよ!」
「あっ!! ちょっ……ラウル……」
折角バレないようにしていたというのに、ラウルはあっさりと大声を出してレイナルドを呼びに行ってしまった。
その声に反応し、島のみんなにも自分が戻って来た事がバレた。
みんな心配していたため、ケイが戻ってきたことを喜んでくれた。
しかし、ケイなら死ぬこともないだろうと、そこまで心配していなかったと言う者がほとんどだった。
「「お・帰・り」」
「た、ただいま……」
皆と挨拶をして自宅に戻ると、息子のレイナルドとカルロスが、仁王立ちして待ち受けていた。
その背後には、炎のような物が燃え盛っているような錯覚に陥る。
それだけで、相当腹が立っているんだろうと理解できた。
そのため、ケイは少し低姿勢で挨拶を返した。
「ったく! いきなり後は任せるとか言っていなくなるなんて、何考えているんだよ!」
「いや~、すまんすまん」
とりあえず椅子に座ると、ケイはレイナルドから説教を受けた。
それはそうだろう。
美花の死で沈んでいた人間がいきなり姿を消したものだから、いくらケイでもどこかで野垂れ死んでいる可能性も考えられたからだ。
「まぁ、まぁ、父さんも無事戻って来たんだし良しとしようよ」
「……そうだな」
カルロスの方はレイナルドほど心配していなかったようで、ケイが元気そうなので怒りも跳んでしまったようだ。
こんな時キュウとクウが入ってくれればもっとありがたいのだが、2匹とも島の子供に捕まって外で遊んでいる状況だ。
ケイとしては、援護がもらえて助かった。
レイナルドも怒りも治まったようだ。
「……じゃあ、これ返すよ」
もしもの時に使えるように、ケイは大容量の方をレイナルドに、美花の形見の方の魔法の指輪をそれぞれ2人に渡しておいた。
それも、ケイが戻って来たので、レイナルドたちは返そうとする。
「いや、それはお前らに渡したんだし、お前らがそのまま使えよ」
「「えっ?」」
指輪を返そうとする2人を、ケイは止めた。
ドワーフ特製の魔法の指輪は、この島にもしもの時が起こった時にを必要な物。
以前から島外へ出る機会が多かったケイが付けているよりも、しっかり者のレイナルドが付けている方が安心できる。
カルロスでも良いかとも思うが、脳筋な部分が感じ取れるのでやめておいた。
その代わりと言っては何だが、カルロスには美花の付けていた魔法の指輪を渡すことにした。
美花の魔法の指輪は、狩りや戦いで使うには十分な容量だ。
ケイのよりも容量があるので、使い勝手がいいはずだ。
「島のことはこのまま俺らに任せるってこと?」
「あぁ」
予定はないが、獣人国やドワーフ王国と関わる時、島を離れたケイに代わって島を仕切るのはこの2人が適任だ。
ケイがいなかった時も何事もなかったようなので、このまま任せることにした。
「……もしかして、面倒だから押し付けたってことないよな?」
「……ないよ」
何だかまた島からいなくなりそうな気がしたのか、レイナルドは鋭い質問をしてきた。
それに対し、ケイはすぐに言葉を返すことができなかった。
「今間があったぞ!」
「そんなことないって……」
カルロスに間が空いたことを突っ込まれたが、ケイは首を横に振って否定する。
実は図星とは言える訳がない。
この島は大好きだが、まだまだ心配なことは尽きない。
以前のように、どこかの人族の国が攻めて来る可能性も完全には否定できないし、北にある火山も時折地震を起こすなどしており、噴火する気配も残っている。
対策をしてるが、他にも色々と練っておきたい。
そのためには、ドワーフ王国の力を借りて何か魔道具を開発して貰おうかと思っている。
決して、以前の魔道具開発が楽しくて行きたいと思っている訳ではない。
「父さんは好きにしてもいいよ」
「本当か?」
これまでのことがあるからだろうか、レイナルドはケイが島の外で動き回るのも別に文句はない。
結局それはこの島のためになることばかりだったからだ。
むしろ、母である美花が亡くなった時、父のケイが相当落ち込んでいたのが心配だった。
急にいなくなり、更に心配が膨らんだが、今のケイを見る限りもう大丈夫そうだ。
あの時のように沈んだ父を見ているよりも、どこに行っているか分かった上で好きに動いてもらった方が何倍もマシだ。
なので、レイナルドはケイの好きにさせることにしたのだ。
「そうだ!」
「んっ?」
色々と一段落したところで、レイナルドはあることを思い出した。
どうせケイはここにいたら問題が起こる。
それ自体は大したことではないのだが、それとは別のことでケイには動いてもらいたい。
「この魔法の指輪で思い出したんだけど……」
「あぁ……」
レイナルドの付けているのは、ドワーフ王国でもらった魔法の指輪だ。
ということは、ドワーフ王国のことなのだろう。
「魔人のことで用があるから、家の島からも誰か来てくれないかって話だった」
「魔人……?」
そう言えば日向を去る時に八坂にも言われていた。
人族のどこかの国が魔人族の領に侵攻するとかしないとか。
どうやらそれにドワーフ族が関わっているのかもしれない。
レイナルドたちからしたら、ケイがこの時に帰って来たのは都合が良かった。
「しょうがない。行くか……」
折角島に帰ってきたと言うのに、また外へと行けなくてはならなくなった。
ドワーフ王国にいつか遊びに行くつもりだったとは言っても、急できな臭い話になりどうなことに嫌そうな顔をするケイだった。
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