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第8章
第164話
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長さ勝負の釣り大会1日目が終わり、最後の大逆転で1位を奪取した上機嫌の美花を連れ、ケイはリカルドたちと共に領主邸に足を運んだ。
ケイと美花は別に宿屋でも構わないのだが、カンタルボスの王であるリカルドが宿屋では何かとよろしくない。
そのため、ここの領主が泊まる場所を用意してくれた。
要人を招くために作られた領主邸の離れを、自由に使って良いと言われた。
「別荘地だからこの離れも豪華なのかな……」
離れと言っても、近くの領主邸とほぼ遜色ないような豪華な構造をしている。
1人1部屋使ってもあまりそうな邸に驚きながらも、ケイはリカルドが言っていた言葉を思い出した。
ここは別荘地。
この国の貴族もそうだが、周辺国からきた要人をもてなすためにも、このような建物があるのは当たり前かもしれない。
「申し訳ないのだが、ケイ殿に調理を頼んでも良いだろうか?」
リカルドが連れてきた護衛の中にも、料理ができる者はいる。
だが、ケイの料理の腕に比べると、どうしても物足りなさを感じてしまう。
その護衛たちも、ケイの料理を食べた経験がある者たちなため、出来ればケイの料理にありつきたいという思いがある。
「いいですよ」
ケイにとって料理は息抜きの1つ。
何も考えずに料理に集中し、美味くできたらなお嬉しい。
大会で釣った魚は、持ち帰っても放流しても構わないということになっており、ケイたちは釣った魚は全て持ち帰った。
そのため、色々な魚が釣れたことから、料理のしがいがある。
「まずはヴィシオンを使いますか……」
でかい鮎ことヴィシオン。
これはかなりの数が釣れたので、シンプルに料理することにした。
やっぱり鮎なら塩焼きだろうと、串に刺したヴィシオンに塩をまぶし、遠火で焼き始める。
フツフツと脂が出てきているのを見ると、ただの大味になっているようには見えない。
焼くだけで美味そうなので、かぶりつきたい気になってくる。
「次はムヘナとロッカードだけど……」
でかい山女のムヘナ。
でかい岩魚のロッカード。
どっちもヴィシオン同様に塩焼きでも美味いかもしれないが、全部同じでは面白くない。
そうなると、思いつく料理と言ったら甘露煮とフライといったところだろうか。
なので、ケイはムヘナを甘露煮に、ロッカードをフライにしてみた。
身がかなりでかいので、1匹で3人分になりそうな大きさだ。
「最後に美花が釣ったアンギラを使った料理をするか……」
美花が釣り、今日1位を取った長い魚のアンギラ。
普通の鰻のように見える。
ただ、地球ならかなり立派な天然物といったところだ。
白焼きも捨てがたいが、鰻と言ったらやはりかば焼きではないだろうか。
関東と関西で調理法が違うが、ケイは捌き方は関西、調理法は関東というふうに作る。
というのも、ケイたちの住むアンヘル島では、鰻ではないがウツボがたまに取れる。
それをかば焼きにして食したりするのだが、島のみんなにはなかなか好評だ。
小骨の処理をちゃんとするのがコツだろう。
「全員で分けたら随分小さいけれど、かば焼きの完成だ!」
10人の護衛にリカルド、ケイ、美花の3人。
立派な大きさの鰻とはいえ、13人で分ければ仕方がないだろう。
「………………」
「美花のだけは大きめにしたから安心しろ」
ケイがアンギラのかば焼きを切り分けていると、それを美花が無言で見ていた。
ウツボのかば焼きの時も、美花はその味をかなり気に入っていた。
日本人に似ている日向人の舌に合ったのかもしれない。
調理の時にケイがかば焼きと言っていたのが耳に入ったのか、いつの間にか美花が調理しているのを見に来ていた。
流石に、釣った本人が他と同じ大きさでは可哀想だ。
なので、ケイは美花の分だけ大きめに切り分けた。
それでも小さいが、茶碗の大きさのうな重はできた。
ケイを含めた他の人は、少量の鰻をまぶした御飯と言ったところだ。
「魚ばっかりになったな……」
どの魚も上手く調理できたと思う。
しかし、どれも魚だけで野菜の料理がない。
魚だけだとどうしても栄養が気になる。
「しょうがない、サラダとみそ汁で誤魔化すか……」
野菜料理を考えようかと思ったが、作っている間にできた魚料理が冷めてはもったいない。
ここはシンプルにサラダにするのと、野菜を色々入れた具沢山味噌汁にするのが手っ取り早い。
そう思ったケイは、手早くその2つを作ってテーブルに並べて行ったのだった。
「美味い!!」
食事の挨拶をすると、リカルドはケイが作った料理にがっつき始めた。
魚料理ばかりになってしかったが、そんなことは気にしないと言ったような食いつきだ。
「気に入って貰えてよかった」
対面に座るケイは、喜んでもらえたようで安堵している。
護衛の10人は王のリカルドと一緒に食べる訳にはいかないと、後で使用人室で食べるそうだ。
料理は同じなのだから気にすることはないと思うが、そう言ったことはキチンと区別しないといけないらしいのでしょうがない。
「ハグハグ……」
「慌てなくても、まだあるから落ち着いて食べろよ」
美花もケイの魚料理にハマったのか、一心不乱といった感じで食べ進めていた。
今日釣った魚は結構な量ある。
護衛の者たちが食べる分は取ってあるので、慌てて食べる必要はない。
美花に言うのもあるが、がっついているリカルドにも言うように、ケイは軽く注意をする。
明日の釣り大会2日目は、重さの勝負になる。
そうなると、今日と同じ魚がまた釣れることになる。
「他にも料理を考えておかないとな……」
今日の料理は成功だったが、同じ料理を翌日もというのは少々芸がない。
明日は、釣りをしながら料理を考えることにしたケイだった。
ケイと美花は別に宿屋でも構わないのだが、カンタルボスの王であるリカルドが宿屋では何かとよろしくない。
そのため、ここの領主が泊まる場所を用意してくれた。
要人を招くために作られた領主邸の離れを、自由に使って良いと言われた。
「別荘地だからこの離れも豪華なのかな……」
離れと言っても、近くの領主邸とほぼ遜色ないような豪華な構造をしている。
1人1部屋使ってもあまりそうな邸に驚きながらも、ケイはリカルドが言っていた言葉を思い出した。
ここは別荘地。
この国の貴族もそうだが、周辺国からきた要人をもてなすためにも、このような建物があるのは当たり前かもしれない。
「申し訳ないのだが、ケイ殿に調理を頼んでも良いだろうか?」
リカルドが連れてきた護衛の中にも、料理ができる者はいる。
だが、ケイの料理の腕に比べると、どうしても物足りなさを感じてしまう。
その護衛たちも、ケイの料理を食べた経験がある者たちなため、出来ればケイの料理にありつきたいという思いがある。
「いいですよ」
ケイにとって料理は息抜きの1つ。
何も考えずに料理に集中し、美味くできたらなお嬉しい。
大会で釣った魚は、持ち帰っても放流しても構わないということになっており、ケイたちは釣った魚は全て持ち帰った。
そのため、色々な魚が釣れたことから、料理のしがいがある。
「まずはヴィシオンを使いますか……」
でかい鮎ことヴィシオン。
これはかなりの数が釣れたので、シンプルに料理することにした。
やっぱり鮎なら塩焼きだろうと、串に刺したヴィシオンに塩をまぶし、遠火で焼き始める。
フツフツと脂が出てきているのを見ると、ただの大味になっているようには見えない。
焼くだけで美味そうなので、かぶりつきたい気になってくる。
「次はムヘナとロッカードだけど……」
でかい山女のムヘナ。
でかい岩魚のロッカード。
どっちもヴィシオン同様に塩焼きでも美味いかもしれないが、全部同じでは面白くない。
そうなると、思いつく料理と言ったら甘露煮とフライといったところだろうか。
なので、ケイはムヘナを甘露煮に、ロッカードをフライにしてみた。
身がかなりでかいので、1匹で3人分になりそうな大きさだ。
「最後に美花が釣ったアンギラを使った料理をするか……」
美花が釣り、今日1位を取った長い魚のアンギラ。
普通の鰻のように見える。
ただ、地球ならかなり立派な天然物といったところだ。
白焼きも捨てがたいが、鰻と言ったらやはりかば焼きではないだろうか。
関東と関西で調理法が違うが、ケイは捌き方は関西、調理法は関東というふうに作る。
というのも、ケイたちの住むアンヘル島では、鰻ではないがウツボがたまに取れる。
それをかば焼きにして食したりするのだが、島のみんなにはなかなか好評だ。
小骨の処理をちゃんとするのがコツだろう。
「全員で分けたら随分小さいけれど、かば焼きの完成だ!」
10人の護衛にリカルド、ケイ、美花の3人。
立派な大きさの鰻とはいえ、13人で分ければ仕方がないだろう。
「………………」
「美花のだけは大きめにしたから安心しろ」
ケイがアンギラのかば焼きを切り分けていると、それを美花が無言で見ていた。
ウツボのかば焼きの時も、美花はその味をかなり気に入っていた。
日本人に似ている日向人の舌に合ったのかもしれない。
調理の時にケイがかば焼きと言っていたのが耳に入ったのか、いつの間にか美花が調理しているのを見に来ていた。
流石に、釣った本人が他と同じ大きさでは可哀想だ。
なので、ケイは美花の分だけ大きめに切り分けた。
それでも小さいが、茶碗の大きさのうな重はできた。
ケイを含めた他の人は、少量の鰻をまぶした御飯と言ったところだ。
「魚ばっかりになったな……」
どの魚も上手く調理できたと思う。
しかし、どれも魚だけで野菜の料理がない。
魚だけだとどうしても栄養が気になる。
「しょうがない、サラダとみそ汁で誤魔化すか……」
野菜料理を考えようかと思ったが、作っている間にできた魚料理が冷めてはもったいない。
ここはシンプルにサラダにするのと、野菜を色々入れた具沢山味噌汁にするのが手っ取り早い。
そう思ったケイは、手早くその2つを作ってテーブルに並べて行ったのだった。
「美味い!!」
食事の挨拶をすると、リカルドはケイが作った料理にがっつき始めた。
魚料理ばかりになってしかったが、そんなことは気にしないと言ったような食いつきだ。
「気に入って貰えてよかった」
対面に座るケイは、喜んでもらえたようで安堵している。
護衛の10人は王のリカルドと一緒に食べる訳にはいかないと、後で使用人室で食べるそうだ。
料理は同じなのだから気にすることはないと思うが、そう言ったことはキチンと区別しないといけないらしいのでしょうがない。
「ハグハグ……」
「慌てなくても、まだあるから落ち着いて食べろよ」
美花もケイの魚料理にハマったのか、一心不乱といった感じで食べ進めていた。
今日釣った魚は結構な量ある。
護衛の者たちが食べる分は取ってあるので、慌てて食べる必要はない。
美花に言うのもあるが、がっついているリカルドにも言うように、ケイは軽く注意をする。
明日の釣り大会2日目は、重さの勝負になる。
そうなると、今日と同じ魚がまた釣れることになる。
「他にも料理を考えておかないとな……」
今日の料理は成功だったが、同じ料理を翌日もというのは少々芸がない。
明日は、釣りをしながら料理を考えることにしたケイだった。
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